アメリカ・コロンビア大学のエンジニア開発したロボットは、自分の姿のイメージを一から作り上げることができる。
この新型ロボットは、自分自身に関する物理、形状、運動能力といった情報がまったくない状態からでも、高速演算処理を1日半も行えば、自分のアイデンティティを構築できるのである。
こうした自己イメージがあれば、初めての環境や作業であってもうまく適応できるし、ボディが破損してしまったようなときに、状況に合わせて微調整するのもお手の物となる。
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試行錯誤とディープラーニングで自己イメージを構築
ロボットアームに搭載されたこのシステムは、まず何も知らない状態で適当に動き回って、それぞれが100の位置データで構成される1000種の軌道を記録する。
この軌道データから最初の自己イメージが構築されるのだが、ロボットが自分を認識して、関節の繋がり具合を理解するには、それほど正確ではない。
そこでディープラーニング・アルゴリズムによって、その仕上げを行う。35時間も高速演算処理を行うと、精密な自己イメージが出来上がる。
image credit:youtube/Columbia Engineering
自己イメージを使った作業に成功
実験では、オープンループ制御(情報入力を制御に利用できる手法)を使って、物を拾って、それを定められた容器の中に入れるという作業をロボットに行わせたところ、その成功率は100パーセントであった。
一方、クローズループ制御(自己イメージのみを利用する手法)でも、同様の作業を44パーセントの精度で成功させることができた。
この成功率は低いようにも思えるが、人間で例えれば、目をつむった状態でコップの水を拾い上げるようなものらしく、非常に難度の高い作業なのだそうだ。
この点を考慮すれば良好な結果と言えるという。
またアームの一部パーツを形状の違うものに変更しても、自己イメージからアームの違和感を認識し、それ合わせて自己イメージ修正することもできた。
image credit:youtube/Columbia Engineering
その先に目指すものはロボットの自己認識能力の向上
研究チームのホッド・リプソン(Hod Lipson)氏によれば、現時点でのロボットの自己イメージ能力は、人間のそれに比べれば原始的なものだという。
しかし、もっと洗練された自己イメージを持てるようになれば、ロボットの自律性と柔軟性は飛躍的に高まり、さまざまな分野で活躍できるようになるだろうと期待されている。
それはいずれ、「機械に自己認識を獲得させるに至る力」だとリプソン氏は話す。
だが、それは同時に我々がロボットを制御できなくなるリスクが高まるということでもある。行き着く先にはどのようなロボットが待っているのだろうか?
この研究論文は『Science Robotics』に掲載された。
References:A Step Closer to Self-Aware Machines | Columbia Engineering/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
これの行き着く果てはグレイグー
2. 匿名処理班
非常に難度の高い作業でも100%でなければ意味がない
99.999%でも駄目だ
この研究者は0.001%違うだけで全く別物で使い物にならないことを理解してないようだ
例えば原子力施設に0.001%の瑕疵があったらとんでもないことになる
さらに0.001%の瑕疵がバタフライ効果でどんどん増加することも理解してないようだ
40%ではお話にならんね
3. 匿名処理班
ダンサーの方かと思ったわ。
4. 匿名処理班
「蟹が島を行く」っていう古いSF小説を思い出した
5. 匿名処理班
これが後の意志を持った
AIの源型になるかもね
そもそも肉体を維持するために
生き物は思考し考えるわけだし
食料や水の摂取、温度、住居、しかり
意思を持つ事で肉体を得るのか
肉体を持つ事で意思を得るのか
自分は後者だな
6. 匿名処理班
アルティメットガンダムの完成が楽しみだね父さん
7. 匿名処理班
エラーでどんどん進化して、人類を・・・
8. 匿名処理班
「失敗」や「後悔」こう言うネガティブなものを、彼らが獲得した時、人間は機械に滅ぼされるかもしれない。
9. 匿名処理班
スカイネット・・・
10. 匿名処理班
命として進化するには必須項目かな
11. 匿名処理班
逆軌道計算でということなのかな
ディープラーニングでと言われると胡散臭いけど
12. 匿名処理班
お掃除ロボットを掃除するロボットが欲しいと思っていたところ
13. 匿名処理班
※2
人間は簡単な作業でもミスするんですが・・・w
あとバタフライ効果の使い方間違ってるぞ。
14. 匿名処理班
パーツを変更しても自己イメージを修正することで対応するなら、故障しても同様に対処する事にならないのだろうか
15. 匿名処理班
自己認識の話であって自己修復とは書いてなくない?
16. 匿名処理班
バタフライ効果って言いたいだけやん
17. 匿名処理班
※2
じゃあまず君が原発で0.001%の間違いも無い完璧な作業とやらをやってきてくれ
18. 匿名処理班
これはすごい。
AI(ディープラーニング)が本格的に身体性を獲得し始めた重要な一歩。
やっぱりディープラーニングって人工知能における大きな大きなブレイクスルーだったんだな。
このままディープラーニングを発展させて汎用AIまで行くか、それともそれにはもう一段のブレイクスルーが必要か。
いずれにしろディープラーニングによって一部とはいえ脳のシミュレーションを機械で成功させた事実は大きい。ディープラーニングだけで足らなければさらに詳細な脳の模倣、シミュレーションをAIに応用すれば良いという道も開けた。
つまりもう、AIが止まらない!
19. 匿名処理班
風のうなりか雄叫びか、ブレインが企む大破壊