メリーさん「私メリーさん、あなたの後ろに来られたくなかったら口座にお金を振り込んで欲しいの」
- 2019年02月11日 23:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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男「ん? もしもし……」
『私メリーさん』
男「メ、メリーさん!?」
『今あなたの近くにいるの』
男「ち、近く!?」
プツッ…
男「切れた……」
男「も、もしもし!」
『私メリーさん』
男「ひっ!」
『あなたの後ろに来られたくなかったら、口座にお金を振り込んで欲しいの』
男「振り込めば来ないんだね!?」
『うん、行かないの』
男「分かった、すぐ振り込むよ! 口座を教えてくれ!」
『えっとね……』
刑事「ぐぅ、ぐぅ……」
課長「おい、なに寝てるんだ!」
刑事「ハッ! や、やだなぁ、課長……ちゃんと起きてましたよ」
課長「今、新しい振り込め詐欺が流行ってるというのに、だらしない……」
刑事「新しい振り込め詐欺?」
課長「その名も、“メリーさん詐欺”!」
刑事「なんですかそれ?」
刑事「えーと、メリーさんっていう女の子が電話かけてきて、だんだん近づいてくるアレですよね」
課長「メリーさん詐欺ってのは、そのメリーさんを騙って不安を煽り、金を巻き上げるという詐欺だ」
刑事「くっだらねー……そんなのに引っかかる奴いるんですか?」
課長「現実にいるから、こうして問題になってるんだろうが」
課長「とにかく、とっとと顔でも洗って、振り込め詐欺グループの一つでも捕まえてみろ!」スタスタ
バタンッ
刑事「……」
刑事「そう簡単に捕まるわけないっつーの。あいつら賢いし、イタチごっこなんだから」
刑事「はい」
『私メリーさん、今警察署の前にいるの』
刑事「噂をすれば、か。詐欺なら他の奴にやってくれ。切るよ」ガチャッ
刑事「さて課長は消えたし、もうひと眠り……」
プルルルル…
刑事「ちっ、なんだよ」
『私メリーさん、今刑事課の前にいるの』
刑事「あぁ? ふざけんなよ!」ガチャッ
刑事「ったく……」
刑事「またかよ! いい加減に――」
『私メリーさん、今あなたの後ろにいるの』
刑事「後ろぉ?」クルッ
メリー「ね?」
刑事「うおおおおおおおおっ!?」ガタッ
メリー「私メリーさん。ずっと自己紹介してたじゃない」
刑事「……俺になんの用だ?」
メリー「あなたおまわりさんでしょ。“メリーさん詐欺”をやってる連中を逮捕して欲しいの」
刑事「なんで……?」
メリー「だって、私のニセモノが出た上、悪さしてお金をだまし取るなんて」
メリー「こんなのほっといたら“コケン”に関わるじゃない」
刑事「なにが沽券だよ……子供のくせに」
刑事(こいつ、本当にあのメリーさんなのか? いや、落ち着け! んなわけないだろ!)
刑事「お菓子あげるから、おうちに帰りなさい。お父さんとお母さんが心配してるよ」
メリー「だから、私はメリーさんだってば」
刑事「だからいい加減、メリーさんごっこはやめて――」
メリー「……」クワァッ
刑事「ぎゃっ!?」
メリー「私が本物だって分かった?」
刑事「ああ……分かった……分かりました」
刑事「君は間違いなく、あのメリーさんだ」
メリー「じゃ、よろしくなの!」
刑事「あ、ああ」
刑事(まさか、本物のメリーさんと出くわしちまうなんて……)
刑事「手を変え、品を変え、場所も変え、あいつらなかなか尻尾をつかませない」
刑事「特に今回のメリーさん詐欺なんて、絶対数が少なすぎるし、今のところ手がかりはほぼ皆無だ」
メリー「私に一つ考えがあるの」
刑事「考え?」
刑事「んー、都市伝説のメリーさんを知ってて、なおかつ怖がりな奴……かな」
メリー「そうそう」
メリー「でもさ、そんな人、そうざらにいないでしょ」
刑事「……だなぁ」
刑事「たとえば、振り込め詐欺のカモといえる老人なんか、『メリーさん? 誰じゃそれ?』ってなもんだろ」
メリー「でしょ? だからって、片っぱしから電話かけてたら効率悪すぎるの」
刑事「だなぁ。普通の振り込め詐欺やった方がマシだ」
メリー「電話をかけてるんだと思う」
刑事「どうやって?」
メリー「たとえば……ネット上の都市伝説のサイトを開いて、怖がりな人を見つけたら」
メリー「その人から電話番号を巧みに聞き出す……とか」
