写真家のジョニー・ミラー氏は、アメリカから南アフリカに引っ越して以来、社会的な不平等と隔離ということがらに関心を抱いてきた。
ミラー氏の関心が結実したのが、"Unequal Scenes" (不平等な風景)という写真のシリーズだ。南アフリカに、そして世界各地に存在する不平等を、ドローンから撮影した写真で描き出しているのだ。
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アパルトヘイトの傷跡
南アフリカにおける人種隔離政策、アパルトヘイトは、公式には四半世紀ほど前、1994年に撤廃されている。しかし、それがもたらした傷から、かの国はまだ回復していない。
富める者と貧しい者、「白人」と「有色人種」を分離するバリアは今でも残っているのだ。道路や川、何もない「緩衝地帯」といった形で。
南アフリカ、ダーバンにある Papwa Sewgolum ゴルフコースは、小さなトタン小屋がひしめくコミュニティの隣にある
image credit: UNEQUAL SCENES
そしてそれは、南アフリカに限った話ではない。
タンザニア、ダル・エス・サラーム
image credit: UNEQUAL SCENES
ザンジバル島(ウングジャ島)の北端にあるナングウィの村は、水晶のように透き通った海と白い砂浜の観光地だ。しかし、ほんの少し踏み込んで周囲を見渡せば、水不足と貧困を発見することになる。
image credit: UNEQUAL SCENES
ここナイロビのロアショ地区のように、ケニヤ人の一部は、計画されたゲーテッドコミュニティで暮らす。しかし、隣接しているのは最貧のスラムだ。
image credit: UNEQUAL SCENES
ナイロビのキベラ・スラムを分断する計画道路。何千人もが退去させられた。
image credit: UNEQUAL SCENES
ドローンがもたらす新たな視点
ミラー氏のウェブサイトには、こう書かれている。
人々が生活する状況の違いは、地上からは見えにくいことがあります。
空を飛べることの優れた点は、ものごとを新しい視点から、実際にあるがままに見ることができるということです。数百メートルの高さから直に見下ろせば、信じられないような不平等な風景が浮かび上がってくるのです。
ムンバイでは高層ビル街のすぐ隣にダラビ・スラムが広がっている
image credit: UNEQUAL SCENES
マヒム・ネイチャー・パークに隣接するダラビ・スラム
image credit: UNEQUAL SCENES
バンドラ・クラ・コンプレックスをめぐる極端な富と極端な貧困。コンプレックス内には各国の総領事館、大企業の本部、インド国立証券取引所などが存在する。
image credit: UNEQUAL SCENES
対話の端緒となることを願って
ミラー氏が目指すのは、世界の「不平等な風景」をできるだけ客観的に描き出すことだ。
不平等と公民権の剥奪という、永年にわたって存在し続けてきた問題に、新しい視点を提示すること。そして、建設的、かつ平和的な対話を呼び起こすことがミラー氏の願いだ。
メキシコシティ、サンタフェにおける極端な富の不平等
image credit: UNEQUAL SCENES
メキシコシティのイスタパラパでは、古典的なコンクリート製の貧困地域の隣に囲い込まれた高級住宅地がある。
image credit: UNEQUAL SCENES
高級住宅地が「切り開かれた」サンタフェの背景では、高層ビル群がでは富の存在を示している。
image credit: UNEQUAL SCENES
References: UNEQUAL SCENES / Amusing Planet など / written by K.Y.K. / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
平等などない
2. 匿名処理班
隣の芝生にホールインワン
3. 匿名処理班
人間が生き続ける限り差別はどこまでもなくなりはしない・・・
無常
4. 匿名処理班
高級住宅街の端っこの人は居心地悪そうだなぁ
5. 匿名処理班
シムシティだったらスラム側に発電所と下水処理場建てる配置w
6. 匿名処理班
王侯貴族の様な血統による不平等は
現代ではそれなりに緩和されてるだろうけど
富の集中と言う点においてはグローバル化のお陰で
下手すると昔より酷くなってるのでは…
ビルゲイツやバフェットの様な規模の富豪は
中世には居なかっただろうし
7.
8. 匿名処理班
社会の問題としてとらえるのではなく、富の不平等としてとらえてるらしき元記事の考えの浅さがちょっとな。昔は持ってる人間がそのままだっただろうけど、今ある富の差ってのは稼げる人間と稼げない人間の差。その稼げる人間から搾取して平等に配るだけなら、時間がたてば元に戻るだけで問題の解決にはならない。
9. 匿名処理班
高級住宅の中にボロ家がぽつんとあるよりはお互いにいいんじゃないかと思うが。
全員同じ家に住まわせようと思ったら、共産主義にならなきゃいけないし、一概に貧困層がかわいそうとか上から目線でいってられない難しい問題だよね。
10. 匿名処理班
行きてえなあ...(あちら側)
11. 匿名処理班
じゃあ神様に苦情でも出すんだね。世の中不平等、不公平なのが自然。
気候やら天然資源の偏りっぷりを見れば判るだろ。
12. 匿名処理班
うーん!せめて教育だけは、平等に受けられますように。脱出の手掛かりになる。
福沢諭吉じゃないけどさ。
13. 匿名処理班
この状況を「逆転」は可能(容易ですらある)、だが「平等」や「公平」は諦めたほうがいい。
14. 匿名処理班
ゲートで隔離されててもスラムが隣とか嫌だと思うんだけど
海外の金持ちはそのへん平気なんだろうかね。
15. 匿名処理班
(世界中の人間が贅沢しちゃ)いかんでしょ。
16. 匿名処理班
トタン先輩のコスパ強すぎる
17. 匿名処理班
この世に平等があるとこなんてそもそも無いから
18. 匿名処理班
スラムに隣接とか怖すぎる
19. 匿名処理班
でもあれだな、豪邸や高層マンションがいいというわけではないんだな。もっと人間らしい住環境が必要なんだな。
20. 匿名処理班
地球の資源は、皆が平等に豊かに暮らせるほどないからね
我々が豊かな暮らしを享受するためには、発展途上国の多くの人々に不便で貧しい生活を
これからもしてもらう必要があるのだ
21. 匿名処理班
大阪の飛田の南側でもそうだったよ。まだそうじゃないかな!?
