【百物語】何かが起こる!?「ほんのり不思議で怖い話」一晩で一挙百話投下!
2018年08月25日:21:00
- カテゴリ:企画
第二話「はかまいり」
私は墓参りが好きでした。家から墓が近かったのもあり、毎月13日に墓参りに行っていました。
墓参りにいくとご先祖様に会える気がしたから楽しみにしていました。
墓参りに行くとご先祖様たちに喜んでもらえていると感じることが出来たのです。
ある日、叔父さんの葬式がありました。
叔父さんの葬式で、叔父さんは旅装束で送られました。
足袋に脚絆にと旅装束をつけられる叔父さんに違和感がありました。
なぜ旅装束なのか?お墓にいるのではないのか?
そして、知りました。お墓は供養のためにあると、ちゃんと成仏してもらうためにあると 。
お墓で感じたあの人たちは誰なのでしょうか?
第三話「カチカチさん」
それは深夜のコンビニで働いていた頃の話です。カチカチと歯をならしながら入ってくるひとがいました。
そのひとは歯をカチカチと鳴らしながら店内を物色していました。
「いいなあいいなあ」と言いながら店内を物色していたのです。
そして、私の前にきて、目を見開き。「きみいいねえ。いや子供もいいねえ」
と言ったのです。
私は恐ろしくなりとっさに、
「宮田さんのほうがいいですよ」と言いました。
そして、そのひとは「それいいねえ、宮田さんいいよね。宮田さんはトテモヒトクサクテイイヨネ。宮田さんの家は左に曲がって」と唄いながら出ていきました。
それだけですが、私の知り合いに宮田さんはいません。
なぜか言わされた気がするのです。
第四話「「ガチガチガチガチガチ」」
あれは深夜にコンビニでジュースとさめたから揚げを買った帰りです。電灯の下に黒い物がいました。
その物は私に、
「布団で寝る良いね」
と話しかけてきました。
「布団で人をくるくる巻く良いね」
その物は嬉しそうに話します。
私はどうしていいか分からずただ立っていると、
ガチガチガチガチガチ
と歯を鳴らしたのです。私はこれはまずいと思い走って家に帰りました。
家に帰ると汗をかいていたのでシャワーを浴びることにしました。
シャワーを浴びていると、
「シャワー良いね」
外からあの声がしたのです。ここは3階だぞと思った時です。
ガチガチガチガチガチ
第五話「くぼこさま」
これは友人から聞いた話です。友人は子供の頃、親の都合で転校が多かったそうです。それは、友人が青森に転校した時の話です。友人は転校するたびに友達ができるか不安だったそうですが、その時はすぐにサトシ君という友達ができたと言います。ある日、サトシ君がユタカ君という同級生と喧嘩したそうです。サトシ君はねちねちと友人にユタカ君の悪口を言っていたそうです。
「くぼこさま、ユタカの物がすべて欲しい」
そうサトシ君が誰もいない所に言うと、クァクァと声が聞こえたそうです。友人はくぼこさまは誰かと聞いたら、秘密だぞと笑ったそうです。
クァクァという声は、複数の子供の声が混ざったような声だそうです。
次の日、ユタカ君は急に転校が決まって学校に来なかったと言います。家族の都合で次の日にユタカ君だけ引っ越さなければならなかったというのです。そして、サトシ君は友人に名前をマジックで読めなくしているゲーム機とソフトをくれたそうです。それはポケモンではなかったと言います。
もらう時に友人はクァクァという声を聞いたと言います。
「欲しい物があればくぼこさまにお願いしてあげるよ。くぼこさまは何でも貰ってきてくれるんだ。相手が持っていない物はだめだよ、持っている物は何でも平気だよ」
そう、サトシ君は笑って言ったと言います。友人は怖くなりましたが嫌われていけないという恐怖と子供らしいいやらしさが友人の中に生まれたと言います。
ただ、サトシ君がすぐに引っ越したので、特に何もなかったと言います。ユタカ君のようにいきなりいなくなり、どこに引っ越すのか誰も教えてくれなかったそうです。
「くぼこさまは何処までもらってきてくれるのだろうか。ああそうだ、大人たちに言葉には人が思う以上に力があるから、簡単に使うなと言われたな」
友人はそう誰もいない所に向かって言いました。
クァクァ、クァクァ。
第六話「人の作り方」
友達に人の作り方を聞きました。当然、保健体育ではありません。それは紙で人の形を作り、人の心臓にある場所らへんに赤い字で魂と書き、そして、人形の顔の部分にも赤い字で名前を書きます。そして、赤い糸と青い糸を人形に巻き付けます。人形の前におにぎりとお酒を置いて、一晩新月の光に当てればいいと言います。性別はえらべないそうです。
私は2つ人形を作りました。一つにはミライと、もう一つには鬼と書きました。そして、言われたようにおにぎりとお酒を置いて、庭に置いたのでした。
暇だったので、私はその人形を見ていました。ラジオをイヤホンで聞きながら。ラジオの猥雑な会話が時間を忘れさせてくれました。
そして月の光をあびた人形たちは深夜の2時ごろに立ちあがりました。ミライと書いた人形は首の異様に長い人となりぱっぽぱっぽと言っていました、鬼と書いた人形は2メートルぐらいでしょうか、とても大きな鬼になりました。
二人の人形はおにぎりを食べ酒を飲み、そして町に出ていったのでした。
神の子を作る儀式だから人の作り方だそうです。
第七話「よみがえり」
友人に聞いた話です。友人にはトモヒサという友人がいたそうです。
トモヒサには事故で死んでしまった恋人がいたと言います。
友人はトモヒサに恋人を生き返らせることが出来る湖があると言われ、少しでも気持ちが楽になるならと一緒にその湖に行ったそうです。
その湖はとても透明な普通の湖ですが、新月の日、黄昏時に生き返って欲しい人の愛用の物を湖に投げ入れそのまま深夜の2時まで祈っていると湖から死んだ人が帰ってくると言います。
湖は透明だったので、ラジオ、50円で投げ売りされているフィギア、指輪、皮むき器、包丁、ペンダント、箱に入ったままの未組のプラモデル、電車のおもちゃ、2つのぬいぐるみがくっつけられたぬいぐるみ、葬式の時の写真、まだ生きているアイドルの写真、リンゴ、リカちゃん人形の頭をたくさんつけた携帯などの様々な思い出の品が見えたと言います。
友人は言いました。その物たちが主張していたのかもしれない。
必死に祈るトモヒサを友人はラジオを聞きながら見ていたそうです。興味のないアイドルのラジオは無音状態よりも苦痛だと言っていました。
深夜湖から女の顔が出てきたのです。その眼は間違いなく彼女だとトモヒサは喜びました。そして、彼女の眼と鼻を持ちそこから下は大きな蛙と混ざったような生き物が出てきました。
トモヒサは彼女の名を叫びながら湖に入っていったそうです。友人は成仏してくださいと拝んでから帰ってきたと言います。
トモヒサは彼女の名を叫んでからはケロケロとしか言わなくなり、友人と出かけたことも幸運なことに誰も知らないだろうとの判断から、湖で蛙として暮らすのが幸運だと判断したと言います。
「一匹3万円」友人はその湖の蛙を持ち帰り、繁殖させて売っていると言います。
「証拠画像を見せると良く売れるんだ」
第八話「せみ」
友人が子供の頃の思い出です。友人にはタカユキという友達がいました。タカユキがエレベーターに乗るとエレベーターには蝉が一匹いたそうです。
みいんみいんと蝉は強く鳴いていたと言います。
タカユキはうるさいなと思いながらもエレベーターに乗ったそうです。
そして、エレベーターは途中で止まってしまったそうです。
困ったと思ったら電気も消えてしまい、まっくらの中みいんみいんとうるさい声がエレベーターを満たしと言います。
そして、蝉はタカユキの口の中に入ってきたと言います。タカユキはそのショックで気を失い、病院で目を覚ましたそうです。
「卵を産み付けられた」友人が見舞いに行ったときにタカユキはそう言って口から蝉を13匹出して倒れたそうです。
「すごい話だろ」と友人は言うと、口から蝉を出したのでした。
第九話「エキストラ」
幽霊は好きな物に執着すると言います。これは友人から聞いた話です。生前映画が好きだった幽霊は多いので、幽霊になってからずっと映画館にいるのも多いと言います。
映画館なら暇をしないし、涼しいのも理由だそうです。お腹がすいたらポップコーンを食べると言います。
なぜそんなに気を使うのかと聞いたら、映画館がつぶれたら困るから幽霊も協力するのだと言います。そこが元人間の良い所だと、意志を持って動いているのだと言います。
たまに幽霊たちは映画のエキストラに紛れ込むとも言いますが、普通は気づかれません。
あとは、映画のすじに関係のない所で、幽霊たちは予言もするといいます。
「映画のエキストラと目が合うと一緒に暮らせるよ」
第十話「人面犬」
友人に聞いた話です。人面犬という人の顔の犬がいます。アニメでも大人気ですね。友人の話だと今でも女子高生の間でその妖怪キャラクターは人気だと言います。
女子高生は変なものが好きですね。
その人面犬はすねこすりという妖怪と同じだと言います。
人面犬の目的は転ばせることだというのです。人面犬は元々自殺した人の思いが野良犬に取り憑いたものだと言います。
なので、彼らは転んだら危ない所で転ばせるのが目的だと言うのです。
今は昔と違って明るいので姿がばれたと言います。
「人面犬は殺した人の体を乗っ取ってそのまま暮らすらしい」
第十一話「しゅうかくさま」
友人から聞いた話です。友人には寺をやっている親戚がおり、その親戚から聞いたと言います。そのお坊様は、評判がよく、葬式坊主と呼ばれていると言います。
昔は強い稲などもなく、収穫はある種の博打だったと言います。その不安を和らげるためにその地方では昔、間引きする予定の子供を人身御供に使おうと考えました。
最初はただの人身御供でしたが、効果を上げるために、その子供たちをしゅうかくさまと呼び、即身仏にすることを考えたのです。しゅうかくさまと呼ばれた子供たちはぎりぎりの食事を与えられ、最後には縛られて即身仏となったそうです。
飢饉になると、しゅうかくさまのために子供を産み、盗み、猿もしゅうかくさまに混ぜたと言います。飢饉ですから栄養不足で女性は死に、その女性と胎児も使ったと言います。
ただ、そんな物が良いわけありません。しゅうかくさまは恵みではなく、病気を与えたと言います。いいえ、病気をまき散らすのがしゅうかくさまの本当の目的だったのでしょう。
その寺にはしゅうかくさまたちが読んだお経がありますが、そのお経はどうやって幸福に死に、人を幸福に殺すか書かれていたと言います。だまされたのです。
そのしゅうかくさまたちはまだ彷徨っていると言います。というよりも、しゅうかくさまをどう封じ込めるか考えていなかったのだろうと言います。
友人は、無理やりくっつけられたおぞましい子供たちのミイラを見たと言います。そのミイラには当然猿や、死んだ母親や胎児も混ざっているでしょう。これに祈り、抑えているそうです。友人は言いました。
