近い将来、確実に有人着陸が実行されるであろう火星。
2025年までに火星に人類初の永住地を作ることを目的にするオランダの民間非営利団体「マーズワン」はもちろん、NASA も有人火星探査を計画している。
さて、人類が火星に到達できたとしよう。そして移住を考えたとしよう。
火星環境において、人々が最も恐れるべき脅威とは何なのだろうか?
それは高濃度な放射線量である。
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最大の脅威は宇宙放射線
火星の放射線量を計測・管理している科学者チームの一員、ブルガリア科学アカデミーのヨルダンカ・セムコーヴァ氏は
人類が克服しなければいけないのは放射線であり、今後人類がこの問題にどう当たっていくかで火星ミッションの今後は決まるでしょう
と断言している。
欧州惑星科学議会(通称:EPSC)と欧州宇宙機関が合同で発表した研究結果によると、火星へと旅立った宇宙飛行士は通常の宇宙飛行士が受ける放射線量の約60%をたった1年で受ける事になるという。
長期間宇宙放射線を浴びると人体に深刻な影響が
放射線は多量に人体に取り込まれると遺伝子を損傷させ、健康被害を引き起こすことがある。
ご存知の通り、宇宙は宇宙放射線にあふれている。
国際宇宙ステーション(通称:ISS)に1週間務めた宇宙飛行士は、地球で受ける放射線量のおよそ1年分を受けているという。
長い任務に携わる宇宙飛行士の80%に、目を閉じても閃光が見えたり、視神経が炎症をおこしていたり、視力の低下が報告されている。
この症状は、「視覚障害脳圧症候群 (VIIP)」と名付けられた。
火星への有人飛行における人体への影響は未知数
人類が到達しようとしている火星という惑星は地球とは違い、磁場を持たない惑星だ。磁場や大気によって放射線から守られている地球上の人間とは違い、火星へと旅立った人間が受ける放射線量は数百倍ともいわれている。
仮に火星に人類が降り立ったとして、その放射線量はISSで働いている人々の数十倍の量となるだろう。
最近ではジョージタウン大学メディカルセンターのマウス実験により、宇宙放射線が胃腸組織を損傷させる可能性が示唆された。
長期の宇宙飛行により、宇宙飛行士が胃や結腸に腫瘍を発症する確率が上がるということだ。
月までといった短距離で短時間ならそこまでリスクは上がらないかもしれないが、火星やもっと遠い惑星となると話は別だ。長期間宇宙放射線にさらされることとなる。
宇宙放射線問題の解決が火星移住への糸口に
「現在のリスクマネジメントモデルは宇宙線に対する人体への生物学的影響を調べ続ける事で格段に精度を向上させることが出来るでしょう。しかし放射線用の防護服や薬を作ったところで、それは抜本的解決になるとは言えません」とNASAは発表している。
NASAは現在、宇宙飛行士を守るための飛行船技術の向上とモニタリングシステムを開発中だが、宇宙放射線というやっかいな物の影響が未知数の為、その作業は難航しているという。
これまでの研究から長期間宇宙で過ごした宇宙飛行士の脳に変化が起きることが判明している。
・宇宙旅行における脳への影響。長期間宇宙で過ごした宇宙飛行士の脳に変化が起きることが判明 : カラパイア
また、宇宙空間にいる人間は老化が早まるといった報告もある。
これは今後火星に人類が移住する前に、乗り越えなくてはならない大きな問題の一つであろう。
via:georgetown / express/ written by riki7119 / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
火星で生まれる人は、乳房が三つになったり、腹からもう一人が生えたりしちゃうわけですね。
2. 匿名処理班
ベアグリルス
「メタルマッチとパラシュートの紐とナイフがあれば
火星でも生存可能な事が証明できました。
火星人の尿はもう飲みたくないですね…。
それでは今から地球帰還用のイカダを作ります」
3. 匿名処理班
まず火星に行く前に月の地下に居住域や生産施設を作る方が先だと思うがな。地球から月の航路を開設しないと、宇宙域での移動手段の技術向上や技術創造が上手くいかない。
4. 匿名処理班
どうせなら、アンドロメダ銀河(だったっけ?)で暮らせるか? みたいにスケールデカく行きやしょうや(^∇^)
…(アホですいません٩( ᐛ )و)
5. 匿名処理班
少し前に人類が火星到達にあたっての最大の問題点は宇宙放射線と発表あって、その克服は現科学力じゃ困難とわかり、それ以降一気に各国の有人火星到達計画の熱が一気にトーンダウンしたな
現状で強行は余りにも自殺行為すぎる
6. 匿名処理班
>>1
あー、アレですね?
確か、シュワちゃんが主人公だったヤツでしたかね?
7. 匿名処理班
これ系の話で一番現実的なのが宇宙エレベーターかな
それですら30年くらいは必要な気がする
8. 匿名処理班
大気をつくって宇宙放射線バリヤーが完成した状態で初めて本格的な移住が始まるのだからそれは問題でない。それ以上に問題は、重力と自転周期と日光量。自転周期は地球とほぼ同じらしいが。移住者は影響を受けてほどなく死ぬだろうから、妊婦が移住してすぐに生まれた子供が生き残れるかどうかが鍵。まず月を住めるようにした方が現実的じゃないの。
9. 匿名処理班
視覚障害脳圧症候群の原因として現在有力なのは無重量による脳髄液系の圧力変化で、
宇宙放射線とは関係ないのでは?
10. 匿名処理班
モザイクオーガン手術の開発をだな
11. 匿名処理班
じょうじ
12. 匿名処理班
※2
ベア
「運が悪いことに宇宙船に穴が空いてしまいました。
では、宇宙空間での呼吸法を皆さんに伝授します。
まず服を脱ぎます。」
13. 匿名処理班
コーチ…コウイチロウさん…
14. 匿名処理班
人間は所詮地球用に出来てるからな
他の星で生きるつもりなら今のニンゲンから別の存在にアップデートする必要があるだろうな
15. 匿名処理班
いきなり火星に挑戦するよりまず身近な月をテラフォーミングしてほしい。
重力の少ない月なら燃料も節約できるだろうし資源も眠っているかもしれない。
16. 匿名処理班
2025年までは流石に無理だろうよ…
2125年までならまあ何とかと思わんでもないが
17. 匿名処理班
2001年宇宙の旅が書かれたのがいつなのか知らない世代なんだろうな…