人口増加に伴ってか、犯罪者数も増えている。イギリスの刑事政策調査協会(Institute for Criminal Policy Research)によると、世界中で1,035万人以上が刑務所や拘置所、あるいはそれに類する施設に収監されているそうだ。
だが、刑務所での収監者の待遇は国ごとに全く違う。これは、収監の目的を犯罪者の更生におくか、あるいは懲罰におくかにもよるのだろう。また、国によっては、とりあえず一般社会から隔離するだけで手一杯な状況なのかもしれない。
では、実際に世界にはどのような刑務所があるのだろうか?特色ある10の刑務所を見てみよう。
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1. アランフエス刑務所 (スペイン)
アランフエス刑務所では、服役中でも、子どもや家族と共に過ごすことができる。壁にディズニーのキャラクターが飾られ、子ども部屋や外遊びの場もある。
もちろん、受刑者を慰めるためではない。「親が服役している」ということを、できるだけ子どもに気づかせないようにするのが狙いなのだそうだ。
image credit: Associated Press
2. バストイ刑務所 (ノルウェー)
「セキュリティーレベルの低い刑務所」としてはノルウェー最大。オスロ・フィヨルド内のバストイ島が、丸々刑務所として使われているのだ。島には80棟あまりの建物と、フットボール場や農地、ビーチや森が存在する。
刑務所としての機能の他に、商店や図書館、医療機関、教会、学校などもある。また、灯台にはミーティングやセミナーが開ける公民館的な機能も付属している。
一部からは「豪華」「ぜいたく」という批判も出ている。しかし、ここの出所者の再犯率はヨーロッパでも断然低いのだ。
image credit: Marco Di Lauro
3. ルジラ刑務所 (ウガンダ)
ルジラ刑務所の収監者には、例えばイギリスやアメリカでのよりも、大きな責務が課されている。刑務所内の調和と機能を保たねばならないのだ。その中には、食料のために作物を育て、調理し、分配するといったことまでが含まれる。また、学ぶことも奨励されており、木工の技術を教え、あるいは学ぶ人は多いそうだ。
看守一人当たりの収監者数は35人で、イギリスの15人の倍以上だが、収監者同士の争いは滅多にない。また、出所者の累犯率は30%以下と、イギリスの46%、アメリカの76%よりも低くなっている。
image credit: NTVUganda
4. サンディエゴ女子刑務所 (コロンビア)
180人ほどの収監者のうち、服役期間の終わりが近い25人が働いている。出所後、スムーズに社会生活に復帰するためのプログラムの一環だ。の罪状は、窃盗や麻薬の取引などである。
この刑務所の屋内パティオにはレストランがある。収監者が毎晩コックやウェイトレスに変身するのだ。
image credit: Jan Banning
5. ハルデン刑務所 (ノルウェー)
ハルデン刑務所はノルウェー第2の規模で、世界中から受刑者を受け入れている。伝統的なセキュリティー機器はなく、看守も武装していない。受刑者のリハビリテーションに重きを置いており、外の世界を模しているのだ。
受刑者は音楽やスポーツといった活動を楽しむこともでき、看守はコミュニティーの感覚を養うべく受刑者に働きかける。人道的な刑務所ということで評価も高いが、一部にはまた、度が過ぎているとの批判もある。(関連記事)
ハルデン刑務所のデザインは、2010年にアーンシュタイン・アーネベルグ賞を受賞しており、ドキュメンタリーも制作された。
image credit: Knut Egil Wang
6. ノルゲルハーフェン刑務所 (オランダ)
ここの独房には、ベッドや家具、冷蔵庫、テレビ、そして専用のバスルームがあり、快適に過ごせる。
しかし、という訳ではないが、オランダの犯罪率は低く、刑務所は「過疎」に直面しているのだ。この「問題」を解決するため、2015年からはノルウェーの刑務所で定員を超過した分の収監者を引き受けているのだ。
image credit: ANP
7. 尾道刑務支所 (日本)
国全体の高齢化に伴い、日本では高齢の受刑者も増えている。広島刑務所の支所である尾道刑務支所の収監者は高齢者のみだ。
そのため、所内には手すりが取り付けられており、必要な収監者には柔らかい食事も提供される。課される労働は編み物と縫い物だ。
image credit: Prison Photography
8. アディウウェル刑務所 (スコットランド)
アディウウェル刑務所は、収監者の学習を目的とした刑務所だ。
収監者は、教育、カウンセリング、仕事といった活動を通して、ここに収監されるに至ったそれぞれの行動や環境上の問題に取り組んでいく。周囲の自然や、家族との交流も、のリハビリテーションの基本的な要素だ。
