モバP「白詰草に想いを込めて」智絵里「見捨てないで…!」
初めて出会った時、あなたは優しく話しかけて来てくれた。
「君は臆病者なんかじゃない、だって、今の自分を変えたいと思ったから、勇気を出してここまで来たんだろう?大丈夫、きっと上手くいくさ!」
不安と恐怖で逃げ出しそうな私の背中を、あなたは優しく押してくれた。
ずっとひとりぼっちだった。そんな私に、あなたは手を差し伸べてくれた。
「智絵里の信頼に足る男でいられるよう、努力するよ!だから…智絵里もレッスン、頑張ろう?僕も一緒に頑張るからさ」
レッスンで何度も失敗して、心が折れそうになった。そんな私を、あなたはいつも応援してくれた。
デビューライブの成功、あなたは私以上に喜んでくれましたね。
「智絵里はいい子だな~優しくて、いつも笑顔で…まるで天使だな!」
あなたから優しさを貰ったんです。あなたが傍にいるから、笑顔でいられるんです。
一緒にいると、どんどん堕ちていくのが分かる。あなたの魅力に。
「響子の作る料理は世界一おいしいからな~ずっと食べていたいよ。いつもありがとう、響子」
あなたが、他の女の子に笑顔を向けると心がざわつく。どうして…どうして……?
あなたに振り向いてほしくて…女の子としてみてもらいたくて…私、あなたが必要なんです。あなたがいなくちゃ生きていけない。
「僕にとって、みんな自慢の担当アイドルさ!君達なら、絶対にトップアイドルになれる!!」
誰もがあなたの優しさに惹かれていく、その優しさを…独占したい、私だけに向けて欲しい……そう思うのは…いけない、ことでしょうか?なら…私は……
悪い子でも構わない
ちえり「お母さん、みてみて!」
ある日のこと、私はお母さんと一緒に、緑豊かな自然公園に遊びに来ていました。そこで、私は変わったものを見つける。
母「どうかしたの?」
ちえり「ほらっ、これだけはっぱが1枚おおいんだ~ほかのは3枚だけなのに!」
ちえり「やっぱり、めずらしいのかな……?」
母「そうよ、四葉のクローバーにはね、見つけた人には幸運が訪れる、という言い伝えがあるのよ」
ちえり「へ~そうなんだぁ……。えへへ、うれしいな……♪」
ちえり「うんっ」
家に持ち帰ったこのクローバーを使って、お母さんはお守りを作ってくれました。
布を切って縫い、出来上がったお守り袋の中に、押し花にしたクローバーを入れただけの簡単なものでしたが、私にとっては、宝石以上の価値がある宝物でした。
この出来事をきっかけに、四葉のクローバーは私にとって、特別なモノとなったのです。
綺麗なお花のこと、珍しい植物のこと、お守りや栞の作り方……。
とっても素敵で、大好きなお母さん。いつか私もこんな大人になれるといいなぁと思っていました。
ちえり「お母さんー、早く早く!」
母「智絵里?そんなに慌てなくても大丈夫よ?」
ちえり「だって、ずっと楽しみにしていたから……お菓子作りなんて、わたし初めてだもん!」
その日、私はお母さんにお菓子作りを教えて貰う約束でした。
いつもお母さんが作ってくれるおいしいクッキー。それを自分で作れるようになると思い、はしゃいでいたんです。
母「…!待って!智絵里っ!」
ちえり「え…?」クルッ
母「…っ!」ダッ
ちえり「う、ううん……」
地面に強く叩きつけられて、視界が揺れる……後ろから誰かに強く引っ張られたのです。目を開けると、そこには…
ちえり「お母…さん……?」
目の前に全身血だらけのお母さんが倒れていました。
ちえり「赤い…血……?」フラッ ドサッ
「誰か車に轢かれたぞ!!!」
「救急車、救急車を呼べっっ!!!」
ちえり(お母…さん……)
ちえり「…あれ…?ここは……?」
目を覚ますと、真っ白な天井が見えました。ほのかに香る消毒液の匂い。
看護師「!良かった…!智絵里ちゃん!目を覚ましたのね!」
ちえり「……わたし…たしか、お母さんとお家に帰る途中で……」
ちえり「―――!!」ゾクッ
ちえり「ま、まってくださいっ!!!」ギュッ
看護師「智絵里ちゃん?」
ちえり「あ、あのっ、わたしのそばにお母さんが…お母さんが血だらけで倒れていて……お母さんは無事なんですか!?」
ちえり「わたしは大丈夫だから……だからっ!お母さんを助けてっ!!お願いっ!!」
看護師「……」
ちえり「看護師さん…?」
ちえり「……………………え」
目の前が真っ暗になる。色鮮やかだった景色が黒く染まっていく。
その時、幸せだった日常が終わりを告げたのです。
事故が起きた数日後、お母さんの葬式が行われました。
数日前まで一緒に笑い合っていたお母さんが事故で帰らぬ人になった。
その事実を、私は受け止めきることができませんでした。残酷な現実を直視するには、まだ幼すぎたのです。
「なんでも、娘さんを庇って轢かれたとか」
「まだ若かったのに…旦那さんもお気の毒ですわね…」
ちえり「……………」
父「智絵里、もう寝なさい。今日は疲れただろう」
ちえり「お父…さん……」
葬式が終わり、お家に帰ってきていた私とお父さん。
私は、お母さんがお家に帰ってくるのを玄関でずっと待っていました。
ここにいれば、お母さんがいつもの優しい笑顔で帰ってきてくれる……そう信じていたんです。
ちえり「………いや…だ」
