映画『ターミネーター』シリーズに登場する液体金属で作られた殺人ロボットT-1000は、当時のSFファンに大きな衝撃を与えた。
だがSFの世界ではなく、現実の世界にもT-1000からインスピレーションを受けた液体金属ロボットが登場した。
中国の研究者らが開発したそれは手のひらサイズで、プラスチック製の車輪、小型リチウム電池、液体金属で構成されており、自分のボディの形状を自在に変化させながら移動することができる。
その目的は人の立ち入れない場所での災害救助や病気治療だそうだ。
スポンサードリンク
T-1000の救命ロボットバージョン
「『ターミネーター2』のT-1000にインスピレーションを受けました」と開発者の1人である蘇州大学の李相鵬教授は話す。
プロジェクトが開始されたのは6年前のことだ。きっかけになったのは、液体合金に高導電率・表面張力の操作性・高い柔軟性といったユニークな特性があることが明らかになったことだ。
研究チームの1人、オーストラリア・ウーロンゴン大学の唐詩楊氏によると、こうした性質を利用すれば、自由に形状を変化させられる自己再構成式ロボットを開発できるはずなのだという。
彼が目指すのは、10歳のときに映画で観たT-1000のように柔軟に形を変えるロボットだ。
Terminator 2 - running (T1000) HD
このロボットは恐ろしい殺人ロボットT-1000からインスピレーションを受けてはいるが、開発者が目的としているのは、もちろん殺害ではない。
「将来的には、地震の被災者の救助ができるような液体金属製ソフトロボットを開発したいと思ってます。形状を変えてドアの隙間に入り込んだりと、人間の行けない場所にも行けるこれならぴったりでしょう」と唐氏は言う。
「その柔軟性と高いエネルギー転換率を考えれば、小さなナノロボットにして人体の中に潜り込ませ、がんに直接抗がん剤を送り届けたり、がん細胞を破壊したりもできるでしょう」と李教授。しかし同時に軍の諜報活動にも使い途があるだろうと示唆する。
電圧の変化で液体金属のボディを動かす
ロボットの液体金属は主にガリウムで構成されており、ここに加える電圧を変化させることで、動かすことができる。
image credit:scmp
ガリウムは電子回路や半導体に使われる柔らかく、銀色をした金属だ。液体のガリウム合金の場合、見た目は水銀のような感じで、普段は水滴のような形になる。
この液体金属の水滴を溶液のチューブに閉じ込め、電圧の変化によって重心を変えてやる。すると車輪が回り、動き出すという仕組みだ。
現時点では平らな面を移動できるだけだが、将来的には車輪を複数組み込んで、起伏のある場所でも自在に移動できるようにする予定だそうだ。
また李教授によると、『スター・ウォーズ』シリーズに登場したBB-8のような球が転がるようなロボットも開発しているという。
この研究は『Advanced Materials』に掲載された。
References:scmp/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
自動車に革命が起きるかも!?金属に代わり柔軟性のあるボディ用新素材が開発される(英・米研究)
NASA開発の特殊素材。スペースシャトルの耐熱ブロックは1204℃に熱した後でも、素手で触れることができる。
ターミネーターを越える存在に。ソフトロボット産業をけん引する自己完結型ロボット「オクトボット」
ターミネーターはすぐそこに!進歩したロボット工学の6つの技術
ロシアのターミネーターきたー!二丁拳銃使うヒューマノイド「フョードル」が公開される
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
「サイエンス&テクノロジー」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 1672 points | 5655カラット!重さ1.1キロの巨大エメラルドが発見され、ネット民ざわつく(ザンビア鉱山) | |
2位 1469 points | 「入ってます」ハリケーンが接近中のある日、3匹の小鹿たちが家の中に入り込み部屋の隅で固まっていた件 | |
3位 1141 points | いとしい私の愛犬。ウルフドッグにそっと手を添え、美しい自然の風景を撮影し続けるカメラマン(チェコ) | |
4位 1111 points | なんだ、ガラスの破片か。一応拾っとくか。で持って帰ったら、実は大きなホワイトダイヤモンドだった件(アメリカ) | |
5位 1107 points | 大親友の牛が売られることに。悲しみで涙を流す犬だったが、それを見かねた飼い主が |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
開発者として、目指すべき方向は間違ってなくても、利用者がどう使うかによって、T-1000の様なモノになってしまう可能性はある…研究の結果によってもたらされる未来は変わる。それが希望になるか、絶望になるかは、まさに今後次第。
2. 匿名処理班
次々と未来的?な着想を発表する国だな
夢があるというか何というか…
実現するのを楽しみにしてるよ
3. 匿名処理班
ガリウムねぇ、体内で活躍する分には問題ないけど屋外だと24度以上だったかな、キープしないと。
4. 匿名処理班
あのなつかしい「先行者」からどう進歩したか楽しみσ(^_^;
5. 匿名処理班
なるほど
夜対象が寝ていると密かに鼻から体内へ潜入し暗殺するわけですな
おそろしい
6. 匿名処理班
本当に可能かな?
7. 匿名処理班
どんな実現不可能なことでも開発中なのは誰でも言える
俺もタイムマシーンを開発中だ
8.
9.
10. 匿名処理班
護身用にグレネードランチャー買っとかなくちゃ
11. 匿名処理班
4.に先を越された
先行者で止まってはいけないんだろうけど、どこまで技術上げてるんだろう…怖いなあ
12. 匿名処理班
ポケモンのメルタンみたいなのかと思ったらなんか違う
13. 匿名処理班
人が想像できる物は実現できるって名言があったな
14. 匿名処理班
ガリウムは半導体の素材にも使われているから、ドロイド以外への転用も出来そうだね。
回路のフィジカルシミュレートとか。
ついでに高分解能の電圧監視もやってくれるとオシロやスペアナいらずになるんでラクでいいな。
15. 匿名処理班
これ、モーターの代わりに動力源として液体金属の物理特性使ってるだけで、液体金属のフレキシブルさがロボットの柔軟性に全く活かされてないから、ナノロボットの集合体みたいなT-1000と繋げるのは無理がある。
例えるなら、車輪の中心にモーターの代わりにハムスターを入れたようなもの。
16.
17. 匿名処理班
ダダスパンパンパパン!
18. 匿名処理班
※15
つまり、籠の中から出されて走り回るハム車輪のようなものね。
しかし、これって「人工筋肉」の素材に使える気がするけど、どうだろうね。
けどまあ、液晶ディスプレイが様々な電圧の変化で、いろいろな画像を映すように、電圧の変化で形状を変える、液体金属のプロトタイプのようなものが、できたっていう事じゃあないんだろうか?
19. 匿名処理班
ナノマシンの集合体か何かで出来そう
20. 匿名処理班
液体金属のコアに普通のバッテリーとか骨格があるならT-1000じゃなくて3のT-Xじゃんとマジレス。
でもそうなると「隙間に入り込んで被災者の救助目的」は少し無理があるような・・・
21. 匿名処理班
マジレスするとターミネーターのT-1000は厳密に言えば液体金属じゃなくて流体多結晶合金(という設定)。
極小のナノマシンが寄り集まってできているので流体のように見える。いわば流砂とかと同じ。液体なわけではない。