image credit: Lorenzo Dalberto
9. ブラックドルフィン刑務所 (ロシア)
悪名高いブラックドルフィン刑務所では、3組の鋼鉄製のドアの奥に、二重の檻を持つ「監房の中の監房」が並ぶ。24時間体制の監視付きだ。ここから逃れるには死ぬしかないといわれている。
ブラックドルフィン刑務所の囚人にはシリアルキラーやテロリストも含まれる。囚人の罪状を合計すると3,500人が殺されており、平均で一人当たり5人を殺している計算になるそうだ。
image credit: The Sun
10. ペナス・シウダード・バリオス (エルサルバドル)
約3.6m×4.5mの監房に、常時30人以上が押し込められている。元々は72時間以内の拘置のための設備だったはずなのだが、1年以上そのままの収監者も多い(関連記事)。
収監者の一日のほとんどは、服を引き裂いて紐をつくることに費やされるそうだ。寝るためのハンモックを編むのである。
image credit: Giles Clarke
ところで、受刑者を厳しく扱うと犯罪率が減るかというと、必ずしもそうではないようだ。例えば、人口10万人に対しての収監者数はアメリカでは698人だが、受刑者に対する人道的な扱いで知られるノルウェーでは、わずか71人なのである。
References: Bored Panda / deMilked / The World Prison Brief など / written by K.Y.K. / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
死刑にすれば再犯率0だよね
2. 匿名処理班
レッド「最初は憎む。だんだん慣れてくる。時間がたつと頼るようになっちまう。それが刑務所慣れってやつさ」
3. 匿名処理班
刑罰たらしめるよりも社会で役割を見いだせるように見つめ直し、やり直す場である方が再犯率は低いか。しかし被害を受けた側からすれば思う所もあるだろう
結局、刑の重さで様々な環境があって然るべき、となるのだろうかなあ
4. 匿名処理班
見せしめや懲らしめる事を目的とする収監は時代遅れなのかもね
もちろん、どんな刑務所であれ一番大事なのはお世話にならない事だけど
5. 匿名処理班
"ブラックドルフィン刑務所"って名前だけで重犯罪者の入る厳重な刑務所だとわかる謎
6. 匿名処理班
ブラックドルフィン刑務所、バンクァン刑務所も記事に入れて欲しかったなぁ
7. 匿名処理班
北欧の国は寒すぎて、ホームレスが成り立たないから、皆んなで助け合う→が行き過ぎた
結果だと思う。
8. 匿名処理班
重罰化を望む人たちは本当は決まりに従いたくなくて犯罪者に対して不公平感や嫉妬心から
凄く攻撃的になるのではないかと思う時がある
それと被害者に対する共感を通り越した自己同化による怒りや憎しみからも重罰化を望むようになるのかもしれない
9. 匿名処理班
※3
中国周時代だと、賄賂をくれないと次の日にはなぜか病死に
なっていました。しかも賄賂を出しても牢役人がこいつ
超極悪野郎だと思ったら、同じく病死になっていました
周時代が正しいと思いませんが、市民よる評決もあり、これが
重要な裁判判決要素になった分、まだ裁判制度が正しく
守られた時代かもしれません
10.
11.
12.
13. 匿名処理班
※3
現代刑罰は個人の応報よりもむしろ社会的安定を重視するもんだからな
再犯率下げることがあなたと同じ不幸を味わう人がいなくなると納得してもらうしかない
気持ちはわかるけどな
だから他方で刑の重さ、つまり更生の余地無しと判断された場合の死刑の存在は合理だと思うよ
やり直せる人間が安穏と暮らすのも、無理な人間が排除されるのも社会利益という一つの筋で通る
14. 匿名処理班
※6
ブラックドルフィン刑務所って、詳細が記事に無いけど寝る時以外は、休憩時も座るの厳禁で食事はパンとスープのみ
バンクァン刑務所は一定期間、足に錘を装着させられた状態で過ごし、入所中の食事は1日1食で、ご飯とスープだけ
日本も此れくらい厳しい方が良い
15. 匿名処理班
尾道刑務所の高齢囚人は、考えさせられる部分があるな…。
たいていは窃盗・無銭飲食・無賃乗車など
1回あたりの刑期は短いがリピーターが多く、
孤独や貧困が背景になっている。
出所しても、仲間や寝食の保障を求めて刑務所に舞い戻る。
軽微犯罪を繰り返す人の中には、普通の職が長続きしない
未診断の軽度知的障害者もかなり含まれていると云われるし、
実際には、刑罰よりも福祉が必要な人も結構いるはず。
16. 匿名処理班
刑務所が酷いところだったり、すぐに死刑になったりすると、「もう人生終了、死刑確定だから、もっと酷いことをしてやろう」という考えの奴が出てきちゃう
いわゆる人生が詰んだ「無敵の人」を大量生産してしまうので、その結果、治安が悪くなるという