364 名前:癒されたい名無しさん[sage] 投稿日:2014/10/15(水) 21:58:41.76 ID:UN0VtEsi
久しぶりに新幹線に乗った
俺の席は3人がけの通路側
通路を挟んで二人がけのほうにはお母さんと窓側にたぶんまだ幼稚園くらいの子供
はしゃいでうるさいわけでもなく、俺も特に気にしないままぼーっとしていた

やがて車内販売がやってきて母親が呼び止めた
俺からしたらずいぶんあれこれ言ってるし長いこと引き留めてるなってちょっと思ったが
車内販売が行ってしまったあとその子の座席前のテーブルには
定番のアイスクリーム、ポテチ、あと何かもう一個くらいお菓子とジュース
お母さんのテーブルにはコーヒーが置かれていた

その時はじめて顔を見たんだけど、子供の顔はまさにお母さんと新幹線で遊びに行く途中
いろいろ買ってもらって嬉しくてたまらないといった感じの満面の笑顔
とても幸せそうだった

「ほら、アイス早く食べなさい」
「うん。お菓子は後で食べるんだよね」
そんな感じの声が聞こえた

母親の実家にでも遊びに行くのか、あるいは帰り道なのかわからないが
その子には母親と一緒でとても幸せな時間だった事は間違いない
でももう少し大人になった時、思春期の頃にはもう今日の事は記憶には残ってないだろう
愛情を注いで必死に育ててくれた親への恩はなぜか歳を取るほど素直に表せなくなっていく

余計なお世話だろうが、俺は心の中でつぶやいた
「今日の楽しかった事を忘れずに親孝行する大人になれよ」

反対側を見れば3人がけのまん中には俺の父親、窓側には母親がいる
もう年老いて駅のホームへの上り下りにも不自由するほどだ
俺はこの親二人を遠く離れた親戚のところへ連れて行く途中
おそらく親二人はこれが最後の遠出になるだろう
二人とも皺だらけの顔で窓の外の景色を見ている

「育ててくれてありがとう」

心の中でつぶやくより先に
涙がこぼれた