【ラブライブサンシャイン】善子「影廊」ルビィ「夕暮れの迷宮から脱出」
- 2019年04月06日 13:10
- SS、ラブライブ!サンシャイン!!
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これはホラーゲーム「影廊 -Shadow Corridor-」のパロディSSです。
ゲームは有料版と無料版があります。
リンクは貼りません。興味のある方は各自で検索してください。
ゲームに関する過度なネタバレはなるべく避けるようにします。
それでもネタバレが気になる場合はお戻りください。
また、SS内では設定の一部改変があります。
この物語はフィクションです。
善子「私とルビィはなぜかある路地が気になりふと足を止めた」
善子「夕立の後の蒸し暑い湿気の中、奥からは冷たい風が吹き抜けてきていた」
善子「そしてルビィは吸い込まれるように、この薄暗いさびれた路地に入って行ってしまった」
善子「私も後を追う形でその路地へと入って行った」
善子「それがこのあと起こる悪夢のはじまりだった……」
善子「どうしたのよルビィ」
ルビィ「うん、この路地がすごく気になって入ってきちゃった」
さびれた住宅街にある細い道だ
路地は薄暗く建物の合間を縫って夕日が差し込んでいた
エアコンの室外機から生暖かい風が吹いている
ルビィ「善子ちゃん、ちょっと奥まで探検して行かない?」
善子「ヨハネよ」
ルビィ「善子ちゃんもついてきて」
善子「ちょっとルビィ、危ないわよ」
善子「懐かしい感じ……ノスタルジックっていうのかしら」
ルビィ「静かだね」
善子「ええ」
ルビィ「奥にトンネルがあるよ」
奥にある住宅街につながっているのだろう
善子「なぜか明かりがないわね」
善子「真っ暗でよく見えないわ」
ルビィ「うゆ、りゅびぃライター持ってるよ」
ルビィ「このまえ花丸ちゃんがくれたの」
ルビィ「火をつけるね」ボッ
善子「ルビィ、火の扱いには気をつけるのよ」
ルビィ「うん」
善子「さすがに奥までは照らせないわね」
善子「手元や足元が見える程度ね」
ルビィ「奥まで見に行こう」
善子「危ないわよ」
善子「足音が反響してちょっと怖いわね」
ルビィ「うん……」
善子「このトンネル、レンガでできてるのかしら」
ルビィ「……」
善子「何、今の音!?」
ルビィ「鈴の音かな?」
善子「鈴っていっても小さい鈴って感じじゃないわね」
善子「たくさん鈴がついていて……そう神楽鈴って感じかしら」
善子「どうしたの?」
ルビィ「行き止まりだ」
善子「本当ね……でもおかしいわね」
善子「さっきまでこんな柵なかったわよ」
善子「なにかおかしいわね……ルビィ、戻りましょう!」
ルビィ「うん……それなんだけどね……」
ルビィ「後ろが……」
善子「え……」
善子「さっきと違う……」
ルビィ「怖いよ……善子ちゃん」
善子「とにかく行き止まりである以上、後ろに戻って外に出てみるしかないわね」
まわりを高い崖に囲まれており、あたりには彼岸花が赤く咲いている
善子「なんでさっきと違うのよ……」
ルビィ「うぅ……善子ちゃん……」
目の前でひとりでに神社の扉が開いた
善子「なんで開いたのよ……」
ルビィ「うぅ……」グスン
善子「こうなったら行くしかないわね……」
ルビィ「うん……」
赤い鳥居をくぐり神社の中へと入っていく
善子「鏡だけしかないわね」
善子「ほかには何もないわ」
ルビィ「うん」
ルビィ「ちょっと見てみるね……」
すると突然、鏡が光り出し景色が変わった……
ルビィ「もしかしてルビィたち……ワープしちゃったの?」
そこは先ほどまでの路地でも神社でもなく古びた回廊であった
その暗闇の回廊はどこまでも続いていた
ルビィ「善子ちゃん……怖いよ」
善子「ここから出なきゃ……何か危険よ……」
ルビィ「でもどうやって……」
善子「分からないわ……とにかくここから先へ進まなきゃダメみたいね」
善子「真っ暗で何も見えないわね」
善子「ルビィ、ライターで明かりをつけて」
ルビィ「うん」ボッ
善子「これで少しは見えるわね」
ルビィ「本当に真っ暗だよ……」
善子「畳を歩く音すらもなんだか怖いわね……」
ルビィ「うん……」
善子「襖があるわね、開けるわよ」
サァァ…………
善子「音を聞くだけで怖いわ」
ルビィ「はぁ……はぁ……怖い……」
善子「あっちは木でできた廊下ね」
善子「壁は土壁かしら」
善子「ちょっと待って? 何か足音が聞こえない?」
ルビィ「うん……」
善子「人がいるのかしら……それにしては足音が多いような」
ルビィ「善子ちゃん……何か変だよ」
善子「ちょっと待って!? この足音、近づいてきてない!?」
ルビィ「怖いよぉ!!」
善子「隠れるわよ!!」
ルビィ「どこに!?」
善子「あの中よ!!」
ルビィ「二人も入るかな」
善子「あんた小さいから大丈夫よ!!」
ルビィ「善子ちゃんと2センチしか身長変わらないよ!」
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ
善子「もう隠れるしかないわ!」
善子「ライターの火を消して中に入るわよ!」
ルビィ「うん」
二人は行李の中に隠れた
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ
善子(すごく大きな足音ね)
ルビィ(何か呟きながら走ってるね)
善子(息をひそめて通り過ぎるのを待ちましょう)
ルビィ(竹でできたカゴだから外の様子が網目から見えるね)
善子(嫌な予感がするわ)
網目から外を見てみると
能面をつけ、手や足がいくつも生えている化け物が猛スピードで走りまわっていた
善子(バカっ!! そんな大きな声出したら見つかるでしょ!!)
