春香「本当にあった話なんですけど……」
春香「暑い……」
千早「もう少しで事務所に着くわ。頑張りましょう」
春香「現場から事務所まで電車と徒歩で帰宅なんて、私たち一応アイドルだよね?」
千早「まだFランクだけどね」
春香「はーあ。プロデューサーさんがいれば送迎してくれるのかな」
千早「社長が採用活動はしてるって言っていたから、待つしかないわね」
春香「大丈夫かな、私たち。ちゃんと売れるかな?」
千早「わからない。けど、やれることをやるしかないわ」
春香「そうだよね。ごめん」
千早「ううん。私も不安なのは同じだから」
春香「えへへ、ありがとう千早ちゃん」
千早「ふふっ」
春香「う~。でもその前に暑くて干からびちゃうよ~」
千早「そうね」
春香「まさに太陽のジェラシー」
千早「そうね」
春香「千早ちゃん、聞いてる?」
千早「そうね」
春香「やよいが千早ちゃんのこと好きだって」
千早「そうね」
春香「千早ちゃんしっかりして! 暑さに負けちゃダメだよ!」ユサユサ
千早「うあー」ガグガク
春香「あ。あんなところに駄菓子屋さんがあるよ。アイス食べよアイス!」
チリンチリン
春香「はー涼しー」
千早「こんなところに駄菓子屋なんてあったのね」
千早「それにしても、少し冷房効きすぎじゃないかしら」
春香「んー……あった。アイスアイス~♪ 千早ちゃんはどれにする?」
千早「春香と同じのでいいわ」
老婆「いらっしゃい」
春香「おばあちゃん、これください」
老婆「はいよ。アイスふたつね」
春香「今日も暑いですねー」
老婆「暑い?」
老婆「そうだねぇ。わしはずうっと店ん中に居るから涼しくてええわい。はっはっは!」
春香「いいなー。私もここから出たくないですよ」
老婆「はっはっは! 若いもんがなにを言うとる」
春香「あははは!」
老婆「そうそう。そうやって笑っとらんとねぇ」
春香「え?」
老婆「なにがあったか知らんが、辛気臭い顔しとると幸せが逃げちまうよ」
春香「そんなに暗い顔してました?」
老婆「ああ。──そっちの細い姉ちゃんも。笑っとらんと家の人が心配するよ」
千早「……私は一人暮らしですから」
老婆「はー。その歳でしっかりしとるねぇ」
千早「いえ」
老婆「まあ、アイス食って元気だし」
春香「はい。ありがとうございます!」
老婆「毎度ありー」
◆◆◆
春香「私たち暗い顔してたんだね」
千早「そうね。アイドルなんだし、気をつけないと」
春香「うん。頑張ろう千早ちゃん!」
千早「そうね」
千早「それにしても凄いわね春香。お店の人とあんなに楽しそうに話せるなんて」
春香「えぇっそんな。あのおばあちゃんが話しやすかったんだよ」///
千早「それだけじゃなくて、春香のコミュニケーション力が高いのよ。私も見習わなくちゃ」
春香「えへへ、ありがとう。なんだか照れちゃうね」
千早「ふふっ」
千早「そんなに?」
春香「食べてみて。はい、あ~ん」
千早「あ~ん」///
千早「本当。美味しいわ」
春香「ね!」
千早「私のもどうぞ。はい」
春香「あ~ん」
千早「どうかしら?」
春香「美味しいけど買ったの同じ味だったね、そう言えば」
千早「そうだったわね」
春香「あははは♪」
千早「ふふふっ♪」
ミーンミンミンミン
千早(暑い)
千早(もう少しで事務所に着くけれど──)
千早(その前に昨日の駄菓子屋に寄っていこう)
千早「──あれ?」
千早(駄菓子屋がない)
千早(この辺りだと思ったのだけれど、記憶違いかしら)
ミーンミンミンミン
千早(仕方ないわね。このまま事務所に向かいましょう)
千早「おはようございます」
春香「おはよう千早ちゃん」
千早「あ、春香。昨日行った駄菓子屋の場所ってわかるかしら。さっき寄ろうと思ったんだけど見つからなくて」
春香「え、千早ちゃんも? 私も見つけられなくて千早ちゃんに聞こうと思ってたんだ」
千早「そうなの」
ガチャ
美希「おはようなのー」ペロペロ
春香「おはよう美希。──あっ、そのアイス」
美希「事務所に来る途中のお菓子屋さんで買ったの」
美希「ヤ! いくら春香でもこのアイスはあげられないの!」
春香「そうじゃなくて、そのお菓子屋さんに案内してほしいなって」
美希「えー。外は暑いからやっぱりヤなの」
春香「アイスもう一本奢るから」
美希「いいよ!」
春香「行こう千早ちゃん」
千早「そうね。正しい場所を覚えておきたいし」
美希「あれ?」
春香「……」
千早「……」
美希「確かこのビルと、このビルの間だったはずだけど」
千早「人ひとり分ぐらいのスペースしかないわね」
美希「ミキ、ウソ付いてないの! ホントだよ?」
千早「ええ。私もさっき、ここだと思って来たところなの。春香は?」
春香「わ、私も」
美希「??? どういうことなの?」
美希「──なるほど。ミステリーなの」
春香「ホラーだよ」
美希「もー! あえてぼかしたのに!」
千早「あの駄菓子屋が本当に怪奇的なものだとしたら、私たちが食べたアイスって一体なんだったのかしら?」
春香「」ゾッ
美希「み、ミキ……全部食べちゃったの」
3人「…………」
◇◇◇
春香「──結局その駄菓子屋さんは見つかってないんです」
P「ふーん」ハナホジ
春香「もう! 信じてくださいよぅ!」ポカポカ
P「だってなあ」
美希「本当なの。ハニーも気をつけたほうがいいの」
P「へいへーい」
美希「もー!」ポカポカ
千早「……」
春香「千早ちゃん、黙ってるけどどうかしたの?」
千早「えっ。……なんでもないわ。あのときのことを思い出していただけ」
千早「……」
千早(初めてあの駄菓子屋を訪れてから三日。何度か探したけど未だ見つからない)
千早(ただの記憶違いだと思っていたけれど、ここまで見つからないとなると本当に──)
千早「……」
千早(いいえ、そんな訳ないわよね)
千早(それにしても遅くなってしまったわ。夏とはいえ暗くなる前に帰らないと)
千早(はぁ。今日も歌の仕事はできなかったな)
千早(こんなことで、この先大丈夫なのかしら)
千早(────ん?)
