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やっぱ月だろ。人類が火星よりも月に注目すべき5つの理由 : カラパイア

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pixabay

 火星への有人飛行、さらには火星の植民化。夢のようなヴィジョンが人類の目の前に掲げられた。

 だがそれは、まずテラフォーミングして、呼吸ができる大気や温暖な気温を維持できるようになるという前提に立っている。しかし、現在のテクノロジーでテラフォーミングができるという前提に疑問を投げかける研究が最近発表された。

 もし火星の植民化が難しいのなら、ここでもう少し近くにある天体との関係を見直してみるのもいいだろう。

 つまり、月との関係だ。
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人類と月の歴史


 初の月面着陸は1966年のことで、ソ連の無人月面探査機ルナ9号による。このミッションによって、月の不毛の大地の様子が詳細に明かされた。

 宇宙時代の幕開け以降、月面着陸に成功した事例は60を超え、うち8事例は有人着陸である。一番有名なのは、人類が初めて月面に降り立った1969年のアポロ11号によるミッションだろう。

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pixabay

 こうした宇宙の先駆者たちの努力のおかげで、私たちの宇宙と地球への理解は大きく進んだ。

 たとえば、1971年のアポロ15号ミッションでは、いわゆる「ジェネシスロック(創世記の石)」が回収された。

 これは月のクレーターで回収されたものとして最古の石で、ジャイアントインパクト仮説(およそ45億年前に地球が大きな衝突を起こし、そのために月が誕生したという仮説)を裏付けているとされる。

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 しかし、今や私たちの関心は月から火星へと移っている。

 1990年代初頭、マーズ・パスファインダー計画によって、火星の地上に最初の探査機が送り込まれた。

 70年代のバイキング計画以来の快挙であり、これによって送り届けられた火星の風景の写真は、この赤い惑星への興味を大いにかきたてた。

 このような状況の下、火星への有人ミッションが待ちきれないという気持ちも分かる。だが、そうした気持ちを抑えるためにも、もう一度月に注目するべき5つの理由を見ていこう。

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image credit:NASA

1. 宇宙の中継地点になる


 天体の重力を振り払い別の星に到達するには、一定のスピードが必要になる。地球表面から火星まで旅をするには、最低でも秒速13.1キロで飛行しなければならない。そのためには、巨大なロケット、膨大な燃料、複雑な軌道での飛行などが必要になる。

 ところが月からの場合は重力が小さいために、たったの秒速2.9キロでいい。これは地球から国際宇宙ステーションに行くために必要な速度の3分の1でしかない。

 また月には貴重な鉱物資源が豊富があり、その中にはロケット燃料の材料もある。月面で確認されている水の氷を分解して、水素燃料と酸化剤を作り出せるのだ。

 地球では希少なトロイリ鉱という鉄硫黄化合物もある。そこから抽出した硫黄を月の土と混ぜれば、ポルトランドセメント(一番一般的なセメント)よりも頑丈な建材を作り出すことができる。つまり、月にある資源を使って基地を建設できるだろうということだ。

 月面基地からなら、もっと遠い宇宙への探索にかかる燃料が少なくて済む。地球からロケットを打ち上げるより、ずっと少ないコストと労力で太陽系の探索が行えるようになるのだ。


2. 未来の燃料が手に入る


 星が輝く原理である核融合は、未来のエネルギー源として期待されている。融合炉には風船に入れられるヘリウムよりもっと軽いヘリウム3が使われる。

 この同位体は地球では珍しいが、月には豊富にあるため、それを地球にどうにか運ぶことができないかと、すでに企業や政府から熱い視線が注がれている。

 こうした商業上の関心は、月面に恒久的な入植地を作り出すインセンティブとなるだろう。当然、それに対する投資も期待できる。


3. 年代物の岩石がある


 月は時間の止まった世界だ。過去30億年で大きな地質学的変化はまったくない。地球上では、雨、風、潮汐、惑星の成長などによって地表の様子が変化する。

 しかし月面には、過去に起きた暴力的な衝突の記録が誇らしげに残されており、太陽系初期の歴史を観察するチャンスを提供しているのだ。

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4. 宇宙の観測ができる


 月の大気密度は薄く、地球の1兆分の10程度しかない。これは天体観測にはうってつけの環境であるということだ。

 ここからなら完璧な電磁気スペクトルを観察できるのだ。さらに月の裏側に天文台を作れば、地球から届く電波もシャットアウトできるだろう。

 宇宙からの短い波長が届きにくい地球とは違い、月はX線望遠鏡やガンマ線望遠鏡による天体観測にもぴったりだ。

 月面に有人の施設を設けてしまえば、月面天文台の維持管理だって、軌道上に飛ばされた望遠鏡のそれよりも楽だ。


5. 宇宙の人間への影響を確かめる


 有人火星ミッションの大きなハードルの1つは、人が宇宙空間に長期間滞在した場合の健康面の影響を理解する方法だ。

 万が一、火星で不慮の事態が起きたとしても、救援や物資を届けられるのは2年後のことになるのだ。それではとても間に合わない。

 そこでまず月で人体の宇宙への耐性を確かめ、問題への対処方法を確立しておく。つまり火星での暮らしを始める前の練習というわけだ。

 月ならば、有事が起きたとしても地球から3日の距離だ。

 有人火星ミッションのもう1つの懸念は、手つかずの環境を地球の微生物で汚染してしまう可能性だ。月の場合、ほぼ確実に不毛の地であることが分かっているので、そのような懸念は無用である。