父「智絵里?」
ちえり「いやだっ!!!だって…だって……!約束したもん!!お家に帰ったら、一緒にお菓子作りするって!!美味しいクッキーの焼き方、教えてくれるって…約束したもんっ!!!」
ちえり「知らないっ!!絶対に帰ってくるもん……お母さんはわたしに嘘ついたこと、一度もないもん!お母さんは…お母さんは……!」
父「……いい加減にしないかっ!!!!」
ちえり「!」ビクッ
ちえり「――あ」
『よ…かっ……た…あなた…が無事………で』
父「くそっ……!なんで…なんでっ……!!お前だけが生き残って、あの人は死ななくちゃならないんだっ……!!!」ダンッ
父「…っ、すまん、言い過ぎた」
ちえり「……」
父「と、とにかく、明日も早い、もう寝るんだ、いいな?」スタスタ バタン
お母さんを殺したんだ
学校に通い始めた頃は、様々な人に声を掛けられました。
同情する人、励ます人、興味本位で事故のことを聞いてくる人。
人それぞれでしたが、それも数日間だけ。1週間もたてば、皆の関心は別の所に移り、すっかり忘れられてしまいました。
かつて仲のよかった友達もいなくなり、それどころか、先生達までもが私のことを腫れもの扱いするようになりました。
家にも、学校にも、自分を支えてくれる人は誰もいない。
気がつけば、私はひとりぼっちになっていました。
多分、お父さんは、新たな地で一から人生をやり直そうとしていたのでしょう。
三重には、お母さんとの思い出がたくさんあります。どこへ行っても、お母さんの事を思い出してしまう。
きっと、お父さんにはそれが耐えられなかったんです。
父「智絵里、大切な話があるんだ…聞いてくれるか?」
ちえり「お父さん……?」
お父さん「父さんな…再婚しようと思うんだ」
ちえり「……再婚」
ちえり「……お父さんが決めた人なら…いいと思う……」
父「そ、そうか!良かった。きっと、智絵里も気に入ってくれると思うぞっ」
ちえり「………」
ちえり(お母さん以外の人なんて……)
新母「初めまして!――といいます。智絵里ちゃん、これからよろしくね」
ちえり「……よろしくお願いします」
新母「そんなに固くならなくてもいいのよ?今日から、あなたのお母さんになるんだから」
ちえり「………」
新母「あ、あら?」
新母「そ、そうねっ、これから時間はたくさんあるものっ」
ちえり「………」
数週間後、私とお父さん、再婚相手の女性、3人での家族生活が始まりました。
話してみると、確かに明るく、丁寧で、綺麗な人でした。でも……
多分、早く母親として認めてもらいたかったのでしょう。
でも、私はどうしても彼女のことを母親として認めることができませんでした。
むしろ、無理やり距離を詰めてくる彼女に対して、ある種の拒否感を抱いてしまっていました。
それに気づいていたかどうかは定かではありませんが、彼女の方も私に対し、自然と、あまり関わり合わないようになっていきました。
それでも、表面上は親しくしていたと思います。
父「しょうがないだろう…仕事が忙しいんだ。その分遅くなるのは当たり前だろう」
新母「でも…私達、結婚してもうだいぶ経つじゃない。そろそろ子供が欲しいのよ」
父「子供って…智絵里がいるじゃないか」
父「あのなぁ、今でさえ厳しい生活をしているのに、子供があと一人増えてみろ、どう養っていくつもりだ」
新母「それは…あなたの稼ぎが少ないからこうなっているんでしょうっ!!」
父「……なんだと」
父「おまえ…!俺がどんな思いをして、毎日働いているのか、理解してそんなこと言っているのかっ!!」
新母「旦那が家のために働き、金を稼ぐのは当たり前のことでしょう?」
父「…そんなに金金言うのなら、お前も働けばいいじゃないか…!」
父「……あの人なら…そんなことは言わなかったのに…」
新母「……なんですって…?」
父「あの人は、お前のようなワガママな女じゃなかった…って言ってるんだよ」
父「お前のような奴と一緒にいれば、嫌でも思い出すよ」
新母「……っ…!」バタン
新母「……アンタが…アンタみたいな奴がいるから……!」ギリッ
智絵里「……あ」
中学に通いはじめた頃、父と――さんは毎日のように喧嘩をするようになりました。
でも、私には止める術はありません。その資格もない。
私が…私なんかがいるから……こんなことが起きるようになってしまったんですから。
智絵里「……」ガラガラ
「うわっ、また来たよ、あの根暗女…」
「どの面下げて来ているんだろうね」
「ホント、死ねばいいのに」
智絵里「………」
中学2年の頃、私はとある男子生徒に告白されました。
その人は、運動部で期待のエースと呼ばれていたらしく、女子生徒からの人気も高かった生徒でした。
そういったことに興味がなかった私にとって、それは迷惑以外の何物でもありません。
告白を断った次の日には、その話が学校中に知れ渡り、そのせいか、多くの女子生徒から顰蹙を買うようになったのです。
智絵里(死ね…か……)
学校では嫌われ者、家では邪魔者。私は誰にも必要とされないソンザイだったんです。
消えたい、死んでしまいたいと思ったことは1度ではありません。
それでも、お母さんが命を捨ててでも救ってくれた命、それを無駄にすることなんてできません。それに…