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ
善子(はあ……はあ……)
ルビィ「はあ……はあ……」
ドタドタドタドタドタドタ…………
ルビィ「はあ……はあ……おぇぇぇぇぇぇぇ」
善子「ルビィ!! しっかりして!!」
ルビィ「怖いよ……なにあの化け物」
善子「分からないわ……」
善子「なんとなくだけど、そんな気がするわ」
ルビィ「うぇぇぇぇんん……怖いよぉぉ」
ルビィ「おねぇちゃぁ……」グスン
善子「泣かないでよルビィ……」
善子(でも、そんなことしたらルビィがもっとパニックになっちゃう……)
善子(我慢しなきゃ……ルビィを守らないと……)
ルビィ「ハア……ハア……」
善子「ダメね……圏外だわ……」
ルビィ「ルビィのもだよ……」
善子「私たちがここに入る前に送ってきたやつね」
ルビィ「そうみたいだね」
ルビィ「うん、読んでみるね」
花丸:ルビィちゃん!善子ちゃん! そこに入っちゃダメだよ!!
善子「路地のこと? それともトンネルのことかしら?」
善子「ごめん、入っちゃったわ」
ルビィ「もっと早く気づいてれば……」
善子「ずら丸は一体何者なのよ……」
善子「……他には何かない?」
花丸:影廊に入っちゃったら脱出を目指して
花丸:脱出するには回廊のどこかにある勾玉が5つ必要ずら
花丸:それを台座に置く必要があるの
善子「つまりあの化け物が徘徊してるこの回廊を探索しろってこと?」
ルビィ「う、嘘だよね? 無理だよそんなの!」
花丸:オラは今から二人を助けに行くから出口を目指して欲しいずら
善子「ごめん花丸、頼むわよ」
ルビィ「ごめんね花丸ちゃん」
花丸:それは徘徊者ずら
善子「徘徊者……? さっきの化け物のことかしら?」
花丸:捕まれば命はないずら
善子「私たちさっきの化け物に◯されるところだったのね……」
ルビィ「うぅ……おぇぇぇぇぇ」
善子「ルビィ!!」
花丸:まわりをよく見て逃げまわってほしいずら
花丸:もう時間がない
花丸:いまから救出に向かうから出口を目指して!
ルビィ「怖いよぉ……」
善子「……行くわよ」
ルビィ「うん……」
善子「木の廊下だから音がするわね」
ルビィ「うぅ……」
善子「どこまでも廊下が続いてる……」
善子「部屋もたくさんあるわ」
サァァァァ…………サッ……サッ……
善子「廊下から畳の部屋に入って足音が変わるのすら嫌ね」
善子「……ん?? 足音??」
ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」
ルビィ「うん……」
善子「……足音も聞いてるのかしら?」
ルビィ「え……」
善子「それは敵も同じってことかしら」
ルビィ「そんな……」
善子「とにかく分かってないことが多すぎるわ」
善子「情報を集めましょう」
ルビィ「うぅ……」
善子「中も見てみましょう……使えるものがあるかもしれないわ」
ルビィ「中からオバケしゃんとか出てこないよね……?」
善子「……あるかもしれないわね」
ルビィ「もうやだぁぁ…………」グス
ルビィ「ハア……ハア……」
ザッ……
善子「……何もないわね」
ルビィ「はあ……はあ……」
善子「ライターの火だけじゃ心もとないわ」
ルビィ「あ、あそこに燭台があるよ」
ルビィ「あっちにも」
善子「なるほど、ろうそくの火ね」
善子「部屋や廊下のあちこちにあるわね」
善子「つけてまわりましょうか」
善子「え?」
ルビィ「敵しゃんはルビィたちを探してるんだよね?」
ルビィ「火をつけたら居場所が分かっちゃうんじゃ……」
善子「たしかに……」
善子「少しつけても大丈夫だと思うわ」
善子「……たぶん」
ルビィ「うん……そう信じるよ」
ルビィ「暗くて怖いからつけてみるね」ボッ
ルビィ「これで少し明るくなったね」
善子「それにしてもこの廊下、どこまで続いているのかしら」
ルビィ「この中から勾玉を5つ探すんだよね……」
善子「ええ、しかも危険な敵が徘徊しているわ」
ルビィ「うぅ……」
善子「……何か聞こえない?」
ルビィ「……鈴の音かな?」
善子「誰かがスクフェスやってるわけじゃないのよね?」
ルビィ「うん、絶対違う」
善子「こっちに来てるわね」
ルビィ「どうしよう、隠れるところなんてないよ」
善子「ライターの火を消して部屋の隅の暗がりに隠れましょう」
ルビィ「それなんだけどね、善子ちゃん」
善子「どうしたの?」
ルビィ「……ライターの火が消えそうなの」
ルビィ「ううん、すごく火が弱くなってる」
善子「燃料がなくなってきたのかしら?」
善子「まずいわね……明かりなしでこの迷宮を探索するのは厳しいわ」
ルビィ「うぅぅ……」
善子「風も吹いてないのに揺らめいてるわよ」
ルビィ「ロマンチックなセリフだね」
善子「あんた実は余裕あるんじゃないの?」
善子「今にも消えそうだわ」
シャン……シャン……シャン……シャン……
善子「来てるわね」
ルビィ「えっ」
善子「とにかくライターの火だけ消して身をひそめましょう」
善子「ろうそくの火はそのままでいいわ」
ルビィ「うん」カチャ
暗がりで身をひそめながら見ると
能面をつけ着物を着た徘徊者が神楽鈴を鳴らしながら歩いていた
善子(あれも徘徊者ね……さっきの化け物と同じように能面を顔につけているわ)
善子(着物に詳しいわけではないけど、あれは十二単かしら?)
