849 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:04/03/29 12:24 ID:7Ju1lKfT
近所の和菓子屋が閉店した。
和菓子屋っていうのは大抵年寄りが経営してるもんで、そこが閉店するってのは、
即ち経営者が「店頭に立つのが無理になった」ということだ。

たまたま店の前を通りかかって気付いた俺は母親に電話すると、母は既に
知っていた。
「そうなのよーあそこのお爺ちゃんとうとう自分で小豆煮れなくなっちゃってねぇ。
 息子さんはサラリーマンだし、今時後継者もいないしねぇ」

母はその店のみたらし団子のファンだった。自分自身かなりの高齢なのに、
よく和菓子屋までてくてく歩いて買いに行ってたもんだ。
店が閉じる数日前にも偶々団子を買いに行き、閉店の話を店主に聞かされたという。

それから母の探索が始まった。
その店のみたらし団子に引けを取らぬ味を求め、今日は鎌倉明日は目白、
俺に「みたらし団子」でググらせてまで、あちこちの団子を試食して廻る。
背骨を傷めているのでそんなに遠出は出来ない。加えて年よりは好みが五月蝿い。
 「あの店のはもっと小粒で焦げ目が丁度良くて甘みもほどほどで・・・・」
てめーの脳内にしか存在しない、美化された"味"などそうそう見つかるものでもない。

いろいろあって母は残り時間が少ない。自分でも判ってるらしい。
なんとか母に「あの店を凌駕するみたらし団子」を喰わせるべく、
俺達家族は毎日和菓子屋廻りを続けるのだ。