今更死んだところで、もう二度とお母さんには会えないのですから。
高校生になり、同級生からのいじめはなくなりました。
でも、今までずっと周囲との間で壁を作ってきた私に友達ができるはずもなく、学校ではずっと孤立していました。
そんな私が16になった年のある日のこと…
同級生A「ねえねえ!ちょっと見なさいよっ、これ!」
同級生B「な、なんだよ、いきなり?」
智絵里「……」
同級生A「ほらっ、ここの記事っ!」
同級生A「すごくないっ!?応募すれば、あの有名な346プロでアイドルデビューできるかもしれないのよ!」
同級生B「はぁ…346プロって、なに?」
同級生A「は?あんた、そんなことも知らないの?」
同級生C「346プロダクション。老舗でありながら、常に新しい流行を取り入れることを信条としている芸能事務所。今日、新しくアイドル部門が設立され、シンデレラプロジェクトを発足。数々の人気アイドルを輩出している」
同級生B「く、詳しいね」
同級生C「勉強…したから…」
同級生B「う、う~ん…」
同級生C「大丈夫。今からでも遅くないわ。これから一緒に知っていけばいいのよ」
同級生B「そ、そうかな…」
同級生B「ドキドキお料理教室?」
同級生C「うん…私のお気に入りなの……美味しいお料理の仕方を教えてくれる人気番組よ……きっとB君も楽しめるわ」
同級生B「料理かぁ~少し興味が湧いてきたかも。今日観に行ってもいいかな?」
同級生C「うん…待ってる…」
同級生C「……じゃま」
同級生A「なんですってぇぇぇー!!」
智絵里(………アイドル、かぁ…)
智絵里「346プロダクション シンデレラプロジェクト企画 新人アイドルオーディション。経験、未経験を問わず大歓迎……」
学校帰り、何の気なしに立ち寄った公園でスマホを起動し、クラスの人達が話していた346プロの公式サイトを見る。そこには、確かに新人アイドルの募集要項が掲載されていました。
智絵里「………」
別に、本気でアイドルになれると思っていたわけじゃありません。
思春期の子供が、親や先生に反発するため、髪の毛を染めたり、たばこを吸ったりするようなものだったんです。
緒方智絵里という人間が、たしかに存在する、それを証明したい……たったそれだけのことでした。
私なんかが選ばれるはずがない、ちょっとした気まぐれで、後々笑い話になるようなこと。
そんな思考が、家に着いてからもずっと頭の中でグルグルしていました。
1週間後、そんな私宛に届けられた1通の手紙。一次審査通過、オーディションの開催日時を知らせるものでした。
P「新人アイドルのオーディション?」
仕事の合間時間、担当アイドル達と一緒に休憩をしていた僕に、同僚のプロデューサーが話しかけてきた。
同僚P「ああ、今度、ウチの課主催のオーディションが行われることは知っているよな?」
P「ああ」
同僚P「本当は俺も参加するつもりだったんだが…俺はもうLiPPSの5人を担当しているからな…辞退することにしたんだ。けど、せっかくだし、お前が代わりに参加してみないか?」
346プロでは社長の意向により、プロデューサーとアイドルの間で強い信頼関係を結ぶことが重視されている。
そのため、一部例外はあるものの、基本的には1人のプロデューサーにつき、5人までアイドルを担当するようにと定められている。
P「う~ん…」
響子「ま、まさか、もう次の女の子に目星をつけているんですかっ!?」
P「え?いや、そんなことはないけど」
響子「…ほっ」
卯月「私はプロデューサーさんにスカウトされたよ!」
美穂「私は社長さんに…響子ちゃんも確か、プロデューサーさんにスカウトされたんだったよね?」
響子「うん!」
P「……」
P「僕、参加してみるよ。そのオーディションに」
オーディション参加者の大半は、自らアイドルになりたいという強い意志を持ってやって来る女の子達だろう。
それらが、どういった存在なのか…プロデューサーとして、知っておくべきだと思う。
P「これは…」
同僚P「当日、俺が面接する予定だった子達の資料だ。一度、目を通しておくといい」
P「そうか…ありがとう。参考にさせてもらうよ」
P「いや、今日は遠慮しておくよ、世界一美味しいお昼ご飯が待っているからね」
響子「…♪」ムフーッ
美穂「響子ちゃんの手料理、すっごく美味しいもんね!」
卯月「うんっ、頬っぺたが落ちそうになるよねっ」
ゆかり「そうですね…わたしも、響子ちゃんが作るお料理…好きです…♪」
奏「あら?誰が問題児ですって?」
同僚P「げっ」
志希「どうも~問題児2号のしきちゃんで~す」ガバッ クンカクンカ
同僚P「うわぁっ!どこから出てきやがった!?」ビクッ
周子「プロデューサーさ~ん?今日もお昼おごって~、おなかすいた~ん」
美嘉「や、やっほ~☆」
同僚P「あのなぁ、お前らだってそれなりに稼いでるだろ!?わざわざ俺みたいな安月給にたかりに来るなよ…今月ピンチなんだって!!」
同僚P「や、やめないか//」
志希「それならあたしだってー!プロデューサーのエキスがたーぷり滲み込んだシャツ、提供してくれるなら、面倒みてあげるよ~どう?悪くない取引でしょ~」
同僚P「お前は面倒みられる側だろうがっ」
