【昭和の怪奇事件】戦前日本の怪異！「死神に見放された」が小田原で続出？

2018年07月21日：22:00

先日、「昭和の怪奇事件」では近親者が必ず死ぬという「死神に憑かれた男」についてご紹介したが、今回は逆に「死神に見放された男」についてご紹介したい。

つまりは「何をどうしても死ねない男」ということであり、非常に不思議な話ではあるのだが、昭和の新聞にはこのようなエピソードが掲載されているので、いくつかご紹介しよう。

投身→割腹→睡眠薬すべて失敗の自殺志願者

1935年5月2日の朝日新聞朝刊から。
今回の主題にもなっている「死神に見放された男」という見出しで、実際に起こった奇妙な逸話を掲載している。

記事によると、愛知県某市に住んでいるTという29歳の男性が神奈川県小田原市の旅館に滞在中、行方をくらませた。Tは一日経っても帰ってこないので従業員が部屋を確認したところ部屋から遺書らしきものを発見。地元警察官が行方を探していたところ、とある墓地で腹から血を流してうずくまっているTが見つかった。

「おい！大丈夫か！」

Tは自分の腹に自分でナイフを刺したらしく、近くにはナイフが落ちていたが、腹を切ったのにもかかわらず傷は軽傷で済んでおり、警察は一度彼を旅館へ連れて帰った。

すると、今度はカバンから「カルモチン」という睡眠薬を一気飲みし、再度自殺を図った。

Tはすぐに近くの病院へ収容され治療を受け「命に別状なし」となったため、またも自殺は失敗となった。Tは近くにいる看護師に対し「いったい何故オレは死ねないんだ！」とわめき散らしたという。

なお、記事にはTの保護者が記者のインタビューに答えており、Tは3年前から度々、自殺を図っては家族を困らせ、先日も伊豆大島の三原山へ投身自殺しに行こう思ったが、途中で怖くなり帰宅途中に小田原市へ寄ったものだという。

正直、火山への投身自殺もナイフも睡眠薬も自分のさじ加減で次第で、どうにでもなりそうなものであり、どうもこの男は「死神に見放された」というよりも「生への執着心が強かった」というだけのような気もする。

年をまたいで「死神」に見放された失恋男

続いては1934年1月6日の朝日新聞朝刊に掲載された記事である。
「飛込み男は平気」というタイトルで、こちらも「死神に見放された」という一文がある。

実は、こちらも神奈川県小田原市での出来事である。
正月も明けた1月5日の朝、東海道本線の国府津駅にて投身自殺が発生。飛び込んだのは若い男性で、彼は爆進する列車の線路めがけてホームから飛び込んだ。

「あっ！危ない！」

運転手はブレーキを踏んだが間に合わず、轢死したと思われたが、不思議と打撲傷のみで済んだ。
彼は神奈川県内に済むKという24歳の青年で、失恋のショックで生きる希望を失い自殺を図ったものと思われる。
なお、Kは前年（1933年）12月20日に逗子海岸で投身自殺を図ったが、こちらも死にきれずに助かっているという。

今回、ご紹介している2つの事件は偶然にも神奈川県小田原市で発生している自殺未遂事件である。小田原はご存知のとおり、後北条氏の城下町であり、古い神社仏閣などが多く立ち並ぶ場所として知られており、不思議な力が宿っているいわゆるパワースポットも数多い。

もしかしたら、小田原には「死神」を寄せ付けない、何かしらのパワーが充満しているのもかもしれない。

参照：朝日新聞縮刷版

文：穂積昭雪（昭和ロマンライター / 山口敏太郎タートルカンパニー / Atlas編集部）