「祈るだけで済むなら苦労はしないけどもな、ただ祈ればお金にはなる」
第十二話「新品の思い出」
これは友人から聞いた友人が子供の頃の話です。新しいカセットテープを買っても何も入ってないですよね。
カセットテープを枕の下に置いて眠るとその新品のカセットテープの音を聞くことが出来るそうです。
それを聞いた友人の同級性は試して、人が死ぬ音を聞いたと言います。
次の日も、どのカセットテープでも同じだったそうです。
その同級生は毎晩叫び声を聞いて、その声にはまってホラー小説家になったと言います。
友人は言いました。
「カセットテープに心が反射すると聞いたから試したけど作家になるとは思わなかった、絶対にあれになると思ったのに」
第十三話「コンビニ婆」
これは友人が学生の頃の話です。友人たちは学校には七不思議が必要だという思いで、七不思議を作ったそうです。
トイレの一郎から三郎までのトイレの三兄弟、校庭を走りまわっている歴代校長の人面犬、まれに性格の悪い数学の女教師の人面犬も含める。チアリーダーにあこがれた太った女性との相撲チアリーディング、スイングジャズが好きな理科室の骸骨と人体模型、女子ロッカーから泥棒する警備員、寝ている金属バットを持った体育教師など、安い芸人のような悪霊を考えては学校を彷徨わせたと言います。
友人が考えた中にコンビニ婆というコンビニ袋をかぶって鎌を持ったとても背の高い悪霊がいたそうです。
そのコンビニ婆にだれだれさんはとても好まれる顔をしていると、伝えるとその人の顔を鎌で剥がし、奪っていくと言います。
友人は夜中コンビニに行く途中にコンビニ婆にあったと言います。
「お前は中田か?」コンビニ婆は聞いてきたそうです。そしてコンビニ婆はどこかへ行ったそうです。
友人は言いました。
「田中を反対から読んだらしい、それに名前だけだと関係ない人がおそわれるな」
第十四話「センチメンタルジャーニー」
友人が学生の頃の話です。友人の学校には七不思議があり、その一つに夜なるピアノがあったそうです。
友人たちは夜、学校に忍び込み音楽室まで行きました。
音楽室からピアノの音が聞こえます。ジャズが聞こえてきたのです。
ジャズにアレンジされたマスカレードが聞こえてきたと言います。
友人はその演奏を聴いて、事故で死んだ先生の名前を言ったそうです。
すると、その先生の好きだったセンチメンタルジャーニーが聞こえてきたと言います。
その先生は、ピアノが上手く男子に人気が高い先生だったと言います。
そして、女生徒の見る目がおかしい、気味が悪いと問題になっていたそうです。
それからです、夜まで残っている女子生徒を襲う男の幽霊が問題になったのは。
「変態色を好むと言うからな」
第十五話「ビモオオ」
友人に聞いた話です。ビモオオ山と呼ばれている山があるそうです。その山ではヅルジでビモオオを作るのだそうです。
簡単に言うと、罪人を山でつるして、ヒモノにして悪霊にするのだと言います。ただ、言霊的にツルシとヒモノでは弱いので、悪意を強めるために濁点をつけ、ヅルジとビモオオになったのだと言います。
河太郎の悪意が強くなるとガアタロやガタロになるのと同じだと言います。
その山は人を悪霊に作り変える場所だったというのです。
ただ、それではビモオオにならないと言います。ビモオオは本来、両手、両足、胴体のへそから上と下、頭が別々の人間でないといけないらしいのです。その7人のヒモノになった体を縫い合わせた物をビモオオというのだと言います。
なので、ビモオオは左右の足の長さが違うのでいびつに動くと言います。
一番材料に良いのは冤罪の者だと言います。ただビモオオは一度に7人もつるす必要があるので、簡単に作れません。
そうしてできた7体のビモオオを分けるのだそうです。
「ただ、俺が見たのは7人を無理やりくっつけた奴だったな」
第十六話「鬼の作り方」
友人から聞いた話です。鬼を作る方法はいくつかあるそうで、一番簡単な方法はダメ坊主を追い込むことらしいですが、簡単でも法律的に大問題です。
法的に一番簡単なのは、自分の生霊を鬼にするのがおすすめだと言います。
何がおすすめなのでしょう?
なので、方丈記のように方丈、3メートル四方の部屋を用意してそこに一番憎い人間の写真や思い出を壁一面に貼り、そこに籠り、生霊を作り、鬼を作るのが簡単だと言います。
思いが強ければいいので、成功率が高いのはアイドルのファンらしいのですが、さすがに鬼を作るためにアイドルの熱狂的ファンにはなれないので憎い奴がおすすめだと言います。
何のおすすめでしょうか?
友人は言います。
「親を憎んでる奴が一番強い鬼を作るんだよ」
第十七話「お化けの声」
あれは深夜の帰り道の話です。もうもうという声が聞こえました。一応街中でしたので、おかしいと思いましたが気にしても仕方ないので帰り道を急ぐことにしました。
ふと、柳田国男氏の本でお化けはもうもうと鳴くと言いますという言葉が思い出されましたが、気にしないことにしました。
もうもうという声は私に近づいて来ていることに気が付きました。そして、その声の主の姿が見えました。
それは包丁を持った私でした。私のドッペルゲンガーともいうのでしょうか、もうもうと泣きながら歩いていたのです。その手に包丁を持って。
私は幻覚を見たことにして、その私を無視することにしました。もうもう鳴く私は駅に向かっていきました。
私はそのまま家に帰り、ふと、あのもうもう鳴く私が人を襲ったらどうなるのだろうかと考えました。
第十八話「お地蔵様の記憶」
これは友人に聞いた話です。伝承や風習は結構簡単に消えてしまいます。
昔話のアニメなどでもこの神様はまれにどのような神様なのか分からない神様が出てきます。名前から推測しようにも、名前がつけられた当時と今では物の名前が違う可能性が高いので、正確な姿から遠ざかっていくだけのことが多いと言います。
なので、知っているものに聞くのだと言います。
それは石だそうです。山の石に手当たり次第に聞くと、お地蔵さまや神様だったものがいるらしく、色々教えてくれるのだそうです。
友人は学生時代に霊感のあるという女と山に行ったそうです。正確には連れていかれたそうです。
女は石を拾うと、お石様お石様見たものを教えて下さい。と言ったと言います。
友人はその姿を今日は暑いからガリガリ君かチョコミントアイスを買おうと思いながら見ていたそうです。
女は低い声で色々友人に話したそうです。そして髪が体よりも伸び口が裂けて山に帰っていったと言います。
「宝くじと一緒で当りが必ず入っているんだよ」
第十九話「けらけらけら」
この話は友人にファミレスで聞いた話です。その日友人はどうしても寝癖が直らず、何とも言えない髪型で学校に向かったと言います。
すると、けらけらと笑う声が後ろからします。
失礼だと思いましたが、がまんしたそうです。
けらけら笑う声は途切れませんでした駅について電車を待っている間も笑い声はします。
何がおかしいのでしょうか。靴下が左右違うだけでそんなに笑うのはおかしいと思い、振り向いたそうです。
彼の後ろにいる人全員がけらけらけらと大口あげて笑っていたそうです。
そして、到着した電車に乗っていた人たちもけらけらけらと大口開けて笑っていたと言います。
「こんな感じ」友人がそう言うと、ファミレスの客全員が大きく口を開け、けらけらけらと笑いだしたのでした。
第二十話「一本足」
この話は友人から聞いた話です。友人は噂話を集めるのが趣味だそうで、面白いと思った噂話は確認しに行くのだと言います。
その山では一本足の足跡があり、何か悪いものではないかと噂になっていたそうです。
一本足の足跡ですが、悪いものとはかぎらないそうで、良い神様の可能性もあるそうです。
良い神様の場合は上手くいけば金持ちや幸運になれる可能性もあると言うので、軽く心を躍らせて山に入ったと言います。
山で数時間けもの道を探索していると、いくつかの足跡を見つけたと言います。
右足、左ありましたが、大きさが違うので一本足だろうと思ったそうです。
友人は闇雲に探しても見つからないと思い、サバイバルゲームのスナイパーのように身を隠すことにしたそうです。
足跡がたくさんあるのだから、音などがあるだろうと思ったのです。
そして友人は深夜に焚火を真ん中に輪になって歌い踊る一つ目の一本足を見たと言います。
「彼らは大人ぐらいの大きさだったが、間違いなく子供だった。ダレガウマイカ、ダレヲクウカと歌っていたよ」
一本足は楽しそうに歌い踊った後一斉に友人の方を見てからどこかへ行ったそうです。
第二十一話「ぼんおどり」
盆踊りは色々な風習が混ざって今の形になったと言います。海外の王様などは神様に選ばれた者だと言います。日本の天皇は神の子孫ですね。
お盆は昔、良い魂、強い魂を自分に付けて強くなる儀式をしていた時期もあると言います。
それに、盆踊りなどが混ざったというのです。
盆踊りは神や神を呼ぶ大きな竹を中心に踊った地域もあるそうです。真ん中は神のいる場所で、神を中心に踊る風習もあるのです。
今の盆踊りは真ん中にやぐらを立て演奏者がいる場合があります。
盆踊りは中心に神を迎える風習で、お盆は強い魂を自分に呼び込む風習でもありました。
なので、盆踊りの中心で演奏をすると神の一部が付く可能性があると言います。
私は一度だけ見ました、盆踊りのやぐらの上で太鼓を叩いている者の口が一瞬大きく裂けたのを。ただ、見た目で判断するのは良くないので、良い神だと信じています。
良い神って基準があるのかどうかって話にもなりますが。
第二十二話「大根」
あれは私が電車に乗るために並んでいた時です。一人の赤い服を着た女性が電車に飛び込もうとしたのです。そして、その女性を救うために勇敢なスーツを着た男性が手を伸ばしました。
男性が女性を掴もうとした時に女性は消え、体制が崩れた男性は電車に飛び込む形になりました。
命が消える嫌な音がしました。ですが、死体がないのです。駅員も客も皆電車の周りを見ますが何もありません。電車も何もなかったようです。
ふと、向かいのホームを見るとさっきの二人がその様子をにやにやと見ているのです。
友人がそばにいたらしく、私の肩を叩き一言言いました。
「あの二人は売れない役者で、注目を浴びるためだけにやっているんだ。最近はああいうのにも常識のない奴が増えた。いや、あの手のは元々常識ないね」
運転手でしょうか、心が砕けたように倒れました。
第二十三話「みえるひと」
友人から聞いた話です。ある村に最悪なとしか言いようのない村長がいました。その村長に意見を言った人がいましたが、村八分となり自殺したそうです。もしかしたら殺されたのかもしれません。
その人は悪霊となり復讐をしようとしましたが、力が足りません。