同僚P「俺は宮本家に婿入りするつもりはないよ!」
周子「…一緒に食べなきゃ、意味ないじゃん」ボソッ
同僚P「は!?なんか言ったか!?」
周子「な、なにも言ってないし///」アセアセ
美嘉「プロデューサー…手料理食べたいんだ…頑張ってみようかな…?」ボソッ
同僚P「わかったわかったから!顔近づけんな//は・な・れ・ろ!」グイ
奏「もう…つれない男ね」
志希「イエ~イ!おごりですって、宮本さん?」
フレデリカ「そうですわねー!一ノ瀬さん?」
周子「ふふっ、ゴチになりま~す♪」
同僚P「まったく…こいつら…」
同僚P「いいっていいって、美嘉にはいつも色々世話になってるからさ。こんな時くらい大人しく奢られてろって」ポンポン
美嘉「あ、ありがと…へへへ///」
志希「ああっー!贔屓よくないんだー!あたしもあたしもー」
フレデリカ「そうだそうだー!」
同僚P「ああーうっさいうっさい!早く行くぞっ」スタスタ
奏「ふふふ、またね?」スタスタ
P「あ、ああ……すごいなぁ、同僚P…モテモテじゃないか…」
響子「えっ」
美穂「へ?」
卯月「はい?」
ゆかり「?」
響子「………はぁ」
美穂「………お兄さんの鈍感」ボソッ
卯月「プロデューサーさん……」ヤレヤレ
ゆかり「そんなことないです…プロデューサーさんも負けないくらい、素敵ですよ」ニッコ
響子「…そうですよっ!プロデューサーは宇宙一かっこいいですからっ」ズイッ
卯月「はいっ!プロデューサーさんは私達みんなの、大切な人ですから!」ニコニコ
P「お、おう?ありがと?」
美穂「筋金入りの鈍感ですけどっ…」ハァ~
P「少し遅くなってしまったな…急がないと」タッタッタ
オーディション当日、直前の営業が長引き、予定の時間より少し遅めに会場についた僕は急いでちひろさんや他のプロデューサーとの集合場所へと向かっていた。辺りを見渡せば、オーディションを受けに来たであろう少女達が数多くいた。
P「みんな張り詰めた表情をしているな…当然か……あれ?」ピタッ
受付の位置が分からなくて、困っているのかな?
P「…放っておくことはできないよな…よしっ」スタスタ
幸い、まだ時間はある。早めに済ませれば十分間に合うだろう。
智絵里「ううう……お、オーディション会場って…ここ……?ひ、人がいっぱいで……こ、こわい…」
智絵里「やっぱり、私がアイドルを目指すなんて……無理かも……。このままこっそり帰ろう……。帰って、忘れちゃおう……」
ひとりでやって来たオーディション会場。今まで、碌に人と関わってこなかった私にとって、人込みは恐怖以外の何物でもありませんでした。会場の空気を前にすっかり怖気づいてしまった私は受付もできず、オロオロしていました。そんな時です。
智絵里「きゃぁっ!?す、すみませんっ!ごめんなさいっ!許してくださいっ!わたし、アイドルになりたいなんて……もう二度と言いませんからっ……!」アセアセ
男性「お、落ち着いて」
智絵里「あっ、はい……あの、大きい声を出してごめんなさい……。ここの、関係者ですか……?事務員さんかな……?」
智絵里「受付はこっち……?い、いえ、私は……その……帰ろうかと……」
男性「え!?ど、どうして」
智絵里「そ、その……私、小さい頃から引っ込み思案な性格で……。暗くて……臆病者な……ダメな子なんです……。こんな私をみて、周りの人にも嫌われて……」
男性「……」
智絵里「なので、書類をポストにいれるだけで勇気を使い果たして……まさか、オーディション審査に進むなんて思わなくって……。あのときは、どうかしていて……」
男性(……この子)
智絵里「あっ、あのっ、ごめんなさい、私、事務員さんにこんな話……。でも、お話聞いてくれて、ありがとうございました……。最後に、いろいろ話せてすっきりしました……」
智絵里「なりたくないっていうか……なれるわけないと思います……。それに、受付時間ももう終わりだし……」
男性「大丈夫!僕からも受付スタッフさんにお願いしてみるから!」
智絵里「え……?でも……」
智絵里「わ、あ、あのっ」
男性「ほらほら、いくよ~早くしないと本当に間に合わなくなってしまう」タッタッタ
智絵里「え、えええっ!」とてとてとてとて
事務員さんに手を引かれて受付まで連れてこられた私は、なし崩し的にオーディションへと参加することになりました。少し強引な人だったけど、私なんかに親身になってくれた人は本当に久しぶりで……少し、嬉しい気持ちになりました。
男性「緒方さ~ん!ファイト~!!君なら絶対に大丈夫だよー!!」ブンブン
……ちょっとだけ、子供っぽい人ですけど。
P「……行ったか」
緒方智絵里さん、あの子ならきっと、最高のアイドルになれる。僕はそう確信していた。
P「やれやれ、オーディション前にトップアイドルの卵、見つけちゃったかな」
ちひろさん達にも報告しないと……素敵な子、見つけましたよって。
オーディションを終え、私はお家に帰ってきていました。
面接官との会話では、お世辞にも上手に話せていたとは言えなかっただろうけど、自分の正直な気持ちを話すことはできたと思います。
これもすべて、あの事務員さんが私を応援してくれたおかげです。
智絵里「……また…会えるといいなぁ……」
どうしてだろう……?
