アメリカ、カリフォルニア州シールビーチで「ドーナツシティ」というドーナツ屋を夫婦で営んでいるのはジョン・チャンさん。
ジョンさんは、30年以上毎日、休むことなく奥さんのステラさんと共にお客さんにドーナツを売り続けてきた。どんなに遅い時間になっても、品物が売り切れるまで毎日店に立つ働き者の夫婦として近所では知られる存在だった。
ところがお店の様子がおかしい。ステラさんはお店にいないし、ジョンさんが落ち込んでいることに街の人々は気が付いた。
実はステラさん、動脈瘤で倒れてしまったのだ。
最愛の奥さんは病気療養中、だけど店主としてドーナツシティも開店しなくてはいけない、そんなジョンさんの苦悩を知った町の人々は名案を思いついた。
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働き者のドーナツ屋の夫婦。奥さんが病に倒れる
チャン夫妻は、1979年にカンボジアから難民としてアメリカにやってきた。その10年後、ドーナツシティのフランチャイズ店を開業した。
雨の日も風の日も夜明けから働いていて、休みを取る日は珍しかったという。町に愛されている名物ドーナツショップなのだろう。
しかし今年の9月22日、ともにドーナツショップを切り盛りしてきた妻のステラさんが、ジョンさんと共に参加した結婚パーティで突然倒れた。
病院に急遽搬送され、脳のスキャンを撮ったところ動脈瘤であることが判明。その後2週間以上、ステラさんのこん睡状態は続いたものの意識を回復。その後はリハビリの為に病院に通いながら自宅療養をすることとなった。
image credit:The Orenge County Register
奥さんの病気を知った顧客たち。善意の連携プレイが始まる
ドーナツシティの顧客のドーン・カヴィオラさんは、奥さんが不在なこと、店主が元気がないことに気が付いた。そして夫妻の事情を知り、ひとつのアイデアに至った。
毎日早くにみんながたくさんドーナツを買って売り切れにしたら、ジョンさんは安心して奥さんのお見舞いに行けるんじゃないだろうか。
思いついた考えを近所の人々に話した結果、皆が賛成してくれた。顧客たちの連携プレイが始まった。
クチコミはもちろんSNSでも拡散された。ネット上で顧客たちがそれぞれ、ジョンさん夫婦のことを伝え「どうせ買うなら1ダースで買おう」と呼びかけた。店のドーナツを一刻も早く売り切れにするためだ。
うわさを聞き付けた人々が次々とジョンさんのドーナツ屋さんに向かい、あっという間にドーナツは連日品切れに!
おかげでいつもより早く店じまいになって、ジョンさんはステラさんの看病やリハビリに付き合うことができる。
image credit:The Orenge County Register
地域の小学校の先生も、生徒のご褒美のために大量にドーナツを購入するなどしていたという。人々の熱心な購買活動のおかげでなんと午前10時半に完売した日もあったそうだ。
顧客の一人は、チャン夫妻のためにクライドファンディングページを設立しようかと申し出たそうだが、夫のジョンさんは丁重にお断りしたそうだ。
「お金はいいんです。妻と過ごす時間があれば十分です。」だとのこと。
みんなの善意が伝わって奥さんは回復中
お店が早く終わると、ジョンさんはステラさんのリハビリに付き添うことができる。ステラさんも孤独な時間が短くなる。いいことづくめだ。
みんなの善意とジョンさんの愛情が伝わったのか、ステラさんは懸命にリハビリに励み、話すことも書くこともできるようになった。自分で食事することができるようになった。
ジョンさんは顧客たちの思いやりに感動したという。「皆さんの温かい心遣いを本当に感謝しています。」とジョンさんは語っている。
image credit:The Orenge County Register
「夫妻が元気にあることは私たちのコミュニティ全体に大事なことなんです。」と顧客の一人はコメントしている。おいしいドーナツ、そして夫妻の人柄はこの町の名物なんだそうだ。
地域の愛、献身的な夫ジョンさんの愛を受け取って、ステラさんの姿をもう一度、お店で見る日が来るかもしれない。
Seal Beach community rallies behind doughnut shop owner | ABC7
References: The Orenge County Register / written by kokarimushi / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
粋だねえ
2. 匿名処理班
「でも太るから…」とハイカロリー食品を敬遠しないところがアメリカ人
3. 匿名処理班
号泣
4. 匿名処理班
ショーウィンドウいっぱいにドーナツがあるのを見て商人としての魂を感じた。
早く売り切るためにドーナツの販売を少なくしたら妻に怒られたのだろうか。
5. 匿名処理班
クラウドファンディングを打診されて
「お金はいいんです。妻と過ごす時間があれば十分です。」
本質を理解しつつ、丁重に断られるところに本当に人格が出てる気がする。
6. 匿名処理班
はいはいステラステラ
7. 匿名処理班
こういうタイプの「売り切れにより本日閉店」の話は初めて聞いた気がする
お客さんも良い人揃いで暖かい気持ちになる
8. 匿名処理班
いいはなしだな〜
9. 匿名処理班
やさしい世界
10. 匿名処理班
リアルステラおばさん現る
11. 匿名処理班
愛だな。
12. 匿名処理班
ドーナツ数セーブせず大量に売ってるの店主だよなw
13. 匿名処理班
お客さん「ドーナツを1ダース下さい。」
ジョンさん「2個でじゅうぶんですよ。」
14. 匿名処理班
(´;ω;`)会社で鼻水出るくらい泣いた。
15. 匿名処理班
いい話だ(´;ω;`)
少し心が疲れてたんだけど、元気をもらえました。
ありがとう。
16. 匿名処理班
売り切れることを見越してこっそり生産量増やしてもええんやで
17. 匿名処理班
win-winが すぎる。
18. 匿名処理班
人間も捨てたもんじゃないな
19. 匿名処理班
ただただひたすらに良い話
仕事が出来なくても奥さんも一緒にお店に座っていられる日も遠くないかもしれないね
そしたらきっとまたみんなが様子を見にドーナツ買いに来てくれるんだろうな
20. 匿名処理班
誠実にしていれば、誰かがちゃんと見ていて呉れる。
そう信じて、正直者は…と言われようとキチンと生きてゆきましょう。
21. 匿名処理班
コミュニティ大事だなぁ
22. 匿名処理班
単純にお金を出すよりも粋だね
自立した人間の尊厳は美しい
23. 匿名処理班
そんな時くらい店休んでもいいのに偉いというか凄いというか。
とにかく無理しないでもらいたいね。
じゃないとご主人も病気になっちまうぜ。
24. 匿名処理班
客側が率先してやってるんだからWin-Winなんだろうけどモヤモヤしちゃう?