善子(平安時代の貴族の女の人が着ているイメージがあるわね)
ルビィ(善子ちゃん、あれ見て)
善子(やっぱり徘徊者が近づくと火が消えるみたいね)
善子(とにかくやり過ごしましょう)
善子(見つかったら襲い掛かってくるわ)
ルビィ(うん……)
ルビィ(はあ……はあ……)ドクン……ドクン……
シャン……シャン……シャン……シャン……
シャン……シャン……シャン……シャン……
…………
ルビィ「またろうそくの火がついたね」
善子「やっぱり近づいてくると火が消えるわね」
ルビィ「じゃあ、つけても大丈夫かな」
善子「ええ、むしろつけたほうがいいわ」
ルビィ「え?」
善子「それどころか、私たちとしては火が揺らめいたら近くに何かいるって分かるから有利よ」
善子「廊下の先で火が揺らめいたり点滅してたりしたら徘徊者がその方向にいるということ」
善子「廊下や部屋に置いてある燭台に火をつけながら探索を進めていきましょう」
ルビィ「うん……」
善子「勾玉ってどこにあるのかしら?」
善子「それに徘徊者はどの程度の視覚や聴覚を持っているのかしら?」
善子「犬のように耳がいいのか、暗闇でも普通にものが見えるのか」
善子「まだ分からないことが多いわ」
ルビィ「うぅぅ……明かりをつけてもまだ怖いよ……」
ルビィ「むしろ見えちゃう分、逆に怖いかも……」
善子「どこかにいるわね」
ルビィ「怖いぃぃ……」
善子「さっきの足音のする化け物ね」
善子「足音がするだけね」
善子「壁の向こう側の廊下を走っているのかしら?」
ルビィ「でもこっちに来てるよね」
善子「隠れましょう」
ルビィ「うん」
バァァァァンンン!!!!
ドタドタドタドタドタドタドタドタ
善子(!? 何、いまの音!?)
ルビィ「おぇぇぇぇ……」
善子(ルビィ!!)
善子(バレないかしら……ッ)
バァァァァンンン!!!!
バァァァァンンン!!!!
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
善子(お願い……早くどこかに行って……)
ルビィ「ハアッ……ハアッ……」
…………
善子「……どこかに行ったわね」
ルビィ「おぇぇぇ……はあッ……はあッ……」
善子「……襖や扉が蹴破られてるわね」
ルビィ「……え?」
善子「あの化け物は足が速いからおそらく走っても逃げ切れないわ」
善子「それに襖や扉は一発で破ってくるから」
善子「部屋に隠れていても突っ込んで来られたら捕まるわ」
ルビィ「そんな……無理だよ……」
善子「見つからないように祈るしかないわね」
ルビィ「うぇぇぇんんん……おねいちゃぁあ……」
ルビィ「はあッ……はあッ……」ドクン……ドクン……
善子「明かりをつけて、タンスや棚を探しながらね」
善子(本当は私だって怖いわ……)
善子(ここから脱出するには……私がしっかりしなきゃ……)
善子(私がルビィを守らなきゃ……)
ルビィ「うゆ……」
善子「……手鏡があったわ」
ルビィ「何に使うの?」
善子「分からないわ……」
ルビィ「うゆ……」
善子「ほかには何かないかしら?」
ルビィ「善子ちゃん、爆竹があったよ」
善子「爆竹?」
ルビィ「これで敵しゃんをやっつけられるかな?」
善子「うーん……そんな破壊力があるようには思えないわ」
善子「せいぜい音が鳴る程度かしら」
ルビィ「うゆ……」
ルビィ「ほかには何もないよ」
善子「別の部屋を探しに行きましょう」
ルビィ「うゆ、ろうそくにも火をつけておくね」
善子「何……?」
ルビィ「悪夢って、理由なんてないんだよ」
善子「悪夢に理由はない……?」
ルビィ「理由はないけど、どこかに向かわなきゃいけなかったり」
ルビィ「でも、理由もなく怖い」
ルビィ「怖いから悪夢なんだよ」
善子「ええ、そうね……でも何が言いたいの?」
ルビィ「ルビィ、いまの状況が全然信じられないよ」
ルビィ「悪夢なら早くさめて欲しいよ」
善子「ええ、大丈夫よ……悪夢なら必ずさめるから」
善子「どこかの扉で使うかもしれないわ」
善子「いまは前に進みましょう」
ルビィ「うん……善子ちゃんと一緒でよかった」
善子「カギを使って開けるわよ」ガチャッ
ギィィ……
善子「中には……何か光ってる」
ルビィ「なんだろう……??」
善子「!?!?」
善子「これ……勾玉じゃない?」
ルビィ「本当!?」
善子「ええ、これを5つ集めればいいのよね」
善子「1つ目をゲットしたわ!」
ルビィ「やったね!!」
ルビィ「あ、うん、そうだね」
善子「この調子で残り4つも見つけるわよ」
ルビィ「うん」
ルビィ「どうしたの?」
善子「向こうの廊下の火が揺らめいてる」
善子「あっちに徘徊者がいるわね」
ルビィ「え?」
善子「分からないわ……とにかく向こうには行くのはやめて他の道を探しましょう」
善子「こっちはまだろうそくに火がついてないから行ってない道よ」
ルビィ「うん、そうだね」
善子「え?」
ルビィ「いまはじめの場所から西に来てるよ」
善子「あんた方角分かるの?」
ルビィ「うん」
ルビィ「うん、正しい方角じゃないけど、あらかじめ決めておいたの」
善子「頼もしいわね……道も覚えてる?」
ルビィ「うん、たしかにそっちはまだ行ってないよ」
善子「すごいわね……これは案外なんとかなるかもしれないわ」
善子「ほかに何かあるかしら……」
善子「懐中電灯があるわね」
ルビィ「やったね、他の明かりだよ」
善子「ええ、ライターと違って奥まで照らせるわ」
善子「襖の部屋がたくさんあるわ」
グスン……グス……
ルビィ「あれ?……女の子の泣き声……??」
善子「暗くてよく見えないわね」
善子「いえ、だとしたらおかしいわ」
善子「命の危険があるのに真っ暗な部屋の中でおとなしくしてるなんて」
善子「普通なら無理だわ」
ルビィ「ということは……徘徊者しゃん?」
善子「ええ、徘徊してないけどおそらく徘徊者ね」
善子(え?)
ルビィ(勾玉があるよ)
善子(本当ね……でも泣き声はあのあたりから聞こえてくるわよ)
善子(真っ暗で見えないけど、そこにいるんじゃないかしら?)