智絵里「アイドルの面接をする時の決まり事なのかな……?」
数日後、また私宛に一通の手紙が送られてきていました。中を開けると、そこには…
智絵里「し、ししし、失礼しますっ」
まさかのオーディション合格通知を受け取ってから数日後、私は346プロの第1芸能課…?という場所に来ていました。
途中で道に迷ってしまった時、親切な女の子が場所を教えてくれたりもしました。
もしかして、アイドルの子だったのでしょうか。
女性「あら?あなたは…」
智絵里「お、緒方…智絵里……ですっ。あ、あの、通知をもらって…きょ、今日、事務所に来るように……と書かれていて……そ、その……」
智絵里「は、はじめましてっ……」
ちひろ「ふふっ、そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。今、あなたの担当になるプロデューサーを呼んできますから、そちらの控え室で少し待っていてくださいね」
智絵里「は、はい……ありがとう……ございます……」
千川さんに案内された控え室に入り、息を整える。
ほ、本当にアイドルの事務所に来ているんですね……
智絵里「う、うう……緊張してきた……」
トントン
智絵里「は、はいっ!」ビクッ
ドアを叩かれ、中に人が入ってくる。その人は…
変な人「失礼しますっ、よく来てくれたね!緒方智絵里さん」
そこには、変な被り物を被った人が立っていた。アルファベットの……P……?
智絵里「……え…あっ……」
智絵里「その……どちらさまです……か?」
変な人「ご、ごめん!やっぱりPヘッドはないよな!あはは、あはははっ!すぐに外すから、ちょっと待ってね!」ゴソゴソ
智絵里「は、はぁ…?」
その人が急いで頭の被り物を外す、その下から出てきた素顔は……
なんと、先日オーディション会場で私を励ましてくれた優しい事務員さんではないですか!?
突然の再会に、私は動揺を隠せませんでした。
P「久しぶり!…といっても、たった数日だけどね…僕は、346プロダクション 第1芸能課所属のPといいます。この度、君のプロデューサーを担当することになりました」
智絵里「ぷ、プロデューサーさんだったんですか……!ご、ごめんなさい、そうとは知らないで、とんだご無礼を……!」
智絵里「は、はい……」
P「また会えて嬉しいよ!これから一緒に頑張っていこうね」ニッコリ
智絵里「!」ドキン
この後、事務所の社長さんや、同じプロデューサーさんの担当アイドルである五十嵐響子ちゃん、小日向美穂ちゃん、島村卯月ちゃん、水本ゆかりちゃんを紹介されました。
みんな、優しく、フレンドリーに接してくれたので、なんだか安心しました。
新しい何かが、始まった気がする。
トレーナー「はいっ、そこまで!」
智絵里「は、はい……!」ハァハァ
トレーナー「う~ん…やっぱりまだ動きが固いですね…」
智絵里「す…すみません……」
智絵里「そう……でしょうか……」ハァハァ
トレーナー「今日のレッスンはここまで。今日教わった内容は、次のレッスン日までしっかり復習しておくんですよ?」
智絵里「は、はい……ありがとう……ございました」ハァハァ
P「智絵里、お疲れさま」
智絵里「プロデューサーさん……おはようございます……」
P「大丈夫?顔色が悪いよ?」
智絵里「そう……ですか?すみません、ちょっと貧血気味で……。先ほど、スタジオでダンスレッスンをしたんですけど……思うように身体が動かなくて……何度も足がもつれて……」
P「智絵里……」
智絵里「せっかく、プロデューサーさんがくれたチャンスなのに……また期待に応えられなくて、本当に本当に……すみません……」
P「そんなに落ち込まなくても…レッスンは始まったばかりじゃないか!大丈夫、まだまだこれからだよ」
智絵里「何をやっても劣等生……私みたいな落ちこぼれがアイドルなんて……きっと無理ですよ……」
P「……」
智絵里「だから……だからプロデューサーさんも……わ、私なんか早く見切りをつけて……他の方のプロデュースに専n P「えいっ」むぎゅ!?」
P「はい、そこまで」むぎゅー
智絵里「うむ~…ぷはぁ!ぷ、プロデューサーさん!?いきなり頬っぺをつまむなんて……酷いですよぅ……」
智絵里「そんなこと……ありえないです……響子ちゃんは優しくて、美穂ちゃんは可愛くて、卯月ちゃんは頑張り屋さんで、ゆかりちゃんは綺麗……私は、根暗で、臆病で、弱虫な、ダメダメなんです……」
P「う~ん、智絵里はまず、その自信のなさをどうにかしないといけないな…よしっ」
P「智絵里っ、今日から毎日、君に会うたびに、かわいいって言い続けるぞ!」
P「智絵里かわいい」
智絵里「う、ううう///」
P「もし、自分が信じられないのなら…智絵里のことを信じる僕を、信じてくれないか?」
智絵里「プロデューサーさんを信じる……ですか……?」
智絵里「……プロデューサーさんのことなら……信じられるかも……しれません」
P「良かった…智絵里の信頼に足る男でいられるよう、努力するよ!だから…智絵里もレッスン、頑張ろう?僕も一緒に頑張るからさ」
