【昭和の怪奇事件】有名都市伝説「首なしライダー」の元ネタ？「葛飾区水元公園事件」

2018年09月29日：22:00

有名な都市伝説のひとつに「首なしライダー」というお話がある。
その名の通り、首のないバイク乗りが深夜の街中を爆走するという怪談話で、その出現地は日本全国に渡り、東京都、群馬県、埼玉県といった関東地方のほか京都や兵庫県の六甲山付近にも目撃情報が存在する。この怪談話の発祥には諸説あるが、昭和時代に東京都内で発生した「とある事件」が元になっているとされている。

一般的にこの怪談話は、1980年代後半、東京都葛飾区の某公園で夜サーキットレースを行っていた暴走族グループの少年が園内に張られた謎のピアノ線により首が切断。その少年は自分が死んだ事に気がつかず、夜になると毎日のように暴走行為を続けている……という話になっているようだ。

今回の「昭和の怪奇事件」は、「首なしライダー」の元ネタとなったとされる「葛飾区水元公園事件」について当時の新聞と併せてご紹介したい。

ナイロン製テープの怪

昭和59年（1984年）5月25日、読売新聞夕刊に掲載された記事である。「首に張られたロープ　オート少年、首にひっかけ死ぬ」という記事が掲載されている。

記事によると5月24日、午後11時40分頃、東京都葛飾区水元公園の園内でオートバイに乗っていた足立区在住の17歳の少年Aくんが路上に張ってあったナイロン製テープに首を引っ掛けて転倒。病院に運ばれたが、まもなく死亡するという事件が発生した。

亀有署の調べによると、ロープは遊歩道脇の木と中央部の鉄杭に固く結び付けられており高さは約80センチほどに設定してあった。
死亡したAくんはこの日、バイク仲間数人で公園を訪れており、先頭を走ってた3人はテープにかからず3分後にAくんだけが転倒したことから、記事にはAくんを狙った犯行ではないか、と書かれている。

「未必の故意」

この記事から3日後の5月28日の朝刊。今度は亀有署による現場検証の写真とともに「死のワナ」「未必の故意」という見出しが並んでいる。

「未必の故意」とは今はあまり聞きなれない言葉かと思うが「犯罪の発生を積極的には意図しないが、自分の行為により犯罪事実が発生するかもしれないと思いながら、あえて実行する心理状態」のことを指す（※「デジタル大辞泉」調べ）。

水元公園は数年前から地元暴走族の騒音に悩まされており、ひどい時になると昼夜問わず50台ものオートバイが公園に集まり、園内の一部をサーキットコースに見立て危険運転を行っていたという。むろん地元住民や公園管理事務職も暴走族対策は考えており、1983年夏には夜の公園に張り込まないよう鉄柵を設置。しかし、少年たちは鎖を切ったり南京錠を壊して公園内に入り込んでいたのだ。

この少年死亡事件以来、暴走族たちは恐れをなして公園には集まらなくなったのだが、近隣住民の間では「誰がこんな恐ろしいことを」「死んだ少年には気の毒だが（ワナを仕掛ける）気持ちはわかる気がする」と胸中は複雑。また、亡くなったAくんの告別式に参加した暴走族仲間の友人は「もしかすると僕がやられるかもしれなかった。無差別殺人ですよ」と悲しみの涙を流していた、という。

未だ捕まっていない犯人

さて、この「葛飾区水元公園事件」の犯人は、現在まで捕まっておらず、様々な犯人像が取り沙汰されている。第一には、やはり騒音に悩んでいた近隣住民による犯行ではないか、という説、当時対向していた暴走族のグループの誰かなど。

また、記事のとおり、実際に張られたのはピアノ線ではなくナイロン製のテープであり首も切断されていない。このように、伝えられている都市伝説とは、いくつか差異はあるものの本事件はほぼ実話であることがわかる。

なお、本事件をキッカケかどうかはわからないが、平成に入ってから水元公園は都内でも有名な心霊スポットのひとつとして数えれれるようになり、同時にこの噂を恐れたためか水元公園付近では暴走族の姿は見られなくなり、子供たちも安心して遊べる公園になっているという。

参照：読売新聞縮刷版

文：穂積昭雪（昭和ロマンライター / 山口敏太郎タートルカンパニー / Atlas編集部）