善子(……)
善子(なんであの子は暗いところにいるのかしら?)
ルビィ(え……?)
善子(……)
<ドコ?……ドコニイルノ?……ドコニイルノ?
善子・ルビィ(!?!?)
ルビィ(はあッ……はあッ……)
善子(……)
善子(ええ、思ったとおり耳がいいみたいね)
善子(不用意に近づけば襲われるわね)
ルビィ(ふえぇぇぇ…………)
ルビィ(どうしよう……足音を立てずに移動しても、さすがに近づいたら危ないよ)
善子(明かりを当てるのもやめておきましょう)
善子(うーん……何か気をそらすものは……)
善子(……)
ルビィ(ええ……ほかの徘徊者しゃんにバレないかな)
善子(分からないけど、やってみるしかないわ)
善子(ルビィ、いつでも逃げられるように警戒して)
善子(あの子が移動したら爆竹が鳴っている間に勾玉を取るわよ)
ルビィ(怖いよぉ……)
ルビィ(うん……)
善子(……)ヒョイッ
……
パチパチパチパチパチ……
グスン……グス……
<グスン……グスン……
善子(移動してるわね……いまのうちに勾玉を取るわよ)
ルビィ(うん……)
<グス……グス……
善子(足音を立てないように……慎重に……)
ルビィ(はあッ……はあッ……)
善子(あの子は耳がいいから気をつけなきゃ)
善子(おそらくこっちの足音は爆竹の音にかき消されてるはずだけど)
善子(念のため警戒しないと危険だわ)
善子(よし! 勾玉ゲット!)
ルビィ(はあッ……うぅぅ……)
善子(ここから立ち去るわよ)
ルビィ(うん……)
────
──
ルビィ「怖かったよぉ……」
善子「これで2個目の勾玉ね」
ルビィ「うん」
善子「この調子でいくわよ」
善子「古いタイプのカメラね」
ルビィ「なんであるんだろう」
善子「一応持っていきましょう」
ルビィ「うゆ」
善子「使えそうなものはなるべく持っていきましょう」
ルビィ「あんまりたくさんは持てないから選ばないとね」
────
──
・神楽鈴の徘徊者
鈴の音を鳴らしながら歩き回る着物を着た徘徊者
探知方法は現状不明
・走り廻る徘徊者
手や足のたくさん生えた異形の姿をした徘徊者
大きな足音を立てながら走りまわっている
足が速いため、もし追いかけられれば逃げ切るのは困難だろう
探知方法は現状不明
・泣き声の主
すすり泣きながら暗闇にひそんでいる少女の姿の徘徊者
主な探知方法は聴覚
────
──
善子「相変わらず神楽鈴の徘徊者がいるわね」
ルビィ「どこにいるのかな?」
善子「分からないわ……私たちも音で判断するしかないから」
善子「壁の向こうの廊下なのか、それともすぐそこなのか」
善子「廊下がこっちまでつながっているのか」
善子「予想しなければならないわ」
善子「……いま鈴を二回鳴らしたわね」
ルビィ「なんだろうね……」
善子「音がまた向こうに行くわね……」
善子「折り返したのね」
善子「行き止まりだったのかしら?」
……シャン……シャン……シャン……
善子「待って? 鈴の音が二つ……違う方向から聞こえるわ?」
ルビィ「え、それって……」
善子「……2体いるわね」
ルビィ「もしかして……」
善子「ルビィ、つづらのある場所わかる?」
ルビィ「あっちだよ」
善子「そっちに逃げるわよ」
善子「部屋が真っ暗になった!」
善子「すぐそこにいる!!」
ルビィ「ふぇぇ」
善子「真っ暗で見えないけど走るわよ!!」
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
善子「見つかった!!」
ルビィ「すごいスピードでこっちに走ってくるよぉぉ!!」
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
善子「さっきあったつづらに飛び込むわよ!!」
ルビィ「はあッ……はあッ……」
ルビィ「うゆ!!」
善子「入るわよ!!」サッ
ルビィ「ぴぎぃ!!」サッ
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン…………
シャン……シャン……シャン……シャン……
<シャン……シャン……
善子(はあッ……はあッ……)
ルビィ「はあッ……はあッ……」
善子「見つけると今みたいに追いかけてくるのね」
ルビィ「うぅ……怖かったよぉ……」
善子「よく頑張ったわねルビィ」
ルビィ「うぅ……」
────
──
ルビィ「うん……」
グス……グスン……
善子「いるわね、泣き声の主」
ルビィ「じゃあ近くに勾玉も?」
善子「ええ、あるかもしれないわ」
<ドコ?……ドコニイルノ?……ドコニイルノ?
善子(すごく耳がいいわね……足音を立てないように近づかなきゃ)
ルビィ(あそこの暗闇の中に光ってるアレじゃない?)
善子(あったわね)
善子(とにかく爆竹でおびき出してその間にゲットするわよ)
ルビィ(うゆ……)
……
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
グス……グスン……
善子(いまのうちに取りに行くわよ)
ルビィ(うん)
善子(よし! 3個目ゲット!!)
ルビィ(やったね!)
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
<ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
善子「え……?」
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
善子(走り廻る徘徊者!?)
ルビィ(えっ!?)
善子(タイミング悪く近くに来ちゃったの!?)
善子(それか、こっち来ないで……)
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
善子(来てる……ッ)
ルビィ(あわわわ……ッ)
バァァァァァンンンン!!!!