道路の素材も建物もある地点でがらっと変わる。
片一方の西成区側は、古い木造の街並みに傷んだアスファルト。
もう一方の阿倍野区は、綺麗な新しい感じの家or 高級住宅とインターロッキングブロックを
敷き詰めたおしゃれな感じ。
当然行政もガラの悪い所と高級住宅街とは、分けるよね。
22. 匿名処理班
言うてこういうのって出稼ぎとかで都会に人が集まった結果に起こる現象なんじゃ?
人が集まるから地価が上昇するし、それでもメリットを享受したい人が外壁にスラムを作ると
ある意味で「平等」な写真だと思うけどな。景観とか治安とかそういう尤もらしい理由で挑戦者の機会を奪っていないわけだから
23.
24. 匿名処理班
日本も昔は大なり小なりこうだったよ
財閥とかあったときは大邸宅に女中さん
庶民は長屋なんだから
25. 2
二極化するってことは中間が少ないってことだよね。もしくは中間層が暮らす広大なエリアが別の場所にあるのかな?
26. 匿名処理班
リッチな人たちが隣に見える貧困地域の方が楽しそうって思っている可能性も一応あるよね
27.
28. 匿名処理班
それでも100%貧困の街になるよりは良い気がする。
高級住宅が建った事で貧困街が生まれなわけではないよね?
29. 匿名処理班
資本主義の末路ってやっぱ二極化しかないのかね
中間が多い社会が一番平穏だと思うが恨み買おうが吸い上げた方が御得って結論なんだな
30. 匿名処理班
不平等とそれを巡る闘争があって発展してきた文明なんだからそれらが無くなることはないってわかりきってるのに、平等であるべきって考えの人いるのがふしぎ
31. 匿名処理班
これはえげつないな
想像の限度を越えてる
32. 匿名処理班
高級住宅がスラム街を作った、と言えるかも。
数年前に話題になったピケティ教授の分析では、今の世界では経済成長率より資本収益率の方が高くなった。投資によってパイ全体が大きくなるスピードより多く儲けてる人がいると言う事は、投資で儲ける余裕が無い貧者の富が裕福層側へ移動したと言う事。
貧者は真面目に働いていても、それだけでどんどん貧しくなって行くと言う事。
33. 匿名処理班
日本も給料の差が広がってきてる気がする。
上は下の事考えずに取り、
下の人間は取り分が減る。
そんな感じ。
34. ・・・
とは言えこういうのもずっとこのままという訳でもなくて、元々富裕層向けの高級住宅地として開発されたのが、拡大していくスラムに飲み込まれてしまったニューヨークのハーレムみたいな例もあったりするからねぇ…
35. 匿名処理班
一長一短じゃないの?
スラムの方が物がない分、人と人が助け合うから、繋がりは深いんだよ スラム出身で成功したやつは地元意識が強くスラムに金を投じるだろ
金持ちほど人を頼らない分、冷たくて人との距離感がつかめず孤独なやつが多かったりするんだよ
36. 匿名処理班
仕方ないし別にいいじゃん平等である必要ないじゃんと言ってる人達が
来世はあのスラムのどこかに生まれますように
37. 匿名処理班
不平等を問題視するのは人間の本能だろうね
まだ人間が都市を持たず、自然に間借りした小さな集落で暮らしていた頃は、
不平等がそのまま争いの種になってコミュニティを揺るがした
その為原始社会では狩猟の獲物を分け合い、病人も手厚く看病した
でも農耕がやってきて、物質的に豊かになると、誰かが富を貯め込み始めた。そして富を元手に物品を仕入れて商売を始める。
人間が市場と流通を獲得すると、それまで森や山の周辺に身を寄せ合っていた集落だけじゃなく、交通の便の良い場所を選んで、自然を切り拓いて作られた都市が誕生する。
そして様々な災害や戦災で生活を無くした人々が食い扶持を求めて都市の周辺に住み着き、不平等の象徴スラムが生まれたんだ。
38. 匿名処理班
平等なんて存在しない。
39. 匿名処理班
平等とか平和とか皆仲良く幸福とかは青い鳥や絵に描いた餅だと思う。
理想は所詮、理想に過ぎないというのか。
故に最低限、自分もしくは関係者が苦なく暮らせれば良いと割り切れば楽になる。
40. 匿名処理班
大都会の中にスラム街がポツン。みたいなのは、不平等というかむしろ
便利な都会に超低価格で居住可能!お得!っていう図にしか見えない
あと公園に隣接するスラムに至ってはむしろただの好立地ですやん