そこでその悪霊は考えて一人だけに姿を見せたそうです。その悪霊が見えた人は自殺した人が見えると騒ぎますが他の誰にも見えません。 みな後ろめたい気持ちがありますから、その見えた人を村八分にしました。そして、その人も自殺して悪霊になったと言います。
二人になった悪霊はそれぞれ一人だけに姿を見せました。
みえた二人は村八分になり自殺して悪霊となりました。4人となった悪霊は今度は全員に姿を見せたのです。
悪霊となった4人の家族は村長を強く恨みました。村長のまわりには、どんな方法でも村を守るという考え者が集まりましたが、村長のやり方ではいずれ村がなくなるという考えの者たちもあらわれ集団となりました。
そして、村は二つに割れ、皆で殺しあったそうです。
「人と人との殺し合いのはずなのに、村人同士食いあったらしい」
第二十四話「怖い話」
友人とファミレスで怖い話をしあった時の話です。まず、友人の怖い話は、甥っ子に魔王を見たと力説されたことでした。
ため息を何回もついていました。私はスーパーで働いて時にうまい棒を10回払いで買うと言った小母さんを見たという話をしました。
その後映画の話しをして、友人がある話を始めました。
それは聞いたら呪いにかかるという話です。
その男は科学者でしたが頭が薄かったのです。美人が好みだったこともあり恋人ができなかったそうです。そして考えたそうです。
毛が抜けやすくなる薬を運ぶ蚊がいるという話です。この蚊はその蚊がいると認識した時から心理的に作用して効果が出ると言うのです。蚊にご注意ください。
第二十五話「ごどどり」
友人から聞いた話です。山がある村や集落には山の人が子供をさらいに来ると言う話がよく残っていると言います。
その地方にも「ごどどり」という山の人が子供をさらいに来ると言います。
ごどどりの多くは女で、山姥のようだと言います。山姥というと、髪がぼさぼさのお婆さんのイメージですが、それは文化が新聞などにより変に画一的になった弊害で山姥にも様々な者があると言います。
昔話では髪の美しさがその人の美しさとなっています。顔を見ずに交流する貴族たちにとって髪や歌の美しさがその人の美しさとなったからです。髪が赤いというだけで迫害された者も昔話にはいます。
なので、山姥は髪がぼさぼさというだけで不美人とされているだけで、今だと美しい見た目の者もいたのではないかと言われています。
ごどどりもとても長いぼさぼさの髪をした女性だそうです。そして、価値観の変わった今の時代です。髪がぼさぼさだけどもきれいなとても背の高い女性というごどどりを見た少年の言葉が残っていると言います。
まれに自分の存在を示すために子供と会うだけで帰る者もいると言います。
子供を攫うのは価値観ができる前に攫いたいからだと言います。
山姥という言葉と目撃談が混ざりごどどりは結構楽しい見た目になっていると友人は言います。
子どもをさらって目的を果たしたごどどりは、その成長し子作りを終えた子供だった者を食べ、お礼も兼ねて体の一部を集落に返すと言います。ある集落には返された者の手足を供養した墓があるのだと言います。
第二十六話「交換日記」
友人から聞いた話です。友人の友達にA君という者がいます。6月のある日A君にBさんが交換日記をしたいと言ってきたそうです。A君は色々考えてBさんと交換日記を始めることにしました。
BさんはA君に日記を渡しました。内容は、
7月1日、A君は死にました。そう書いてあったのです。何だこの内容はとA君は思いました。
7月2日、A君は死んでない私はコーラを飲み、ハンバーガーを食べたと書いて渡したそうです。
7月3日、A君は可哀想なことに死んだことに気づいていない。Bさんは書いたのです。
7月4日、私は生き返った。A君はそう書きました。
7月5日、奇跡的に生き返ったA君はまた死んだとBさんは書きました。
7月6日、私は何度も死を乗り越え、生き返りもう死ぬことはない。A君はそう書いてBさんに渡しました。それが交換日記の最後になりました。
7月1日、A君はトラックにひかれ、体中がありえない方向に曲がったと言います。
7月2日3日、生死を彷徨いました。
7月4日、A君は死を乗り越え回復の兆しが見えてきたと言います。
7月5日、薬の投与のミスでA君はのたうち回ったそうです。
7月6日、日記通りになったのです。
友人が見舞いに行くとA君が目を合わせると言います。
第二十七話「蛇の子」
友人に聞いた話です。男の蛇は人間の女性が好きだという話はたくさんあり、蛇がいろんな方法で人間をだまして子供を産ませようとする話は平安時代からあります。
物語では未遂に終わりますが、話によっては薬によってお腹の蛇の子を股からぼとりぼとりと大量に落とす話もあるので、子供を産ませるのに成功した者もいるといいます。
その蛇の子は細長いと言います。そして蛇の子らしく邪悪なので見つけて殺さなければいけないと言うのです。
どうやって蛇の子を見つけるのか、それは犬と人の子供ならよく聞く鼻で見つけると言います。犬は邪悪なものを探知する力を持っているので、蛇の子や悪いものを見つけるのが得意だというのです。貴族たちは召使の女たちに定期的に犬の子を産ませたというのです。
「どちらも今もいるよ」
第二十八話「この世界を呪うために」
友人から聞いた話です。昔、妻を殺された男がいました。男は妻をとても愛していたので、とても悲しみました。
ただ誰が妻を殺したのか分かりませんでした。
男は考え、呪うことにしました。相手も分からず、呪いに詳しくない男です。呪うといっても上手くいくわけがありません。
それでよかったのです。
出来の悪い呪いは術者に返ってきます。出来の悪い呪いたちは、その男に返ってきました。その呪いは数百もあったと言います。
恐ろしい数の呪いをあびた男の体は大きく歪に膨れ上がり、呪いに使った蜘蛛、蛇、犬、赤子、妊婦がいくつも男の体から生えていたといいます。つたない呪いを自分に跳ね返ってくるようにしたのです。この世界を呪うために。
男の姿を見た者たちは色々考え、男だったものを力のある神様のいる山に埋めたといいます。山の一部になれば落ちつくと願ったのです。
そして、いつの頃か良い解決策が見つかったと、男は掘り返されて管理されていると言います。
その管理者は誰か分からないそうですが。
第二十九話「私の世界をよくする方法」
私は古本屋巡りが好きです。小難しい本で最初の方だけ色々書きこんである本などが好きです。安いので暇つぶしになります。
ある日、一冊の本が気になりました。その本は「私の世界をよくする方法」という名のよくある家庭菜園の本でした。著者名に世界家庭菜園の会と書かれています。
その本を手に取り、ぱらぱらとめくりますが、特に変わったことは書いてありません。
中身も、キュウリ、ナス、トマト、バジル、ラディッシュ、とうがらしなどのプランターで出来るものから、水菜の紅法師などのすこし馴染みのないものまでいろいろ載っていました。
そして、本を読んでいると本の字たちが動きだし、この肥料でだれだれを殺したという文章になったのです。
そして、何月何日に誰をどのように殺したという文章でページ一杯になったのでした。
一回くしゃみをして目を離すと元の野菜の育て方に戻っていたのでした。
第三十話「怪異帳」
友人に聞いた話です。山で狩りをする猟師たちには掟があると言います。
それはおかしな事があったらそれを絶対に話さず、無かったことにすることだそうです。
何もなかった、だから山にはおかしなものはいないという事にするのです。
あいつらは絶対に言葉にしてはならないのだと言います。言葉にすれば形が強くなるのだと言うのです。
なので山の怪異はほとんど残っていないと言います。
識字率が高くなると、対策を立てようと考える者が出てきます。なので猟師だけが読むと言う形で何があったか書いてある本が残っていると言います。
友人が手に入れた本には、狸が盆踊りをしていたとか、狸がかくれんぼしていたとか書いてあったと言います。怪異は怪異ですがそれぐらいなら残してもいいじゃないかと友人は思いました。
「夢に見るんだ、山の中で人を食べる狒々の化け物を。文字ではなく夢に映像として残していたらしい」
第三十一話「でだらさん」
友人に聞いた話です。ある山ではたまに人が消えると言います。友人が言うには消えたのではないと言います。
その山は巨人が寝ているものが山になったと言うのです。その山はでだら様という巨人が寝ている状態が山になったのだと言うのです。
そして、運悪くでだら様があくびをした時にその口の上にいると口の中に落ちてしまうと言うのです。
消えたのではなく食べられたと言うのです。彼らは食べられて死んだのかというと、そうではないと友人は言います。
「でだら様に食べられた人は、でだら様の体を通って何かになって帰ってくるんだ、彼らはでだらさんと呼ばれて地下に閉じこめられているんだ」
第三十二話「肉まん3つ、ビール2本、甘酒1本」
それは私が深夜のコンビニでバイトをしていた時です。狸が1匹コンビニに入ってきました。
「肉まん3つ、ビール2本、甘酒1本」を下さいと狸は言います。
「これが貰えなければ父様と母様が暴れます」狸はそう言うのです。
面白かったのであげました。
「これで、タナカクニヨシの命は助かりました」そう言って狸は肉まん3つ、ビール2本、甘酒1本の入った袋を持って嬉しそうに出ていきました。
私は肉まん3つ、ビール2本、甘酒1本で人の命を救ったのです。ふと外を見ると、狸の形が変わり、2メートルほどの何かになり、うあうあと呻くと去っていきました。
あの大きさだったら足りないなと私は思いました。
店長が狸がコンビニに来て、何かをくれといったら欲しい物をなんでもくれてやれと言う意味がよく分かりました。
コンビニの人間だけは助かるでしょう。
第三十三話「あごろ人形」
友人に聞いた話です。人形に魂が宿るという話は、人形を神たちが自分の体代わりに使ったから広まった話だと言います。
もっとも神が宿りやすい人形は神木を使った人形だそうです。
信五郎という人形職人がいるそうです。その信五郎は役目の終わった神社の神木で人形を作り、神さまの体とするのだと言います。
正確には、役目を終わらせられた神社の神木を使って神様の呪いを受け入れる形を彫ると言います。
なので、信五郎の作る人形は技術はスゴイのですが、形はどれも恐ろしいと言います。
信五郎は本人も見た目が変わっており、片方の目がつぶれ、片方の手がなく、片方の足を引きずっていると言います。ある話では、真ん中に大きな目、一本の腕、一本の足の化け物だとも言うのです。
どちらの話でも変わらないのは一本の腕で彫りあげていくことです。一本の腕ですさまじい速度と気迫で彫っていくと言います。その見た目と作る人形から信五郎は悪五郎と呼ばれ、その人形はあごろ人形と呼ばれているのだそうです。
「あごろ人形は吸血鬼のように人間の血を吸って生きている」
第三十四話「黒猿廻し」
友人から聞いた話です。もう人の来なくなった荒れた神社、黄昏時に変わった猿回しが来ると言います。