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
善子「部屋の中に入ってきた!!!」
ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁあああああああ!!!!!」
善子「まずい!! 泣き声の主にも見つかった!!」
ルビィ「もうダメぇぇぇぇぇ!!!!!」
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
ルビィは驚いて咄嗟に手に持っていた手鏡に触れた
すると手鏡は光を放ち二人はどこかに飛ばされてしまう
どうやら『ワープ』して場所を移動したようだ
善子「ハアッ……ハアッ……」
ルビィ「ハアッ……ハアッ……」
善子「助かったのね……」
ルビィ「はあッはあッ……おぇぇぇぇぇ」
善子「ルビィ!! しっかりして!!」
────
──
ルビィ「うん、ごめんね善子ちゃん」
善子「でも今回は助かったわ」
善子「手鏡を使うとどこかにワープできるのね」
ルビィ「すごいね、見つけたらどんどん使おう」
ルビィ「え……?」
善子「ここがどこか分かる?」
ルビィ「どこって……え?」
ルビィ「ここ……どこ……?」
善子「位置関係がさらに分からなくなったわ」
ルビィ「うゆ……」
善子「探索もやりなおしよ」
ルビィ「ふぇぇぇ……」
善子「ヒグラシが鳴いてるわね……」
善子「ここはどこにあるのかしら……」
ルビィ「夕日が差し込んでるね」
善子「夕日が差し込む窓があるってことは」
善子「いま迷宮の隅っこにいるのかもしれないわね」
ルビィ「なるほどぉ」
────
──
ルビィ「うん、そうみたい」
善子「あっちが北なのかしら?」
ルビィ「……」
善子「え……?」
ルビィ「なんとなくそう思う……」
善子「正しい方角が分からないから確かめることもできないし」
善子「出口がどっちにあるかも分からない」
善子「でも持っていきましょうか」
ルビィ「うん」
────
──
善子「あ、徘徊者が走ってるわよ」
ルビィ「あー、走ってるね」
善子「だんだん慣れてきたのかしらね……」
ルビィ「慣れてないはずだけど……」
善子「鈴の音がどこからかするわね」
ルビィ「かなり遠くだね」
善子「少し動いても大丈夫ね」
ルビィ「うん」
善子「少しだけ大胆に動いたほうが、かえって安全かもしれないわね」
ルビィ「うん、ちょっと怖いけどね」
ルビィ「気をつけて動かなきゃ」
善子「ええ」
ルビィ「ルビィもだよ……鈴が鳴ってるんじゃないかって思ってきたよ」
善子「早く脱出したいわ……」
ルビィ「戻ってきちゃったみたい」
善子「ほかに行ってない道を探しましょう」
ルビィ「うゆ」
善子「今度こそ鈴の音がするわね」
善子「あっちにあるろうそくの火も揺れてる」
ルビィ「うん、隠れたほうがいいかも」
善子「この部屋、両側が襖だからどこから来ても危ないわね」
善子「隠れましょう……」
ルビィ「隠れるの慣れてきたね」
善子「それどころかこの状況にも慣れてきてないかしら」
シャン……シャン……
善子(近くまで来てるわね)
ルビィ(うん)
<ザァガラララララ
善子(!?!?)
ルビィ(!?!?)
善子(え? 普通に襖開けて部屋に入って来たわよ?)
ルビィ(怖い……)
善子(火が消えてるから真っ暗でよく分からないわ)
<ザァガラララララ
シャン……シャン……
善子(どこかに行ったみたいね)
ルビィ「いまのは怖かったよ……」
善子「ええ、私も見つかったかと思ったわ」
ルビィ「つづらも開けてくるのかな?」
善子「……」
────
──
善子「中に勾玉があるわ」
ルビィ「やったね善子ちゃん」
善子「ええ」ガチャガチャ
善子「あら?……カギがかかってて入れないわ」
ルビィ「え……?」
ルビィ「うん……」
善子「じゃあ、また探索してここに戻って来なきゃいけないわね」
ルビィ「ふぇぇ……」
────
──
善子「もしこの部屋で襲われたら行き止まりだから逃げ道がないわ」
ルビィ「うぅ……」
善子「早く探索を済ませて出ましょう」
善子「嘘でしょ!?」
ルビィ「ぴぎぃ!?」
ルビィ「うゆ!!」
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
善子「部屋の隅の暗がりに身をひそめるわよ!」
ルビィ「はあッ……はあッ……」
バアァァァァァァンンンン!!!!
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
善子(どこかの扉を蹴破ってるわね……)
ルビィ(はあッはあッ……)
善子(すぐそこまで来てる!!)
ルビィ(はッ……はッ……)
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
善子(……)
ルビィ(……)
善子「はあ……どこか行った……」
ルビィ「はあ……やっぱり怖いよ……」
善子「折り返してどこかへ行ったみたい」
善子「扉を蹴破って入って来られたらダメだったわね」
善子「助かったわ」
ルビィ「うゆ……」
────
──
善子「ええ、困ったわね」
ルビィ「もっと遠くまで探しに行く?」
善子「……」
善子「……少し考えさせて?」
善子(でも早く勾玉を集めて出口に行かないと、それはそれで危険ね)
善子(どうしたものかしら……)
善子「ルビィ、走る体力はまだある?」
ルビィ「え……?」
善子「カギのかかった部屋の近くに隠れられそうな部屋があったわよね」
ルビィ「うん……」
善子「徘徊者に扉を開けてもらうわ!」
ルビィ「え……?」
ルビィ「どうやって?」
善子「扉の隙間から爆竹を投げ入れて徘徊者に扉を壊してもらうわ」
ルビィ「え……それって……徘徊者しゃんをこっちから呼ぶってこと!?」
善子「ええ、その通りよ」
ルビィ「ええっ!?」
善子「たしかにリスキーだけど、成功すれば探索が楽になるわ」
善子「ここはやるわよ」
ルビィ「そんな……」
────
──
善子「扉の隙間から中が見えるから、ここから爆竹を投げ入れるわ」
善子「ルビィ、逃走経路は確認できた?」
ルビィ「うん、あっちに行けば大丈夫だよ」
善子「徘徊者が来たらやるわよ……」
善子「ちょうどいいところに来たわね……」
ルビィ「……」ゴクリ
善子「爆竹を投げ入れるわよ」ヒョイ
善子「音が鳴ったらあっちの部屋に隠れるわよ」
ルビィ「うん」
善子「隠れるわよ!」
ルビィ「うん!」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
シャン……シャン……シャンシャン……シャン……
シャン……シャン……シャン……シャン……
善子(こっちに確認に来たわね……)
ルビィ(うん……)
ドン!!ドン!!ドン!!バアアァァァァァンンンン!!!!
