image credit:Watch Elon Musk Reveal SpaceX's Most Detailed Plans To Colonize Mars
イーロン・マスクがCEOを務める宇宙ベンチャー企業「スペースX」の宇宙船「ドラゴン(Dragon)」が2019年3月3日に、国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングに成功したというニュースは世界中に報じられた。
だがそれははじまりにすぎない。
民間の火星移民構想を掲げるイーロン・マスクは、本気で火星に都市を作りたいと考えている。しかもそれは、あと30年もあれば実現できるそうだ。
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5年後に取り掛かって、軌道同期を10回も利用すれば、2050年までには自給自足できる都市を火星に建設できる
これはマスク氏が自身のツイッターで発言したことだ。
It’s possible to make a self-sustaining city on Mars by 2050, if we start in 5 years & take 10 orbital synchronizations
— Elon Musk (@elonmusk) 2019年3月25日
火星への未来を担う宇宙船「スターシップ」
計画の中心的な存在は、スペースXが開発する宇宙船「スターシップ」だ。
ボディはステンレス製で、乗員100名を運ぶことができる大型宇宙船なのだが、ユニークなのはロケット推進剤を使う従来の宇宙船と違い、液体酸素とメタンを使うラプターエンジンを搭載することである。
じつはこのエンジンが鍵を握っている。
というのも、このエンジンならば、火星から地球に帰還するための燃料を火星の工場で用意できるのである。そしてさらに、これが可能ならば、火星を中継地点として、さらに遠方まで宇宙を旅することもできるようになるだろう。
Why SpaceX Built A Stainless Steel Starship
軌道同期とは何か?
イーロンのツイートの中で言及している「軌道同期(orbital synchronization)」は、軌道の中心となる重力体の自転周期と軌道を描く物体の公転周期が同一になる軌道のことだ。
地球と火星が最接近するタイミングは26ヶ月に一度生じる。
これは2つの惑星が楕円軌道を描くために生じる現象で、お互いが5450万キロまで近づくために、打ち上げにはぴったりなタイミングだ。
6万年ぶりの接近を果たした2003年など、これまでのNASAの打ち上げスケジュールを見てみれば、まさにこのタイミングで火星へ向けてロケットが発射されてきたことがわかる。
スペースXでも、これを利用しようと考えており、次の2022年や2024年の軌道同期に狙いを定める。そして、これは2017年の国際宇宙会議でマスク氏が熱く語った計画でもある。
Watch Elon Musk Reveal SpaceX's Most Detailed Plans To Colonize Mars
そのときの説明によれば、まず2022年に火星へ向けて2機の無人スターシップが出発。これらはそれぞれ100トンの物資を運ぶことが可能で、有人飛行の足がかりを作ることが目的だ。
そして最初の有人ミッションは、2024年に訪れる軌道同期のタイミングとなる。このときは、人を乗せた宇宙船2機と無人の宇宙船2機が打ち上げられる。
これら計6機の宇宙船が運搬できる物資は、国際宇宙ステーションの重量のおよそ2倍だ。
だが、マスク氏は、この計画が大きな賭けであることも認めている。
以前ニュースでも報じられたとおり、2023年に起業家の前澤友作氏をはじめとする6〜8名が月旅行へ打ち上げられる予定である。
そして、この月旅行がスターシップの初ミッションになるとほのめかされている。ならば2022年に打ち上げられる見込みは薄いのかもしれない。
Moon first, Mars as soon as the planets align
— Elon Musk (@elonmusk) 2019年2月11日
・月がスターシップの初ミッション? それとも火星に直接物資を送るの?