智絵里「……はい……!」
智絵里「ぷ、プロデューサーさんっ///」
P「あははは!」
その時のプロデューサーの笑顔は、今でも忘れられません。
それくらい、あったかくて……お日様みたいな表情だったんです。
プロデューサーさんと一緒に毎朝ジョギングをしたり、公園でちょっとしたスポーツをしたり……プロデューサーさんは、私の負担にならない程度の軽い運動に毎日付き合ってくれました。
プロデューサーさんだって忙しいはずなのに…嫌な顔一つせず、私と一緒にいてくれる。
そのかいもあってか、だんだんと体力がついてきて、少しだけ…自分に自信が持てるようになっていきました。
引っ込み思案な性格を理由に、碌に人と関わってこなかったツケが回ってきたのでしょう。
これは、プロデューサーさんと一緒に、今後お世話になるであろう人達への挨拶回りを始めた直後の話です。
P「う~ん、初対面の人だと、やっぱり緊張しちゃうか」
智絵里「す、すみません……私……相手の人の顔すらまともに見れなくて……」
P「別に、男の人だけが苦手ってわけじゃないんだよね?」
智絵里「えっと……それは……はい……」
智絵里「練習……?」
P「Pと!智絵里の!演技大作戦!!」
智絵里「へ……!?」
智絵里「なるほど……?」
P「おほんっ…始めるよ」
智絵里「は、はいっ……!」
智絵里「う、うん……お兄ちゃん…」
P「……………すぅぅぅぅ、落ち着け落ち着け……」ブツブツ
智絵里「どうしたの……?お兄ちゃん……?」
P「…………ゴフッ」
P「だ、大丈夫だ…続けてくれ…」
智絵里「は、はい…じゃなかった……うん…」
P「ごめんよ、智絵里……でも、もう大丈夫だ…俺はもう…君の傍から一生離れない…約束するよ…」
智絵里「お、お兄ちゃん……」ドキドキ
P「智絵里…この10年間、君を忘れた日はなかった…ずっと…君のことだけを想っていたんだ」
P「目をそらさないで……!」ガシッ
智絵里「!?」ドクン
P「智絵里………俺は…俺はっ、君のことが大好きなんだ!(お兄さんとして)」
智絵里「…………きゅう」ぱたっ
智絵里「う、う~ん///」
P「まいったな……気絶するほど怖かったのか…悪いことしたな…」クルッ
美穂「………………」ジー
美穂「………私の時は、大好きなんていってくれなかったのに」ムスーッ
P「えぇ…だって、気持ち悪くないか…?10年ぶりにあったお兄さんがいきなり大好きだなんて言ってくるの…正直、自分で演技してて鳥肌が立ったぞ?」
美穂「………そんなこと…ないもん…大好きだった相手なら…」ボソッ
P「???」
この後、目が覚めた私は、同じく引っ込み思案だったらしい美穂ちゃんにアドバイスを受けました。
目の前にいる人を自分の好きな動物に置き換えて想像するという方法でした。
このアドバイスのおかげで、なんとか初対面の人でも、なんとか話せるようになりました。
……ドキドキしたな…あの時のプロデューサーさん…
智絵里「えっ、プロデューサーさん……一緒に来れないんですか……?」
デビューライブ当日、駅でプロデューサーさんを待っている時、電話がかかってきました。
ちひろ『そうなの…プロデューサーさん、営業先で少しトラブルが起きたみたいで…ライブ開始時間までには間に合うように急いでいるから、智絵里ちゃんは先に会場へ向かっていて欲しいって…』
智絵里「そう……ですか……」
智絵里「だっ、大丈夫ですっ、会場までの行き方はちゃんと覚えていますし、ライブの手順だって、何度も確認しましたから!だから…だからっ……大丈夫です…ひとりでも……できます……」
ちひろ『…わかったわ。もし少しでも困ったことがあったら、すぐに電話してくださいね!出来る限りのサポートはしますからっ』
智絵里「は、はいっ、ありがとうございます。ちひろさん……」ピッ
智絵里「プロデューサーさん……」
智絵里「……大丈夫…たくさん…たくさん、練習したもん……大丈夫、大丈夫。私はできる…絶対にできる…」
ライブ開始直前、舞台袖で私は意識を集中させていました。
歌の歌詞、ダンスの振り付け、お客さんに向けてのスピーチ内容などを、頭の中で確認していました。
智絵里(いつまでもプロデューサーさんに頼るわけにはいかない……私ひとりでも頑張らないと……!)
智絵里「は、はいっ、わかりました……!」
ライブが、始まる。
ワーワー ワーワー
舞台袖から観客席を見ると、たくさんのお客さんがいました。
智絵里(こ、この人達全員が私のライブを…!?)
それでも、私にとっては十分な人数のお客さんでした。
『それでは!さっそくアイドルちゃんに登場してもらいましょう!緒方智絵里ちゃん、お願いしま~す!』
智絵里「は、はい……!」
ステージの真ん中へ向かってゆっくりと歩く。所定の位置に着き、まっすぐ観客席をみる。
観客席から数えきれない程の視線を感じる。あまりの威圧感に、私はすっかり怖気づいてしまいました。
智絵里(か、カエルさん……カエルさん……目の前にいるのは…みんな…カエル…さん……?)
