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【ぼく勉】文乃 「カレ? もう食べちゃったけど?」|エレファント速報:SSまとめブログ

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【ぼく勉】文乃 「カレ? もう食べちゃったけど?」

385:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:03:20 ID:dqC8eIGA

………………水希の誕生日から数日後 図書館

うるか 「た、食べちゃったって……///」

理珠 「食べた!? どういうことですか!?」

文乃 「? ふたりとも、一体何をそんなに驚いているの……?」

うるか (そりゃ驚くよー! 文乃っちがそんなに大胆だったなんて……///)

理珠 (そりゃ驚きますよ! 食べたって……人間を食べたということですか!?)

うるか (友達として言ってあげた方がいいのかな……。もっと自分を大事にしてよ、とか……)

理珠 (友達として言ってあげた方がいいのでしょうか。人を食べるのは犯罪ですよ! と……)

うるか 「い、一体どこで食べちゃったのかな……?」

文乃 「えっ? えっと……」

文乃 (……!? しまった! よく考えたら、この二人に唯我くんと一緒にうちでカレーを作って、)

文乃 (あまつさえ唯我家でご家族と一緒に美味しくいただいたなんて、口が裂けても言えないよ!)

文乃 「あー、えっと、うちで作って、(唯我くんの)うちで美味しくいただいたよ……?」

文乃 (う、うそはついてないよね……?)



386:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:05:09 ID:dqC8eIGA

理珠 「家!? 家で、た、たた、食べてしまったのですか!?」

うるか (自分の家に連れ込んで、食べちゃったとか……えっちすぎるよ、文乃っち!) カァアア……

理珠 (も、もも、もう、文乃の家には行けませんね。絶対呪われます……) ガタガタガタ……

文乃 (こ、これ以上話を続けたらボロが出そうだよ! 話を変えないと……)

文乃 (うぅ、でもふたりにうそをついてるみたいで罪悪感が……)

うるか (ふ、文乃っち、目が泳いでる……)

理珠 (今さら、言ってはまずいことを言ったと気づいたのでしょうか……)

うるか (だ、大丈夫だよ、文乃っち。あたし、友達のこと言いふらしたりしないから!)

理珠 (だから、口封じだけは勘弁してください!)

うるか (けど、後で成幸にだけは相談しておかないと……)

理珠 (唯我さんなら、きっとなんとかしてくれるはず……)



387:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:05:50 ID:dqC8eIGA

成幸 「おー、全員そろってるな」

文乃 「あっ、唯我くん!」 (助かった……)

理珠 「唯我さん!」 (助かりました!)

うるか 「成幸!」 (助かった!)

成幸 「遅れて悪いな。ちょっと和樹と葉月に捕まっちゃってさ……」

成幸 「……って、どうしたんだ、お前ら。武元は顔が赤いし、緒方は逆に青いし、古橋は汗ダラダラだし」

成幸 「大丈夫か?」

文乃 (……誰のせいでこうなってるのか分かってるのかなこの野郎)

うるか 「だ、大丈夫だよ。ちょっと動揺しちゃっただけで……」

理珠 「私も、大丈夫です。ちょっと驚いてしまって……」

文乃 「わたしは、ちょっと胃が痛くてさ……。胃薬飲んでくるね?」

理珠 「!?」 (や、やはり人間の肉は食用でないから、胃に負担が……!?)



388:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:06:46 ID:dqC8eIGA

………………

カリカリカリ……

成幸 「………………」 (みんな体調悪そうだったから心配したけど、)

成幸 (見る限りちゃんと勉強に集中できてるな)

成幸 (まぁ、全員やりたいことをやるためにがんばってるんだもんな。当たり前か)

うるか 「……ね、ねえ、成幸。ちょっと分からないところがあるんだけど」

成幸 「ん? どこだ?」

スッ

『今日、勉強が終わった後、文乃っちに内緒で相談したいことがあるんだケド』

『みんなと別れた後、もう一回会ってもらえる?』

成幸 「へ……?」 (な、なんでノートにメッセージを書いたんだ……? 古橋に内緒ってどういうことだ?)