その猿回しは白い犬を連れ真っ黒な顔を隠した黒子のような衣装を着て、まっ黒な服を着た栄養失調のように痩せた猿で猿廻しをするといいます。
その猿廻しはまず、この猿は昔だれだれという名前で、どのように人を殺したかと話します。
猿は死刑を逃れた罪人だと言うのです。
そして鞭で叩きながら猿廻しをするというのです。
一通り芸をして、「死刑執行」と猿廻しが言うと、犬が生きたまま猿の手足を食い、そのあと腹を食うと言います。猿はうがあうがあと苦しんで死ぬのだそうです。
「この者は死刑を免れた不届き者である。これにて死刑終わり、あとは閻魔様にお願いい たす」そう言ってその猿廻しは終わると言います。
「死刑が終わると、大きな歓声が沸くそうだ。大事な話だがこれは善悪の話じゃない、強弱の話だよ。悪いものが善いものに裁かれるのではなく、弱いものが強いものに食われるだけの話だ」
第三十五話「かげろう」
友人から聞いた話です。ある日、友人はおかしな話をしようと言いました。私は友人からおかしな話しか聞いたことがないのですが。友人には変わった知り合いがいて、その人はデザイナーベイビーの実験体の管理をしていると言います。優れた人間って何という哲学的な問題は今回無視します。
どうせ誰も信じないからと何でも話してくれるそうです。しっかり話すことが結果的に嘘だと思われ、存在が隠れるのだと言います。
言うまでもなく、人間は複雑です。今分かっているのは人間という完成体においての役割や機能なので、それを思い通りにいじるためには、大量のトライ&エラーがいるでしょう。足の速い人間を作ろうとしたら骨のないクラゲのような人間ができるかもしれませんし、頭のいい人間を作ろうとしたら無脳症の人間が生まれるかもしれません。
デザイナーベイビーも多くの医薬品と同じように、推測からの結果論で生まれると言います。
そのために大量の失敗が必要だと。
目的のデザイン人間のために、人間以外の遺伝子を取り入れるという考えは昔からあり、大昔は呪術的という原始的な方法で実験されたと言います。
今やっているのが、昆虫人間の作製だそうで、まずは成功の可能性をあげるために選んだのはかげろうだと言います。かげろう人間がしっかり成功したら、デザインごとの昆虫人間を作るのだそうです。
かげろうの成体はすぐ死ぬので、口、胃、腸などの消化器官が使用できないほどに退化しています。なので、色々と管理がしやすいと考えたのだと言います。それでもトライ&エラーの残骸の山だそうですが。幼体はと聞いたら飯が食えなくなるよと言われました。
その知り合いの人は、その口、胃、腸が退化したかげろう人間のトライ&エラーの山の観察と処理をしていると言います。
「デザイナーベイビーなんて、何入れられるのか分かったもんじゃないのにな」
第三十六話「入れ替わり」
友人に聞いた話です。簡単に違う人間に入れ変われる方法があると言います。
それは、鏡の自分と入れ替わるのだそうです。
鏡に映る自分は左右反転されていますから、確実に色々変わると言います。
自分ですから、変わった後に大きなトラブルもありません。
好奇心で入れ替わる人もいると言います。そして、嫉妬から上手くいっている人を入れ替える人もいると言います。
注意することは時計などをはめた状態で入れ替わらないこと。
デパートなどの全身鏡にまぎれているのもあると言います。友人は言います。
「鏡の自分に乗っ取られても気づかれないんだけどね」
第三十七話「ぬめ様」
友人から聞いた話です。ある地方では生贄の儀式があったそうです。
その儀式では人、イノシシ、犬、蛇を15メートル四方の穴で1カ月間殺し合いをさせるという儀式ですが、蟲毒ではないと言います。
神の依り代を択ぶ儀式なので、ほぼ人が生き残るそうです。
生き残ったものは7尺、2メートル数十センチほどの大きさになり、ぬめ様と呼ばれます。
生き残ったものは10年間神として過ごし、10年後に自由になると言います。
「その地方には、歴代の神の絵が残っていて、イノシシの顔の人や、犬の顔の人、蛇の顔した人の形のぬめ様の絵が残っている。今のぬめ様は蜘蛛の顔をしているそうだ。ぬめ様はラテン語のヌーメンという神の意志という言葉から来ているのだろう。ぬめ様はグルメだから生きているものしか食べないそうだ」
第三十七話「悪の華」
友人から聞いた話です。ある所に犯罪者を祀る神社があるそうです。昔は犯罪者ではなく、彼らを強い者と考えた名残で、その風習を守っているのだと言います。
友人はそれは表向きで本当は全く違うと言います。その神社の氏子の多くは犯罪の被害者だと言うのです。
被害者がその神社に祀る犯罪者を連れてくるのだと言うのです。
その神社の神が、犯罪者の魂を食べる神であり、その神はこの国を呪う祟り神なので、犯罪者を食らい呪う力を蓄えていると言うのです。
その神社はある高貴な方のミイラを祟り神の体として祀っており、そのミイラへの餌として犯罪者の魂を集めていると言うのです。
そのミイラは20年に一度姿を現すと言います。
20年に一度犯罪者の魂を取り込んだ恐ろしい姿を歩いて見せると言うのです。
「そいつは本願達成まであと何年と言いながら歩くらしい」
第三十八話「河童」
友人に聞いた話です。河童が富をくれるという話はけっこうあるそうで、河童とうまく付き合うとお金持ちになれるのは昔は常識に近かったとも言います。
金持ちになるために河童を使った者もいます。一番有名な人はかっぱ寿司の社長だと言います。
それはおいといて、河童にも女性がいます。特徴は目を隠すような髪型と濡れた手足だそうです。お皿のような禿と甲羅はありません。
その女河童は赤子を抱いており、女性にその赤子を抱かせるそうです。
女性が河童から赤子を受け取り、抱くと赤子はどんどん重くなり、手がちぎれそうな思いをするといいます。しばらくすると重さが安定し、赤子の顔を見ると、銀か金になっているといいます。そして、
「わが子を頼みます」という声がして、とても力の強い子供が生まれると言います。
第三十九話「七夕様」
友人に聞いた話です。古くからある風習に七夕があります。その歴史はとても古く、千年以上の歴史もあると言います。
なので、地方によって独自の発展や変化をしたのですが、共通しているのは、機織りです。七夕は棚機、棚に機でタナバタで七夕になったと言うのです。
機織りに必要なのは糸ですからそこから蜘蛛と結びついた織姫もいると言います。
ある寺には、8つの眼と、毒の牙、四本の手に四本の脚の織姫の絵が封印してあって、その織姫は彦星を年に一度食べると言うのです。彦星は恋人ではなく、年に一度の生贄となっているわけです。彦星は罪を犯して織姫に食べられるために永遠の命を得たものだと言う人もいたそうです。
その地方の子は言います。
「織姫は蜘蛛のような見た目をしている。実際に見たから間違いない」
友人は続けます。
「織姫が彦星を食べるのではなく、彦星を食べたから織姫が化け物になったという考えもあるらしい」
第四十話「8冊の本」
あれは子供の頃です。私が本屋で本を選んでいた時。少ない小遣いを何に使うか考えていた時です。
くしゃみをしました。
ハンカチから顔をあげると、目の前の本が10冊消えていたのです。
何が起きたのか分からず、私は逃げるように本屋を出ました。
家に帰ると腕時計が壊れていました。
その時の本なのでしょうか、昨日買った新品の鞄が妙に重かったので中を調べると、妙に古い文庫本が8冊入っていました。
一つ言えるのは、お化けの本を選ぶセンスは悪いということです。あと、高価な本でなくてよかったなと本屋さんのことを考えたりしたのでした。芸術関係の本とかですと本屋さんが可哀想です。
第四十一話「悪意の白衣」
友人から聞いた話です。病院でのミスは細かい物を入れると10%を超えると言います。10回に1回は何らかのミスが起こっているのです。
なので、けっこう定期的に大きい事故もあると言います。そして、閻魔様か天使か悪魔か死神かに死んだ時に医療ミスで死んだと教えられるというのです。
大きい病院でも、小さい病院でも臨時の医者がいるそうです。しっかりした病院ほど看護師と医者の関係、医者の言うことを聞く看護師が徹底されていると言います。
臨時の医者が医者であるという証明は何になるでしょうか?それは白衣だと言います。
学校の先生が教壇に立てば先生のように、白衣を着たら先生になるというのです。
そして、白衣を着た悪意は復讐するのだというのです。ただ、けっこうばれるのじゃないかと思い、ばれたらどうなるのかと私は友人に聞きました。
「ばれたら、本当の姿を見せればいいだけじゃないか。怨霊なんだから」
第四十二話「ひひ」
あれは近くの山を散歩していた時の話です。学校のそばにあるその山は自然公園となっていて、緑の気持ちのいい散歩道です。
河童もいたという池もその山にはあり、何かいそうな空気が漂っています。
そんな山ですので、歩いているとがさがさと音がします。
その音の方を見ると、台湾リスや雉がとこりとこりと歩いて出てきます。
台湾リスは結構大型のリスで、その体格と同じくらい態度も大きく、その自然公園の王者のようにふるまっています。
ただ、台湾リスは保護動物を食べるので害獣と指定されています。
がさりがさりと音がしました。
私はリスの集団がいたのかと思いました。そして、音の方向を見ると、人の形が気を飛び回っていました。
大きさは60センチほどでしょうか、素早く、かなり遠くにいたのにはっきりと、私に見せつけるように鼻が大きく垂れたお爺さんの顔と猿の体が見えました。
あいつの方が保護動物を食べるだろうと思いましたが、あれも保護動物ですかね。
第四十三話「公園のトイレ」
あれは暑い夜の日でした。家への帰り道、ものすごい便意に襲われたのです。
使いたくありませんでしたが、仕方ないので公園のトイレを使うことにしました。
しかし、公園のトイレは使用中でした。
「大丈夫です」
トイレから声がしたのです。もうすぐ出るのだと思い、私は待つことにしました。
しかし、出てきません。10分経っても出てきません。
暑いのに、冷や汗が出てきます。冷や汗と汗がまじりあう不快な時間でした。
「大丈夫です」
私は待つことにしました。そして30分経ちました。
我慢できないかもしれないと思いましたが、私はあの便意がなくなっていることに気づきました。
そして、トイレの中には誰もいませんでした。ただ壁に大きな顔が描いてあるだけだったのです。
ははははははは
大きなわらい声がしたのでした。あの声で。
第四十四話「入れ替わり実験」
友人から聞いた話です。友人の知り合いはある実験をしたそうです。それは向かい合った二人の人間に、向かい合っている人間は鏡であるという催眠をかけたと言います。