25. 匿名処理班
こういう時こそ俺たちデブが役に立てる
26. 匿名処理班
世にあふれる募金うんぬんより至極まっとうな本当の善意だなって思った
27. 匿名処理班
治療に金もかかるし店は今までどおりしないとあかんなんだろうね。早く元気になるといいね。
28. 匿名処理班
※5
こういう人だからみんなに慕われるんだろうね
最初に発案した人も良い人だ
29.
30. 匿名処理班
お客さんの方も無理しないでね、と思ってしまう。
31. 匿名処理班
人徳のなせる業
32. 匿名処理班
※13
No 6+6 1dozen
33. 匿名処理班
アメリカは医療費たかいんだったっけ
だから店休むわけにも行かないのかも
素直に良い話だと思うな。みんなが無理してない全員ならいいじゃない!
34. 匿名処理班
カンボジアからってことはあの時代の人なのかな苦労してそうだ
奥さんの回復も順調のようで早く戻ってこられるといいね
35.
36. 匿名処理班
お客さんが300人いて
その中で奥さんの病気を知っている人が30人←これでも多いぐらい
一回だけ1ダース買った人15人
毎日1ダース買っている人はゼロ
こんなもんだろ
連係プレイなんて大げさすぎる
37. 匿名処理班
金ほしさにドーナツ量産してないかっていう人はこの人がクラウドファンディングを断った事を思い出して欲しい
この人はあくまでもドーナツを売ったお金で妻の治療費も妻との時間もまかないたいという人なんだから自分の手に余るものは元から欲しがる人ではないだろうに
38. 匿名処理班
※36
呼びかけることで実際に「連日」売り切れとあるけどな
1回だけで連日になるなら売る量減らしたのかね?
連携というのも呼びかけに対することだろう
否定意見出せる俺かっこいい、は本人が思うだけです
有名人の大げさな慈善行動より、こういった一般人のちょっといい話の方が好きだな
39. 匿名処理班
ドーナツ食べる理由を作るためなら人はなんだってするんだなあw
♪ダイエットは明日から〜
わいも毎日買いに行きたいわ
40. 匿名処理班
すごい…これぞ善意の輪、親切の輪か
41. 匿名処理班
朝早く起きてドーナツの仕込みをするのも奥さんと2人がかり。
それが一人になったとしたら、定時に店を開けるのも大変だったはず。
もちろんアルバイトのスタッフに作業を手伝ってもらってはいただろうけど、その間だって、病気の奥さんのことが気になって仕方なかったろうに。
売り切れるまで店を閉めない、なら、逆に言えば売り切れたら店閉められるよね、だからみんな、どうせ買うならまとめて買っていって、と思いついたお客さんは偉かった。
はやく売り切れるよう早い時間に来て、ってすると、店が混雑して店員の販売キャパをあっという間に超えてしまう。それより、いつもと同じ時間に、でも買うならどんとまとめて、なら、販売スタッフの負担もそれほど増えない。
これに喜んで協力する人たちって、店からすると本当に得難いお客様。
店主と奥さんの人徳のなせる業でしょう。
私も店で働く人間の一人だけど、こんな風にお客様に愛されるお店って本当にうらやましい。
42. 匿名処理班
色々問題を抱えてる国だけどアメリカのこういうとこは好き
奥さん早く良くなりますように。
43. 匿名処理班
泣いた
クラウドファンディングの断り方見ても真摯な人で街のみんなに愛されていたのが分かる
44. 匿名処理班
ドーナツ食べたいわーー
近所にあったらたくさんかったのに!
45. 匿名処理班
途中まで絵本の中の話か、くらい美しい話だったけど、ジョンさんがクラウドファンディング断ったの読んで美しい人間たちの話だとわかった
今日日こんなカッコいい事絵本でも言わねぇよ
46. 匿名処理班
働き者のジョンさんに美味しそうなドーナツ
そりゃもう買いに行っちゃうね
47. 匿名処理班
毎日ドーナツ食った客が入院しなきゃいいが