『智絵里さん…?』
こわい、こわい、こわいこわいこわいこわいこわい……!
「どうしたんだろ?あの子」
「あれ~?」
「ライブまだ~?」
智絵里(助けて…プロデューサーさん……!)ギュッ
もうダメだ、そう思って、俯いたその時です。
「今まで一生懸命練習してきたんだー!!智絵里なら絶対に大丈夫だー!!!自分に打ち勝てーーー!!!!!」
少し子供っぽいけど、とてもあったかい、お日様みたいな…私の大好きなあの声が……!
「この人誰!?」
「???」
顔を上げると、そこには…
息を切らし、全力疾走してきたであろうプロデューサーさんの姿があった。
智絵里(プロデューサーさんが……プロデューサーさんがっ…!!来てくれたっ、ちゃんと私のことを、応援しに来てくれたんだ!!!)
全身に熱いほどの血が流れる。止まっていた時間が動き始める。
智絵里「……今の私は……」
負ける気がしないっ!!!
メロディーが流れ始める。この時初めて、アイドル緒方智絵里が誕生したのです。
P「やったな!智絵里っ、大成功だよ!!よく頑張ったな!!!」
ライブ終了後、控室に戻った私に、プロデューサーさんは真っ先に駆け寄って来てくれました。
智絵里「はい…!で、でも…少し歌詞を間違えてしまいました……」
P「ちょっとくらい間違えたっていいさ!そんな些細なこと、忘れちゃうくらい最高に可愛かったぞ!!」
P「智絵里、最高のライブだったよ…!本当にありがとな!」ニッコリ
智絵里「!」ドクン
智絵里(やっぱり……プロデューサーさんは、私のこと……)ドクン ドクン
お世辞にも上手とはいえないライブでしたが、それがかえって話題になったのか、たくさんの仕事が舞い降りてくるようになりました。
私自身、ライブ成功のおかげで自信がついたのか、以前よりも明るくなれた気がします。
そして…
P「いや~今日の撮影、すごく良かったぞ!!」
番組収録の帰り道、私はプロデューサーと二人きりで歩いていました。
智絵里「えへへ…本当ですか…!」
P「ああっ!以前にも増して可愛くなったってスタッフの皆さんも褒めていたぞ!なにか秘訣でもあるのか?」
P「智絵里はいい子だな~優しくて、いつも笑顔で…まるで天使だな!」
智絵里「そう…ですか?わ、私っ…プロデューサーさんに褒められると、嬉しいです……!」
P「よ~し、なにかご褒美でもあげないとな…ほらっ、なんでも言ってごらん?」
P「おう、智絵里は最近頑張っているからな。ほらほら、遠慮せずに」
智絵里「それなら……手を…繋いでくれませんか」スッ
P「へ?」
P「手を繋いで欲しい?まったく、智絵里は甘えんぼだな~いいよ」ギュッ
智絵里「! えへへ…///」
これからもずっと、ずっ~と一緒にいられたらいいなぁ。
きっと、いられますよね!だって……
智絵里「cherry merry cherry♪恋のおまじないっ♪どんな私も受け止めてくださいねっ♪
」ルンルン
今日はお仕事もレッスンもお休みの日、でも、プロデューサーさんに会いたくて、事務所に来てしまいました。
智絵里「プロデューサーさん…喜んでくれるかなぁ……♪」
手元には、可愛い巾着で包んだお弁当。色々なところでレシピを調べて、今日早起きして作ったんです!
「わざわざすまないな、今日もお弁当作ってもらっちゃって」
智絵里「」ピタッ
「響子の作る料理は世界一おいしいからな~“ずっと”食べていたいよ。いつもありがとう、響子」
「えへへ…い~ぱい、召し上がれ♪」
智絵里「………」パタン
彼の周りには、私以上に魅力的な女の子達がたくさんいたんです。
ゆかりちゃん、卯月ちゃん、美穂ちゃん、そして……響子ちゃん。
彼女達がプロデューサーさんを見つめるその表情は、全員一緒……私と同じでした。
もちろん、プロデューサーとして、特定の担当アイドルを贔屓することはいけないことです。
だから、プロデューサーさんは何も間違っていません……
それでも、あの笑顔が、私だけに向けられていた物ではないと知った時……胸の奥の方から重く、黒い感情が湧き上がってくるのを感じました。
後日、私は近所の公園で見つけ出した四葉のクローバーを使い、作った栞をプロデューサーさんにプレゼントしました。
プロデューサーさんは、よくプロデュースを勉強するための本を読んでいます。
日常的に使う栞なら、常日頃から持ち歩く……“私”のことを、いつでも頭の片隅に置いておいてくれる。
そう…思ったんです。
本当に…嬉しいです
P「いや~やっぱり嬉しいなぁ。担当アイドルからのプレゼントっていうのは…」
「ふ~ん、四葉のクローバーかぁ、いいね」
P「ん?君は…」クルッ
振り返ると、そこには…
凛「うん、おはよう、Pさん」
最近、卯月と本田さん、3人でニュージェネレーションというユニットを組み始めた人気アイドル、渋谷凛さんがそこにいた。
凛「よ、よしてよ、むしろ、私の方がいつも卯月には助けられているから」アセアセ
P「そうか?君のことは卯月からよく聞いてるよ。今日の凛ちゃんはカッコよかったー!とか、可愛かったー!とか」
凛「も、もう卯月ったら」テレテレ