催眠をかけられた二人の体は鏡である自分の姿に合わせるために、向かい合った人の形に肉体が変化したと言います。完全に入れ替わった所で実験を止め、生活しても問題はないか観察したと言います。
大きな問題はなかったと言います。戻すのに失敗すると困るので、そのまま生活してもらっているそうです。最初の調査が甘く、本人たちも入れ替わったのに気づいていないため、何が変化したのか正確に分からないが違和感を感じるという結果になったと言います。
性別が違う二人でも、体格が違っても成功し、性別まで変わったそうです。
そして、その入れ替わっている映像を見せると自壊したと言います。
その実験はいつの話かと聞いたら、友人は人が存在している時代の話だと答えました。
第四十五話「美人画」
友人に聞いた話です。魂には形があると言います。鬼が取り憑いてその人の形が鬼のようになるのは鬼の魂の形が影響するからだというのです。
絵や彫刻作品とたまたま、そこを彷徨っている魂の形が一緒だと魂がその作品に入り込むと言います。
作家が画布や石が示す形を作るだけと語るのは、彷徨っている魂が影響しているときもあるのだというのです。
そして、魂と形が一致した作品は自由に動くこともあるのだというのです。
その話を聞いて、美人の魂が来るのを待っていた画家がいたと言います。その画家の腕は良かったので、彷徨う魂を感じ、素晴らしい美人画ができたと言います。
「その美人画の美人さんは人喰い鬼だったんだ」
第四十六話「鬼を飼う人」
友人に聞いた話です。仏さまはお坊様に厳しいらしく、葬式坊主は死後、鬼になってこの世を彷徨うのだと言います。
なので、鬼になる葬式坊主や出しゃばり坊主を友人はリスト化するのが趣味なのだというのです。
ただ、鬼になる坊主ですから徳の低い坊主ばかりなので、なってもたいていは面白くないと友人は嘆きます。 鬼にすらまともなれないダメ坊主だらけだと友人は嘆くのです。ただ、まれに大当たりがあるから楽しいとも言います。当たりだとギョウキとケイトウボウという坊主だそうで、とても高貴な方が飼っているのだそうです。
「ただ、この二人は鬼になったのではなくて、鬼にされたんだけどな」
友人は鬼になる坊主を書いた手帳を見て、笑ったのでした。
第四十七話「暑い日」
それはとても暑い日でした。暑さで目の前がゆらゆらと揺れてきた気がしたので、公園のベンチで休んでいた時です。
「大丈夫ですか」そう声をかけてくる人がいました。
「目の前から消えろ」私はそう答えました。
その人は、「大丈夫ですか」懲りずに聞いてきます。
「目の前から消えてくれ」私は答えます。
「大丈夫ですか」同じように聞いてきます。
「うなだれているから、お前が何か分からないし分かる気もしないが、影がないのだけはしっかり分かる」
私がそう答えると、そのひとは缶コーヒーを置いてどっかへ行きました。私がその微糖の缶コーヒーを飲んでいると、 うしろから、
「顔を見たら楽しかったのに」さっきの声でそう言ったのです。
第四十八話「あほ太郎」
友人から聞いた話です。あほ太郎という男がいたそうです。その男は嫁を貰いました。その嫁はなんと胸が四つありました。あほ太郎はその嫁と結婚してからどんどん出世し、夫婦は幸福になったと言います。
それからその地方では、胸が四つある女性と結婚した者をあほ太郎と呼び、胸が六つある女性と結婚した者は大あほ太郎と呼んだと言います。
なぜあほなのかは分からないそうです。
その地方の神社には胸が四つある弁天様と胸が六つある弁天様が祀られていると言います。
あほ太郎はその地方の始祖だと言うのです。
「あほ太郎は上半身二つに下半身二つの両面宿儺のような見た目で、それぞれの体で4つの嫁と6つの嫁を貰ったと聞いて見に行ったら牛の頭人の体に牛の足の安防羅刹のミイラがあったという。あほな昔話でごまかしている隠れ羅刹教みたいな奴だ。生贄を作るための人がいるという噂はどうなのだろうか、自殺者が生きているのを見たと言う噂の確認でその阿防羅刹のミイラを見つけたらしいが」
第四十九話「棺」
あれは深夜、まだ膝が元気だったころの話です。眠れなかったので私は軽く走ることにしました。なんとなく神社に行くと神社の奥の方の林からかーんカーンと音がします。
なんか嫌な音聞いたなと思いましたが、100円を賽銭箱にいれ、神さまに守ってもらえるように祈ってから確認しに行きました。
万が一放火があると困るので、確認することにしたのです。
音のするところには神主さんがいました。
「何だ眠れないのか」神主さんは名前の書いてある藁人形を木に打ち付けながら言いました。藁人形にはれお、みやなどと書いてありました。
「これはな、中絶で死ぬ子の名前だ、この木を棺にするんだよ」
神主さんは笑顔で言ったのです。一つだけ分かることがあります。
その神主さんは笑顔で嘘をつけるということです。
第五十話「なまず」
友人から聞いた話です。土用の丑の日にうの付くものを食べると良いというおまじない。ウナギが食べたいが高いので、なぜかウナギに味が似ているというので、ナマズの天ぷらを食べに行くことにしました。
うがついていない。帰りに喫茶店でウィンナーワルツでも聞きながら、ウィンナーコーヒーを飲めばいいと友人は言いました。
動物は年を重ねると、ふったちという化け物になります。経立と書きます。
ふったちの霊力を得て、様々なことが出来るようになると言います。
犬や猫だと早い地方だと7年ほどだそうです。
ある男は、金儲けのためになまずのふったちを作ったと言います。地震の予知をすると思ったのでしょう。
なまずのふったちは土と語り、過去にあった殺人事件を語ったと言います。
ふったちの天ぷらはおいしかったと友人は言いました。
第五十一話「世界の救世主」
友人から聞いた話です。食糧難、アンチエイジングなど深刻な問題や、人間の欲望。その問題を解決してくれる救世主として期待、研究、簡単に言えば実験の材料となっているのがゴキブリだと言います。
ゴキブリ自体に毒はないので、SNSなどでいけているパーティーピープルと呼ばれるイケイケの人たちの間ではゴキブリを食べるのを見せるのが流行っていると言うのです。
人間怖い。
たださすがに、踊り食いや生食はないので、加熱します。パイ、スープ、グラタン、ホットケーキ、プリン、ジャムに鍋など様々な食べ方があると言います。
ホルマリン漬けのように、一回加熱したゴキブリをきれいなゼリーもよく売れてうれしいと言っていました。
アンチエイジングに使うために、ゴキブリに人間の遺伝子を入れる実験があると言います。少しずつ人の顔に近づいている気がすると言いますが、気のせいだと言います。
「逃げたらしいんだよね。人間ゴキブリ。まあ数匹らしいけど」
1匹見たら30匹。
第五十二話「蜘蛛の娘」
友人から聞いた話です。七夕伝説は歴史が古く無数にあり、話によっては織姫が彦星を嫌っており、ひたすら逃げるが最後に捕まり、年に一度会うのが織姫への罰のようになっている話もあるそうです。
その織姫は年に一度、7月7日、彦星が溜めた洗い物を必死に洗うと言います。
そんな話でも織姫は機織りをします。織姫は様々な話や形になりますが機織りだけはやめないのです。
機織りは糸を使いますから蜘蛛と結びついた織姫もいます。
その地方では女性が子供を産めるようになると蜘蛛を表す米のような文字を女性に彫ったそうです。
その入れ墨のある子は機織りが上手く、蜘蛛のように子供をよく産んだと言います。
「夜中その入れ墨のある子の顔を見ると目が8つあるように見える時があるらしいよ。あれ、蜘蛛ってオス食べるんだっけか」
第五十三話「病院への思い」
あれは入院していた時です。深夜にトイレに起きてトイレに向かった時、看護婦さんが歩いているのが見えました。
病院に看護婦さんがいるのは当然です。トイレから出た時にちょうど看護婦さんの後ろ姿がさっきよりも近くで見えました。その看護婦さんはけっこう年で、髪がないようでした。
べつに髪が薄い女性もいますからおかしくはないのですが、ふと気になりました。
ただ髪が薄い看護婦さんいますかと聞くことは良くない気がして聞けません。
昼間、そこの病院は大きい病院で喫茶スペースがあります。私のテーブルにたまたま同じ時期に入院していた近所の小母さんがきました。
「この病院に幽霊でるんだって、その幽霊ってのが院長や婦長などの病院に執着していた人がくっついた幽霊で、看護婦の恰好をした院長の幽霊が深夜病院を歩いているって噂があるんだって」
小母さんの話では悪くない物が混ざっているという話です。そうであって欲しいものです。
第五十四話「餅」
友人から聞いた話です。毎年正月には餅をのどに詰まらせて死んでしまうという痛ましいニュースが流れます。
餅は神聖なもので、白い奇麗な餅は白鳥になって飛んで行くという話があるように魂を持っていると考えられています。
餅は作った者の思いが込められていると言うのです。
料理は愛情といいますが、どんな料理も作品も作り手の思いを受け取ります。
特に餅や純米酒は作り手の思いを強く受け取ると言うのです。
呪いをこめて作れば、簡単な呪具となると言うのです。
給料上げろ、嫁さんの料理がまずい、娘がギャルになった、隣の住人がめんどくさい、社長の顔を見たくない、会社のお局が憎い等の様々な不満を受け止めているときもあると言います。そして、思いが爆発すると言います。
「奇麗な餅には棘があるのさ」
第五十五話「デザイナーベイビー」
友人から聞いた話です。友人の知り合いにデザイナーズベイビーの研究をしている人がいると言います。
単純に人間の思い通りに人間が作れるのかという問題もありますが、一番の問題は心だと言います。
足の速い子を作ったとして、学者になりたいと思われたらどうしようもありません。機能は作れても心は作れないのではないか。心と機能が不一致をおこしたら意味がないのではないかと言います。
「親に希望を聞くと、口答えしない、お金持ちになる子が欲しいそうだ」
第五十六話「夏の思い出」
私の家の近所の神社では盆踊りがあります。あれは学生最後の夏。8月4日に盆踊りがあると言う掲示を見て見に行くだけ見に行こうと思いました。
その時間に神社に行くと、昔のように簡単なおもちゃと、焼き鳥などが売っています。
何も変わってないなと思って見ていると、子供の私が盆踊りを踊っていました。
よく見ると、何人か記憶にある人たちがいます。皆、十数年前の姿でした。
私に十数年前の姿の白髪混じりの神主が近づいてきました。
「罠だぞ」神主は一言そう言うと、身を清めるためとビールを取りに行きました。
私は神主の言葉を信じて、家に帰ることにしました。鳥居を出ると、白髪の神主がいました。
「なんだ?盆踊りの準備でも見に来たのか。盆踊りは明日だぞ。明日の準備を待つやぐらはなんとも良い物だな」神主はそう言いました。
ふと神社から叫び声が聞こえた気がします。家に帰るとまだ8月3日でした。
第五十七話「たいぼくさん」
