半球ミラーを使えば、こんなリトルプラネット写真も簡単に撮影できる
廊下などでぶつかり防止用に使われている「半球ミラー」。あれを使えば、超広角写真が簡単に撮れるんじゃないか?
持ちやすいよう取っ手を付けて、いざ街へと繰り出した。平成最後の夏は、半球ミラーと共に。
半球ミラーに映る景色
これが半球ミラー。説明のため撮っただけなのに、こうして部屋と自分がキレイに映り込んでしまう。半球ミラーの御前では、すべてをさらけ出す必要がある
出会い頭の衝突を防ぐため、オフィスや店舗などの天井に設置されるカーブミラーみたいな安全器具、それが半球ミラーである。かくいう私も毎日オフィスで見ていたのだが、ある時期からふと「これって全天球カメラっぽくない?」って思い始めた。
その性質上、超広角で180度の範囲がすべて映るのだ。ただそこにあるだけで、肉眼でも全天球カメラみたいな景色が見える。すごくないか
半球ミラーは、もうずっと前から商品として存在していた。それがVRの普及などにより、ようやく時代が半球ミラーに追いついてきたのだ。もはや私たちの脳は、こんな風に歪曲した広角写真を見ると胸がさわぐようにプログラムされてしまっている。
半球ミラーに勝手な可能性を感じてしまったため、思い切って自分用に買ってみることにした。直径30cmのタイプで約1万円だった。
半球ミラーをモバイル化する
目論見としてはこうだ。半球ミラーを頭上に掲げ、そこにカメラを向けて写真を撮る。そうすれば高価なレンズを使わずとも、お手軽に超広角な自撮り写真が撮れるはず。
とはいえこんな半球状の物体は、片手で安定して持つのに全く向いていない。外で撮影するためには、取っ手くらいあった方がいいだろう。
そんなわけでホームセンターに行って木を買ってきて、
半球ミラーにがっちり固定する。相変わらず撮影者が丸見えだが、気にしないように
木が映り込むと目立つので、アルミシールを貼って完成。シンプルなアナログ工作
取っ手を付けることにより片手で掲げやすくなったと同時に、こうして持ち運びもしやすくなった。おそらく世界初のモバイル半球ミラーの誕生だ
半球ミラー片手に湾岸を歩く
半球ミラーを持って街に出た。外には青々とした夏空が広がっていた……が、うだるような暑さである。
手に持ったミラーは直射日光を思いっきり反射し、まわりの道路を煌々と照らしている。それを持っている自分も、照り返しによってジリジリと体力を奪われていくのが実感できる。ひたすら暑い。
夏にミラーは失敗だったか……そんな不安に一瞬かられたが、実際に写真を撮ってみると考えが180度変わった。
海に近い場所がいいだろうと、大阪南港のコスモスクエア駅に降り立った。駅を出た直後に撮った一枚、なんという空の青さ
ミラーの丸さは、地球の丸さに似ている。ミラーに反射したもう一つの地球が、現実の夏空に溶け込んでいく。その曖昧になった境界線が、なんともいえず美しい
最初は手探りで撮影法を模索していく。ミラーを掲げる高さによって、写真の印象がガラリと変わるのを確かめる。
まず斜め上に構えた基本形。超広角の自撮り棒といった風情で、風景と撮影者がバランスよくミラー内に収まる
こちらはローアングル。先ほどよりも、空の広さを印象的に表現できる。人通りが多い場所でやると途端に危険人物となるので注意したい
思い切って地面に置いてみると、本当に全天球カメラで撮ったみたいになった。ただ無造作に放置するだけで、このアングルの写真が撮れる。なんというポテンシャルの高さ
で、やっぱり極めつけはこれだ。真上に掲げて撮影すると、いわゆるリトルプラネットと呼ばれる写真が撮れてしまう。もう少し手が長ければ、さらに地球が丸くなるだろう
ちなみに撮影はこんな感じで行われる。変な体勢かつ片手で撮影するため、カメラは手ぶれ補正機能の付いた軽いコンデジがベスト。スマホでは辛かった(手がプルプルする)
超広角に映える被写体を探せ
半球ミラーを使うと、超広角の写真が撮れる。それを生かした写真を模索してみた。
こちらは大阪府の咲洲庁舎。ビシっとしていて、ラスボス感がただようが
どんなに巨大なビルであっても、半球ミラーにかかればスッポリと収まってしまう。しかし高層階がぐんにょりと曲がって、まるで迫力が失われてしまった。手すりの方は奇妙に歪曲することで、逆に面白い見た目となった
記念写真には向いている。咲洲庁舎の「礎」と一緒に撮った一枚。当たり前だが、ミラーなので左右が反転するという事実を見せつけられてハッとする
