地の四天王「光の勇者よ、俺は無力だった」
地の四天王(以下、地王)「……うむ」
勇者「無力だった、って……何があったんだ?」
地王「俺には……もう、何も出来ぬ状況だったのだ」
地王「……地の領地、水の領地、火の領地、風の領地」
地王「どこも、顔を出したら結婚せざるを得ない感じになっていたのだ!」
勇者「……」
勇者「はあっ!?」
地王「俺は、まず自らの領地――地の領地に向かった」
勇者「ああ……妹さんに、留守を頼むって話だったな」
地王「……ところがな」
地王「俺の留守中に、水の四天王が妹を懐柔していたのだ!」
地王「俺の屋敷に、何故か水の四天王の部屋があったのだ!」
勇者「滅茶苦茶入り込まれてるじゃねえか!?」
地王「間違いない! これを見るが良い!」
勇者「……ん? なんだコレ……?」
地王「うむ!」
地王「水の四天王の、お気に入りの下着なのだ!」
地王「見ろ! 水の魔力で編まれた、スケスケの下着だ!」
勇者「自宅で下着泥棒して帰ってきてんじゃねえええええ!!」
勇者「あ、ああ……って、そういう話じゃねえだろ!?」
地王「加えて、広場の俺の像の隣に……水の四天王の像が建っていたのだ」
勇者「……えっ?」
地王「なのでな? 見つかったらマズイと思い、撤退した」
地王「すまぬ……成果は、この下着しか無い」
勇者「お前、本当にそれは心の底から謝ってくれ!!」
勇者「!? 水の四天王に会ったのか!?」
地王「はっはっは! そんな訳が無かろう!」
勇者「そうだよな! 外堀埋められまくってるもんな!」
地王「色々と、仕事の引き継ぎをしているようだったな」
地王「水の四天王は――嫁に来る準備を着々と進めているようだ」
勇者「なんか……本当に、地に足ついた生き方してんな」
勇者「次って言うと――火の四天王だな」
地王「うむ」
勇者「火の四天王なら、割と話が簡単に行ったんじゃないか?」
地王「それがな? 火の領地に踏み入ったらな?」
地王「火龍王に決闘を申し込まれたのだ」
勇者「……」
勇者「はああっ!?」
地王「うむ! 先代の、火の四天王なのだ!」
勇者「それで……ど、どうなったんだ!?」
地王「うむ!」
地王「――我を倒さねば、娘には会わせぬ!」
地王「……と、言われてな」
勇者「お前……それ、よくある‘アレ’じゃねえか!!」
地王「おおっ! 光の勇者よ、よくわかったな!」
勇者「やっぱり、プロポーズした事になってんじゃねえか!!」
地王「うむ……それには、俺も慌ててな」
地王「――ならば、帰る!」
地王「……と、一旦出直そうとしたのだ」
地王「火龍王には……幼き頃から、世話になっているからな」
地王「そんな、恩のある相手をボコる訳にもいくまい?」
勇者「いや……それ! それ、お前……!?」
勇者「そうだろうな! 父親の立場なら、怒るよな!」
地王「プロポーズは誤解だ、と言おうとしたのだがな?」
勇者「言ったのか!?」
地王「……言えなかったのだ」
地王「――火の四天王と、その母君が突然現れてな」
勇者「……陰で見てたんだろうな」
勇者「……妻と娘に怒られる父親、か」
地王「絶え間ない口撃に、火龍王も為す術が無かったぞ」
勇者「それで……お前は、どうしたんだよ?」
地王「――また今度、出直して来て!」
地王「……そう、二人に言われてな」
地王「助けを求めるような火龍王の視線を振り切り、撤退した」
勇者「その状況なら……まともに話も出来なさそうだしな」
勇者「流石に、風の四天王は話がスンナリ行ったよな!?」
地王「まあ……話すには、話したぞ!」
勇者「? 何か、ひっかかる言い方だな」
地王「身を隠す間、風の領地に留まる事を条件に出された」
地王「風の四天王の狙いは、恐らく――事実婚なのだ」
勇者「いや……えっ、そうなのか!?」
地王「残念だが、それは無いぞ」
勇者「いや、そんなのわからねえだろ!?」
地王「光の勇者よ、風の四天王を甘く見るな」
地王「奴は――風の結界を用意していた」
地王「地属性の俺では……その結界の出入りは出来ぬのだ」
勇者「……お前、さりげなく一番の危機だったのか!?」
勇者「まあ……此処に居るってことは、逃げられたんだもんな」
地王「うむ!」
勇者「お前……どうやって逃げたんだよ?」
地王「――お前は、良い嫁になりそうだな!」
地王「と、そう言って照れている間に颯爽と撤退した」
地王「……死中に活を見出したのだ!」
勇者「お前……邪推だったら、自分で自分の首を締めただけだぞ!?」
勇者「ああ、まあ……そうだな」
地王「水の四天王は顔を合わせられず……火の四天王は保留だ」
勇者「……それで、こんなにすぐ帰ってきたのか」
地王「……こんな成果では、おめおめと帰れなかった」