友人に聞いた話です。昔は大きな人がたくさんいたと言います。人々は大きいと言うだけで、その大きな人を恐れ戦争をしたそうです、そして、戦争に負けて、ある場所に追いやられ、その場所でほとんどが木になったのだと言うのです。大きな人は大きな木になったのです。
一部の大きな人は神木になったと言います。
その山は大きな木がたくさん生えています。
黄昏時にその山にいると木がゆらゆらと動くのを見るそうです。そして、
「憎い者の子だ」そう言って追いかけてくると言います。人々はそんな木を大木さんと呼んでいるのだそうです。
ただ捕まっても悪いことはなく、捕まった者たちは金の塊を持って帰ってくると言います。
そして、捕まった物はなんと大きく背が伸びるのだと言います。捕まった人たちはどんなに小さくても、みな180センチを超えるほど大きくなると言います。
第五十八話「珍しい人」
ずっと連絡のなかった友人から食事をしたいと連絡があった時の話です。その友人は山が好きで、ある山の話をずっとしていました。
私は猫のお尻をぺちんぺちんと叩くとお尻があがって面白いという話をしました。
2時間ほど会話をしたのです。
「割り勘かな、それともおごり」私が聞くと、
「お前は俺が何かわかって話していただろう」そう言うと消えたのです。
二人の食事の痕跡である伝票を残して。
第五十九話「団地」
友人から聞いた話です。その友人の知り合いは地域の安全に関わる仕事をしており、地震が多発した時に古い団地の建物の安全性を調べていた時の話です。
その団地を調べようした時に、その人は大量の視線を感じたと言います。
その人が視線の方を見ると、団地の建物のすべての窓から同じ人がその人を見ていたと言うのです。
全て、同じ顔、同じ表情だったと言います。
その人はあったこと全てを書き、人には限界があり、触れてはならない物があると思います。と最後に記したといいます。
第六十話「深夜の交番」
友人から聞いた話です。何が起こるか分からないので、交番には一日中お巡りさんがいますが、深夜だと交番に誰もいなくなってしまうことがあります。
そんな時にはお巡りさんの格好をした何かが交番にあらわれる時があると言います。
その何かがお巡りさんの格好で電話を受け、相談を受けると言うのです。
深夜じゃなくても、条件がそろえば昼にもあらわれるのだといいますが。
「別に幽霊からしたら、正体がばれたって問題ないしね」
第六十一話「風の強い日」
あれは台風が来ていたので、とても風が強い日でした。べたんと窓に何かがぶつかり、張り付いたような音がしました。
窓を見ると、人と魚が混ざったようなものが窓に張り付いていたのです。
「ここじゃないな」
それはそう言うと私の顔をじっとりと見て、そして、風に乗ってどこかへ行ったのでした。
第六十二話「1つ」
友人から聞いた話です。友人の知り合いの7人のホラー作家が百物語をやろうとしたそうです。
一人百話作り、一週間百物語をやると言うのです。しかし、行なわれることはなかったのです。
「1つ」
そう言って皆どこかへ消えてしまったと言います。
7人のホラー作家の百物語、ひとつも見つからなかったと言います。書いた痕跡さえも見つからなかったと言うのです。
「707話の怪談は何かの餌になったらしい。人でないものが形を得るのに必要なのは物語だと言うがどう思う」
第六十三話「あんぱん7つ」
あれは何故か深夜にあんぱんがどうしても食べたくなった夜の話です。私はコンビニで、あんぱん7つ、クリームパン1つ、オレンジジュース3つ、サイダー1つ緑茶1つ、コーラ2つを買いました。
帰り道の途中の公園で子供が7人遊んでいました。
私は近づき、「あぶないよ」と声をかけました。
「あぶないのは私たちじゃない、今度はあなた達があぶないんだよ」子供はそう言うと、
皆で私を見たのでした。
私はコンビニで買ったパンとジュースを彼らに渡しました。
神社に行き、100円玉2枚を賽銭箱に入れて、彼らのやろうとしているとが上手くいくようにと願ったのです。
第六十四話「おこないこぞう」
友人に聞いた話です。風習は統一される前はかなり好き勝手な形をしていると言います。
おこないこぞうと呼ばれるその妖怪は、簡単に言えば座敷小僧だと言います。
座敷小僧は家に来るとその家は栄え、いなくなると破滅するという妖怪のようなものです。
座敷小僧は座敷童とほぼ同じです。座敷童ですと、家にいて欲しい幸福をくれる神様に近い物ですが、座敷童の話は考え方では運を一気に浪費して破滅させる妖怪とも考えることが出来ます。
それは、座敷童の話はその家の破滅で終わるからです。妖怪だと感じた人たちの中には座敷小僧と呼ぶ者がいると言うのです。
おこないこぞうも座敷小僧と同じように、赤い顔に布団や枕をひっくり返し、その家の運を浪費し破滅させます。
「おこないこぞうをちゃんと送り込むために、座敷童は幸運の象徴になっているんだよ」
第六十五話「くじら坊主」
友人から聞いた話です。情報はいつでもいいかげんなもので、昔は天候によって飢饉が起きたりしたので、その地方ではお経を読ませて、海に放りこめば即身仏となって良いことが起こるとしたそうです。
信じていたのか、信じていなかったのか。昔の人は迷信に弱いと思われがちですが、迷信をうまく利用しているという文献もあります。
信じていたのかいなかったのかどちらかはもう分かりません。
ただ分かるのは、放りこまれた方は強く呪ったということだけです。
くじら坊主と呼ばれるその呪いがくじらに取り憑いたのか、集まってくじらのようになったのか分かりませんが、巨大なものが猟師を食べたそうです。猟師を食べているときにくじらはうめえうめえと言ったと言います。
第六十六話「ゴーストタウン」
友人から聞いた話です。友人の知り合いに変わった人がいると言います。
その人の仕事は、ゴーストタウンや廃墟に幽霊の噂を流すと、管理が楽になるかの実験をしていると言います。
日本だと変な奴が集まって逆効果らしいですが、ある国やある国では人を捨てる場所が沢山あるので噂を管理しやすいと言うのです。
ただの人殺しですかね。
色々な手がありますが、一番効果があるのは、実際に幽霊に住まわせることだと言いました。
第六十七話「タオル」
友人から聞いた話です。あるタオルの会社の白いバスタオルは、その会社の社長が妖怪が好きだったので、いったんもめんと名付けたそうです。
そのタオルはいったんもめんという名に合わせるように人を締め付けるタオルがあったと言います。
その評判は噂話として広まり不思議な人気が出たというのです。
「タオルが人を絞め殺してしまい、会社は潰れたという。そのタオルは贈り物として人気だったそうだ」
第六十八話「ゴースト」
友人から聞いた話です。インターネットは集合知で集合認識だと言います。
幽霊が認識の揺らぎならば、インターネットにこそ幽霊がいるべきだと言います。
そのバグのようなモノはゴーストと言われインターネット上に書き込みを残したりすると言います。ゴーストを探すのを趣味にしている人もいるそうです。
ゴーストは幽霊のようなものだと言いましたが、人の意識から生まれたので人に近いそうです。幽霊に近い可能性もありますが。
ゴーストは人に近いので名前を名乗り、結婚して子供を産むと言います。
彼らは進化しているというのです。
アインシュタインは第4次世界大戦は石とこん棒で行われると言いましたが、第三次世界大戦が核戦争ではなく人が機械を使えなくなる可能性があるというのです。
理由はどんなに退化しても槍や弓を使うはずなのに、それが省かれているからだと。
第六十九話「壊れた時計」
友人から聞いた話です。ある町にとても美しい人がたそうです。
その人は自分の美しさを理解していて、少し緩めに服を着ていたと言います。
少しずつ露出は高くなったそうです。
その人は60を越えた今でもサービス精神旺盛な姿で歩いていると言います。
冬でも気にせずにその恰好で歩いているというのです。
第七十話「呪われ屋」
友人から聞いた話です。友人の知り合いに呪われ屋という便利屋がいるそうです。
その人は呪われた人や呪われそうな人の代わりに呪いを受けるのだそうです。
ただの詐欺師です。
彼の本当の仕事は客のリストを作ること、そのリストにある客にある条件が重なった場合は呪いをかけるのが仕事だといいます。
呪われ屋ではなく呪いを信じ込ませるのが仕事だそうです。
あと人を呪うのも彼の仕事です。
第七十一話「くつ」
友人から聞いた話です。靴の姿をした悪霊がいると言います。その悪霊は管理の悪い靴屋に入り込み、商品として並ぶと言います。
その靴をはいた者は足から心を壊されて、最後は自殺してしまうと言います。
自殺者が靴を置いていくのは彼らが妖怪だからだと言うのです。そして、また管理の悪い靴屋で商品として並ぶのです。
第七十二話「映画美術蒐集家」
友人から聞いた話です。友人の知り合いにデイトレーダーで映画の小道具の蒐集家がいるそうです。
その人はホラー映画、恐怖映画って言った方がいいですかね、その美術を集めていると言います。
集めているのは、映画で使われた切断された手、足、目玉、削られた頭部や大物だとお腹を裂かれた上半身などの人間の死体に関する美術だけだそうで、その美術を雰囲気をよくするためにホルマリン漬けにして集めているのだそうです。
その友人に会うと、これはこの映画で使われた、この手はあのアイドルがまだ水着を着なくちゃメディアに出られなかった時代の足で型取りされて作られたとか語るそうです。
最後に、自作の作品がどれよりもリアリティがあると自慢すると言います。その自作の中に人とは思えないものが混ざっているというのです。
それを触ると、彼は激昂すると言います。
第七十三話「小型犬」
友人から聞いた話です。犬は悪いものを見つけるのが得意だと言います。安倍晴明さんも言っているのでそうなのでしょう。
犬は悪いものを探せるので、小母さんが小型犬でその悪いものを探すというバイトがあるそうです。
小母さんの抱いたチワワなどの小型犬がある動きをするとそれを報告するというのです。
第七十四話「なれ」
あれは深夜のコンビニで働いていた時の話です。目が3つ、口が縦に2つ並んだ男が入ってきました。私がマニュアル通りにあいさつをするとその男は頭を軽く下げました。
そして、軽い食事とビールとたばこを買ったのです。お金を渡す手の指の数は7本でした。1本は手の甲に生えていました。
その男がコンビニから出ていくとき、
「なんで怯えないんだよ。慣れてんのか?もっとひどいのにあったのか?」
5つに増えた目で私を見たのです。
第七十五話「永遠に美しく」
友人から聞いた話です。陰陽師という人たちがいます。基本的に暦と天文の専門家ですが、古文の知識だと、文献のために式神で人を襲うことが出来ると投げやりに書かれるあの人たちです。
文献にあるように陰陽師は式神を使って人を襲い殺します。
作り話でしょうか?
