一般的な化学計算において、30年間必須成分と考えられてきた物質が、じつは存在しないことが明らかになった。
西オーストラリア大学とマードック大学の研究チームは、「S2-」という硫化物イオン(電子の合計が陽子の合計と等しくない原子あるいは分子)についての記述を、科学的な文献から完全に削除するべきと論じている。
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硫化イオン「S2-」の存在は証明されず
チームは当初、酸化アルミニウム精製装置から排出される水銀を減らすために、硫化物溶液を調べていた。
しかし、すぐに負の電荷を帯びたS2-に関心が移ったという。
S2-は化学計算によって水性溶液に存在すると予測されている硫化イオンで、研究チームはそれがきちんと存在しているという証拠を見つけ出そうと考えたのだった。
そのために「ラマン分光計」という化学物質間の結合を検出する超高感度機器を利用して、様々な手法を試みた。が、結局S2-を見つけることはできなかった。
30年前から使われてきた化学計算は間違っていた
『Chemical Communications』に掲載されたこの結果が重要なのは、さまざな産業プロセスや環境プロセスを記述するいくつもの化学計算において、このイオンが働いていると想定されているからだ。
だが今回の結果は、30年前から実施されたきた簡単な化学実験が、じつは誤解されてきていたということを示している。
早い話が、硫化鉱物の分解や水の反応を予測するために使用されてきた化学計算は間違っていたのだ。
研究チームの1人、ダレン・ローランド氏は声明で次のように述べている。
水性溶液の中に硫化物イオンが存在するという説を受け入れないよう科学者に推奨します。これが存在するという証拠はありません。この結果が化学計算に定着するよう願っていますが、それは時が証明するでしょう。
References:Goodbye to S2− in aqueous solution - Chemical Communications (RSC Publishing)/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
勘の良い化学者は嫌いだよ
2. 匿名処理班
スイヘイリーベ磯野フネ
3. 匿名処理班
金属陽イオンの沈殿とかどうなるんだ?
何か省略している文でもあるのかな
4.
5. 匿名処理班
硫酸イオンはそうするとどうなるんだ
6.
7. 匿名処理班
エヴァのS2機関と関係ある?
8. 匿名処理班
近所のイオンも...
9. 匿名処理班
マイナス2価の硫黄イオンは存在しなかったということかな。
(:S-S-S:)のような複数原子のクラスターとして存在しているのかな。
10. 匿名処理班
「それは時が証明します」
かっこいい
11.
12.
13. 匿名処理班
化学って液体の中で何が起こってるか目に見えないのによくわかるなぁと思っていたけどやっぱり間違えていることもあるのね
14. 匿名処理班
高校程度までの知識しかねえけど、S2-が極めて不安定だからすぐに水素イオンとくっついてHS-になってしまうってことだけなんじゃねえの?その反応があまりにも早いから高解像度の装置ですら検出できないと。そういうことなんじゃないかと想像しますよ。
15. 匿名処理班
※2
ナミヘイリーベ…
16. 匿名処理班
なんなのこのマイナスの連続
17. 匿名処理班
でも今まではS2-を導入する事で上手く計算が出来てたわけでしょ
結果に不都合が無いのなら、仮想上の要素としてS2-を残しといても良さそうだけど…
理想気体と同じで、便利ならば仮想だろうが何だろうが使えばいんじゃね
18. 匿名処理班
※5
SO4・2- としては存在してるんだよ
19. 匿名処理班
見つけられなかったからないってのは暴論じゃない?
実はこうでしたっていう代わりの何かが必要なのでは
20. 匿名処理班
1.30年間誰も気づかなかった。
2.使用されてきた化学計算は間違っていた。
以上の事から硫化物イオンは存在しようがしまいが何の影響も無い
どうでも良い存在って事で、誰も困らないんじゃないかな・・・
21. 匿名処理班
宇宙の話で言うと、ダークマターは実在しない
事を証明をしちゃった様な感じでしょうか。
今迄それが存在すると仮定しての化学式が
最終的に結果と一致していた訳ですよね。
それが実在しないとなると、何か別の存在が
介在してないと辻褄が合わなくなる様な。
他の科学者からの追試や反論といった
後日談が楽しみな話ではありますが。
22. みあきち
電流の実態である電子の流れはマイナス→プラスなのは
昔の科学実験では解明しきれなかったので「とりあえず」決めた向きだそうだが、
今回のも「当時のでは」だったか
否定の啓蒙には現代であっても既成の認識を否定する動きに反対することに固執する、「 センメルヴェイス反射 」が起きるかも知れんな
23. 匿名処理班
「見つけられなかった」=「存在しない」ってのは暴論だと思うけど。
ないという証明はこんな簡単なものじゃないでしょう。
24. 匿名処理班
>「S2-」という硫化物イオン(電子の合計が陽子の合計と等しくない原子あるいは分子)についての記述を、科学的な文献から完全に削除するべきと論じている。
「では、実際はどのような形で存在しているのか?」の答えを「時が証明してくれる」までは不可能でしょうね。
せいぜい「『S2-』は存在しないのではないかという研究結果もあります」と両論併記される程度かな。
25. 匿名処理班
wikipediaを見るとpH14以下の普通の水溶液ではほとんどのがHS‐になると書いてある。
pH14の条件で、化学平衡を考えるとすべてがHS‐になるとは考えられないのでいくらか極々微量にS2‐もあるんだろうけど、高感度の測定でもそのS2‐を検出できなかったってことなんかね。
26. 匿名処理班
>>17
数学とか物理だってそういう現実には存在しないものを仮定して、いわば近似を上手く利用して現実で役に立つ技術を発展させているわけだしね
27. 匿名処理班
S2-「実は忍者だ。毎度隠れてしまいごめんよ」
28. 匿名処理班
ロケットの計算に虚数も使われてたりするし、
硫化物イオンも別に架空の物として計算に使うにはいいんじゃないかな?
29. 匿名処理班
※14
「ニホニウム」のように一瞬しか存在できない元素も観測出来てるし、
そういう点は流石に考慮されてるんじゃないかなあ・・・?
30. 匿名処理班
※26
数学と物理化学を同じように語るのはちょっと違うかな…
31. 匿名処理班
>>23
観測できないのは無いと同じなんでは
32. 匿名処理班
この世界がシミュレーションであることを立証する証明になりそうではあるな。