うるか 「………………」

成幸 (……ああ。わかった) コソッ

うるか (……ありがと)



389:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:07:46 ID:dqC8eIGA

理珠 「唯我さん、次いいですか?」

成幸 「お、おお、なんだ、緒方?」

理珠 「参考書を取りに行きたいのですが、大変遺憾ながら私の身長では届かない高さにあるものもあります」

理珠 「付き合っていただけますか?」

成幸 「ん、ああ。いいけど……」

理珠 「ありがとうございます。では、行きましょうか」

成幸 (参考書……? 現代文読解の元の小説でも見たいのか?)

理珠 「………………」

ピタッ

理珠 「……この辺でいいでしょうか。文乃には聞こえませんね」



390:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:08:39 ID:dqC8eIGA

成幸 「ん? どうしたんだ? ここ、図鑑のコーナーだぞ?」

理珠 「少しうそをつきました。すみません。どうしても、文乃に内緒で唯我さんとお話したかったので」

成幸 「古橋に内緒? 一体……」

理珠 「今はあまり時間がありません。文乃に不審がられる前に戻らなければ」

理珠 「今日、夜、うちに来てくれませんか? 相談したいことがあるんです。うどんをごちそうしますから」

成幸 (今日は武元といい緒方といいどういうことだ? わけがわからんな……)

成幸 (とはいえ……)

理珠 「………………」 ガタガタガタ……

成幸 (未だに青い顔をしているこいつを放ってはおけないか……)

