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東北地方太平洋沖地震から8年。今もなお、日本の津波でさらわれたゴミに乗って海洋生物がアメリカに流れ着いている : カラパイア

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photo by istock

 2011年3月11日、日本の三陸沖の太平洋を震源とした大規模地震が日本を襲った。東北地方太平洋沖地震である。

 地震に伴う津波の影響は、海の向こうアメリカにまで及び、それは今も続いているという。
 
 8年が経過した今も、津波にさらわれたプラスチックゴミに乗った日本の生物(多くは貝や甲殻類)が、米国の海岸に流れ着いているのだ。

 その種類は300種に及ぶという。
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300種近くの海洋生物が海を越えてアメリカへ


 アメリカ・ウィリアムズ大学のジム・カールトン教授らによる調査によると、2017年2月の時点で、ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州、ハワイ州の海岸には日本から300種近い生物が流れ着いたという。

 それから2年後、ワシントンで催された学会でカールトン教授は、現在もなお生物が漂着し続けていると発表。

 ゴミは相変わらず季節ごとに定期的に打ち上げられており、一番最近の事例は、昨年7月に確認された小さなカニだったそうだ。

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photo by istock

日本から流れ着いた生物がアメリカの環境に適応


 こうした生物はアメリカの海岸環境に適応したようで、少なくとも7年は生存している。これは、これまでに確認された漂着生物の記録より5年も長い。
 
 カールトン教授は今、2019年の春の波が、またもやアメリカに日本から生物を運んでくるのかどうか、その訪れを待っているところだという。

 今のところ、これが来ないと考えるべき理由はない。また教授の研究からは、海岸に漂着した生物が生存できる期間に上限などないだろうことも分かっている。


プラスチックの普及が海の横断を可能にした


 東北地方太平洋沖地震による津波よって海にさらわれた無数のゴミは、出どころがはっきりした海のゴミを科学者が研究する数少ない機会の1つにもなっている。

 プラスチックが普及する以前に起きた1933年の津波のときとは違い、今回のゴミの大半はプラスチック製である。

 木製のゴミであれば、木を食う虫の類によって、2、3年もすればボロボロに朽ちてしまう。したがって、これに乗って漂流する生物もやはり数年のうちに海岸に辿り着かねばならない。

 ところがプラスチックは劣化することがない。2013年にワシントン海岸に漂着したファイバーグラス製の漁船の中に、生きた魚が5匹残っていたのはこうしたわけである。

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photo by istock

 プラスチックの普及、温暖化による台風の大型化、5年以上も漂流生活に耐えられる海洋生物の能力が組み合わさったことで、新たなる侵入種の経路が作られてしまった、とカールトン教授は話す。


現時点では漂着した生物が定着したのかどうかは不明


 今のところ、太平洋を横断して米国に漂着した生物が、西海岸に定着したのかどうかは不明だ。

 これを確かめるには時間も手間もかかる。だがカールトン教授は、ゴミが無数にあるという単純な理由のために、すでにいくつかの生物を見失っているという。

 教授の調査はゴミのほんの一部をサンプルとして調べるのみだ。首尾よく侵入してしまえる生物を検出できないことだって十分にあり得る。

 海岸に漂着した生物が定着した事例は過去にもある。有名なのは1995年に確認された、カリブ海グアダルーペ島から木片に乗ってイグアナ15匹がアンギラに漂着し、そこで新しいコロニーを作ったという事例だ。

 きちんと記録されたものとしては初めての事例であり、これ以降、研究者は生物が海を漂流する方法について調査を進めるようになった。

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photo by istock

 そうした生き物が漂流中に何を食べているとかという疑問は、さらに複雑で込み入っている。

 太平洋に形成された太平洋ゴミベルトは、こうした陸に漂着する前の生き物たちの生活について研究する貴重な機会を提供している。

References:Sea Creatures Still Arriving in the U.S. on Plastic Debris From the Japanese Tsunami Eight Years Ago / Tsunami-driven rafting: Transoceanic species dispersal and implications for marine biogeography/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 20:42
  • ID:bDHRKO520 #

よかった。流れ着く先が米国で!カナダにも行ってるんだろうけど。すみませんね。m(__)m

2

2. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 20:43
  • ID:sBSIVZJL0 #

興味深い話だな
生態系が変わる危険性もあるんだろうけど、ある意味で「自然」だよなこのケースは
もっともケースは人工物だが、そのほぼ閉鎖状態で耐えるってことはプランクトンみたいな微生物を食ってるのか、冬眠みたいに食わずに生命維持できるのか

3

3. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 20:46
  • ID:3p41tEVI0 #

この件をみるとストロー由来のマイクロプラスチックなんて比較にならないほど少ないよね

4

4. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 20:48
  • ID:xrauTbEb0 #

ゴミ+生物か。
大昔だったら生物もプラスチックの様な腐敗しないものがない分到達しずらかっただろうが、今は長い航海中に生き残れないであろうものも容易に到達できるわけか。
そして到達した地で定着して新たに進化していく・・?
人間の行いも自然の摂理の一環と考えるにはあまりにも急な変化だかし、やっぱりどこかで歪みが生まれるんだろうか。

5

5. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 20:50
  • ID:gNYsp8yf0 #

タイトルがおかしいかと思ったらそのまんまだった。
興味深い話だけど、ワカメみたいなことにならないといいね。

6

6. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 21:03
  • ID:bTP4o8J.0 #

蟹よりワカメだったかのりだったかが繁殖力が大きくて海外では問題になるとか聞いた記憶が漂着物に紛れて植物の方が拡散しそうだけど

7

7. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 21:14
  • ID:SPnSlULx0 #

人工物によって生態系が変わるのも自然が引き起こした事と考えると
プラスチックも自然物と考えてよいのだろうか

8

8. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 21:16
  • ID:HjQxDju30 #

ゴミの船にしがみついたまま何年もの航海を経てまだ見ぬ世界へたどり着くというのは何となくロマンがあるけど、生態系を破壊しないかだけが心配だなぁ

9

9.

  • 2019年03月04日 21:24
  • ID:UgUGzYVH0 #
10

10. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 22:06
  • ID:WybYgvpG0 #

アメリカに流れたイシダイまだ元気かな?

11

11. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 23:13
  • ID:TgdG6dIx0 #

もう8年だというのに、漂流しながらよく生き伸びてるな

12

12. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 23:15
  • ID:V84KmwqP0 #

※4
人間もこの地球で生まれた自然の一部だよ

13

13. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 23:28
  • ID:r6ul8W740 #

カニ1「ついに新大陸発見!」
カニ2「どこに目ぇつけてるんや、地球一周しただけやないけ」

14

14. 匿名処理班

  • 2019年03月04日 23:48
  • ID:jdRWHOgf0 #

なんでそのゴミが津波の遺物だってわかるの?
そりゃそういいきった方が印象には残りやすくなるけどさ。

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