メリー「そういうことをしてる人がいたら、その人が犯人の可能性が高いと思うの」
刑事「……なるほど!」
刑事「君、刑事になれるんじゃないか?」
メリー「私、メリーさんなの!」
刑事「ごめんごめん」
刑事「じゃあ、片っぱしから都市伝説のサイトを見ていくか!」
メリー「うん、特に掲示板なんかがあるサイトが狙い目だね」
刑事「怖がりな奴に『連絡先教えて下さい』なんてアプローチしてる奴を探していくんだな」
刑事「よぉし……」
刑事「ハハハ、ミミズバーガー、こんなのあったなー」
メリー「ちょっとちょっとちょっと」
刑事「ん?」
メリー「都市伝説に夢中になって、本来の目的を忘れないで欲しいの」
刑事「えー、いいじゃん。都市伝説楽しいし。一緒に読もうよ」
メリー「……」クワァッ
刑事「……真面目にやります」
刑事「あー、もう目がクタクタだ」
刑事「都市伝説を扱ってるサイトをいくつも回ってみたけど、結局都市伝説オタクになっただけだったな」
メリー「うん……」
刑事「そう落ち込むなって。着眼点は悪くなかったと思うぞ?」
刑事「それより今見てるこのサイト、結構いいぞ。色んな都市伝説を面白おかしく解説してる」
メリー「……」
刑事「しかも、なんだこりゃ?」
刑事「『都市伝説撃退お守り』の通信販売までやってやがる。一個100円って安いな!」
刑事「?」
メリー「そのお守りの購入画面に入ってみて」
刑事「おう」カチカチッ
刑事「名前、住所、電話番号を入力する画面になったぞ」
メリー「……」
メリー「ひょっとして、これじゃない?」
刑事「へ?」
メリー「だから、このお守りを買う為に、今の情報を入力した人にターゲットを絞れば……」
刑事「“メリーさん詐欺”は成功しやすい……!」
刑事「ってことは、これに情報を入力すれば、あっちからアプローチをかけてくるかも……ってわけか」
メリー「そうなの!」
刑事「よーし、入力してみるか」カタカタッターン
『申し訳ありません。現在、品切れ中です』
刑事「品切れ……こんなもん買う奴がそういるとは思えないし、ハナから売る気がなかったと思っていいな」
刑事「あくまで個人情報を入手したかったんだ」
メリー「いよいよ怪しくなってきたね」
刑事「よし……あちらから連絡があるか、待つとするか」
プルルルル…
刑事「……知らない番号だ」
メリー「もしかしたら!」
刑事「はい、もしもし」
『私メリーさん』
刑事「!」
『今あなたの近くにいるの』
刑事(……かかったぞ)
メリー(うん! ここからが大事だよ!)
刑事(よし……怖がりなマヌケを演じないとな)
刑事「は、はい」
『私メリーさん、あなたの後ろに来られたくなかったら、口座にお金を振り込んで欲しいの』
刑事(こっからが俺の腕の見せ所だ)
刑事「メ、メリーさんって、あのメリーさんですかぁ!?」
『そうなの』
刑事「あ、あのっ! 俺、口座への振り込み方とか……よく分かんなくて……」
刑事「できれば現金でお支払いしたいっていうか……お願いできませんかねぇ、メリーさん?」
メリー(いいねー、グーだよ)
『……』
『分かった、それでいいの』
『私の代理を行かせるから、その人にお金を渡して欲しいの』
刑事「は、はいっ! ありがとうございますぅ!」
『場所は……』
刑事「……」
青年「あのー……メリーさんの代理の者ですが」
刑事「……来たか」
刑事「お前……“受け子”だな?」
青年「!?」
青年「やべっ!」ダッ
刑事「逃がすか!」ガシッ
青年「ぐうっ……!」
青年「誰が……!」
刑事「吐くつもりはないか。だったら本物にご登場願おうか」
青年「本物?」
メリー「私メリーさん、今あなたの前にいるの」
青年「メリーさん? ふん、ただの女の子じゃないか――」
メリー「……」クワァァァァァッ
青年「ぎゃああああああああああああああ!!!」
女「あいつ、遅いわね」
リーダー「金受け取った後、どっかで遊んでんじゃねえか?」
メガネ「あり得ますね」
リーダー「ったく、しょうがねえ野郎だ」
リーダー「にしても、お前の考えた“メリーさん詐欺”、案外引っかかるアホが多いな」
メガネ「今の世の中においても、まだまだ幽霊や怪談の類を恐れる人は多いということですよ」
リーダー「だなぁ、もうしばらくはこれで荒稼ぎできそうだぜ」
リーダー「お前も、メリーさん役に磨きがかかってきたしな!」
女「ふふっ、まっかせて!」
リーダー「お? もしもし……」
