「ナルシスト」という言葉は日常的に良く使用されている。自惚れが強い人や自己愛的な行動をする人に対し、「あいつはナルシストだ」などと言ったり聞いたりしたことがあるだろう。
現代は、SNSの普及により自己愛的な行動が目立ちやすくなっている。ネットを開けば、自分の姿を毎日のように自撮りして投稿したり、モテ話を自慢している人にぶちあたる。
だが、一般的な自己愛と真のナルシストは別物だ。「ナルシスト」という言葉が独り歩きしてしまっているため誤解されやすいのだが、真のナルシストは、「自己愛性パーソナリティ障害」のことを意味しており、人格障害なのだ。
ここでは、その2つの類似点と違いについて説明しよう。
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自己愛は健全な自尊心の現れ、ナルシストとは違う
まず最初に言っておくが、自己愛はいたって普通のことである。
ちらりと鏡で自分の顔を確認したりするのは普通だし、自分のことが好きで、自分のことを話し、ときに自慢話をしたりしても、病気でもなんでもない。
それは健全な自尊心というものである。
なので、世間一般に「ナルシスト」と言われている人の多くは、健全な自己愛の持ち主であり、人格障害である「ナルシスト」にはあたらないだろう。
真のナルシスト(自己愛性パーソナリティ障害)とは?
真のナルシスト(自己愛性パーソナリティ障害:NPD)と診断されるのは、「思考」「感情」「他人との交流」「衝動の抑制」の2つ以上において、思考と行動の不適応パターンが長期的に認められるような場合だ。
不適応パターンには、たとえば次のようなものがある。これらのうち5つ以上が常日頃から認められるようなら、自己愛性パーソナリティ障害かもしれない。
・誇大な過剰すぎる自意識
・過大な成功や権力に関する強い妄想
・自分は特別で、同じように特別な人間にしか理解できないという思い
・傷つきやすい自尊心の持ち主で、それゆえに絶え間ない賞賛を期待する
・自分は特別であると思い込み、人が自分の欲求を満たすことを期待する
・自分の欲求のために、人を利用する
・他人への共感の欠如
・他人に嫉妬する、あるいは他人から嫉妬されていると思い込む
・常に横柄で尊大な態度や行動を示す
そうした思考・行動パターンは柔軟性に乏しく、その人の人生に問題を起こすようになる。そして困ったことに、それは本人だけでなく、周囲の人にも問題を引き起こす。
こうしたパターンは、幼少期や10代の頃から認められることが多い。
だが、何かのきっかけで一時的に生じたものや、別の精神疾患に起因するものとは区別される。
健全な自己愛とは?
一方で、病的ではない、健全な自己愛というものもある。
そうした自己愛を備えている人は、自信があり、堂々としているように見えたりもする。
健全な自己愛ならば、自分の長所をきちんと理解していながら、限界や弱さについても知っている。また他人に共感を示したり、失敗から教訓を学んだりすることもできる。
じつは健全な自己愛の持ち主であっても、病的とみなせる自己愛性行動を示すことがある。だが大切なのは、そうした人の多くがやり過ぎてしまったことを自覚しているという点だ。
また多くの場合、それを反省し、間違いを直そうとする。それで図らずも誰かが傷つく結果になれば、関係を修復しようとも試みる。
この点、自己愛性パーソナリティ障害の人は、他人の気持ちなどほとんど気にすることはないし、自分の行動で他人がどのように傷つくかといったことにも関心がない。
共感力の有無、反省の有無が決定的な違い
ようするに、真のナルシストは、相手の立場に立って考えるということができないのだ。また自分が人を傷つけたという自覚もないので、反省する余地もない。
ナルシストでも、自分がマズいことをしたと認識することはあるかもしれないが、それについて何かする必要までは感じず、相手こそが自分に合わせるべきなのだと考える傾向があるという。
ただ自己愛が強いだけの人も「ナルシスト」なら、病的な自己愛性パーソナリティ障害も「ナルシスト」と呼ばれているのが現状だ。
その違いがわかっていれば、ナルシストに関する研究結果を読み際に役に立つかもしれない。
紛らわしいので、別の呼び方にしたほうがわかりやすいかも。
References:The Difference Between Narcissism & Narcissistic Personality Disorder/ written by hiroching / edited by parumo
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これは意外。実際のナルシストは自分の顔を見るのが嫌いであることが判明(オーストリア研究)
ネットを徘徊する荒らしはサイコパスなナルシストで、サディストであることが判明(カナダ研究)
元カレ、元カノと友人関係を築ける人はナルシストでサイコパスな傾向があることが判明(米研究)
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コメント
1.