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pixabay

今ならもっと簡単にいけるはず


 最初に月に人類の手が及んでから半世紀以上が経つが、月面への入植はちっとも進展していない。だが、今では当時のアポロミッションで利用できたものよりも、はるかに高度で洗練されたテクノロジーがあるのだ。

 次の大きな一歩を踏み出す前に、もう少し歩幅を狭めて踏み出すのもいいはずだ。

References:Five reasons to forget Mars for now and return to the moon/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 20:41
  • ID:vmjLScKE0 #

月は出ているか。

2

2. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 21:11
  • ID:520XWrDF0 #

上の月面写真ってすごく不自然なのわかりますか?

3

3. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 21:26
  • ID:jpEF544O0 #

月ではAIによるロボットで無人による開拓が行われる気がする。
テラフォーミングするくらいなら地球上の炭酸ガスを除去する機器を多数設置するとか砂漠を緑化するとか洋上都市を築く方が遥かに楽で多くの人が住める環境を生み出せると思う。

4

4. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 21:29
  • ID:GC5TWAKb0 #

確かに、アポロ時代より高度な技術やテクノロジーもあるけど、それを持ってして月面を目指すだけのメリットが無いのが現状
ヘリウム3にしろ核融合技術が確立してからじゃないと意味を成さないし、取り出す技術も問題点が多い
無理して事を急いた為に以降の行動に障害が出るなら、今は技術の向上に努める時期だと思う

5

5.

  • 2018年11月04日 21:34
  • ID:n67K0Q4v0 #
6

6. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 21:41
  • ID:L2sWno190 #

まぁまずは月だよな。圧倒的に近いし。

7

7. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 21:44
  • ID:oliIAWRc0 #

火星のテラフォーミングなんて夢物語だよね
仮に滅亡が避けられないなら、自然に任せて地球で滅亡するのが一番幸せな気がする本気で

8

8. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 21:51
  • ID:8j4kkEHK0 #

月面に地下室作って長期居住するバイトねーかな。ネット回線つないでくれたらやってもいいぞ

9

9. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 21:57
  • ID:7OJFjUdX0 #

月で何か事故って地球の周回軌道から離れたり潮汐力変化したり勢いつけて戻ってきて地球に降ってきたりしないか不安なので開発とか最低限にして出来るだけそっとしておいて欲しい
そのままで十分美しい

10

10. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 21:57
  • ID:3VzNTbsi0 #

サム・ベルが、もう住んでます(ガーティと共に)

11

11. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 22:08
  • ID:pn4JYTxQ0 #

月どころか、空を飛ぶのだって、夢物語だったわけで。

昔、「飛行機械」の開発がブームだった頃、
「空気より重いものは飛べないんですよ」って大学教授が真面目に諭していたわけで。

12

12. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 22:42
  • ID:c.3cI7kb0 #

※2
「無風ではためく旗」は旗の上部にフレームが入ってる(が、なぜ無風ではためくのか
地面や奥の山はモノクロ写真で機材はカラー写真になっている
宇宙空間と思しき暗部に星が写っていない
いくら砂地であっても足跡が深い

とか諸説ありますね
でもこれは本物だと思いますよ
撮った私が言うから間違いないです(現地カメラマン



13

13. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 22:48
  • ID:c.3cI7kb0 #

※3
たしかに
人類が移住するのでなければテラフォーミングは不要ですね
自動機械による資源の採掘から地球への発送
惑星上で製品化してあなたのご自宅へ配送、という事も考えられる
地球から打ち上げるのは難しいが向こうから落下(?)させるのは容易な気がする
(そしてシステムが乗っ取られマスドライバーがががが

14

14. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 23:04
  • ID:jIg4Y6yA0 #

※8
月に滞在できるなら金を払ってでも行きたい人は多くいるだろうから、たとえ薄給激務のブラックバイトでも応募多数で引きこもり希望はお呼びじゃないんでは…

15

15. 匿名処理班

  • 2018年11月04日 23:55
  • ID:y4UI0WtQ0 #

正直、地球の砂漠緑化もできない段階で火星のテラフォーミングなんてぬかすなや。などと色々思う所はありましたが「まずは月」という考え方には賛成します。

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