【昭和の珍事件】ニセのダイナマイトで東京都内大パニック・・・！？

2018年10月20日：22:00

以前、『昭和の怪奇事件』でもご紹介した「非行生徒が先生の自家用車を爆破させる」をはじめとして、昭和時代は「ダイナマイト」を使った犯罪が非常に多い。
これはダイナマイトが今以上に土木工事に使われる機会が多く、また管理がずさんだったことから他人に盗まれやすく、多くの犯罪に使われていた事を物語っているのだが、昭和も末期の昭和57年（1982年）、「ニセダイナマイト」が東京都下を恐怖に陥れたことがある。

「びっくりおもちゃ爆弾騒ぎ」

1982年（昭和57年）10月4日の読売新聞に「ダイナマイトだ！　びっくりおもちゃ爆弾騒ぎ」という記事が掲載されている。
記事によると、1982年秋、ダイナマイトに見せかけたおもちゃが東京都内で次々に騒ぎを起こしており、警視庁が被害に頭を抱えているという。

このニセダイナマイトは、愛知県名古屋市のとある玩具メーカーがこの年の8月に発売したもので、1本の長さが20センチ、直径4センチ、3本でひと組、薄茶色の包装紙には英語で大きく「DYNAMITE」書かれ導火線まで付いているという本格的なもの。むろん火薬は入ってないが、大きさや雰囲気は本物ソックリで、ダイナマイトに詳しくない人が見たら本物と見間違える可能性は高かかった。

さらに混乱を招いたのは、この手の「そっくりおもちゃ」は本来、商品の側面などのに使用上の注意や、偽物であることを証明する一文が書かれているものなのだが、メーカー側がクオリティを優先させたためか、「この商品は人を騙して楽しめる」という一文が英語で書かれており、気付けなかった人が多数いた事も騒動が発生した原因のひとつだった。

東京都内大パニック！

さて、このニセダイナマイトがどのようなトラブルを招いていたのか、当時の新聞を参照しながら検証すると、最初の事件はニセダイナマイトの発売されてすぐの8月27日に発生している。

この日の午後1時頃、東京都立川市の通行人から「甲州街道を走っていた車の助手席にダイナマイトが裸のまま積んであった」と通報があり、立川署が追跡し車を捕まえたところ、おもちゃだったことがわかり一件落着。

以来、都内各所でニセダイナマイトが多く目撃されることとなり、この記事が掲載される3日前の10月1日には、千代田区にある気象庁の駐車場で例のダイナマイトを助手席に置いている車が発見。発見された場所が（気象庁といえど）国土交通省の建物内だったことから、丸の内署がテロの恐れもあるとして緊急出動。恐る恐る車に近づき窓を割りダイナマイトを回収したところ、おもちゃと判明。ダイナマイトを持っていた車の持ち主は「友人からもらったものを助手席に置いていた」と証言していた。

事件の結末

件のようなニセダイナマイト事件が都内で相次いだことから、警視庁では愛知県警を通じ、発売元のおもちゃメーカーに発売中止を要請。
自分の会社が東京で大トラブルになっている事を知ったおもちゃメーカーはすぐに製造および出荷を停止。「かなりの量が出回ってしまったが、回収も行う」とし、できる限りの商品を回収したため、これ以上のトラブルが起こることはなく、ニセダイナマイト事件は年内のうちに解決した。

あまりに本物そっくりだったことから発生した今回のトラブル。時代が時代ならばネットオークションで、ニセダイナマイトが転売されたり、悪用されるケースもあったことは想像に難くない。おもちゃもあまりにリアルに作りすぎるとトラブルの元ということか……。

参照：読売新聞縮刷版

文：穂積昭雪（昭和ロマンライター / 山口敏太郎タートルカンパニー / Atlas編集部）