【方言】星梨花「それじゃあ千早さん、この部分からお願いします!」【講座】
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上記SSの続編という位置づけ。今回は博多弁を中心とした日本各地の方言を題材にしました。
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千早「……お前、さっきから何ば言いようとや?のぼせあがるとも大概にせれ!」
星梨花「は?別にのぼせあがっとらんし。先生こそ何言いようとー?」
千早「“そげなおおまんたれはつまらん”って注意してやりよったい!それも分からんとや!?」
星梨花「しゃあしかったいきさん!」
千早「先生に向かって“きさん”ちゃ何や!そげんくらされたいとか!?」
星梨花「やれるもんならやってみい?逆にぼてくしこかしちゃあけんね」
千早「貴様ぁー!表出れ!!」バンッ!
星梨花「おう、上等たい!」ガタッ!
星梨花「ふぅー。……千早さん、どうでしたか?」
千早「前よりずっと発音がネイティブに近づいてきてるわよ。かなり練習したでしょう?」
星梨花「実はそうなんです♪博多弁の本を読んだりCDやDVDを見て覚えました!」
エミリー「あ、あの…」
千早「あらエミリー、どうしたの?」
星梨花「ああ、ごめんなさい。千早さんに博多弁の稽古をつけてもらっていたんです」
エミリー「ハカタ…ベン?何ですかそれは?」
千早「平たく言えば“博多”という場所で地元の人が話している言葉のことよ」
エミリー「Oh!いわゆる“ホウゲン”というものですね!」
エミリー「しかしさっきのやり取りは、まるで喧嘩しているような感じでしたね…?」
千早「それもそのはずよ、だってこれは生徒と先生が口論しているところだもの。いまの場面を標準語にするとこんな感じね」
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ーーー
千早『お前、さっきから何を言ってるんだ?調子に乗るのもいい加減にしろ!』
星梨花『は?別に調子乗ってないし。先生こそ何言ってんのー?』
千早『“そんないい加減な奴ではダメだ”と注意してやってるんだ!それも分からないのか!?』
星梨花『うるせえんだよテメー!』
千早『先生に向かって“テメー”とは何だ!そんなに殴られたいのか!?』
星梨花『やれるもんならやればあ?逆にボコボコにしてやるからさ」
千早『貴様ー!外に出ろ!!』バンッ!
星梨花『おう、上等だ!』ガタッ!
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エミリー「Oh…星梨花さんがそんな人とは知りませんでした」
星梨花「エミリーさん、これ演技ですから…汗」
エミリー「そうでした!ごめんなさい、つい見入ってしまって…」
千早「なかなかの不良少女よね笑」
エミリー「ところで博多弁ですか?……さっきの言葉の解説をお願いしたいんですけど」
星梨花「分かりました、任せてください♪」
千早「つまり『おおまんたれ』は“いい加減な人”、だらしのない人”のことを指すのよ」
星梨花「補足ありがとうございます!ちなみに『そげな』とは“そんな”という意味で『そげん』とも言います」
エミリー「へえ…」
エミリー「面白いですね!」
星梨花「『きさん』は“貴様”が訛った言い方ですね。『きしゃん』とも言います」
千早「福岡では『しぇんしぇーはぜいあーるで来る(先生はJRで来る)』という風に、“さ”行が“しゃ”行、“じゃ”行が“ざ”行になるのよ」
星梨花「だけどご年配の方しか使いません。まして『きさん』なんてよっぽど怒ったときじゃないと言いませんし…」
エミリー「なるほど…ところで『つまらん』というのは?」
千早「『駄目』という意味よ。『こらあいっちょんつまらんばい』と言えば『これは全然ダメだ』ということになるの。ちなみに『いっちょん』っていうのは“全然”とか“まったく”って意味ね」
星梨花「まず『くらす』。これは“殴る”とか“叩く”という意味です。『うちくらす』とも言い、『きさん、うちくらすぞ!(貴様、ぶん殴るぞ!)』といった使われ方もします」
星梨花「次に『ぼてくりこかす』。これは“ボコボコにする”という意味で、先ほどの『くらす』よりも激しい言い方です」
星梨花「『くらす』が何発か殴る感じなら、『ぼてくりこかす』は袋叩きでしょうか…?だいたいそんなイメージですね」
千早「あと、『~しちゃあ』というのは“~してやる”って意味よ」
エミリー「Oh!どちらにしても痛いのは嫌ですね…」
ジュリア「よう、どうしたんだ?3人で集まって」
奈緒「なんやめっちゃ楽しそうやん!なに話しとるん?」
エミリー「いま、星梨花さんと千早さんに「博多弁」のいろはを教えてもらっていたんです」
ジュリア「アタシの地元の言葉じゃないか!懐かしいなあ」
