Image by pixel2013 on Pixabay
14世紀前後のイングランド北部のノース・ヨークシャー州、ヨークは、とくに羊毛産業における国際貿易の北の中心地として、ロンドンの次に重要な都市だった。
町には、衣料品の商人や肉屋、皮なめし職人などが集中し、それぞれ自分の商品を売っていた。
この時期は、ヨークの黄金時代と呼ばれ、中世の都市生活の中心としてとくににぎわっていた。若い尼僧にとって、さぞかし誘惑も多かったことだろう。
新たなる研究によると、修道女が自分の死を偽装して修道院から脱走したことが、当時の写本の余白の書き込みから判明したという。
スポンサードリンク
写本の余白に描きこまれていた修道女脱走事件
ヨーク大学の研究者チームが、1304〜1405年の間のさまざまな写本をきれいにしているとき、余白に細かな書き込みを見つけた。
ラテン語で書かれたその書き込みは、大司教ウィリアム・メルトンによるもので、リーズのジョアンという修道女が、自分の死を偽装して、聖クレメントの修道院から脱走したことをベヴァリーのディーンに警告している。
写本の余白にジョアンの逃亡事件についてのメモが書き込まれていた。書いたのは大司教ウィリアム・メルトンと思われる。
image credit:Archbishops Registers/University of York
「メルトンは、この脱走事件を"外聞の悪い噂"と表現しています。市民のほとんどが読み書きがまともにできなかった社会において、噂や評判というものはとても重要なことだったのです」と語るのは、このプロジェクト責任者のサラ・リーズ=ジョーンズ。
替え玉の遺体を作り、計画的に脱走した修道女の罪
彼女のチームは、地元の大司教が事件を詳細に記録しているこの写本一式を分析し、メルトンの生活や、ペストが流行り始めた14世紀のイングランドの様子をより理解しようとしている。
羊皮紙からあふれんばかりに書き込まれたメモからは、この脱走事件に対するメルトンの怒りがうかがえる。
邪悪な心から、病に冒されたふりをし、魂の健全さを案ずることなく、彼女は死を偽装した・・・・
彼は、修道院にいる者たちが、どのように騙されたかを説明している。
そして、大勢の共犯者や悪人の助けをかりて、計画的に自分に似せた替え玉遺体をでっちあげ、献身的で忠実な者を騙して、恥知らずにも、信仰厚い場所の神聖な地に埋葬されるよう謀ったのだ
14世紀の写本を調べる、ポール・ドライバラ博士とサラ・リーズ=ジョーンズ
image credit:Paul Shields/University of York
多くの女性が修道院に入った中世という時代
中世では、多くの女性たちが十代のうちに、修道院に入った。歴史が伝えているように、貧富を問わず家族が家の娘を修道女になるよう仕向けた。
これは一部は、娘に夫を見つける代わりの手段でもあった。この時代、女性が生きていくための職を見つけるのは、至難の業だったからだ。せめて修道院に入れば、多くの場合、比較的いい生活ができたのだ。
しかし、独身を貫かなくてはならず、制約も多かった修道院生活を、すべての女性が受け入れたわけではなかった。
"単調な信仰生活を嫌ったこと"が、ジョアンを逃走に駆り立てた可能性はあるし、金銭的なものも絡んでいるだろうと、リーズ=ジョーンズは言う。
清貧の誓いのもとでは財産を相続することは許されなかったが、修道院をやめれば、親戚が残した財産をいくばくかでも分けてもらうことができるからだ。
photo by istock
だが、今となっては、すべて憶測にすぎない。
「ジョアンのケースの場合は、どんな状況だったかはっきりはわかりません」リーズ=ジョーンズは言う。ジョアンがその後見つかって、修道院に連れ戻されたのかどうかもわからない。
その答えは、どこか別の写本の朽ちかけた余白に書いてあるかもしれない。
References:How a 14th-Century Nun Faked Her Own Death - Atlas Obscura/ written by konohazuku / edited by parumo
あわせて読みたい
修道女のイメージを覆す、最高にクールな10の修道女
悪魔に憑依された修道女が無理やり書かされたという謎の暗号文「悪魔の手紙」がついに解読される
修道女2名が長年に渡り5500万円相当のお金を横領。ラスベガスのカジノで豪遊していたことが判明(アメリカ)
19世紀の西洋で、「リビングルーム」は「デスルーム」と呼ばれていた。その理由とは?※追記あり
300年前に亡くなりミイラとして展示されている少女の聖体。その目が突然開く決定的瞬間をとらえた映像(メキシコ)
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「歴史・文化」カテゴリの最新記事
「人類」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 2242 points | 猫は箱が好きだから・・・猫が入ると変身できる「顔出し看板風」ダンボール箱が制作される | |
2位 1864 points | 日本原産の植物、アシタバに老化防止成分が含まれていることが判明(オーストラリア研究) | |
3位 1806 points | アーティストが有名になるのは、創造性よりもいかに多種多様な人脈を持っているかに左右される(米研究) | |
4位 1706 points | 犬だと信じて助けてみたら野生のオオカミだった!極寒の川にはまって出られなかった所を作業員が救出(エストニア) | |
5位 1591 points | ソ連時代、海賊版のレコードはレントゲン写真のフィルムに焼かれていた |
スポンサードリンク
コメント
1.
2. 匿名処理班
修道女『21世紀はタイムカードで退勤を偽装するみたいだし文明は進歩したよね。』
3. ねこあそび
余白から一本の映画が作れそうなストーリーが垣間見える。
4. 匿名処理班
好きな人が出来て、その人と添い遂げるための駆け落ち的脱走だったらちょいロマンチックかも。
5.
6. 匿名処理班
神は過ちを許さないらしいね。
7. 匿名処理班
どんな時代、どんな生き方であろうとも人々に祝福がありますように。
8.
9. 匿名処理班
宗教上の制約以外に
人間関係に問題があったんじゃね❓
10. 匿名処理班
恋人と愛に生きるも裏切られる⇒フランス映画
悪魔にそそのかされて闇落ちしてゾンビ⇒ハリウッド映画
やりたいことを見つけて自立して職人になる⇒ディズニー映画
11. 匿名処理班
大勢の共犯者とやらのセリフ
「どっちにつく ? 」
「女 ! 」
「だろうな」
12. 匿名処理班
人間としての普通の欲求も宗教からすれば邪悪
時代的にも仕方ないとはいえ捕まって酷いめにあってないといいけど
13. 匿名処理班
※3
「修道士カドフェル」シリーズにありそうな
14. 匿名処理班
色んなドラマを想像させるね
15. 匿名処理班
・・・と言う証拠は無いものの、真実に違いない自分の考えを人々に伝えて見た。
然しながら『考えすぎーぃ』と誰一人、真面に取り合ってくれないので
考えの廻らない周囲への怒りの気持ちも込めて
其処らの余白に書いてみた。
・・・で、無かった事を祈る
16. 匿名処理班
装飾過多な文章がいかにも当時の司祭の通信文らしくて興味深い
17. 匿名処理班
写本の余白に書かなきゃいけない理由は何だ?
本を汚してますよー大司教さん
18. 匿名処理班
修道女の脱走…漫画だったら池辺 葵先生の「かごめかごめ」が好きだな
雰囲気もすごく素敵なのでオススメです