成幸 「わかった。閉店直前くらいの時間に行くよ」

理珠 「あ、ありがとうございます! 助かりました……」

理珠 「私ひとりでは、あまりにも荷が重すぎることだったので……」

理珠 「では、夜、お店で待っています」



391:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:09:54 ID:dqC8eIGA

………………勉強後 図書館前

うるか 「成幸ぃ-!」

成幸 「ん……。武元意外と早かったな」

うるか 「ごめんね、待たせて。ありがとう」

成幸 「いいよ。俺はお前たちの教育係だからな」

成幸 「……で? 古橋に内緒で相談したいこと、ってなんだ?」

うるか 「……うん。それなんだけどね……」

うるか 「絶対に文乃っちに内緒だよ? 相談って言うのは、文乃っちのことなんだけど……」

うるか 「あ、あのね……文乃っちがね……すごく、こう、性についてホンポーみたいなの」

成幸 「………………」

成幸 「……は?」

うるか 「だ、だから、文乃っちがね……できたばっかりのカレと……エッチナコト……しちゃったみたいなの!」

成幸 「ぶっ……! お、お前、何言って……///」

うるか 「あたしだってこんなこと言うの恥ずかしいんだよー! バカー!」



392:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:10:53 ID:dqC8eIGA

………………

成幸 「……なるほど。話は分かった」

成幸 「つまり、古橋は、できて間もない彼氏と……ゴニョゴニョ……というわけだな?」

うるか 「う、うん……///」 プシュー

成幸 「お前が照れるな! 俺だって恥ずかしいんだ!」

成幸 「……オホン。で、武元はそんな古橋に、自分をもっと大事にしてほしいと思っている、と」

うるか 「うん……」

成幸 「………………」

成幸 「……何で俺に相談した!? どう考えたって俺にどうこうできるわけねーだろ!?」

うるか 「成幸ならなんとかしてくれると思ったんだもん! キョーイク係だし!!」

成幸 「うっ……た、たしかに俺はお前たちの教育係だが……」

成幸 「……はっ、ま、待てよ……」

成幸 「もしも、古橋が不純異性交遊にかまけてしまったら……」



393:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:11:37 ID:dqC8eIGA

ポワンポワンポワンポワン……

成幸 『お、おい、古橋。どこに行くんだよ。今日は勉強の約束だろ?』

文乃 『ええー? だって、勉強ってつまんないんだもーん』

成幸 『つまらないってお前、お前の夢のために必要なことだろう?』

文乃 『そんなことどうでもよくなっちゃったー。今が楽しければいい、みたいなー?』

成幸 『語尾を伸ばすな語尾を! 文学の森の眠り姫だろ、お前!』

文乃 『しらなーい』

prrrr……

文乃 『あっ、○○くーん? 文乃さびしいよー。早く会いたいよー』

文乃 『オッケー。じゃ、いつもの場所ね。会えるの楽しみー』

成幸 『お、おい!? 古橋! どこに行くんだ古橋!』

ポン

学園長 『……唯我くん。君のVIP推薦は、なしだ』

成幸 『そ、そんなー!?』

……ポワンポワンポワンポワン



394:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:12:18 ID:dqC8eIGA

成幸 「いかん! それはすごくいかんことだぞ!!」

成幸 「教えてくれてありがとう、武元。古橋のことは俺に任せろ!」

うるか 「な、成幸ぃ……」 キュン

うるか (やっぱり成幸は頼りになるなぁ……)

キュンキュン

うるか (成幸に相談してよかった……っ)

うるか 「成幸……。文乃っちのこと、よろしくね」

成幸 「ああ。なんとしても、古橋に不純異性交遊をやめさせてみせる!」

成幸 (俺のVIP推薦のために……!!)

成幸 「………………」

成幸 (……あと、純粋に古橋のことも心配だし)

成幸 (あいつ、父親との関係も微妙みたいだし、いつも家でひとりみたいだし……)

成幸 (きっと、寂しいんだろうな……)



395:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:13:01 ID:dqC8eIGA

………………緒方うどん

ガラッ

成幸 「こんばんはー」

理珠 「あっ! 唯我さん!」

パタパタ……

成幸 (……駆け寄ってくる着物緒方……小動物みたいだ)

理珠 「待っていました。今日は夜にご足労いただいて、すみません」

成幸 「いや、いいよ。俺はお前たちの教育係だからな」

成幸 「……で、相談って一体なんだ?」

理珠 「……ゆっくり話します。とりあえず、うどんを一杯どうぞ」



396:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:13:52 ID:dqC8eIGA

………………

理珠 「……事の始まりは、先日文乃から送られてきた、このメールです」

成幸 「メール……?」


―――― 『りっちゃんお願い!』

―――― 『美味しいカレの作り方教えて!』


成幸 「美味しい、カレ……?」

成幸 「……? わけがわからないな。カレとは、彼氏のことか?」

成幸 「それにしても、美味しいカレとはどういうことだ? まさか人間を食べるわけでもあるまいし」

理珠 「そのまさかだったのです!」 ガバッ

成幸 「どわっ……ち、近い! 緒方! 近いから!」

理珠 「……あっ/// す、すみません……」

成幸 「い、いや、いいけど……/// で、そのまさかだった、ってのはどういうことだ?」



397:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:14:34 ID:dqC8eIGA

理珠 「……そ、その、文乃は、どうやら、人間を食べてしまったようなのです」

成幸 「………………」

成幸 「は?」

成幸 「……緒方、お前なぁ。冗談でも、言っていいことと悪いことが……」

理珠 「冗談だったらどんなにいいことか……」

グスッ

理珠 「……唯我さんなら、話を聞いてくれると思ったのに……」

成幸 「あっ……な、泣くなよ。俺が悪かったよ。ちゃんと話を聞くから……――」


親父さん 「――センセイ? 人ん家で何人の娘を泣かせてるんだぁ?」


ユラリ

成幸 「うわぁ!? 包丁持って背後に立たないでください!」

成幸 「っていうかこれ以上話をややこしくしないでくれませんか!」



398:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:16:04 ID:dqC8eIGA

………………しこたま親父さんと追いかけっこをした後

成幸 「……では、改めて聞くが、」 ボロボロ

成幸 「古橋は、本当に人を食べたのか?」

理珠 「はい。私はこの耳でたしかに聞きました」


―――― 『ええっ!? できた!? して……その「カレ」はどこに!?』

―――― 『え? もう食べちゃったけど?』

―――― 『えええっ!? だだだ大胆すぎるよ文乃っち!!』


理珠 「文乃は、それをまるで何でもないことのように……」

グスッ

理珠 「……文乃はもう、人間を食べてしまう、恐ろしい喰人鬼になってしまったのでしょうか……」

成幸 「………………」

成幸 (な……なんだとぉーーーー!?)



399:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:17:12 ID:dqC8eIGA

成幸 (いつも冷静な緒方が、泣くほど動揺するなんて……)

成幸 (ま、まずい。このままでは非常にまずい!)

成幸 (さっきの武元の相談とも繋がるぞ!)

成幸 (つまり、古橋は彼氏を作り、武元の言うとおり……ゴニョゴニョ……して、)

成幸 (そして、殺害し、その肉を……)

成幸 (……ありうる)

成幸 (古今東西、人間に仇なす怪物は、性行の後に害意を示すパターンが多い……)

成幸 (神話や伝承にも詳しい古橋はその慣例に則り、……ゴニョゴニョ……してから、彼氏を食べたのだ)

成幸 「……まずい」

成幸 「これはまずいことだぞ、緒方!」

理珠 「……唯我さんなら、グスッ……わかってくれると……エグッ……思ってました……」

成幸 (こんなことが学園長の耳に入ったら……)



400:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:18:14 ID:dqC8eIGA

ポワンポワンポワンポワン……

成幸 『古橋の奴、逮捕されちまったな……』

うるか 『うん……ぐすっ……』

理珠 『うっ……ぐすっ……うっ……文乃ぉ……』

あすみ 『古橋の奴……なんだってこんなバカなことを……っ、ちくしょう!』

真冬 『……これはすべて、教師として私が至らなかったせいだわ』

真冬 『学園長。私は今日限り教職を辞させていただきます』

真冬 『そして、尼寺で一生、失われた命を供養しながら生きていくつもりです』

真冬 『……あなたたちも来る?』

うるか&理珠&あすみ 『『『はい!!』』』

学園長 『………………』

学園長 『うん。唯我くん。君のVIP推薦はなしだ』

……ポワンポワンポワンポワン



401:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:19:04 ID:dqC8eIGA

成幸 (……いやいやいや!! もうそうなったらVIP推薦とかどうでもいいわ!)

成幸 (古橋だけじゃない! みんなが不幸になる!!)

成幸 (そんな未来だけはごめんだ!)

成幸 (『ぼくたちは読経ができない』 がスタートしてしまう!!)

成幸 (って違う!!)

成幸 「緒方……!」

ガシッ

理珠 「ふぇっ……!? ゆ、唯我さん!?」

成幸 「教えてくれてありがとう! あとは俺に任せておけ!」

成幸 「なんとしても、古橋を正しい人の道に戻してやるぜ……!」

理珠 「唯我さん……」 キュン

理珠 「やっぱり、唯我さんに相談してよかった……」 キュンキュン

成幸 「古橋のことは俺に任せておけ。緒方は……」

 『センセイ……センセイ……テメェ、人の娘の手を掴んで……ッ』

成幸 「俺の背後で蠢いている怨霊のような親父さんを頼んだぞ!!」



402:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:21:36 ID:dqC8eIGA

………………帰路

成幸 「……とは言ったものの」

トボトボ……

成幸 「どうしたもんかな。不純異性交遊に加えて食人行為……」

成幸 「俺にどうにかできるとは思えんが……」

成幸 「……だが、俺は古橋の教育係だ。そして、古橋は俺の女心の師匠だ」

成幸 「古橋のために、俺は……」

ザッ……!!!!