子供「~♪」テクテク
千早(こんな時間に子どもが歩いてる。早く帰るように促したほうがいいかしら)
千早「──────」
千早「──────」
千早「──────え?」
優「~♪」
千早「………………」
千早(優?)
優「~♪」
千早(……幻じゃない。本物?)
千早(そんな訳ないわ。他人の空似ね)
千早「きみ」
優「!?」バッ
千早(やっぱり似てる。私の記憶や写真そのままだわ!)
千早(落ち着いて。この子は優じゃない。優じゃない)
千早「こんな時間に外にいては危ないわ。早くお家にお帰り」
優「ぁ……」
優「──!」ダッ
千早「えっ!?」
千早(どうして逃げるの!?)
優「はぁはぁ……走ったから暑いや」
優「ねー駄菓子屋のおばちゃん。このお店にクーラー付けようよー」
老婆「そんなもん付けられるなら、とうに付けとるわい」
優「ちぇー」
老婆「そんな走ってどうしたぁ?」
優「お姉ちゃんに見つかっちゃった」
老婆「ありゃりゃ。──元気そうじゃったか?」
優「うーん……なんかお仕事大変そうだった」
優「でも大丈夫! お姉ちゃん強いし! お歌上手だし!」
老婆「そうかい」
千早「優」
千早「優なの?」
優「お姉ちゃん……なんでここに」
千早「優を追って来たらここに辿り着いたの」
優「……」
千早「貴方は幽霊なの? このお店は一体……」
優「これは夢だよ」
千早「夢? そんな、でも──」
優「お姉ちゃん、お仕事頑張ってね!」
千早「え──」
優「いろいろ大変かもだけど、お姉ちゃんなら大丈夫だよ!」
千早「……」
優「お姉ちゃんの楽しそうなお歌が聴けるの、天国で見てるから!」
千早「待って優──」
優「バイバイ!」
千早「待って!」
千早(消えた。優もお婆さんもお店ごと)
千早(どうなってるの? 私がおかしいのかしら)
千早(さっきまでのは幻覚?)
千早(わからない。ただ──)
千早(なんだか気持ちが楽になった気がする)
千早(ありがとう、優)
◇◇◇
千早「……」♪
美希「あの頃しばらくは古いお店に入るのが怖かったの」
春香「ねー」
P「う~ん……」
社長「その話、あながち嘘じゃないかも知れないよ」
社長「戦時中、この辺りは空襲にあっていたらしいのだが」
社長「毎年お盆の時期になると、亡くなった駄菓子屋の主が爆撃された店ごと帰って来るのだとか」
社長「そして同じく里帰りしている仏様たちが買い物をしていくそうだよ」
春香「じゃあ、ひょっとしてあのとき幽霊のお客さんがいたのかな……」サー
美希「ひいいいいいいなの!」
社長「はっはっは!」
P「大丈夫だって二人とも。そんな非科学的なことある訳ないから」
春香「Pさんが頑なに信じようとしない!」
美希「酷いの! バツとしてアイス買ってくるの!」
P「なんでそうなる!?」
美希「アイスアイスアイスー!」
P「わかったわかった! まあ俺も食べたいしいいか」
美希「いってらっしゃーい」
ミーンミンミンミン
P(コンビニまで地味に距離あるんだよなぁ。暑い)
P「──お?」
P(へー。こんなところに駄菓子屋さんがあったんだ)
P(ここでいいか)
チリンチリン
老婆「いらっしゃい」
おわり
依頼出してきます
前に書いた765のSS置いとくのでもしよろしければ
P「団結2015を収録するぞー」
亜美「タイムマシンに飛び乗って!」真美「ラジャー!」
春香「なんで下着姿なんですか?」小鳥「暑いし」
「アイドルマスター」カテゴリのおすすめ
「ランダム」カテゴリのおすすめ
今週
先週
先々週
コメント一覧
-
- 2018年08月06日 19:01
- ヒエッ…
-
- 2018年08月06日 19:09
- イイハナシダナ-
-
- 2018年08月06日 23:03
- Pいなくて送迎もままならないはずだったのにいつの間にか事務所にPいるのがホラーよ
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