少なくとも呪い殺された人がある程度いないと脅しにならないと友人は言います。
なので、式神を使って殺していなければ、陰陽師には暗殺機関とその方法があるというのです。これではオカルトではありませんね。
陰陽師の奥義に泰山府君の法という寿命をもらう、寿命を奪う法があります。
安倍晴明は一節だと、921年に生まれたのではなく、921年に泰山府君の法で生まれ変わったという説もあるそうです。そして、80年ほどで姿を消したと。
陰陽師の奥義は人を殺すのではなく、寿命を延ばすことなのです。そして、寿命を奪えるのが泰山府君の法です。
「この国は自殺者が多すぎると思わないか」
第七十六話「干し人」
山での話です。会話が聞こえてきたのですが、木の上から聞こえてくる感じです。声の主を探すと猿でした。
「干し柿が食べたい」「干せばうまくなるな、人も干せばうまくなる」
「干し人でもつくるかな」
昔話ではよく猿は悪者として出てきます。猿が悪人を見て、悪いことを覚え真似をするという話がたくさんあります。猿真似ですから、勘違いも話のポイントです。
首吊りを干し柿などと同じように考えたのでしょう。
嫌な話です。
「いい大きさの奴が近づいてくる」
第七十七話「監視」
それは変わったバイトの募集でした。警備員の監視というバイトでした。管理ではなく監視です。
話を電話で聞くと、そこには警備員の幽霊が夜出るそうで、結果的に防犯効果も高いと言います。ただ、万が一もあるのでそれを監視してほしいと言うのです。
私は万が一が嫌だからと断りました。
第七十八話「眼鏡」
友人にファミレスに呼ばれた時の話です。面白い眼鏡があると言って、一つの銀縁眼鏡を机に置いたのです。
「真実の姿が見える眼鏡だ」
友人にそう言われて私は掛けて見ました。
「なんか顔がゆがんでいるように見えるけども、視力が悪いからぼんやりと見えるだけでよく分からない」
私がそう言うと、友人はがっかりした顔をしました。人間不信の人の眼鏡ではなく、歪んだ顔が好きな絵描きの思いがこもった眼鏡だそうで、その絵描きの理想の世界が見えるそうです。
その絵描きは歪んだ顔をずっと描いていたそうで、当然そんな絵は売れずに自殺したと言います。
「その画を飾ってある部屋で寝ると、少しだが顔が歪むんだと言うと良く売れた」
第七十九話「巨人」
友人から聞いた話です。世界中に巨人の伝説があります。
少し大きい人ぐらいの大きさの話もありますが、山のように大きな人である場合も少なくありません。山よりもはるかに大きいとい伝える話もあるのです。
友人がいうには、それは台風や地震などの災害が巨人の一種だからだと言います。台風や竜巻に地震なら巨人伝説にある湖を作ったり山を作ったりも納得できるというのです。
ある巨人伝説では、富士山は巨人が運んでいる途中で落としたので今の位置にあると言います。まだ本来の場所に運び終わっていないのだと。
第八十話「狐の嫁入り」
友人から聞いた話です。ある所では狐の嫁入りがあると言います。
お天気雨の事ではなく、狐が嫁になるのだと言うのです。それは、ある日嫁の見た目が変わっている事をその地方では狐の嫁入りと言うそうです。
あそこの嫁は見た目が変わったから狐が嫁入りしたなと言うそうです。
面白いのは、お坊さんや旦那の方が変わっても狐の嫁入りと言うのだと言います。
「お前、そんなんじゃ狐に嫁入りされるぞ」と言われたらけっこう高い確率で狐が嫁入りすると言います。
「ただ面白いのが、狐の嫁入りで変わる人間の半分は用意した人間と違うらしい。用意した人間と違う人間が狐の嫁入りしたら諦めろという言葉も残っている」
第八十一話「座敷蛇」
友人に聞いた話です。家にいる間だけ幸運をくれる座敷童、その話に似た話は無数にあり、おくない様、座敷小僧、座敷坊主など名前も様々です。
赤い顔に枕や布団をひっくり返すのが特徴でしょうか?
それに近いのに座敷蛇というのがいると言います。その蛇はきれいな女性に化けて、男を賊の家に招くと言うのです。
座敷蛇は赤い蛇で、たまに布団をひっくり返すと言います。赤い蛇なので、真っ赤な服を着ている女性に化けると言うのです。
「見分け方は舌が割れていることだったみたいだが、もの好きで舌を割るのがいるからな、まあ、舌が割れている奴には近づかないことだ」
第八十二話「屍の道」
友人から聞いた話です。仏教の修行に死と向き合う修行があり、円通大師が恋人の死体と過ごし、そのあとに食材となるものたちを、わざと痛めつけて殺し、死とは何かを知るなどの記録が残っています。
往生のための死です。
よくお坊さんは鬼になりやすいのですが、なるのは優しいお坊さんです。JIKININKIの人食い鬼は、死体を食べるという罰のために鬼になりました。
食われる方からは、ただはた迷惑な罰です。人の死を何とも思わないお坊さんは鬼にすらならずに地獄で永遠に責められるのです。
鬼になるのは、良心を痛めつけるというはた迷惑な修行です。鬼になる者は、持って生まれた性格や気性ではなく環境だと言います。性格や気性で鬼になるような奴は、鬼にならずに永遠に地獄での責め苦を受けるからです。
「鬼の中には自分が鬼だと気づかずに、苦しみながら人を食う奴がいる。尊い修行だと勘違いさせて鬼にする奴がいるんだ。彼らは真面目だから嘆きながら人を食うのだよ。まあ彼らを追い込む奴がいるのだが」
第八十三話「七面様」
友人から聞いた話です。ある寺に七面様というミイラがあるそうです。その七面様はななつらさまと読み、頭が縦に七つ連なっていると言います。その7つの頭はえらい坊様だとか、極悪人だとか、よく分からない人で出来ていると言います。
7年に一回その姿を確認して吉凶を占うと言います。そして7年に1回3日間外の空気を感じてもらうと言います。吉凶は七面様の表情で占うのだそうです。
「七面様の子供は名前になをつける決まりになっている」
第八十四話「首なしの騎士」
友人から聞いた話です。友人の知り合いに金持ちがいるらしく、その人がイギリスの山奥の城を買うか決めるためにイギリスに行ったときの話です。
城は貴族が住んでいたため、山奥の不便な所に作られているのが多く、そんな不便な城は安い金額で買えると言います。
その人が1週間その城で体験的に止まっていた時、夜中に金属音がしたと言います。
友人がその音の所へ戦闘用に鞄を手に持ち向かっていくと首のない鎧が歩いていたと言います。
「頭、頭」とその鎧は言っていたそうです。
その鎧はその人に気づき、「お前さんの頭を使えば侍になれるかね」
そう言ったそうです。
「農民だから侍は無理だと言ったら、時代も変わったと言ってどこかへ行ったらしい」
第八十五話「除霊師」
夏なのに風が涼しかった深夜の話です。部屋に血まみれの少女がいました。
「バットを持った除霊死に追いかけられているので朝までかくまって欲しい」と少女は言うのです。外から、
「どこだあ、でてこおい、一発だぞお」という声が遠くから聞こえます。私が少女を見ると。
「胸の傷は生前のだから気にしないで」そう少女はいいました。
朝まで少女と一緒に私はホラー映画を見て過ごすことにしました。念のために私はずっと猫を抱いていました。血が出ると楽しそうに少女は笑いました。
そして、朝になりました。少女は私の顔に顔を近づけ、
「なぜ寝ない」そう言って少女は消えたのでした。
第八十六話「寝ているときに」
ちょっとした話です。寝ているときは自分がどうなっているか分からないですよね。
人は寝ているときに開いた口に虫が入ってきて、結果的に虫を食べているそうです。
蜘蛛年に数匹だと言われています。などですかね。
あとは人の寝ている姿が好きなかじり婆などもいると言います。
友人が言うには、寝ている人の顔に鼻と鼻をくっつけて、寝ている顔を見ているそうです。
枕のよだれが証拠だと言います。
第八十七話「地下の病院」
友人から聞いた話です。ヘボンさんなら恋の病も治せるというように、この医者なら何でも治せるという名医はいますが、どうしても数が限られます。医者のドラマではよく患者がロシアンルーレットのように悪い医者にかかって死にかかっていますね。
優れた医者の技術を残そうと、人形に優れた医者の魂を入れたと言います。
その医者は地下にある病院にいるというのです。生前と同じように優れた医療技術を見せ、成功かと思われましたが、ある患者を人体実験したというのです。その人形に聞くと、人形は紙に書きなぐったそうです。
「私はもう金も贅沢も興味がない。だから報酬として気が向いた時に実験させてもらう」
その病院は後がない人がイチかバチかで使うと言います。
第八十八話「宝石」
私の友人の趣味にリサイクルショップめぐりがあります。とくにネックレスを見るのが好きで、良い物があったら贈るのだそうです。
正確に言うと、嫌な感じの強い物があると、嫌いな人に贈るのだと言います。
ネックレスならサイズを気にしないのでいいので楽だと言います。
友人とリサイクルショップに行ったときに子供用の玩具みたいな指輪を眺めていました。
「埋めれば、でも無理だな」そう言って指輪を戻しました。
「安い装飾品は以外にも強い思いがこもっているときがある」友人はそう言うと、安いネックレスを買いました。近所の人に贈るのだそうです。
第八十九話「地獄車」
これは、友人に焼き鳥屋で聞いた話です。友人は町にはあまりにも車が多いと思うことはないかと言いました。
あの車の数は、車の霊が混ざっているからだと言います。
車があれば恋人ができる、無ければできないと昔は言ったと言いますが、今のようにカメラやビデオカメラにラジカセまで1つに入ったスマホがない時代車は今以上に必要だったのでしょう。今だとトランク一杯の遊び道具が掌に納まりますからね。
なので、昔の人は車に執着している人が多いため、死後あの世に車を持っていくことはできないので、車に乗るために帰ってくると友人は言います。
なので、昼間にもいるそうですが、夜中などは特にそのような車が多いと言います。
中には交通事故が好きな奴もいるので気をつけろと友人は言いました。