成幸 「お前を、なんとしても、正しい道に導いてみせる……!」

成幸 (……とかなんとか勢いで古橋の家の前まで来てしまった)

成幸 (さて、どうするかな……)



403:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:22:15 ID:dqC8eIGA

………………古橋家

文乃 「………………」 カリカリカリ……

文乃 「……ふむ。三角関数っていうのが何のために必要なのか、少しずつ分かってきた気がするよ」

文乃 「単位円に対しての比率っていうのは、早い話が波形のカタチをしめしているんだね」

文乃 (……すごい。三角関数なんて名前を聞くのもいやだったのに、)

文乃 (今はすんなりと感覚で理解できている気がする)

文乃 (……これも全部、唯我くんのおかげかな、なんて)

文乃 (えへへ。唯我くん、きっと喜んでくれるだろうな……)

ピロリン

文乃 「……ん? 唯我くんからメール?」


『夜遅くに悪い』

『今から会えないか?』


文乃 「へ……?」



404:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:23:01 ID:dqC8eIGA

………………

成幸 「悪い。急に家を尋ねてしまって……」

文乃 「本当だよ。夜に女の子の家にお邪魔するなんて、本当なら許されないことだよ」

クスッ

文乃 「……なんて、ね。唯我くんはそんなこと分かってるもんね」

文乃 「何か急ぎの用事があったんでしょ? 上がりなよ」

文乃 「いつも通り、お父さんはいないからさ」

成幸 (いや、それは逆にまずい気もするんだが……)

成幸 (とはいえ、そんなことを言ってる場合じゃないな)

成幸 「悪い。お邪魔します」

文乃 「紅茶でもいれてくるね。部屋で待ってて」

成幸 「お、おう……」

成幸 (本来であれば、家にひとりの女の子の部屋にお邪魔するのはドキドキするものだろうが……)

成幸 (別の意味でのドキドキが止まらないぞ! 俺は生きてこの家から出られるのか……?)



405:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:23:34 ID:dqC8eIGA

………………文乃の部屋

文乃 「お待たせ。お茶どうぞ」

成幸 「あ、ああ。ありがとう……」

文乃 「それで? 今日は一体どうしたのかな?」

文乃 「深刻な顔してるけど、何かあった?」

文乃 「……ひょっとして、りっちゃんやうるかちゃんに関することかな?」

成幸 「っ……」 ビクッ (さ、さすがは古橋だ。もう大体の見当をつけているのか……)

成幸 (なら、もう隠し事をするだけ無駄だな……)

成幸 「……ああ、そうだ。ちょっとそのふたりから相談を受けてな」

文乃 「相談?」

成幸 「ああ。お前に関してのことだ、古橋」

文乃 「……えっ? わ、わたしについて……?」

文乃 (てっきり、恋愛がらみだと思ってたけど……違うのかな?)



406:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:25:01 ID:dqC8eIGA

文乃 「わたし、あのふたりに何かしちゃったかな……」

成幸 「いや、お前が何かをしてしまったのはあいつらにじゃないだろ?」

成幸 「もう、誤魔化すのはやめよう。古橋。俺も辛いんだ」

文乃 「へ? 一体何のことを言っているのかな? 全然分からないんだけど」

成幸 (っ……なぜここでシラを切ろうとするんだ、古橋)

成幸 「俺はもう全部を知ってるんだ。お前が……カレを作り、そして、食べたことを!」

文乃 「………………」

文乃 「……は?」

文乃 (カレ……? ひょっとしてこの前食べたカレーのことかな?)

文乃 (いやいやいや、それはもちろん食べたよ。っていうか君も一緒に食べたよね?)

文乃 (唯我くんが何を言ってるのか皆目検討もつかないんだよ)



407:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:25:45 ID:dqC8eIGA

文乃 「……ええと、なんていうか、それがどうかしたのかな?」

成幸 「なっ……!」

成幸 (あ、当たり前のように認めただと!?)

成幸 (あまつさえ、それを悪びれる様子もなく、人として至極当然のことのように……!)

