江戸時代、日本は鎖国政策をとっており、対外関係は朝鮮王朝、清(のちの中国)、オランダに限定されていた。だが、幕末になると、日本は外国にかなりの興味を持ち始める。
東アジアの歴史学者であるニック・カプールが、最近、興味深い一連の画像をツイッターでシェアした。この時代の日本独自の西洋世界解釈を表わした、ある書物に描かれた挿絵だ。
本来なら彫りの深いアメリカ人の顔が、日本画の日本人と同様に描かれているのは興味深い。
これらの画像は、「童絵解万国噺(おさなえときばんこくばなし)」という書物からのものだ。幕末、ペリー提督が日本に開国を求めた8年後の1861年の本で、文字は仮名垣魯文、絵師は歌川芳虎である。
「童絵解万国噺」は、海国図志(Drawings of Foreign Countries)とアメリカ統一史(American Unified History)というふたつの出典をベースにしていて、けっこうな冒険譚になっている。
1. ジョージ・ワシントン(弓と矢を持つ人物)とアメリカの女神(仙女)
この挿絵では、"建国の父、ワシントン"のワシントンが漢字で「話聖東」と書かれている。A thread of images from a Japanese illustrated history of America from 1861.
— Nick Kapur (@nick_kapur) 2018年11月14日
Here is George Washington (with bow and arrow) pictured alongside the Goddess of America. 1/ pic.twitter.com/LoF54y54bL
2. 虎を叩きのめすジョージ・ワシントン
And here is George Washington straight-up punching a tiger. 7/ pic.twitter.com/gM1BwRahEa
— Nick Kapur (@nick_kapur) 2018年11月14日
3. 巨大ヘビと戦うジョン・アダムズ
(ワシントンの副官で、のちの第二代大統領)
And here is Washington's "second-in-command" John Adams battling an enormous snake. 4/ pic.twitter.com/ksEq9OW7g7
— Nick Kapur (@nick_kapur) 2018年11月14日
4. 素手で担いだ大砲を放つベンジャミン・フランクリンと、攻撃方向を示すジョン・アダムス
Here's the incredibly jacked Benjamin Franklin firing a cannon that he holds in his bare hands, while John Adams directs him where to fire. 6/ pic.twitter.com/uiYFGFvTtQ
— Nick Kapur (@nick_kapur) 2018年11月14日
カプールのこれらのツイートに対するコメントの中には、どうしてアメリカ人がアジア人と同じような顔をしているのか?という質問もあった。
それに対してカプールは、絵師はアメリカ人と面識がなかったので、いつもの見慣れている顔で描いただけ、と答えている。
5. 母親とピクニックに行ったジョン・アダムズが、食べ物と飲み物に夢中になっているうちに、母親が巨大なヘビに食べられてしまう。以前、アダムズが殺したヘビの子どもが復讐に来たのか、それとも確執関係にあったベンジャミン・フランクリンが送り込んだ刺客なのか?
But then! While John Adams is too obsessed with the food and drink, a huge snake comes along and *eats* his mom!
— Nick Kapur (@nick_kapur) 2018年11月14日
Maybe the snake was a child of that other snake John Adams killed, or maybe it was sent by Ben Franklin as part of their feud? 10/ pic.twitter.com/8xJvnktbQL
6. 仙女がアダムズのために巨大なワシを呼び出す
The mountain fairy does Adams a solid, and summons a gigantic eagle! 13/ pic.twitter.com/Yqg4M3TlL8
— Nick Kapur (@nick_kapur) 2018年11月14日
7. ワシと協力して、アダムズは母親を食べてしまった大蛇を殺す
Together, John Adams and the eagle kill the enormous snake that ate his Mom. The power of teamwork!!! 14/ pic.twitter.com/Nf2tndEZvu
— Nick Kapur (@nick_kapur) 2018年11月14日
「童絵解万国噺」の他のページは、早稲田大学のデジタルアーカイブで見ることができる。
written by konohazuku / edited by parumo
追記:(2018/11/29)本文を一部訂正して再送します。
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コメント
1. 匿名処理班
どーも、偉い人がすごい猛獣や夷狄を撃退しましたよ譚に寄せてる感じがしてねえ。
民主主義とか選挙とかそういうのには触れてなかったのかしら。
2. 匿名処理班
版元「原話のままだと話が退屈だよね」
作者「そうだね」
絵師「絵面も地味だしね」
版元「建国の英雄譚なんだから怪物退治はいれるべきじゃない?」
作者「それを手助けする美女も」
絵師「美人は筆が捗る」
みたいな会議を経た結果。
3. 匿名処理班
日本と欧州のハーフなんだけど、日本の絵本や漫画に出てくる日本人はとても親しみやすい顔をしていて、外国人はやたら特徴を強調された姿で「異質な者」として描かれていた。
全く同じことが欧米のイラストにも言えて、親しみやすい欧米人に対してアジア人はとにかく目が細く、肌が黄色く出っ歯に描かれることが多かった。
どんな人種でも特徴を協調し過ぎないで「普通に」親しみやすい姿で描ける人はいないのかなぁ?ってよく思っていた。
4. 匿名処理班
これ前にここかどこかのサイトで見た気がする
面白いよね
5. 匿名処理班
見栄と余白の埋め方の美学だなぁ。
西洋にも同様に情報ギュウギュウ詰め込むのあるけど。
6. 匿名処理班
鷲っつか雉っぽいね
7. 匿名処理班
パルモさん!当時は清王朝ですよ!
中国(中華人民共和国)は、1949年ですよ!
日本だと昭和24年
江戸時代後期には存在すらしてませんよ!
8. 匿名処理班
平成うろ覚え草紙の続編かと思いきやまさかのガチ…!
9. 匿名処理班
世界観がシュールすぎてなんとも
10. 匿名処理班
リンカーンvsゾンビの世界観と近い気がするw
11.
12. 匿名処理班
南総里見八犬伝みたく歴史や古典に題材をとった、でも史実は痛快に蹴飛ばした愛と勇気と仲間の熱い伝奇冒険ファンタジー、なんだろうけど、江戸の戯作文学とかに馴染みの薄い外国人はやはり挿絵の見慣れない珍妙さにばかり目が行ってしまうんだろうな
書いた人は明治まで活躍して教科書にも載っているな
この作品の続きはついに世に出なかったようだが
13. 匿名処理班
これを逆の立場にすると古事記をアメコミ調で劇画化するような感じなのかな。