シャン……シャン……
善子(思った通り部屋を開けてくれたわね)
ルビィ(すごい力だね)
善子(ええ、襲われたらひとたまりもないわ)
シャン……シャン……
善子「遠ざかっていく……」
ルビィ「誰もいなかったからだね」
善子「これで部屋に入れるわ」
ルビィ「ひぃぃ……」
善子「ものすごい力だわ……とにかく勾玉ゲットよ……」
ルビィ「これで4つ……」
善子「あと1つね」
ルビィ「なんとなくだけど、そんな気がしたんだ」
善子「……それにかけてみましょう」
善子「そうだと信じて……このコンパスが指すほうに進むわ」
ルビィ「え……?」
善子「もし本当に出口ならそのまま脱出できるわ」
ルビィ「うん……そうだね……」
ルビィ「そうだと信じて進もう……」
善子「ええ……」
善子「この棚には……」
善子「うーん……特にないわね」
ルビィ「うゆ」
ルビィ「どうしたの?」
善子「青く光る石があるわ」
ルビィ「石?」
善子「袋にいくつか入ってる」
善子「分からないわ……」
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
善子「相変わらずどこか走ってる音がするわね」
ルビィ「ろうそくの火が揺らめいてるよ」
善子「じゃあ近くにいるわね……隠れましょうか」
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ
善子「プレッシャーすごいわね」
ルビィ「あ、ろうそくの火が消えた」
善子「真っ暗…………じゃないわね」
ルビィ「え……?」
善子「敵が近づいてきても消えない光なのね」
ルビィ「どういう原理なのかな?」
善子「分からないけど、とにかく消えない光みたいね」
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ…………
善子「どこかに行ったわね……」
ルビィ「うゆ……」
ルビィ「え……?」
善子「これを使えば真っ暗な廊下でも迷わずに走れるわ」
ルビィ「でもこの光、そんなに強い光じゃないよ?」
ルビィ「あたりは真っ暗だよ?」
善子「いいえ、これは目印として使うのよ」
ルビィ「目印……?」
ルビィ「うん、道が分からなくなるよね」
善子「だから、この消えない光の石を逃走経路に置くのよ」
善子「そうすれば逃げる時に迷わずに逃げられるわ」
ルビィ「なるほどぉ」
────
──
ルビィ「うゆ」
善子「コンパスはこっちを指してるわ」
善子「この部屋は……つづらがあるわね」
善子「何かあったらこの部屋に逃げてきましょう」
ルビィ「うん」
善子「!?」
ルビィ「どうしたの善子ちゃん?」
善子「あれを見て?」
ルビィ「どれ?」
ルビィ「すごいね!! あれを取れば5つ目だよ!!」
ルビィ「ここから出られるよ!!」
善子「待って!!……何かおかしいわ」
ルビィ「え……?」
ルビィ「え……罠?」
善子「ええ……どうぞ取ってくださいって感じで置いてあるわ」
善子「あれは取りに来たところを逆に捕まえるためのトラップよ」
ルビィ「そんな……」
ルビィ「うん……」
善子「あそこに徘徊者が隠れているんじゃないかしら?」
ルビィ「え……?」
ルビィ「うん……じゃあ他の探しに行く?」
善子「いいえ、それでもあれを取るわ」
ルビィ「え……? どうやって……?」
善子「これよ……さっきのひかり石」
ルビィ「ひかり石……?」
善子「ええ、廊下にいくつか設置するわ」
善子「それで、さっきのつづらのある部屋まで走って逃げるわ」
ルビィ「ええ……怖いよ……」
善子「でもやるしかないわ……」
善子「ひかり石を置いてくるわよ」
ルビィ「え……? でも一人で部屋にいるのも怖いかな……」
善子「それじゃあ一緒に走って逃げましょう」
善子「もしトラップじゃなくて追いかけられないのなら」
善子「それでいいんですもの」
ルビィ「うん……」
善子「石も設置した……行くわよ!!」
ザァァ……
バアアアァァァァァァァンンンンンン!!!!!!
扉を開けると善子の予想通り奥の部屋から扉を蹴破り徘徊者が飛び出してきた!!
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
善子「神楽鈴の徘徊者ね!!」
善子「このまま光をたどって部屋まで逃げるわよ!!」
ルビィ「うゆ!!」
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
善子「はあッ……はあッ……」
ルビィ「はあッ……はあッ……」
ルビィ「うゆ!!」
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン
善子(まだ探してるわね……)
ルビィ(うん……)
……シャン……シャン……シャン………………
善子「見失ったようね……どこかに行ったわ」
ルビィ「はあ……」
ルビィ「やっと5つ揃うね!」
善子「まだ近くにいるかもしれないから気をつけてさっきの部屋に戻るわよ」
────
──
ルビィ「うん」
善子「奥の扉が蹴破られて粉々になってるわね」
ルビィ「本当にすごい力だね」
善子「さあ、勾玉を取るわよ!」
ルビィ「やったね!! 出口を探そう!!」
善子「ええ!!」
だが……
善子「!?!?」
ルビィ「!?!?」
善子「何の声!?」
ルビィ「うゆ……なんかすごく嫌な予感がするよ……」
おぞましい殺気が近づいてくる……
ルビィ「うゆ……今までで一番危ないかも……」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
善子「何か分からないけど、こっち来てるわね!!」
ルビィ「ピギィ!! なんか怖いよぉ!!」
着物を着た女の姿をした敵が浮遊しながら迫ってきていた
甲高い叫び声を上げながらまっすぐと二人に接近してくる
ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」
善子「逃げるわよルビィ!!!!」
ルビィ「ハアッ!! ハアッ!! ハアッ!!」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
善子「たぶんダメだろうけど!!」
バアアァァァァァンンンン!!!!