・月が最初だ。火星は惑星が並んだらすぐにでも。
火星都市建設のコンセプトは拡張
各軌道同期のタイミングで行われる火星都市の建設は、まず生命維持装置や燃料生産設備の設置から始められ、それに次いで居住施設や実験施設の建設が行われる。
マスク氏によれば、順調に行けば、今から7〜10年でコロニーが形になるという。
すると今度は、リサイクルシステムや移動手段といった快適な生活を送るための設備建設に移る。そして、ここまでくれば、火星の調査も実施できるようになり、かつて火星に生命はいたのか? といった疑問に答える研究も進められるだろう。
image credit:photo by youtube
スペースXの火星開発主任技師ポール・ウースター氏によれば、基本となるアイデアは拡張であるという。
つまり最初は単なる前哨基地のようなものかもしれないが、そこからさらに大きな基地へ発展させ、村から町へ、町から都市へ、1つの都市から複数の都市へといった具合に少しずつ成長させていくのである。
そして昨年のSXSWでマスク氏は、開発が進んだ火星の統治について、最初は直接民主制のような政治が敷かれるだろうと予測している。
なお、マスク氏自身が火星を訪れるかどうかは、70パーセントの確率だそうだ。
image credit:photo by youtube
スペースXの現在
次のステップは、スターシップのテスト飛行だ。すでにテキサス州ボカ・チカにある試験施設には、そのミニバージョンである「ホッパー」が鎮座している。
ステンレスボディのホッパーを一目見れば、未来を感じることができるが、しかし窓など、完成版には備え付けられるパーツがなかったりする、いわば簡易版だ。
ホッパーには3基のエンジンが搭載されているが、計画ではそのうちの1つを使って、ちょっとした離陸を完璧にできるようにする。3基すべてを点火し、準軌道まで打ち上げるのはその後だ。
SpaceXのスターシップ「ホッパー」
そして、この実験が完了した時点で、今度は軌道を飛行できるスターシップのプロトタイプ開発が着手される。それは早ければ来年のことかもしれない。
そして、最終バージョンでは、スーパーヘビー・ブースターに31基、スターシップの機体に7基のエンジンが搭載されることになるはずだ。
ラプターエンジンの開発が順調に行きさえすれば、完成したスターシップの飛行もそう遠い未来の話ではない。
References:SpaceX: Elon Musk Explains How "It’s Possible" to Build a Mars City by 2050 | Inverse/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
往復は無論必要だが、一番の問題は火星という惑星に適した住環境をどうするかだ
鉄分を多く含んだ暴風より酷い砂嵐と雷の飛び交う大気を耐えうる剛性と機密性を確保しなければならない
勿論生きるために必要な水や食料の確保も問題だ
とても30年程度でどうにかなる問題には思えないが…
2. 匿名処理班
イーロンマスクって、何か考えるにが好きなんだね。思い付くのが好きで、継続に興味がない感じ。
こういう人が世界を作る一端を担ってるんだなぁって
3. 匿名処理班
火星にコンビニが出来たら行ってみるか
4. 匿名処理班
技術的には可能でもお財布的にほぼ不可能なのでは。
5. 匿名処理班
その前に実用リニアに乗せてくれ 実用間近といわれて半世紀経ってる
6. 匿名処理班
この人いろいろ構想は発表してるけどねぇ。
7. 匿名処理班
最近のイーロン・マスクの発言は本当に怪しいわ。
8. 匿名処理班
マスクのメンタルは2050年まで持つの?
9.
10. 匿名処理班
SpaceXのスターシップ「ホッパー」のハリボテ感は異常
期待はしているし失敗があっても良いが、嘘や虚飾で塗り固めるのは止めて欲しい
※1 火星の嵐や落雷自体は、実際には気圧が薄い関係であまり大きな被害が出ないという話だ(映画オデッセイについてもそういう批判はあった)
気密は必要だが、月面ほどではない(月面の方が真空に近いし、昼夜の温度差も厳しい)
水は現地で調達出来る見込みはあるし、食料は農業工場みたいなのを作る必要があるが技術的ハードルは低い
総じて、太陽系内では最もコロニーを作るのに適した環境だというのが大方の科学者の意見だ
11. 匿名処理班
マーズワンの片道切符の計画がぽしゃった今、ちょっと陰りが出てるって思うんだけど、2050年は無理な気がするな。
2100年ならまだ希望はあるかもね
12. 匿名処理班
レンガ1個持っていくのに
100億かかるから
ロスチャイルドさんが
協力してくれないと無理。
13. 匿名処理班
無理、
未だに放射線問題が
改善されて無いし
そんなに大量の資材を
送り込めるわけが無い
2100年頃じゃないかね
その頃なら人型のロボットに
都市やインフラ作ってもらってから
移住すれば良いわけだしね