成幸 (ふ、古橋、お前は……もう……)

成幸 「……もう、戻れないんだな」

文乃 「……?」

ハッ

文乃 (ひ、ひょっとして、唯我くんの家で唯我家の皆さんとカレーを食べたことがふたりにバレた!?)

文乃 (それが元で、わたしはりっちゃんとうるかちゃんに裏切り者と見られている!?)

文乃 (そ、そして、りっちゃんとうるかちゃんはきっとわざと唯我くんをここに寄越したんだ……!)



408:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:26:40 ID:dqC8eIGA

―――― 理珠 『分かっていますね? 文乃?』

―――― うるか 『文乃っち。成幸を家に行かせたから、はっきりして』

―――― 理珠 『私たちとの友情を取るのか!』

―――― うるか 『あたしたちを裏切って、成幸との愛を取るのか!』


文乃 「ち、違うよ! わたしはそんなつもりだったんじゃないんだよ!」

成幸 「な、なんだ、急に……今さらそんなこと言ったって……!」

成幸 「もう、(失われた命は)戻らないだろう! 戻れねえんだよ!」

文乃 「そ、そんな……。わたしはただ、(カレーを)作って、食べただけなのに……」

成幸 「“だけ” なんて、そんなこと言うな!」

成幸 「……それは、とても重要なことだろう! お前にとって……!」

文乃 「!?」

ハッ

文乃 (そうだ……わたしは……)



409:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:27:21 ID:dqC8eIGA

文乃 (……わたしは、唯我くんとカレーを作って……)

文乃 (唯我くんの家で、温かいご家族と一緒に食べて……)

文乃 (とっても楽しかった……嬉しかった……)

文乃 (久々に、“家族” と一緒にご飯を食べているような、気持ちで……)

グスッ……

文乃 「わ、わたし……」

成幸 (な、泣いてる……!? 人の心を失った喰人鬼古橋文乃が泣いている……!?)

成幸 (人間の心を取り戻したのか!?)

ガシッ

文乃 「ふぇっ……!? ゆ、唯我くん……!? なんで、手、握って……?」

成幸 「……何も言うな、古橋。俺はここにいる。お前をずっと待ってるよ」

成幸 「だから安心しろ。(お前が刑務所から戻ってくるのを)俺はずっと待ってるから……」

文乃 「ゆ、唯我くん……」 (わ、わたしを、待っててくれるって……)

文乃 (わたしが、唯我くんの家にお嫁に行くのを、待っててくれるってこと……!?)



410:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:28:07 ID:dqC8eIGA

文乃 「ふ、ふぇぇええええ!? そ、そんな、まだ心の準備が……」

成幸 「……大丈夫だ。ずっと待ってるから」

文乃 (わ、わたしの気持ちが唯我くんに向くのも待ってくれるっていうの!?)

文乃 「唯我くん……」 キュン

文乃 「わ、わたし、わたし……」 キュンキュン

文乃 (か、顔真っ赤だ、わたし……目も潤んじゃってるし……)

文乃 (は、恥ずかしい……)

プイッ

成幸 (……ふぅ。落ち着いたみたいだな)

成幸 (あとは、折を見て自首を勧めればいいか……)

成幸 「……ノドが乾いたな。お茶、いただくな、古橋」

文乃 「あ……う、うん。どうぞ」

成幸 「………………」

ゴクッ



411:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:28:54 ID:dqC8eIGA

成幸 「……ん?」

成幸 「!?」

成幸 (に、苦い!? なんだ、この苦みは……!?)

成幸 (明らかにお茶の苦みじゃない! これは……クスリ!?)

成幸 (まさか、毒か……!?)

成幸 「ふ、古橋、これ……?」

文乃 「……?」

文乃 「!?」 (し、しまった! だよ!)

文乃 (お茶にも溶かせるお手軽ダイエットサプリ、間違えて唯我くんのお茶に混ぜちゃってた!?)