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
ルビィ「ハアッ!! ハアッ!!」
ルビィ「ふぇぇ……」
ルビィは恐怖のあまり後ろを振り向く……
すると……
善子「どうしたの!?」
ルビィ「あの敵しゃん見てると……苦しくなってきて」
善子「見ちゃダメよ!! 命を持っていかれるわ!!」
善子「絶対に振り向いちゃダメ!!」
善子「前だけ見て走って!!!!」
ルビィ「うゆううううう!!!!」
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
善子「ダメ!! 全然引き離せない!!」
ルビィ「うぅぅ……もうダメかも!!!」
善子「あきらめないで!!」
善子「頑張って走って!!」
ルビィ「はぁッ……はぁッ……」
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!
善子「ぐっ……」
ルビィ「もうダメだよ!! 追いつかれちゃう!!」
善子「はあッ……はあッ……!!」
ルビィは後ろを振り向くと抵抗するように古びたカメラのシャッターを押した
パシャッッ!!!!
オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!
その敵は叫び声を上げながら怯んだ
動きが止まっている今のうちなら逃げられるかもしれない
ルビィ「はあッ……はあッ……」
善子「安心しないで! おそらく動きが止まるのはほんの十数秒程度よ!!」
ルビィ「ハァッ……ハァッ……」
善子「今のうちに遠くまで逃げるわよ!!」
ルビィ「う、うゆ……」
ルビィ「はあッはあッはあッはあッ……」
善子「ぐっ……」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ああ゛ッ!!!!
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
ルビィ「はあッ……はあッ……振り向いてシャッター押したい……」
善子「ダメよ!! 使える回数はあと数回でしょ!!」
善子「それに振り向けば体力を持っていかれるわ!!」
善子「あの叫び声だけ聞いて近づいてきたその瞬間に振り向いてシャッターを押すのよ!!」
ルビィ「うゆ……怖すぎるよぉぉぉぉ!!!!」
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
ルビィ「ピギィ!! もうダメ!!!!」
ルビィが振り向くと敵は地を這いずりながら高速で接近してきていた
ルビィ「ぴぎゃぁぁぁぁああああああ!!!!!」
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
ルビィは恐怖のあまりシャッターを押す!!
パシャッッ!!!!
オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!
ルビィ「はあッ……はあッ……はあッ……!!!!」
善子「もっと遠くまで逃げるわよ!!」
ルビィ「はあッ……ぐっ……どこまで逃げればいいの!!」
善子「……ッ」
ルビィ「もう無理だよぉ!!」
善子(カメラが使えなくなれば……私たちはおしまい……)
善子(ごめんねルビィ……守ってあげられなくて……)
善子(みんな……ごめんね……)
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
善子「来てるわ!! でも振り向かないで!!」
善子「もっと引き付けて!!」
善子「そうしないと逃げられる距離が短くなるわ!!」
善子「なんとしても出口にたどり着くのよ!!」
ルビィ「はあッ……はあッ……!!」
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
善子「今よ!! シャッターを押して!!」
ルビィ「うゆ!!」
パシャッッ!!!!
オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ア゛ア゛アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!
善子(あと何回使えるかしら……)
善子(5回だとしたらあと2回)
善子(でももし3回なら……いま3回使ったから終わり……)
善子(くっ……出口は見つからない……どうしたら……)
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
善子「ルビィ!!」
ルビィ「うゆ!!」
かちゃっ……かちゃかちゃ……
善子「え……?」
ルビィ「ぴぎぃぃ!?」
善子「もうそのカメラは使えないわ!!」
ルビィ「うぇぇぇぇんんんん!! おねえちゃあああああああ!!!!」
善子「もうダメぇぇぇぇ!!!!」
あ゛あ゛あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!
善子(ごめんね……)
ドオオオォォォォォォンンンン!!!!
……
ルビィ「……え?」
ルビィ「敵しゃんの動きが……止まってる……」
善子「どういうこと……?」
??「オラが時を止めたずら」
善子・ルビィ「!?」
善子「ずら丸!!!!」
花丸「善子ちゃん、ルビィちゃん、大丈夫ずら?」
善子「どういうことなのよこれ」
花丸「話はあとずら……ここから離れるずら」
花丸「ルビィちゃんよしよしずら……」
善子「はあッ……はあッ……」
善子「とにかくここから離れましょう」
花丸「うん、出口はこっちだよ」
────
──
花丸「ここが出口ずら」
花丸「その台座の上に勾玉を5つ置いて」
善子「ええ」
ルビィ「うゆ」
花丸「そして時は動きだす」
ドオオオォォォォォォンンンン!!!!
花丸「ここまで来れば大丈夫ずら」
殺気はどこかへと消え去った……
────
──
・神楽鈴の徘徊者
・走り廻る徘徊者
・泣き声の主
・憎悪を振りまく影
────
──
善子「ええ」
善子たちは台座に勾玉を置いた
<ギィィ……
奥の扉が開いた
善子「ええ、帰るわよ」
ルビィ「うゆ」
祭壇のような部屋を進み、3人は奥の部屋の鏡の前に来た
花丸「うん……」
ルビィ「帰ろう……」
鏡が光を放つ
3人は元の世界に帰ることに成功した
善子「ここは……迷い込んだときのトンネルね……」
善子「ひどい目にあったわね」
ルビィ「うゆ……ごめんね善子ちゃん……」
花丸「二人とも無事でよかったずら」
善子「どうやって徘徊者たちの動きを止めたのよ」
花丸「それなんだけど……」
ルビィ「……??」
花丸「だから、人間をやめるしかなかった」
花丸「ごめんね二人とも……」
善子「どういう……こと……?」
どこからか取り出した能面を
自らの顔につけるのだった……
シャン…………シャン…………
おわり……?