地王「己の無力を嘆いた俺は――酒場へと赴いたのだ」
勇者「……」
勇者「待て」
勇者「お前……飲んで、どうした!?」
地王「銘酒『竜殺し』! スルリとした飲み口で、カパカパいけた!」
勇者「酒の感想なんか聞いちゃいねえんだよ!」
地王「朝起きたら見知らぬ女がベッドに居たのだ!」
地王「薄らぼんやりと、ヤっちゃった記憶があるのだ!」
勇者「なんでお前はそうなんだよおおおおお!?」
地王「うむ! その女が寝てる間に逃げてきたぞ!」
勇者「このクズ! んあああもう、このクズ!」
地王「大丈夫だ! 俺が、地の四天王とはバレていない! 多分!」
地王「それでな? 確か……」
地王「雷の――勇者だったか、女帝だったかと言っていたのだが……」
地王「光の勇者よ、どちらだと思う?」
勇者「俺に聞くんじゃねえよおおおおお!!」
地王「うむ……俺も、自分で自分が恐ろしい」
勇者「いっそ、全部話した方が早いんじゃねえか!?」
地王「光の勇者よ、何を言っている!」
地王「和平など、有り得ぬ!」
地王「――全滅か!」
地王「――先延ばしか!」
地王「既に……和解など出来ぬ状況なのだ!」
勇者「お前のせいでな!」
地王「良い感じに、時が解決してくれると……俺は信じているのだ」
勇者「クソッ……どうして、こんなにややこしくなったんだ!」
地王「――光の勇者よ、すまぬな」
地王「俺が、酔ってヤっちゃったばかりに、迷惑をかけている」
勇者「本当にな!?」
地王「だが……そのおかげで、こうして気安く話せる仲になれた」
地王「その点に関しては、俺に感謝しても良いのではないか?」
勇者「うるせえよ!……うるせえよ!!」
勇者「まあ……そうだな」
地王「祝福の聖女のお腹が目立つ前に、何とかせねばな!」
勇者「……本当にな!」
地王「さて……それでは」
パァァ……ァァァ
大地の魔女「――明日に備えて、今日はもう寝るか!」
勇者「くそっ……どうしてこうなったんだ……!」
祝福の聖女(以下、聖女)「……という訳なんです」
剣の乙女(以下、乙女)「……なるほどね」
聖女「すみません……迷惑をかけちゃいますよね」
乙女「何を言ってるのよ、水臭い」
乙女「――赤ちゃんと、光の勇者との結婚」
乙女「祝福の聖女……本当に、おめでとう」
聖女「ふふっ……ありがとうございます」
聖女「剣の乙女さん……」
乙女「光の勇者と、私と……大地の魔女のお姉様の三人で、ね」
聖女「本当に……ありがとうございます……!」
乙女「猶予は三年、でしょう?」
乙女「それだけあれば……私も、お姉様との子供を授かれると思うの」
乙女「だから、私も感謝してるわ」
聖女「……はい?」
乙女「ふふっ! きっと――奇跡が起きると思うのよね!」
聖女「……」
聖女「えっ!?」
おわり
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コメント一覧 (5)
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- 2018年11月29日 20:49
- 収束しそうで安心しました。
物語って本当に難しいですよね。
求められる内容と書きたいこと、色々エネルギーが使われますから。
楽しませるにせよ、驚かせるにせよ。
人と人の繋がりあっての作品ですから。
宇宙の暗闇の中で私達が光明を見出だせるのなら、その終わりにこそ続きがあります。
-
- 2018年11月29日 20:59
- 登場人物が多いと新規には話が読めない。
骨格として勇者がいるなら魔王の対立構図。
会話主導による話の展開。どれも簡単そうに見えて、その実、作品の難しさや批判点もあります。単発ならば流される話も継続することで、要求や疑問も飛ばされます。
それを受けて困惑されることもよくある話。
話の着地点が見えなくなると、主旨からそれますし。そもそも元々テンプレートがあるからこそ、王道も邪道もスピンオフも発想もハードルが高くなりますよね。
たとえ、一見、無様な吐血の後悔でも。
鮮血の華が雪の白さを覆えば、それは時に紅化粧となることもあります。
作者自身も物語として時に受け手は影響されることだってあるわけです。この人の作品だから応援しようと、と人の心は変化するわけですから。もちろん吐血するにしても、美しく散るように倒れないと伝わらないので、そう至るこおもまた難しいものですが。
-
- 2018年11月29日 23:02
- もうやめたれや
-
- 2018年11月29日 23:59
- 長文きmすぎ
これ作者かいてんじゃねーの?
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