2. 匿名処理班
人によって領域のまちまちな定義だから場合によっては混同も仕方ないと思う。
ただ、聞けば聞くほど「アイツがナルシストだ」と行ってるソイツがおかしいって事は往々にしてある。
3.
4.
5. 匿名処理班
自己愛「俺頑張った!俺が俺を褒める!」
障碍的ナルシスト「俺は凄いんだからな!俺がお前を気持ちよくさせてやるうううw俺って凄いだろ凄いだろ?え?痛い?そんなハズは無い!俺様がヤってやっているのだから気持ちいいハズ」
6. 匿名処理班
「私も超OK、あなたも超OK」のナルシストはむしろ好感が持てるけど
ここに挙げられた病的なナルシストは
「私だけが超OK、あなたは超NG」のスタンスだから始末が悪い
7. 匿名処理班
海原雄山みたいなおじさんが親戚に居るのだが料理が下手な奥さんといつも大喧嘩している。
そのおじさんは幼い頃に虐待されていた最低な父親の料理がいつも最低だったので料理が下手な奴は最低の人間だという哲学が出来上がってるそうな。
これも自己愛の変形の一つ何だろうか?
正義感と自己愛が融合してるケースは本当に質が悪いという事だな。
8. 匿名処理班
世の中お互い譲歩もない
エゴイスムの押しつけ合い
自分のことでもどうでもいいやってなる
9. 匿名処理班
タイトル、”ナルシスズム”じゃなくて”ナルシシズム”だよん
”ナルシシズム”の定義を正確に把握しようねって啓蒙する記事なら、”ナルシスト”って言葉も間違いで、正確には”ナルシシスト”だって一言触れてほしい。「日本語ではシが一個足りなくてもいいのっ!」って主張するひともいるかもだけど
10. 匿名処理班
無駄にプライドが高くて他人に共感ができない
自分の立場に異常にこだわる
他人をうまく利用しまくる
サイコパスに通じるところがかなりあるな
11. 匿名処理班
いくつか当てはまるな…
12. 匿名処理班
1責められると1000くらい反撃してくる奴
13. 匿名処理班
これ、会社に結構いるんだけど。
14. 匿名処理班
>>6
同意、本物はほかの価値観を許容できない。
自分と違う=下
であると思い込んでる。
というか、そうでなければならない!と必死に思い込んでる。
マジで怖い。
15.
16.
17. 匿名処理班
当の自己愛性パーソナリティ障害の人もさぞや苦しんで生きているんだろうけど、
だからといって人の痛みに共感しないような奴に共感する気にはなれないな。
泣けば、苦しめば、偉ぶれば、相手に気遣ってもらえる。認めてもらえる?
全部くだらねぇ。
人に認めてもらう為の努力をしたって不幸になるだけだ。
誰かに認めもらわなきゃ成り立たないような脆い心なら、俺だったら捨てるね。
18. 匿名処理班
自分を特別だとは思わないが、特別な関心を抱いている。
19. 匿名処理班
本当にヤバい自己愛性パーソナリティ障害の人は、
「自己愛性パーソナリティ障害な俺カッケー」とか思ってそう。