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チェコの首都プラハから車で約1時間、東に約70キロ行ったところに「セドレツ納骨堂」がある。
チェコ語でコストネツェ・セドレツと言われるこの納骨堂は、「骨の教会」として世界的に有名となり、年間およそ40万人の観光客が訪れている。
何世紀もの歴史のあるローマ・カトリック教会の礼拝堂は、約1万人分の人骨を用いて見事な装飾がなされているのだ。
ここでは、セドレツ納骨堂に関する驚くべき7つの事実を見ていこう。
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1. 1万人の人骨で装飾され4万人以上の遺骨が保管されている
この骨の教会は、1142年に建てられたシトー派の修道院の一部として始まった。
伝承によると、1278年頃、ここの修道院長がエルサレムに巡礼に行き、キリストが磔にされたゴルゴダの丘の土を持ち帰って、その土を修道院の墓地に撒いて神聖化したという。
まもなく、神聖な墓地ということで、ここでの埋葬希望者が増えるようになった。
14世紀の黒死病の流行によって、ますます遺体の数が増え、1419〜34年のフス戦争のときには、さらに1万人の遺体が埋葬されて、墓地は満杯状態になった。
そのため、墓地の礼拝堂の地下に、あふれた遺体を引き受ける納骨堂が建てられた。ここの骨の装飾は、主として19世紀になってから、この1万人の骨を使って作られた。
image credit:Miaow Miaow/wikimedia
2. 最初に骨を積み上げ始めたのは半盲の修道士
今日、礼拝堂の地下を訪ねてみると、それぞれの角に骨が積み上げられているのに気づくだろう。現在は4つだが、かつては6つあった。
伝説によると、すべては16世紀にひとりの半盲の修道士が作ったものだという。頭蓋骨や大腿骨などを好きなように積み上げ終えると、視力を戻ったらしい。
image credit:Sedlec Ossuary/wikimedia
3. ほぼすべて人骨で作られたシャンデリアがある
セドレツ納骨堂でもっとも有名な見ものは、8つの腕をもつ人骨シャンデリアだろう。人の全身の骨を使って作られている。
製作者は、1870年頃、シュヴァルツェンベルク家に雇われた、チェコ人木彫師フランティシェク・リント。
シュヴァルツェンベルグ家は1700年代末にこの教会を購入した有力な貴族だった。リントは、イタリアで修業したことがあるため、そこの地下霊廟で見た骨の装飾に刺激を受けたようだ。骨を消毒し、さらし粉で漂白して、見た目に統一感を出した。
気味が悪いかもしれないが、このシャンデリアは「メメント・モリ」死を思えという意味が込められており、信者にこの世の運命と神との関係を考えさせるためのものだった。
image credit:Pudelek /wikimedia
4. シュヴァルツェンベルグ家の紋章も骨で作られている
リントは、シュヴァルツェンベルグ家の紋章も作った。もちろん、すべて人骨でだ。ご丁寧に、右下にカラスがトルコ兵のしゃれこうべの目を突いているところまで入れている。
Paul Koudounarisの著作『死の帝国』によると、これは1598年にオスマン帝国を制したアドルフ・シュヴァルツェンベルグの勝利を記念しているという。
image credit:word_virus/wikimedia
5. 骨でリントの名が署名されている
特大の聖体顕示台、聖杯、日輪、花環装飾など、この不気味な装飾のほとんどは誰が作ったのか、一目瞭然だ。
リントの名がちゃんとサインされているが、これももちろん人骨で作られている。ここを訪れたら、地下への階段近くに、手と腕の骨で作られた彼の署名を見ることができるだろう。
image credit:Wilson44691/wikimedia
6. 骨の教会をフィーチャーした短編映画が作られた
1970年、リントの納骨堂装飾完成100周年を記念して、チェコのシュールリアリスト監督ヤン・シュヴァンクマイエルが、10分間のモノクロ映画を制作した。
もともとはガイドによる解説のナレーションが入っていたが、死や腐敗が少々破壊的すぎたようで、共産党当局に受け入れられなかった。
L'Ossuaire
のちにピアノ音楽や、ジャック・プレヴェールの詩の朗読におき替わった。
7. 納骨堂は修復中
長年の地下の湿気や押し寄せる観光客のせいで、セドレツ納骨堂はかなりのダメージを受けていた。
2014年から修復工事に入っていて、教会全体を補強、修繕しているところだ。有名な骨のシャンデリアは取り外され、きれいにされて、2016年にまたもとに戻された。
Kostnice / Ossuary 10. 11. 2015 (CZ / EN subtitles)
2019年2月には、積まれたままの骨も解体され、汚れを落とされた。修復は現在も続いているが、通常とおり見学はできる。
References:Sedlec Ossuary / sedlec/ written by konohazuku / edited by parumo
追記:(2019/3/3)本文を一部訂正して再送します。
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コメント
1. 匿名処理班
表示される広告が葬儀社のがw
どうゆう偶然なんだか。
2.