お?クールな子だと思ってたけど、こういう顔もするんだな…
P「ん?ああ、これか?この栞、智絵里に貰ったんだ~なかなかいいデザインしているだろ?」
凛「うん、作った人の想いが込められているのがよくわかる……悪くないね」
P「だろ~、四葉のクローバーって結構珍しい物だよな?昔、美穂と一日かけて探し回った時は、結局1つも見つけられなかったからなぁ」
P「そんなに珍しいのか!?探すの大変だっただろうなぁ…次会う時までに、ちゃんとしたお礼を考えておかないと…」
凛「まぁ、環境や場所によって変わってくるけど…簡単に見つけ出せる物じゃないってことは確かだね……ふふ、慕われているんだね」
凛「……」
凛(四葉のクローバーの花言葉…幸運、約束、復讐、think of me、Be Mine……)
凛「まさか…ね」ボソッ
おのおのが、アイドルとして次々と新しい魅力を生み出していった。
担当プロデューサーとして、彼女達の成長を誰よりも近くで見ることができて、本当に嬉しかった。
そして、遂に彼女達にとって…いや、346プロの全アイドルにとって、一世一代の晴れ舞台がやってきた。
P「ああ、ドーム一つを借り切って行われる、夢の祭典だ!今までの比じゃないくらい大きなライブイベントだぞ~それに、みんなも出演することになった!!!」
美穂「うわぁー!!凄いっ!!」
卯月「ドームですよっ!ドームっっ!」
ゆかり「私達、とうとうここまで来たんですね…!」
智絵里「……!」
響子「プロデューサーさんプロデューサーさん!!ユニット名、ユニット名は何ですかっ」
P「ああっ!ユニット名は・・・・・・」
本番は一ヶ月後、私達は、シンデレラフェスタが始まるまで、できる限りのレッスンに励みました。
……全員が、心の片隅で、かげがえのない“あの人”を想いながら……
美穂(おっきなステージ…緊張しちゃう…でも、プロデューサーさんと一緒なら…!)
卯月(憧れの大舞台で、輝く姿を見せたい…!誰よりも、プロデューサーさんにっ…!)
ゆかり(夢にまで見た舞台に、プロデューサーさんと立てる…なんて素敵なことでしょう…!)
智絵里(私……誰にも負けたくない……私が…“私”が1番だって…想ってもらいたい……!)
P「みんな、よくここまで頑張ってきてくれた」
シンデレラフェスタ当日、私達の出番が次に控える中、舞台袖でプロデューサーさんと私達は向き合っていました。
P「シンデレラフェスタは、そんな今までの集大成ともいえるイベントだ…これを乗り越えれば、きっと更なる高みへと登れるはず…思う存分、アイドルとして培ってきた全てをぶつけてくるんだ!」
P「僕がプロデューサーとして、ここまでこれたのは、みんながいてくれたからだ。本当に感謝している」
P「僕にとって、みんな自慢の担当アイドルさ!君達なら、絶対にトップアイドルになれる!!」グッ
P「よしっ、みんな、行っておいで!王子様達が君たちのことを待っているぞ!!!」
美穂「アイドル力マシマシな私の姿、ライブを観に来てくれたお客さん全員に…!見せつけてきますよ!!」ダッ
卯月「世界で一番素敵な笑顔を、会場の皆さんに届けて魅せますっ!島村卯月っ、頑張りますっ!!」
ゆかり「今日来てくれた全ての方々に、私の想いを届けてみせます…!光溢れる舞台の上で…!!」ダッ
P「智絵里…?」
P「あ、ああ!…みんなーー!!頑張れーーー!!!」
智絵里(私……ゆかりちゃんよりも、卯月ちゃんよりも、美穂ちゃんよりも、そして……響子ちゃんよりも……会場の誰よりも、輝いてみせます……だから、プロデューサーさん…)
存在だけは匂わせていた他の芸能課を舞台にした大人組や小学生組、第1芸能課所属の別P達の話も書いてみたいです。
どれを書くか分かりませんが、もし見かけたときは、よろしくお願いします!
いつかは個別ルートも書いてみたいなぁ
大切なアイドル達…彼女達とならどこまでも登っていける…そう思っていた
智絵里「私は……天使なんかじゃない」
美穂「ええっ!唇にキス!?」
卯月「私…シンデレラ失格ですね……」
響子「プロデューサーさん。貴方のことが……世界で一番、大好きです」
プロデューサーとして、僕はどの道を選べばいいのだろうか
時計の針が12を指す時、魔法使いとシンデレラの物語が始まる
「シンデレラガールズ」カテゴリのおすすめ
「ランダム」カテゴリのおすすめ
今週
先週
先々週
コメント一覧
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- 2018年09月27日 22:44
- 母親死んじゃった…
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- 2018年09月27日 23:38
- 最初から全部見てきたけど、ぜひ続きを書いて欲しいと思った。
-
- 2018年09月28日 00:00
- 智絵里の母親なら俺がしっかり死・姦しといたぞ
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