花丸「冗談ずらよぉ~☆」
善子「~~っっ!!」ポコポコ
花丸「いたいずらよぉ善子ちゃん」
善子「びっくりしたわよ!!」
花丸「ごめんずら」
────
──
善子「夏の日差しは強烈に、私たちを日常へと引き戻した」
善子「あのとき彷徨ったあの場所は一体何だったのかしら」
善子「ずら丸は何か知っているみたいだったけど、それ以上は教えてはくれなかった」
────
──
花丸「おはよう善子ちゃん」
善子「おはようずら丸」
善子「……」
善子「今日もルビィは休み?」
花丸「うん……」
花丸「仕方ないずら……あんなことがあったんだから」
善子「そうね……元気になるといいわね」
善子「……」
善子(あれからというもの毎晩、鈴の音が聞こえる気がする)
善子(暗闇が怖いし、堕天使の話も控えているわ)
善子(どうしちゃったのかしら……)
善子「……」
花丸「……」
花丸「ルビィちゃんのお見舞いに行かない?」
善子「……そうね、行きましょうか」
────
──
ダイヤ「お二人ともルビィのお見舞いありがとうございます」
善子「ええ、当たり前じゃない」
花丸「……」
ダイヤ「こちらの部屋ですわ」
────
──
ルビィ「あ、二人とも……」
善子「ルビィ……大丈夫?」
ルビィ「うん……」
花丸「ダイヤさんにはあのこと話してないずらね?」
ルビィ「うん……話してない」
ルビィ「まだ怖いよ……」
善子「ルビィ……よく頑張ったわね」なでなで
ルビィ「うゆ……」
ルビィ「うん……ありがとう」
ルビィ「……あのね」
善子「……?」
善子「ええ、そうね」
花丸「オラもしたいずら」
────
──
善子(でも3人でいられると聞いてほっとした)
善子(この3人でよかった……)
────
──
善子「あの場所に行くことはもうないはずだ」
善子「これでよかったんだ……そう思うことにしよう」
花丸「……また、このトンネルに来ちゃったずらか?」
花丸「なんとなく善子ちゃんの様子がおかしかったから」
花丸「ここにまた来るんじゃないかなって……」
善子「ええ……実はまだちょっと怖いわ」
花丸「……たぶん」
善子「え……?」
花丸「分からないずら……もしかしたらまた呼ばれてしまうこともあるかもしれないから」
善子「そんな……」
善子「え……?」
花丸「怖いんじゃなくて……またあの場所に行きたいんじゃない?」
善子「そ、そんなはずないじゃない!!」
善子「あんなに怖い思いをしたのよ!!」
善子「え……?」
花丸「本当に怖いならもうここには二度と来ないはずだよ?」
善子「それは……」
花丸「善子ちゃん……」
善子「そんなはずないわ……でも、なんでかしら……?」
善子「そう言われると……もやもやがスッキリした気がする」
善子「もしかして本当に行きたいのかしら?」
善子「堕天使とかに憧れる私だから特別な何かに惹かれるのかしら?」
善子「でも危ないことだって分かってる」
善子「近づいちゃダメなんだって」
花丸「……」
善子「え……?」
花丸「あの化け物たちはみんな能面を被ってたよね?」
善子「えぇ……」
花丸「特別な力が手に入るかもしれないよ?」
善子「……」
花丸「オラはあのとき時間を止めたよね?」
花丸「それがこの能面の力だとしたら?」
花丸「あの徘徊者たちと同じように」
花丸「人間を超越した力を手に入れられるとしたら?」
花丸「この能面を被る?」
善子「……」
善子「……被らないわ」
花丸「……そうずらか」
善子「私は私だもの……」
花丸「分かったずら……たぶん善子ちゃんたちはあの場所には二度と行かないずら」
花丸「なんとなくだけど……」
花丸「……オラはオラずら」
花丸「善子ちゃんとルビィちゃんの友達」
花丸「二人の味方……信じて欲しいずら」
善子「……分かったわ」
善子「あんたを信じる」
花丸「ありがとう、善子ちゃん」
花丸「……それは答えられないずら」
善子「そう……私も深くは聞かないでおくわ」
花丸「オラがいま手に持ってるのは、何の力もないただの能面ずら」
善子「は?」
花丸「善子ちゃんをちょっとからかっただけずらよ」
善子「あんたねぇ……」
花丸「ルビィちゃんとお泊り会するずら」
善子「……はあ、そうね」
善子「……私も楽しみだわ」
────
──
善子「私もルビィもすっかり元気になって、ルビィもまた学校に通うようになったわ」
善子「これでまたAqoursの活動ができそうね」
善子「私たちは無事に脱出できたのだ」
善子「深い闇に鳴り響く、あの鈴の音はもう二度と聞こえることはなかった」
────
──
果南「1、2、3、4、1、2、3、4……」
果南「はい今日の練習はここまで!」
ダイヤ「皆さんお疲れ様です」
ルビィ「善子ちゃん!花丸ちゃん! 一緒に帰ろう!」
善子「えぇ」
花丸「ずら~」
千歌「うん! 帰ろう!!」
千歌「はあぁ今日も練習疲れたね!!」
────
──
曜「そういえば千歌ちゃん!」
曜「……千歌ちゃん? どうしたの?」
千歌「あの路地が気になる」
曜「え……?」
千歌「なんていうのかな、こう……」
千歌「冒険心がくすぐられる……っていうのかな」
曜「たしかに……日本の夕暮れの景色って感じ」
曜「ノスタルジックっていうのかな?」
曜「え? 危ないよ?」
千歌「大丈夫だよ、ちょっとだけ」
曜「やめようよ」
曜「もぉ~しょうがないでありますなぁ////」
千歌「わぁい♡ 曜ちゃん大好き♡」
曜「えへへへ////」
千歌「え?」
曜「……鞠莉ちゃん?」
鞠莉「その奥へ行くのはやめておきなさい」
千歌「たしかに」
鞠莉「嫌な予感がして来てみれば……」
千歌「嫌な予感……?」
鞠莉「レッツゴーよ!!」
千歌「あ、待ってよぉぉ」
曜「待ってぇ、千歌ちゃん!」
────
──
あなた(ゲームのプレイヤー)はある路地の入口でふと足を止めた
夕立の後の蒸し暑い湿気の中
奥から冷たい風が吹き抜けてくる
ふと幼いころの夏の日を思い出し
心の奥にしまっていた冒険心をくすぐられたあなたは
さびれた路地へと足を踏み入れた……
────
──
ありがとうございました。
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