星梨花「えっ、ジュリアさんって福岡出身なんですか!?」
ジュリア「あれっ、言ってなかったけか?あと、チハに博多弁を教えたのもこのアタシだ」
未來「そうなんですか!?」
千早「そうよ。私はもともとジュリアから博多弁を教わったの」
奈緒「はあ、知らんかったわ!」
ジュリア「驚いただろ?……そういやアタシもこの前さ、同じ言葉でも意味が違う方言があるってのをヤッコから聞いて驚いたんだよ」
千早「高槻さんから?」
ジュリア「それがなーーー」
ーー
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このみ『んぎぎー!あとちょっと…くぅーーー!』ピョンピョン
このみ『ダメね…桃子ちゃんがいれば踏み台を持ってきてもらうんだけどなあ……』ハァ
ジュリア『このみ姉、どうしたんだ?』
このみ『ジュリアちゃん!?…ちょうど良かった!あそこに箱があるの、見える?』
ジュリア『あれか?』
このみ『そう、あれを取ってほしいのよ。なかなか手がたわんで困っちょるんよね…』
ジュリア『お安い御用だぜ…ほいよ』スッ
このみ『ありがとう!ぶち助かったわー!』
ジュリア『解決したようで良かったよ…ところでこのみ姉は山口の生まれか?“たわん”とか“ぶち”とか、いろいろお国訛りが出てたぜ』
このみ『ええ、そうよ。……ん?ジュリアちゃんは“たわん”の意味が分かるの?』
やよい『“手が届かない”って意味ですよね!』
ジュリア『ヤッコ!?……急に声がしたけんたまがったばい』
やよい『はわっ!?ごめんなさい!』
ジュリア『いや、いいけどよ…』
このみ『“たまがる”…?ジュリアちゃんは福岡出身なの?』
ジュリア『ああ、生まれも育ちも福岡だぜ』
やよい『そうなんですかぁ!?』
このみ『初耳よ』
ジュリア『そうだったか…。さっきは思わず言ってしまったけどヤッコは“たまがる”って言葉の意味、分かるか?』
やよい『はい、“驚く”っていう意味の博多弁ですよね!』
このみ『やよいちゃんって方言詳しいのね!』
やよい『もともと方言は好きですからねー!』
やよい『そうですよ!』
このみ『埼玉の方言ってどんなの?』
やよい『例えば……そうそう、以前住んでたところではクワガタ虫を“おにむし”って呼んでましたね!』
このみ『ぶち強そうね!』
ジュリア『“おにむし”か。ちかっぱ可愛らしい名前やね』
やよい『ですよね!ちなみに、さっきこのみさんが言った“ぶち”とジュリアさんが言った“ちかっぱ”は、どちらも“とても”って意味なんですよ!』
このみ『そうなのね!』
ジュリア『たしかに使うな』
このみ『地元ではよく言ってるわね』
やよい『この“しろしい”という言葉、福岡では“うっとうしい”、山口では“うるさい”と全く違う意味になるんです!』
ジュリア『それは知らなかったな』
このみ『博多弁では“うるさい”を“しゃあしい”って言うのよね!』
ジュリア『ああ、夜中に騒いでいたら“しゃあしいぞ!静かにせれ!(うるさいぞ!静かにしろ!)”とよく怒られたもんだ』
やよい『ね!?面白いでしょう?』
このみ『本当ね!』
ジュリア『へえ、方言ってのも悪くないかもな』
ーー
ーーー
星梨花「やよいさん、そんな特技があったんですね!凄いです!!」
奈緒「まるで歩く翻訳機やな!……そういえば私もこの前やよいに同じような感じで方言のこと教えられたんよ」
ジュリア「奈緒もか?」
奈緒「うん。この前あった話しやねんけどな、事務所でひなたが“こわい”って言うてたんやーーー」
ーー
ーーー
ひなた『ああ、こわい』
奈緒『ひなた、どないした?何がそない“こわい”ん?』
ひなた『奈緒さん……何でか分からないんだけど、妙にこわいんです』
奈緒『んー?……ああ、分かったで!“えらい”んやな!?』
ひなた『偉い?……あたしはそんなに偉くないべさ…』
奈緒『んん?』
奈緒(なんやろ…全然分かれへん……。)
奈緒『ああ、やよい。実はひなたが“こわい”って言うとるんよ。私は“えらい”っちゅうことやと思うんやけど、それがどうも違うみたいなんよねえ…』
やよい『こわい?えらい?……うーん…』
ひなた『やよいさん、なじょしたべ?(どうしたの?)』
やよい『…はっ!ひなたちゃん、もしかして“きつい”の?』
ひなた『んだんだ!(そうだよ!)』
やよい『うっうー!当たったぁ!!』
やよい『はい!北日本では“きつい”とか“しんどい”を“こわい”って言うんです』
奈緒『“えらい”は全国共通やなかったんやな!』
やよい『奈緒さんの言う“えらい”も“きつい”って意味ですけど、これは主に西日本で使われている言葉ですね』
奈緒『せや!ひなた、えらいんやろ?帰らんでええの?』
ひなた『大丈夫だよぉ』
やよい『本当に?無理しない方がいいよ!』
ひなた『うん、ありがとう』
やよい『そうだよ!面白いでしょ?』
奈緒『なあなあ、もっと方言のこと教えてや!』
ひなた『あたしももっと聞きたい!』