『私メリーさん』
リーダー「は?」
『今、あなたたちがいるビルの前にいるの』
リーダー「なんだ、お前――」
プツッ…
女「どうしたの?」
リーダー「いや……どっかのバカのイタズラだよ」
リーダー「もしもし!」
『私メリーさん、今あなたたちの部屋のドアの前にいるの』
リーダー「てめえ、ふざけん――」
プツッ…
リーダー「なんなんだ、クソがッ!」
女「どうしたのよ」
リーダー「メリーさんって名乗る奴から電話がかかってきて……!」
メガネ「メリーさん!?」
女「メリーさん詐欺の犯人はあたしたちなのに、どうして電話がかかってくんのよ!」
リーダー「知るか! どうせ同じこと考えた誰かが偶然うちに電話かけてきたんだろ!」
リーダー「またかよ!?」
『私メリーさん。今……あなたたちの後ろにいるの』
リーダー「うし、ろ……?」クルッ
女「へ?」クルッ
メガネ「え?」クルッ
リーダー「――ッ!」
リーダー「うわぁぁぁぁぁっ!!!」
女「ひいいいいいいっ!!!」
メガネ「逃げろぉぉぉぉぉ!!!」
ダダダッ ダダダッ
リーダー「わっ、なんだ!? どけよッ!」
刑事「私、刑事さん。今お前らの前にいるの」
リーダー「け、刑事……!?」
女「あ、ああ……」
メガネ「してやられた……ってことですか……」
刑事「そういうことだ。さ、観念しろ」
リーダー「うぐぅ……」ガクッ
メリー「やったね!」
刑事「おう!」
課長「いやー、よくやった! “メリーさん詐欺”の一味を逮捕するとは!」
課長「普段はグータラだが、やる時はやるからなぁ、君は! さすがは俺の部下!」
刑事(ったく、こういう時は調子いいんだからこの人は……)
刑事「でも、今回の手柄は俺じゃなくて……」
メリー「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの」
刑事(あくまで影でいたいってことか……)
刑事「ありがとうございます、これからも頑張ります!」
課長「うむ、期待してるぞ!」
メリー「んー?」
刑事「これからどうすんだ?」
メリー「特に決めてないの」
刑事「だったらさ……正式なもんではないけど、刑事(デカ)にならないか?」
メリー「え?」
刑事「ぶっちゃけた話、俺と組まないか?」
メリー「……!」
刑事「君の頭のよさや正義感、ひっそりと後ろに立つ能力、絶対刑事に向いてると思うんだ」
刑事「それに君の助けがあれば、俺ももっと手柄立てられそうだからな!」
メリー「んもー、下心が出てるの!」
メリー「だけど……私も組みたいの! 私、あなたの隣にいるの!」
刑事「よーし、これからも二人でバンバン犯人(ホシ)を捕まえていこうぜ!」
メリー「うん!」
ひったくり犯「ひい、ひい、ひい……」
刑事「待ちやがれーっ!」
メリー「私、今あなたの後ろにいるの」
ひったくり犯「ひええ、なんなんだ、あいつらは!?」
刑事「とりゃあぁぁぁ!」ガシッ
ひったくり犯「ぐはっ!」ドザッ
メリー「私メリーさん、今あなたを逮捕するの」ガチャッ
メリー「うん!」
刑事「さぁて、今日は帰りにラーメンでも食ってくか」
メリー「えー、私はパスタの方が好きなの!」
新たな都市伝説“メリーさん刑事”が生まれる日は近い……のかもしれない。
― 完 ―
元スレ
メリーさん「私メリーさん、あなたの後ろに来られたくなかったら口座にお金を振り込んで欲しいの」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1549887910/
メリーさん「私メリーさん、あなたの後ろに来られたくなかったら口座にお金を振り込んで欲しいの」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1549887910/
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コメント一覧 (2)
-
- 2019年02月11日 23:45
- 都市伝説系のウスイホンもっと出ないかなぁ
-
- 2019年02月11日 23:51
- メリーさん詐欺かぁ、似たようなことは考えたことあったなぁ
流石に引っ掛かるやつなんていねぇだろって笑い話で終わったが
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