月が生まれるきっかけとなった大昔の衝突は、もしかしたら、生命が生まれるきっかけでもあったのかもしれない。
44億年以上前、火星くらいの大きさの天体が原始の地球と衝突し、これによって月は現在の軌道に出現することになったと考えられている。
最新の研究によると、その影響はこれまで考えられてきたよりもずっと大きなものだったという。地球に炭素、窒素、硫黄をもたらしたからだ。
つまり生命の形成に必要な材料である。
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原始の地球に生命の材料は乏しかった
当時、地球は今日の火星のような感じだった。コアとマントルはあったが、コアを除く部分に炭素、窒素、硫黄といった揮発性元素が乏しかったのだ。
「BSE(bulk silicate Earth)」と呼ばれる地球のコアを除く部分の元素は、互いに混ざり合いつつも、決してコアの元素と作用することはなかった。
コアの中にもそれらは多少は含まれていたが、決して外部に出ることのないものだった――が、そこに衝突が起きた。
このような衝突を引き起こし、BSEに揮発性元素をもたらしたとされる天体の候補の1つが、炭素質コンドライトという特殊な隕石である。
炭素質コンドライトの断面 image credit:Shiny Things - Flickr
炭素質コンドライト起源説の問題点
この説は、地球の炭素、窒素、水素の異なる型(ならびにアイソトープ)の比率が、炭素質コンドライトのそれと似ているという事実に立脚したものだ。
このことを根拠に、この学説の支持者は、こうした元素の起源はこの隕石に違いないと主張する。
だがたった1つ問題がある。炭素と窒素の比率が一致しないのだ。
炭素質コンドライトには、窒素1個に対して炭素がだいたい20個含まれている。一方、地球のBSEでは、窒素1個に対して炭素40個だ。
太古の惑星コアを再現
そこでアメリカ・ライス大学の研究者はもう1つの候補、すなわち隕石ではなく、惑星がもたらしたという可能性を検証してみることにした。
仮に地球が惑星と本当に衝突していたのだとしたら、2つの惑星のコアとマントルは融合したことだろう。
これを確かめるために、特殊なかまどで高温・高圧環境を作り出し、惑星のコアが形成されたであろう環境を再現。
それからグラファイト(炭素の一形態)のカプセルの中で、金属粉(コアを模したもの)とさまざまな比率のケイ素粉(マントルを模したもの)を組み合わせてみた。
このとき、温度と圧力と硫黄の比率を変化させることで、仮説上の惑星のコアとその他の部分におけるこれら元素のさままざな配分シナリオを作り出した。
その結果、窒素と硫黄が高濃度で存在する場合、炭素と鉄はかなり結合しにくい一方、窒素については大量の硫黄が存在すると鉄と等量で結合することが明らかになった。
窒素がコアから排除され、惑星の他の部分に拡散するためには、硫黄が非常に高濃度で含まれている必要があったということだ。
シミュレーションが示すもっとも理に適ったシナリオとは?
次いで研究チームは、実験から明らかになった可能性、異なる揮発性元素の振る舞いについての情報、今日地球の外層に存在する炭素・窒素・硫黄の量をシミュレーションに落とし込み、10億年分ほど実行した。
この時点でもっとも理に適ったシナリオ(一番ありえそうなタイミングで、炭素・窒素比率が適切になるもの)を検証してみると、コアに含まれる硫黄が25〜30パーセントである火星サイズの惑星と地球が衝突・融合したというものだった。
すなわち、地球の生命の素になった炭素、窒素、硫黄は、火星くらいの大きさの惑星が衝突したことでもたらされたと考えられるということだ。
この研究論文は『Science Advances』に掲載された。
written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
冬月「なにも言うな」
ゲンドウ「ああ・・」
2. 匿名処理班
この前、地球は10個ほどの天体が癒合した と聞いたばかりだ。
まあ、それに彗星がかなり落ちてると海水の重水素のデータからわかるそうだ。