「昔の人は地獄車が好きなんだよ」と友人はよく分からないことを言いました。
第九十話「鉄人ぱんだー」
友人から聞いた話です。その町は治安の低下に悩んでいたというのです。そして考えたのが噂を流す事でした。深夜にうろついていると鉄人ぱんだーというパンダの被り物をかぶった金属バットを持った太った男に襲われるという噂です。
結果は、多数の鉄人ぱんだーのなりすましによって町は平和になったと言います。皆、赤い眼のパンダの被り物に黒い金属バットを持っていたそうです。
第九十一話「幽霊の確率論」
幽霊は記憶の曖昧さの中に暮らしている人間と縁の深い住人です。貴方の持っているアルバムに映る今のあなたと似ても似つかない人間が貴方と同一人物であるという曖昧さの中に彼らは暮らしているのです。
半年前の猫の写真を見て、今机で寝ている猫は同じ猫なのだろうかとふと思ったりもします。頑固になると視界が狭くなります。その狭い視覚の死角に彼らはいるでしょう。
人の目に映らぬ者、人の認識外のものはたくさんいます。ただそれだけの話です。
ある人が言いました、見えない死のスイッチに触れた時に人は死ぬのだと。そして、見える者を恐れるが、見えない悪霊の方が怖くないかとも言ったのです。
第九十二話「習慣」
習慣とは、疲れているときでもやれることが習慣だそうです。疲れていてもやってしまうことが習慣なのだと言います。
思いつきで百物語を始めた者は数をまず埋めようと思い、思いつくまま怖い話を書くと言います。それは習慣となり、思いつけば寝ぼけ眼で、目の前が見えなくても書いていくのです。字は書きなれていますからね。
なので、確認すると寝ぼけ眼で書いただろうという話があります。そして、記憶にない話が混ざっているといいます。
実際はただ書いたのを忘れただけかもしれません。1、2、3、沢山という3以上は沢山という数字だという考えもあります。
そんな覚えのない話があった時は妖怪さんが手伝ってくれたと思えばいいと誰かが言いました。また、誰かは言いました。
妖怪になったんだよ。と。ただ、妖怪にも格があるんだよな。と。
第九十三話「無敗の城」
友人から聞いた話です。無敗城という城があるそうです。その城は城というよりも要塞の機能を持った屋敷だと言います。
その地方を守れるようにとの願いを込めて無敗城と名付けたと言うのです。
今は燃えてありません。
無敗にするために多くの人身御供が捧げられたと言います、人身御供と言う名のやっかい者の処分だった可能性もあるらしいのですが、城が焼けた今は人身御供にされた彼らがその城で過ごしているというのです。
やっかい者ですから、迷わず人を襲うと言います。 城と言っても小さい城です。いい場所を求めて彼らと一緒に城も移動していると言います。
第九十四話「鈴の音」
ある夜です。ベッドの下から鈴の音がしました。
猫がベッドの下で寝ているのだろうと思い、私は水を飲みにリビングに行きました。
リビングでは猫が大の字になって寝ていたのです。
ベッドの下の鈴の音は何でしょうか?
確認しようか、無視しようか考えました。犬だと悪い物と良い物の判断ができると聞いたことがありますが、ベッドで寝ている猫には無理でしょうし、守らないといけないでしょう。
色々考えて、ベッドの下にファブリーズをして猫を抱いて寝ました。
次の日ベッドの下を見ると鈴がたくさん落ちていました。そして一斉に鳴ったのです。
チャリンチャリンチャリンチャリン
第九十五話「小説家」
友人から聞いた話です。友人には小説家の知り合いがいるそうです。
その小説家がネタに困っているときにある夢を見たそうです。それは殺人事件の夢だと言います。
書いてみたもののそんなに迫力もなく困ったと言います。
そして、何度も人でないものが人を食べる夢も見たというのです。それは人の顔をした恐竜だというのです。トカゲのような人ではなく、恐竜の体に人の顔が付いているのだそうです。
小説家は恐竜が知能を持ち、人を家畜にしている並行世界を旅していると言い張ると言います。
第九十六話「赤い少女青い少女」
あれはコンビニの帰りでの話です。深夜にコンビニであんまん2つに肉まん1つとお茶2本を買った帰りです。
橋の入口に赤い服を着た少女がいました。
「そこのベンチに座れガキ」少女は私に言いました。私と少女はベンチに座りました。
「私はもう70年この橋にいる。向こうの橋、その橋に800年悪霊やっているのが最近きたんだな」
少女が指をさした1キロほど離れた橋を見ると、遠くなのになぜかはっきりと青い着物を着た少女が見えました。
「悪霊と言ったら赤ではなく青だろうと言うんだな、私が返り血で真っ赤の方が悪霊っぽいと言うと、今昔物語の時代から悪霊は青だと決まっているのにと、最近の若いもんはとため息をつく」少女が言いました。
「どう思う」いつの間にか、青い着物を着た2メートルはありそうな少女に見えた何かが、かちかちと歯を鳴らし、私を見下ろしながら聞きました。
そこで私は気を失ったようです。気が付いたら朝になっていました。どうやらあんまんで勘弁してくれたようです。
2匹の野良猫が私が買った肉まんを食べていました。
「またな」そう言うと猫たちは去っていったのです。
第九十七話「百面船」
友人から聞いた話です。犯罪者が増えると困るのは彼らをどうやって収容するかという問題です。
牢が犯罪者であふれた時にある船を作ったと言います。その船は海をただ回るという陰陽師の呪がかけられた船だというのです。
百人を超す極悪人は船で皆飢え死にしました。そして、その船には彼らの顔が船の表面いっぱいに張り付いたような見た目になったというのです。
その船は百面船と呼ばれ、今も海を漂っていると言います。
第九十八話「スナックマンマーク3」
友人から聞いた話です。不審者情報のメール配信があります。
少女にお店の場所を聞いた禿げた中年男性あり注意とか少年に駅までの道を聞いた短パンの中年男性あり注意とかいう奴です。
そんなに世界が怖いなら家から出なければいいのに。
友人が知り合いの家に行くと、その知り合いに不審者情報のメールが届いたそうです。
そのメールには少女に自分の腹を裂き、その裂けた腹からこぼれたお菓子を投げつける中年男性に注意と書かれていたそうです。
その知り合いの子供が通う学校ではスナックマンマーク3という自分のお腹を裂きその裂けた腹からこぼれたお菓子を投げつける男がいるという噂があるそうです。
マーク3は第一発見者のあだ名だと言います。
そんな話をしていたら。さっきのメールは誤配信です。来年のメールを間違って送ってしまったとメールが来たそうです。
第九十九話「四つ目さん」
友人から聞いた話です。ある山では死んだ死体をその山にある穴に投げ込むと生き返ると言う伝説があったそうです。
ただ、死体を投げ入れても、死体が穴に落ちていくだけなので、ただの伝説として残っていたそうです。
ある家族が娘を投げ入れました。その娘の死体は顔の上半分がかけた無残な死体でした。
生き返って欲しいのではなく、縁を切りたかったのかもしれません。
そして、その娘は帰ってきました。顔の上半分がカエルのようになって。
彼女は「かみ。かみ。かみがないの」と言いながら女性の顔の上半分を切り取っていったそうです。
そして、その切り取った顔を頭にかぶせ「ちがう」と言っては捨てたと言います。その女は13人を殺し、そして、満足して帰っていったと言います。
その女を四つ目さんと呼ぶそうです。
第百話「百物語」
友人から聞いた話です。友人の知り合いが4人集まり百物語をしたと言います。
蝋燭百本を話をしたら消して、百話終わると真っ暗になり、何かが話し出してくれるという方法を選びました。
4人が25話ずつ語りました。
そして100話終わり、100本の蝋燭が消えて部屋が真っ暗になった時。
「そんなに怖い話を聞き集めてすごいね」
いるはずのない5人目が語り始めました。
「そんなことに時間使っているとろくなことないよ。時間はみな平等に与えられているのだから考えて使わないと」
4人は5人目に1時間説教されたと言います。
説教が終わると、4人は1回寝ることにしました。そして、昨日の百物語を聞いたのです。5人目だけでなく、話と話の間にもいくつかの話が入っていたそうですが、日本語ではなかったので分からなかったと言います。
話が勝手に増えるのは怪談話を管理しているPCのファイルの項目の数字が勝手に増えるようなものですかね?30こえると項目が増えていることには気づいても何が増えたのか見当がつかないんですよね。デジタルだからこそ入りやすい気がします。
そして、4人は色々あり、仲良く留年したそうです。
2回も。
最後のろうそくが消えました・・・
百物語、いかがでしたでしょうか。読み終わったら何かが起こりそうでちょっと怖い。
しかし、こうして百話並べてみると圧巻ですね。たくさんのお話を投稿してくださった井蛙はる様、ありがとうございました。
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コメント
人の褌で相撲取った上で、自分の営利のためにサイト利用する奴、マジでクソ。
面白い試みだけど、文章自体あまり巧くないので最後まで読むのは難しい
作者は出版社に持っていくべきだ 応援するぞ
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応援するぞ
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百物語に簡単には使えない。
百物語には灯明が使われた。
ただ灯明は消したと思ってもまた灯ることがある。油に芯浸してるからね。
百物語は灯ってる灯りの数で話数を確認してるから、百以上集まることもあったらしいよ。
まぁ百は「多い」の意味でもあるから、百より多くても少なくても問題ない。百集まることじゃなく、夜通し起きてることが大事だったんだから。
今回はカルピスですらなかった
きっとこれ書いた本人でしょ