「毛髪と乳歯もある一つ眼の嚢腫」
こちらは昭和12年(1937年)6月25日の読売新聞(千葉県版)に掲載された紙面である。
「妊娠異聞」という見出しで「毛髪と乳歯もある一つ眼の『奇形嚢腫』」という記事と写真が掲載されている。
写真は2枚、上段が肉の塊、下段には人間の頭髪のようなものが掲載されているのだが、紙面によると、この写真は24歳の女性の腹の中から出てきた紛れもない「人間の死体」だという。
茨城県鹿島郡の某所に住む24歳女性のAさんはある日、妊娠もしていないのに突然腹部が膨れ上がり、千葉県銚子市内の大病院へ入院した。
かなり苦しんだため、医師が腹部を切開したところ、彼女のお腹の中には赤ちゃんほどの大きさの奇形嚢腫があり、数日後に摘出されたという。
当時の記事には写真のほか、取り出された腫瘍の詳細が記載されていたので、以下に抜粋したい。
腫瘍の断面図
Aさんの体から取り除かれた腫瘍は人間の頭ほどの大きさで、骨のない柔らかいものだった。上顎と下顎があり、上顎には乳歯が3本、下顎には1本生えていた。
さらにオデコの部分には成人大の一ッ眼がピョコンと飛び出しており、頭の部分には2尺(約60センチ)ほど長い頭髪が生えていたという。
掲載された写真2種は、それぞれ取り出された頭髪。そして、腫瘍を真っ二つに切った断面であるという。キャプションによると左側に突出している部分は眼球だというが、写真が白黒ということもあり、かなり分かりづらい。
むろん、いくら昭和初期とはいえ、大手の新聞紙面で奇形嚢腫の写真が堂々と掲載された事実は、時代を考えてもなかなかに衝撃的である。
なお、新聞には執刀に立ち会った院長の談話も掲載されており、摘出手術は長く生えた頭髪が邪魔で手こずり、3回の手術の末にようやく摘出できたという。
院長の話によると、髪の生えた嚢腫は特別珍しい訳ではないが、成人と同じ大きさの眼球があり60センチもの頭髪が生えているものは相当珍しく、24年という長い年月をかけ、腹の中でスクスクと成長していたのだと思われる。
一般的に奇形嚢腫は双子で生まれるはずだった兄妹(姉妹)の片方が成長過程で体内に取り込まれることで発生する。
腹の中ではもちろん生きているため、ふたりは紛れもない血を分けた「家族」であり、Aさんは生まれるはずだった「キョウダイ」の冥福を祈ったという。
参照:読売新聞千葉県版
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