ああ、図書館から借りた本、明日までに返さなきゃいけないんだっけ。でも、雨が振るって予報だし、面倒くさいな。いいや、今度の休みに返しに行こう。
と思っていたら忘れてしまい、図書館から催促の電話を受け慌てて返しに行った、という経験はないだろうか。ないという人はえらい。割とよくあることなのだ。
イギリスやアメリカでは、こういう事態を避けるために、図書館の本にも延滞料がかかる場合が多い。だが、そのことで図書館から足が遠のいてしまう利用者もいるという、痛し痒しの状態になっているとも。
そこで、アメリカの図書館では対策としてこんなプログラムを打ち出している。4月の「図書館ウィーク」の期間には、延滞料を現金ではなく、食品で支払うことができるというものだ。
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公立の図書館でも延滞料がかかる
日本の公立図書館では採られていない延滞料制度だが、アメリカでは公立・私立を問わず、ほとんどの図書館で採用されている。
延滞料そのものは大した金額ではないし、レンタルDVDのように払わないと雪だるま的に利息が膨らんでいくといった性質のものでもない。
しかし、わずかであれ「現金を支払わなくてはならない」となると、利用者を心理的に遠ざけるようで、本を返してもらうという図書館側の目的とは矛盾した結果になってしまう。
この場合、何か別の手段で本を返却してもらえればいい、というわけで、大学などでは、図書館本を全部返却し、延滞金を清算していない限り、卒業資格を与えない、というところも多い。国内にも少数だがそういう大学はある。
だが、そういう強権的な手段を持たない一般の図書館は、逆に、心理的なハードルを下げるという方法をとった。それが「食品による延滞金の支払いプログラム」である。
延滞料を食品・ペットフードで代用する仕組み
支払いに使える食品には、いくつかの制限がある。
まず、生鮮食品や傷みやすいものはダメ、開封済みのもの、別の容器に移し替えたものもダメ。消費期限が切れたものは、もちろんダメ。缶詰の場合には、ラベルがはがれていないこと。
要は、安心して他人に食べさせることができるもの、というわけだ。これに加えて、一部の図書館では「ガラス瓶に入ったもの」を危険だからという理由で取り扱わない。
持参された食品は、内容や量を問わず、ひとつにつき1ドル(約112円)の計算で、延滞料金から差し引かれる。集まった食品は、図書館から地元のフードバンクに提供される。
一部の図書館では人間用だけでなくペット用の食品も受け入れている。扱いは人間のものと同様で、この場合は、地元の動物保護団体に送られる。
また、本を延滞していない人でも、食品を持参して寄付してくれるのは大歓迎、とのことだ。
一石三鳥になるプログラム
食品で支払うことができるのは「延滞料」だけで、本を汚したり失くしたりした場合の弁償には使えない。このふたつは全然違う種類の費用だからだ。
「弁償」の必要がある場合、それは図書館がその本を買いなおさなければいけないということを意味する。そのための費用をフードバンクに提供してしまうわけには行かない。
だが、「延滞金」は本来、入ってくる想定がされていない、本が期限内に返却されれば入ってこないはずのお金だ。これを食品に置き換えることで、一石三鳥の効果を狙っているのである。
つまり、利用者は心理的な負担がなくなる上に、キッチンの整理もできる(かも知れない)、図書館は本を返却してもらえる、フードバンクは食料の寄付を受け取れるという、「三方一両損」ならぬ「三方一両得」なのだ。
プログラムの日程は図書館ごとに異なるが、4月7日〜13日の「図書館ウィーク」を中心に、1〜2週間、4月中に行われる。
References:The Danville News / Record Online / Wikipedia など / written by K.Y.K. / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
食品による延滞金の支払いプログラム
断言する
全く機能しない
まともな人は期限内に返すし延滞金も払う
1ドル以下で購入できるゴミみたいな食料品の山になる
そんなゴミの消費期限の管理も発生する
一体どこのバカがこんなことを考えたのか顔を見てみたいものだ
2. 匿名処理班
まあ、本を期日までに返せばいいっていうだけの話ですが。
3. 匿名処理班
悪くないかもしれない。
でもやっぱり締め切りは守ろうね。
4. 匿名処理班
総合的に観て現金が最も便利だったから
現金社会になったわけで。
現金がダメなら電子マネーもありだけど
電子マネーは電子マネー所有証明のためのツールが
現金の財布より厄介なシロモノだからね。
5. 匿名処理班
>>1
批判だけなら誰でもできるわな
6. 匿名処理班
※1
・世の中はまともな人(品行方正で決められたことは絶対守る)ばかりじゃない、あるいは事情で期限内に返却できなかった人も一定数いる
・一般的な食料品は品質管理された流通から離れた時点で、金銭的価値はガタ落ちになる。缶詰を例にとれば、引取料1ドルなんて高い方じゃないか
・引き取られた食品の管理はフードバンクが担う(日常業務の範疇内)と思われる
うまく機能するかどうか調べるための、1週間限定の社会実験みたいなものでしょ?
改善点をあげて定着させるか、廃止するかはそれからの話。
買ったまま気が向かずに、後ろめたい気持ちで、捨てちゃうかどうか悩んでる食品がどの家にもひとつふたつあるでしょ。
そんな缶詰を眺めてて、どこかのおバカがふと思いつちゃったシステムでしょうな。
でもおバカは「誰かさん」と違って、まず行動に移すからね。
7. 匿名処理班
食料で払うとか北斗の拳の世界かw
8. 匿名処理班
※1
図書館ウィーク中だけの特別措置だから、あくまでも実験的な試みでしょう。
借りたものを遅れて返したとき、「ゴメン」とお詫びのお菓子などをつけて返してくる人がいるように、「モノ」でチャラにしようとする人は必ず存在する。
100円はどこまで行っても100円だけど、商品の売値は店によって違う。コンビニで200円の鯖缶がスーパーの特売で119円だったりすることもある。つまり商品は価値(価格帯)にブレがあるので、「いくらか」が見えにくい。安値で購入した人にとっては「物納」は現金よりお得なんだし、うちに余ってる食べ物を献上すれば遅延を見逃してもらえる(悪い言い方をすれば食べ物で釣られる)なら、これさいわいと利用する人はいると思いますよ。
要は本を期限内、期限を過ぎたらなるべく早く返してもらうのが目的。図書館側としては「遅延料などいらぬ。期限内に返してくれるのが一番」なのだから。
賞味期限が切れてない、未開封であるなど、商品としての価値が残っているものに限定しているんだし、そーんなに性悪説に立って「機能しない!」とか言いきらなくてもいいんじゃないかなあ。実際機能しなかったら別の方法考えればいいだけなんだし。
9. 匿名処理班
古本とかの方が利用者も処分出来て良さそうな気もしたけれど
本来余らせて捨てられるはずの食糧で、もっと直接的に誰かが救われるのなら素敵な取り組みだと思う
10. 匿名処理班
こんな仕組みがあったのか
リンク記事だけでも人気があるとかすでに集まった写真は見られるけれどYouTubeで‘Food for Fines’探してみると古いところで10年前。
すでに歴史も実績もあるようだけれどWikipedia(en)の「Library fine」では代替案のひとつとしてすでに一般的であるようなことのみ書いてはあるものの詳しくはわからず。そもそもどこの国でいつから始まったものなのか歴史を知りたい。
11. 匿名処理班
冷蔵庫の奥に眠っている1年越しの納豆でどうかね?
12.