3.
4. 匿名処理班
ここまでくると不気味さを通り越して神秘的だな
5. 匿名処理班
人間って破壊するけど、同時に凄い創造者でもあると思った!キリスト圏では創造は神だけど。。それにしても圧巻としか言い様がないような。不気味通り越した芸術。人間の想像力って凄い!
6. 匿名処理班
6項目目の見出しなんですが、「フューチャー」(未来)じゃなくて「フィーチャー」(特集)ですよ!
7. 匿名処理班
リアル魔王の城やん
8. 匿名処理班
さぞ骨の折れる作業じゃったろう。
9. 匿名処理班
死を思えという教えや、教会の畏怖と荘厳さを演出するのも良いが、修道士も建築家も自分の骨でやれよって話
無縁墓地だから使うのに許可がいらなかったんだろうけど、建材に使われた内の何人が自分の遺志だったんだろうね
10. 匿名処理班
骨って丈夫なんだ!驚いたΣ(゜Д゜)シャンデリア凄い!
11. 匿名処理班
胸アツ。。
12. 匿名処理班
宗教的にこういう美学も存在するんだろうけど、ごめんなさい、やっぱついてけない
13. 匿名処理班
シンデレラになりたかった女の子たちが、今ではシャンデリアになってるってワケさ。
さぁ、舞踏会を始めようぜ。
14. みあきち
禍々しいのか神々しいのか、判断が難しい…
15. 匿名処理班
ゲームなんかじゃたまに見るけど
現実の方がなにもかも上いってたな
16.
17. 匿名処理班
芸術性で人骨装飾が無罪になるならハンニバル博士も将来無罪ですよ…
いつみてもどんびきだなあ…
もはや無意識レベルの宗教観が芸術として受け入れる事を拒否してしまう
…全部石膏像ですとかなら気にしないんですけどもねえ
「いや、きちんと埋葬したれよ」って。
18. 匿名処理班
つまりMOTAINAI精神か!(物質主義)
19. 匿名処理班
カラスに目玉をくり抜かれている頭蓋骨は別に敵兵の物では無いんだよね?
20. 匿名処理班
キリスト教徒が土葬なのは最後の審判のあとの
復活があるからでしょ?
なのに、死体ばらして飾り物にしていいんかい……。
21. 匿名処理班
死んだあとの骨もちゃんとお墓に埋葬して管理と供養する日本では異質に感じるけど、これも文化の一つなんだろうな
自分は死んだら骨なんか好きにしてと思ったけど変なとこのパーツにされても拒否できないし、考え直したらやっぱり嫌だった
22. 匿名処理班
まあ、流石に自分の部屋に飾るのは御免だが、見る分には大丈夫だな。
23. 匿名処理班
昔から人骨で装飾する文化があるんだな
だからWW2時に日本兵の骨を装飾に使ったりしてたんだな
気味悪い人達だ
24. 匿名処理班
この納骨堂はカトリックらしいけど
チェコはほとんどの人が無神論なんだそうだよ
お墓も持たない家も珍しくはないんだそうだ
25. 匿名処理班
イタリアのとか見に行ったけどあんまり趣味のいいものとは思わなかったな
仏教的価値観からすると仏様はぞんざいに扱ってはいけないと思うのだ