直線的な構造物がぐにゃ〜っとする様は見ていて気持ちがいい。ここは上手くはまった
地面置きも、歩道橋の下でやるとかっこいい感じに。ところでこの写真、ミラーの中を凝視したあとでミラーの外に目をやると「あれ? なんで地面?」って頭が混乱する
ちょうど近くでやっていたので、「メイカーズバザール」というイベントに来てみた
会場内で撮った一枚。イベント会場はリトルプラネット風がしっくりくる。Maker Faireのようなモノづくり系イベントなので、こんな半球を振りかざしても誰ひとり気にも留めない最高の場所だった
半球ミラーごしに見る風景は、予想以上に写りがいいし、雰囲気もいい。
ところで小道具を使って印象的な写真を撮る手法はいくつかあって、特に有名なのは「宙玉写真」だろう。透明な球体をレンズの前に取り付けることで、被写体が玉に閉じ込められたような幻想的な写真が撮れる。
30cmの半球ミラーを使ったこの手法も、そのうちメジャーとなってみんなが真似し出すかもしれない。そのときのために、何かいい名称を考えておかないとなあ。
散歩は続く
とはいえ、半球ミラー写真はまったくスマートではない。あらためて言うまでもないけれど、物理的に大きなミラーを持ち運び、いちいち振りかざして撮影するのは大変だ。良い写真が撮れるのと引き換えに、撮影者である私の体力はどんどん奪われていく。
ひとしきり撮影したあと、汗だくになりながら海の近く(正確には湾)まで歩いて来た。ちょうど豪雨のあとだったこともあり、水はにごりに濁っていた。
でも空は青い。半球ミラーを使えば、にごった水と空の青さが同時に表現できる。心理描写として使えそうな気が一瞬したが、一体どういう心理なんだこれは
ここまで何枚か撮っていてハッとしたことがあった。例えばこの写真、カメラを向けた先は順光なのだが、ミラーが太陽光を反射するので、ミラーの中に映る景色は逆光になってしまう
反対にこちらは、普通に撮ると逆光のシチュエーション。でもミラーの中に映る景色は順光となる。まぶしさを我慢すれば、写真としてはこちらの方が美しい。これも一種の「逆光は勝利」なのか
それにしても暑い。30cmの半球ミラーを持って、ひたすら自撮りする35の夏である。もう半球ミラーは夏の季語と言ってもいいだろう。
君の目も半球ミラーも眩しかり
ちなみにこれは、妻に頼んだら作ってくれた半球ミラー俳句である。
オシャレな室内ではどうか
涼しい場所を求めて移動する。当サイトでもたびたび登場してもらっている、此花区にある
インディーズ書店「シカク」にやってきた。いろんなものが並んでいるため、きっと半球ミラー写真映えするに違いないのだ。
おお、イメージ通りだ。しかし店内だと、防犯ミラーっぽさが増してしまうことが分かった
お店に出ていた赤井あぞさんと記念撮影。複数人で撮影すると、とたんに自撮り棒っぽい雰囲気に
真上からだと、本に囲まれた迫力のある写真が撮れた。これぞ求めていたものだ、満足である
おわりに
半球ミラーを持って街をさまよってみた。日差しを強く反射するこのミラーを使うことで、写真に「夏らしさ」を助長させる効果があるように感じた。特に青い空+半球ミラーには力がある。
深々と半球ミラー青を吸い
これもまた妻の俳句である。
半球ミラーには青い空がよく似合う。やはりミラーと空のぼんやりとした境界線が美しい
最後に、より夏らしさを求めて生み出した写真。こういうシーン、映画でよく見る気がする
ミラーとカメラ
半球ミラーを使った撮影は、構造的にどうしても自撮りになってしまう。風景を主体にしようと思ったら、どうすればいいか。きっと半球ミラーをドローンで飛ばして、地面に置いたカメラで空中に浮かぶミラーを撮影することで、そこに反射した地上を間接的に撮影することになるのだろう。こういう回りくどさ、無意味さは嫌いじゃない。
一眼レフカメラだって、レンズから入った光をファインダーへ到達させるため、ボディ内にミラーを持っている。かようにミラーとカメラは切っても切れない仲なので、半球ミラーとカメラの組み合わせも無限の可能性を秘めていると思うのである。
ちなみにミラーには傷が付きやすいため、運搬時はこんな風に保護ビニルで覆う必要がある。やっぱり流行りそうにないな
毎年ビッグサイトの会議室でひっそりとやっている、モノ作り趣味の祭典『裏メイカー祭』、今年も開催します! 3年目となる今回は、過去最大の2days。いろんな展示がありますので、ぜひ気軽にお越しください。詳細はこちらで↓
裏メイカー祭開催のお知らせ