やよい『うっうー!任せて下さい!!』
やよい『そうですね…奈緒さんは物をしまうことをなんて言いますか?』
奈緒『“なおす”やね。九州や四国でも言うらしいし、これは全国共通やろ!』
やよい『ところがですね、これも西日本の方言なんですよ』
奈緒『えっ!?じゃあひなた、北海道では“なおす”って言わへんの?』
ひなた『確かに“なおす”なんて言わないねえ。“かたす”は使うけど』
やよい『でしょ?東日本では物をしまうことを“かたす”って言うんです。ちなみに西日本の“なおす”は古語で片付けることを意味する“納(のう)す”が訛ったものといわれています』
ひなた『古い言葉なんだねえ』
奈緒『じゃあ、東京の人は“これなおしとってやー”を“これかたしといてね”って言うん?』
やよい『はい、“これ、かたしといてくれる?”って私もたまに言いますよ!』
ひなた『方言ってなまら面白いんだねえ!』
やよい『うん!』
ひなた『そうだよぉ』
やよい『同じ“とても”を意味する言葉だけでも“なまら”、“でら”、“めっちゃ”、“ぶち”、“ちかっぱ”、“ばり”、“ぎゃん”…とこんなにたくさんあるんだよ!』
ひなた『へえー!』
やよい『そして方言の面白いところはね、同じ言葉でも地域によって意味が違うってところなんだ!』
やよい『例えば、東京で“かたす”というと片づけることだけど…』
ひなた『うん、うん』
やよい『福岡(福岡市とその周辺地域)では“仲間に入れる”という意味に変わるんだよ!』
奈緒『そうなんや!同じ西日本なのに知らんやったわ!』
やよい『はい!だから福岡で“かたして”って言ったら“仲間に入れて?”って意味になるんですよ』
ひなた『なんか別の国の言葉みたいだねえ』
やよい『他にはね、博多弁では腐ることを“ねまる”って言うんだけど…』
奈緒『ほうほう』
やよい『岩手県沿岸南部の気仙(けせん)地域では“座る”って意味になるんだよ』
ひなた『ああ、いわゆる“ケセン語”ってやつだね』
やよい『うん!ちなみにそのケセン語は部類としては宮城県仙台市周辺で話される仙台弁と同じなんだけど、厳密にいえば仙台弁とも他の方言とも違う部類に入るんだって!」
奈緒『なるほど、独自の進化を遂げてきたっちゅうことやな!』
やよい『そういうことらしいです!』
ひなた『ふうん、面白いねえ』
奈緒『2013年のNHK連続テレビ小説“あまちゃん”で有名になった言葉やな!』
やよい『はい、“あまちゃん”のロケ地、岩手県久慈市で驚きを表現するときに使われる言葉ですね!』
やよい『久慈市は岩手県の沿岸北部にあるんですけど、県のほぼ中央に位置する県庁所在地の盛岡市とその周辺では先ほどの“じぇじぇじぇ!”が“じゃじゃじゃ!”に変わるんです」
やよい『そして先ほどの気仙地域ではさらに変化して“ばばば!”となります』
やよい『同じ岩手県なのに言葉がこんなに変わるって面白くないですか!?』
奈緒『ホンマや!めっちゃおもろいなあ!!』
ひなた『同じ国なのに、こんなに言葉が違うなんてすごいよねえ!』
やよい『また機会があったら教えてあげるよ!』
奈緒『また是非よろしゅう頼むわ!』
ひなた『やよいさん、ありがとねえ!』
やよい『うん!』
ーー
ーーー
奈緒「ーーーっちゅうことがあったんよ」
千早「高槻さん、本当に物知りよね。私も知らないことをたくさん知っているんだもの」
エミリー「私はやよいさんのおかげで方言に魅力を感じるようになってきました。茶道や華道、書道といった文化的なことだけでなく、日本の言葉や風習といった民俗学的なことも究めてこそ真の“大和撫子”と名乗れるような気がしてきたんです」
やよい「うっうー!そこまで言ってくれて私もとーっても嬉しいかなーって!!」
未来「やよいちゃん!?」
やよい「私、そういうことに興味を持ってくれる人をずっと探していたんだ!」
ジュリア「興味かあ…。アタシも興味、湧いてきちゃったな」
星梨花「私も日本の方言や文化についてもっと知りたいです!」
未来「私も!」
千早「なかなかいいアイディアね」
奈緒「よっしゃ、私も賛同するで!」
やよい「私も参加したいな!」
エミリー「ありがとうございます!」
ーーーこうして「765プロ民俗学研究同好会」が発足。
当初は非公式の集まりだったがやがて765プロ公認の企画として生っすか!?サンデー(および“生っすか!?レボリューション”)の新コーナー「ニッポン発掘!765プロ」となり、広くお茶の間の人気を集めたのだった。
【完】
どこで話しの流れを切ればいいのか分からなかったこともあってレスが長かったり極端に短かったりしていますが、少しでも方言の魅力が伝わればいいなと思って書きました。
なお、方言シリーズは今作をもって終了しますが要望があればまた書くかもしれません。
ここまでお読みいただきありがとうございました!
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