文乃 (……でも、ただでさえ痩せ型の唯我くんがもっと痩せたらって想像したら……)

クスッ……

成幸 「!?」 (わ、笑ってる……! まさか、古橋、お前……)

成幸 (俺を消して、事件の隠蔽と食人を兼ねるつもりか……!?)

成幸 (お前は、俺を騙したのか……?)



412:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:30:17 ID:dqC8eIGA

文乃 「……ふふ、ごめんね、唯我くん」

文乃 「でも、それ害はないから安心して」

成幸 (害はない……? はっ! ひょっとして毒蛇なくて睡眠薬か……!?)

スッ……

成幸 (た、立った……!? お、俺を、どうするつもりだ……!?)

成幸 「ま、待て、落ち着け。話をしよう」

文乃 「? 変な唯我くん。話ならしてるじゃない」

成幸 「ち、違う。やめろ。来るな……」

文乃 「? 大丈夫?」

成幸 「ち、近づくな。来るな。俺が悪かった……だ、だから……」


成幸 「こ、殺さないでくれーーーーー!!」


文乃 「………………」

文乃 「……は?」



413:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:31:10 ID:dqC8eIGA

………………

文乃 「………………」

成幸 「………………」

成幸 「ほんっっっっとうに、申し訳ございませんでした!!」

文乃 「………………」

ツーン

文乃 「……どんなに土下座しようと、わたし、当分きみのこと許すつもりはないから」

成幸 「すまん! 本当に悪かった! ごめん! 今度アイス奢るから!」

文乃 「君の中のわたしはどんだけ安い女なのかな!?」

文乃 「快楽殺人鬼に喰人鬼の汚名まで着せられて、アイスで済まされると思ってるのかな!?」

成幸 「悪かった! ごめん! 本当に! 悪かった!!」

文乃 「………………」

ハァ

文乃 「……もういいよ。怒るのもバカらしくなってきちゃった」



414:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:32:17 ID:dqC8eIGA

成幸 「古橋……」 ジーン 「許してくれるのか……?」

文乃 「まぁ、君が悪いというよりは、変な勘違いをしたりっちゃんやうるかちゃん、」

文乃 「それから、勘違いさせるような誤字をメールで送ってしまったわたしも悪いし」

文乃 「……いや、そもそもわたしにカレー作りの手伝いを依頼したきみが一番悪いのかな?」

成幸 「ごめん!」

文乃 「冗談だよ。もう怒ってないよ」

文乃 「……まぁ、りっちゃんとうるかちゃんは後でちょっとつねろうかなとは思うけど」

成幸 (怖い)

文乃 「でも、唯我くん、君はミステリー小説とかを読むことはないのかな?」

成幸 「へ……?」

文乃 「わたしのことを殺人鬼だと思ってたんでしょ? そんな人の家にひとりで乗り込むなんて……」

文乃 「いわゆる “死亡フラグ” ってやつだよ、それは」

成幸 「いや、まぁ……そりゃ、怖くないって言ったらうそになるけどさ、」

成幸 「古橋なら、話を聞かずに問答無用ってことはないだろうし……」

成幸 「お前が俺のことをどうこうするって、想像できなかったからさ」



415:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:33:06 ID:dqC8eIGA

文乃 「……唯我くん」

文乃 (一応、わたしのことを信頼してくれてたってことでいいのかな?)

文乃 (まぁ、その信頼が “殺されるか否か” ってところが引っかかるところだけど)

文乃 (……でも、君は、人殺しになったわたしを、説得するために来てくれたんだね)

文乃 「……きみは、わたしがどんなになっても、わたしを助けてくれるんだ」

成幸 「へ……?」

文乃 (なんて、ね。いきなりこんな冗談言われても……――)

成幸 「――当然だろ? 俺はお前の教育係だし、お前は俺の師匠だからな」

文乃 「えっ……」

文乃 「あっ……そ、そう?」

文乃 (……そっか)

文乃 (きみは、わたしを助けてくれるんだ……)

カァアアアア……

文乃 (助けて、くれるんだ……)



416:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:33:55 ID:dqC8eIGA

成幸 「じゃあ、いつまでもお邪魔しても悪いし、もうそろそろ帰るな」

成幸 「今日は遅くにアホなことに付き合わせて悪かった。アイスは絶対奢るから」

文乃 「そう? でも、君のお小遣いが少ないのは知ってるから、遠慮しておくよ」

成幸 「む……。最近は勉強しながらバイトできるところを見つけたから、」

成幸 「実は結構余裕があったりするんだぜ? ……まぁ、参考書で消えるけど」

文乃 「でしょ? だから無理しなくていいよ。もう怒ってないし……」

成幸 「……ん、そうだ。今度うちに来いよ」

文乃 「へ……?」 カァアアア…… 「な、何、いきなり……///」

成幸 「晩ご飯ごちそうするよ。って言っても、作るのは水希だけどさ」

成幸 「誕生日のカレー、水希がすごく喜んでくれたみたいでさ、」


―――― 水希 『今度、古橋さんにお礼をしなくちゃね。たっぷり……それはもうたっぷりと……』


成幸 「って言ってたからさ。今度水希のお返しも合わせて晩ご飯、食べに来いよ」

文乃 (それは間違いなく喜んでいる反応じゃないんだけど……)



417:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:34:33 ID:dqC8eIGA

文乃 「……わたし、お邪魔してもいいの?」

成幸 「へ? 当たり前だろ? お前が来ると、母さんも和樹も葉月も喜ぶしな」

成幸 「お前がよければ、ぜひ来てくれよ」

文乃 「………………」

文乃 (……また、ご家族と一緒に、ごはん、食べていいんだ)

文乃 「……うん。ありがとう。ぜひ、ごちそうさせてもらいたいな」

文乃 (……わたし、期待してるんだ)

文乃 (きみが、わたしのことを助けてくれることを)

文乃 (ねえ、唯我くん)

文乃 (……きみは、本当にわたしのことを助けてくれるのかな)

文乃 (唯我くん、わたしは……)

文乃 「……じゃあ、楽しみにしてるね、唯我くん」

成幸 「おう! 任せてくれ、古橋!」

文乃 (……きみに、期待してもいいのかな)


おわり



418:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:35:42 ID:dqC8eIGA

………………幕間  「お礼」

文乃 「……!? な、何このカレー!? とんでもなく美味しいよ!?」

水希 「ふふふふふ、そうでしょうそうでしょう? 腕によりをかけましたから」

水希 「三日ほど煮込み続けました。おかげさまでガスを使いすぎてお母さんに少し怒られました」

文乃 「美味しいよう……美味しいよう……」 グスッ……

水希 「な、涙ぐむほどですか!?」

文乃 「美味しいよう……水希ちゃん、ありがとう……!!」

水希 「べっ、べつに……お礼なんて……」

水希 (お兄ちゃんと一緒にカレーなんか作りやがったあなたに対してのあてつけのつもりの)

水希 「お返しですから、気にしなくていいですよ……」 プイッ

水希 (こ、こんなに喜んでもらえるとは、不覚だわ。少し嬉しい……)

和樹 「おー。文乃姉ちゃんすげー!」

葉月 「水希姉ちゃんを籠絡するなんて、嫁レースを制したも同然だわー!」


おわり



419:以下、名無しが深夜にお送りします 2018/10/08(月) 21:38:31 ID:dqC8eIGA

>>1です。
読んでくださった方ありがとうございます。
そしてごめんなさい。悪ノリをしすぎました。


原作の勘違いコメディ回を目指して書きましたが、くどすぎた気がします。反省しています。
申し訳ないことです。
文乃さんファンの方もごめんなさい。
ただ、書いていてすごく楽しかったです。

あまりコメディコメディしたコメディは得意ではないので、ここまでひどいのは今後ないと思います。


また投下します。よろしくお願いします。



元スレ
【ぼく勉】小美浪先輩「この前は本当に悪かった」成幸「はい?」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1536589434/
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