美しく繊細な蝶に魅了される人は世界中にたくさんいるが、アメリカで蝶の羽を修復した女性のエピソードが話題になっている。
「蝶を見たら私を思い出して」という亡き母の言葉をきっかけに、蝶の幼虫を育てていた彼女は、ある日のこと、羽がボロボロで羽化した蝶に心を痛める。
そこで、蝶々の羽の修復方法を学び、死んだ蝶々の羽を利用して欠けていた部分を見事に修復した!
羽がつながった蝶は、生まれて初めて飛び立つことができた。
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「蝶を見たら私を思い出して」亡き母の言葉
テキサス州在住の刺繍家で、プロの衣装デザイナーとして活躍するロミー・マックロスキーさんは、数年前に母親をがんで亡くした。
その後、悲しみに打ちひしがれるロミーさんを支えたのは、亡くなる直前に母親が遺したこんな言葉だった。
「ロミー、大丈夫。心配しないで。私はあなたの様子を見に来るから。だから、これから蝶を見かけたら私があなたを愛してることを思いだして」
たとえ体を失っても心はここにある。ロミーさんの母親は、愛しい娘を励ますためにそう言い遺して息を引き取ったのだ。
蝶の幼虫を飼育して成長を見届けるロミーさん
だが、ロミーさんは蝶と出会うのをただ待つのではなく、さまざまな蝶の世話をするようになった。
image credit:facebook
庭で蝶の幼虫をみつけたら、安全な室内に保護して飼育する。そして羽化まで見届けると、飛べるようになった蝶たちを外に放してやるのだ。
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こうしてたくさんの蝶を育ていたロミーさんだが、昨年1月に特別な世話が必要なオスの蝶と出会った。
片羽が破れて羽化したオスの蝶(オオカバマダラらしい)
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その蝶は片羽が破れた状態で羽化したようだ。それ以外は健康そのものだが、この羽では自力で飛ぶのも生きるのも無理だった。
友人が教えてくれた羽の修復方法を応用
ロミーさんは気の毒な蝶の行く末を案じ、寿命が尽きるまで屋内で飼育すると決心。が、その直後になんとボロボロの羽を直す手段を知ることになる。
親切な友人が、蝶の羽を修復する動画を教えてくれたのだ。普段からビーズ付きの衣装を作るなど細かい作業が得意なロミーさんにとって、それは身近で応用が利くものだった。
動画を参考に計画を立てた彼女は、タオル、ハンガー、接着剤、つまようじ、綿棒、ハサミ、ピンセット、そしてタルカムパウダーなどを用意した。
image credit:facebook
それから同じ種類の死んだ蝶を用意した。その蝶は羽化の途中で死んでしまった個体だったが、その羽をもう一匹の蝶に移植するのだ。
初めて蝶の羽の移植に挑戦。結果は…
ハンガーの輪の部分で生きている蝶をそっと固定し、ハサミで裂けている部分をきれいに整えた。羽を切るのは痛そうだが、蝶にとってはヘアカットと同じ感覚だという。
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次に細心の注意と正確さをもって、死んだ蝶から切り取った羽の切片を生きている蝶の羽に移植した。
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そして接着剤で固定した後、その部分にタルカムパウダーを数回振りかけた。こうしておくと乾くにつれてはみ出した接着剤の粘着性が失われるのだ。
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この手術は幸いにもうまくいき、欠けていた部分をほぼ元通りに補修できた。
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接いだ羽で空に飛び立った蝶
安静とたっぷりの蜜を与えられた術後の蝶はようやく回復の兆しを見せた。初めて外に出すと、元気に羽をはばたかせた。
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「私はひどく緊張してました。でも、子供に自転車の乗り方を教えるみたいに応援したら庭を飛び回ったんです!とても驚きましたが同時にホッとしました」
そして一周した蝶が枝に止まった時、ロミーさんは手を伸ばした。
とっさに安全な家の中に戻してやらなきゃと思ったのだ。
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だが、蝶は差し出した手には乗らなかった。
彼女が接いだ羽をちゃんと使って飛んでいったのだ。
「心から幸せな気分になりました。ちょっとうまく説明できませんが、幸福を感じたんです。空に羽ばたいて行った彼と一緒に私の心も舞い上がりました」
亡き母親の思い出を胸に蝶を育て続けるロミーさん
image credit:facebook
「私は蝶を放す時に愛してるわ、と声をかけて旅の無事を祈ってるんですよ」
心を慰めてくれる蝶たちへの自分なりの恩返しとして、その成長を見守るロミーさん。彼女のエピソードは多くの人にシェアされ、大きな反響を呼んでいる。
References: facebookなど /written by D/ edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
左右の大きさ違うし
鱗粉取れたら飛べなくなるし
2. 匿名処理班
蝶々蝶々いい感じ
3. 匿名処理班
剥がれたりしない?
それだけが心配だ。
4. 匿名処理班
この発想は無かった。
5. 匿名処理班
差し出した手に戻ってこないことが
素敵な場合もあるんやなって
6. 匿名処理班
「蝶を見たら私を思い出して」
映画のワンシーンみたいな素敵な台詞だな
7.
8. 匿名処理班
これはすごい
9. 匿名処理班
たとえば仮に、数日で飛べなくなって死んだとしても、飛べないまま死ぬよりは蝶にとって幸せなんじゃないかなと思ったりしました。
10. 匿名処理班
まず生きたままの蝶にアレコレできたのがすごい!
蝶々を捕まえたことある人ならわかるとおもうけど、羽のつけ根を押さえてないと、いや例え押さえてても暴れてすぐに脚がもげたり羽が破れたりしそうになるし、麻酔なんかできないし…
職人とはいえ、本当に繊細極まる作業だと思う
色々な意見があるだろうけど、自分はその超絶技巧に惜しみない賛辞を送りたい