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第一次世界大戦で顔を負傷した兵士たちの為に、オーダーメイドのマスクを次々と作り上げた善意の女性彫刻家(アメリカ) : カラパイア

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 1914年7月28日から始まった第一次世界大戦。当時の戦争は人類にとって最悪だった。軍事技術が急速に発展していったのに対し、医療技術が全く追いつかなかったのだ。

 大多数の軍は改良型の機関銃を使用し、性能の上がった機関銃による戦死者の数は急増した。毒ガスが本格的に使用されたことで戦争の歴史の新しい章を刻んだ。

 運よく生きのびても毒ガスで顔が焼かれたり、顔面を銃で撃たれた兵士たちの顔は目も当てられない状態だった。

 歪んだ顔のまま生きていくことは辛い。そんな兵士たちを救ったのは 医師ではなく一人の女性彫刻家だった。
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その生涯を兵士のマスク制作に費やしたアメリカの彫刻家


 1917年、夫と共にフランスに移住したアメリカの彫刻家、アンナ・コールマン・ラッドは、イギリス人の彫刻家、フランシス・ダーウェント・ウッドに出会うことで運命が変わる。

 ウッドは「ティン・ノーズ・ショップ」という店で顔を損傷した兵士達のための人工装具としてのマスクを制作し、彼らの人生に新たなチャンスを与えていた。

 彼に影響を受けたアンナは「ポートレイト・マスクスタジオ」を設立し、兵士のためのマスク作りを開始した。

 1人1人の兵士の顔に合わせたマスクを作るのは容易なことではなく、1つのマスクをつくるのに1か月はかかる。だが彼女はマスクを作り続けた。その生涯をマスク作りに捧げ、手掛けたマスクは200にも上ったという。


Anna Coleman Ladd's Studio for Portrait Masks in Paris


見た目を気にし心を病む兵士の為に最良のマスクを


 顔を負傷し、潰れてしまった兵士たちはミティレ(傷ついた、切り裂かれた、失った人) と呼ばれていた。

 彼らは他人が自分たちの顔をどう受け止め考えるかをすごく気に病んでいた。人に会うことを拒み、孤独に陥って行くものがほとんどだった。

 彼らはすべての戦争の中で最も悲劇的な犠牲者なのだ。

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 アンナは持ち前の芸術センスと器用さで、当時の水準を上回る素晴らしいマスクを次々と作り上げていった。

 1つのマスクをつくるのに1か月はかかる。しかもそのマスクですら、数年装着し続ければボロボロに崩れてしまう。

 それでもアンナはマスクを作り続ける。そのマスクで人生を救われた兵士が多くいたことは確かである。

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 1932年、彼女の慈善活動を称え、アンナはフランス政府によって名誉の勲章を授与された。
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 第一次世界大戦で顔面がつぶれてしまった帰還兵は約2万人にのぼったという。アンナはマスクづくりに没頭し、寝る間も惜しんで約200のマスクを作ったが、それでもほんの1部の兵士しか救うことはできなかった。

 だが彼女の活動は多くの人々の心を動かしたし、今もそれは語り継がれている。

References: deMilked / written by いぶりがっこ / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 22:36
  • ID:f0SJf7P20 #

戦争は英雄伝のようには綺麗に終わらない

2

2. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 22:45
  • ID:XG8vmoB70 #

心の底から尊敬する。
装着者は彼女にどれだけ心救われただろうかと想いを馳せてしまうなぁ。

3

3. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 22:49
  • ID:pX9CyzG40 #

映像の世紀であったな

4

4. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 22:50
  • ID:IEVErKUI0 #

たった一人では限界がある
それでも彼女によって救われた人がいるという事実があるからこそ
語り継がれてきたんだろう

それにしてもものすごいリアルな造形力

5

5. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 22:56
  • ID:ZBjAExY40 #

NHKの映像の世紀で見たな。
塹壕症候群で震え続けてる兵士の映像もすごかった。

6

6. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 22:57
  • ID:UctaO3zY0 #

尊いなあ、時の中に埋もれても偉大な行いはいつか誰かの目に留まって心を洗ってくれる
大小に拘らず良い行いを心がけて行きたいね

7

7. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 22:59
  • ID:WOMBrrYn0 #

戦争の悲惨さを語れる人が少なくなってしまった
うちの一族では90になるばあちゃん1人に

8

8. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 23:02
  • ID:tV3uUiKn0 #

英雄が戦場から消えた戦争だからなおさらである

9

9. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 23:05
  • ID:120EBKhb0 #

鶴見少尉(日露戦争1905年)は、WW1(1914)より10年も早く、お洒落マスクしてるんだな。
視覚的な心理障害の克服、義眼とかは昔からあるけど。

10

10.

  • 2018年09月14日 23:07
  • ID:MnqwkMd.0 #
11

11. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 23:08
  • ID:IVGxTMMt0 #

美容整形って元はこの対戦で顔を失った人たちをなんとかしてあげたいって始まったのね
つまりもし第一次がなかったら整形技術はもっと未熟なままだったかもしれないね

マスクの必要な人たちはなんか身分が高そうな人が多いね
きっと社交界とかで露出する機会が多いから精巧なマスクが必要なんだろな

12

12.

  • 2018年09月14日 23:10
  • ID:MnqwkMd.0 #
13

13. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 23:11
  • ID:EfNCu5QF0 #

凄い技術だな。
もう特殊メイクだ

14

14. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 23:13
  • ID:kqnUd56U0 #

白黒写真ってのもあるかもしれないけど、言われなきゃ分からないね。

負傷兵の方々の、どれだけ救いになったものか。こう言う人をもっとテレビでも取り上げて欲しいなぁ。
それにしても200人分か…作るの大変なんだろうな。

15

15. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 23:15
  • ID:pSsQIDpH0 #

何と気の毒な。
怪我した兵隊さんたちになんの補償もなかったことは
ダウントンアビーを見てて気づいたよ。
国家権力って残酷なことをするよ。

この人の技量はたいしたものだ。 モノクロだと全く違和感がないもの。

16

16. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 23:17
  • ID:GzQJfz6t0 #

これはすげえいい仕事だ
使う本人だけじゃなく周りの人にも優しい

17

17. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 23:17
  • ID:8MYpGxmd0 #

「生きてるだけで丸儲け」と言えるようになるにはこういう善意やサポートも必要なんだろうな

18

18. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 23:17
  • ID:.FLW.Cl20 #

グッと胸に詰まって来た。
涙が出そうになった。

19

19. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 23:23
  • ID:.FLW.Cl20 #

彼女は、フローレンス・ナイチンゲールやアンディ・デュナンと並んで、教科書や世界の偉い人伝記に載せられるべき人物ではないか?と思う。

20

20.

  • 2018年09月14日 23:24
  • ID:PdTUjYIw0 #
21

21. 匿名処理班

  • 2018年09月14日 23:24
  • ID:gGogJRSI0 #

みんな結構映像の世紀見てるんだな
数ヶ月で終わる戦争と思い軽いノリじゃないけど意気揚々と戦地に向かったけど現実は塹壕の中で丸くなって震えてたって話が今でも印象に残ってる

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