国連食糧農業機構の調査によると、1990年以降、地球上から1億2,900万ヘクタールの森林面積が失われているそうだ。
無計画な森林伐採、環境破壊により、日々、無数の動植物が生息地を失っている。地球温暖化の原因の一つとされている温室効果ガスも濃度を増している。
壊すのは簡単でも、それをもとに戻すのは至難の業だ。莫大な資金や年月と揺るぎない情熱と忍耐力が必要となってくる。
だが熱い思いでそれを達成させた人がいる。1組のブラジル人夫婦は、20年近い年月をかけ、森林伐採による荒れ果てた土地に森を蘇らせたのだ。
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故郷に帰り、荒廃した森林を見てショックを受ける
ブラジル・ミナスジェライス州出身の写真家セバスチャン・リベイロ・サルガドさんは、フォトジャーナリストとしても活躍し、複数の本を出版している世界的に有名な人物だ。
1990年初めにルワンダ虐殺の取材をし、現地の惨状に心身ともに疲れ切ったセバスチャンさんは、妻のレリアさんとともに、1994年、癒しを求めて、緑豊かな熱帯雨林に覆われたブラジルの故郷に戻った。
ところが、わずか数年で美しかったリオドース渓谷の大西洋岸森林は、不毛の荒れ地と化し、野生動物の姿が消えていた。
2015年に英メディア『The Guardian』で、セバスチャンさんはこのように語っている。
私が当時心身ともに病んでいたように、故郷の土地も病んでいたことを知って、大きなショックを受けました。木々は土地の0.5%ほどしか生えておらず、全てが破壊されていたのです。
自然はきっと蘇る。再び森を蘇らせる活動を開始
ただただ悲しい。その感情だけで止まってしまう人もいるだろう。だがセバスチャンさんは違った。
母なる自然は強い魂を持っている。正しい条件の下で正しい方法を行えば、きっと生命を取り戻し復活させることができる。
妻のレリアさんと共に、故郷の森を必ず復活させることができると信じたのだ。
夫婦は、1998年に非営利団体『Instituto Terra』を立ち上げ、本格的に森林への復活を求めて動き出した。
夫妻は、24人の従業員や大勢のボランティアと一緒に、木の1本1本を植える作業に尽力。とはいえ、森を再生するとなると莫大な費用がかかる。
『Instituto Terra』は、財団や民間企業、更に国や州政府などから寄付を集めただけでなく、しばしば自己資金で補いながらプロジェクトを続行させてきた。
資金不足となった2005年には、セバスチャンさんは写真家にとって命ともいえる大切なライカM7のカメラをオークションにかけ、107,500ドル(約1,200万円)で売れると、3万本以上の植林資金に充てた。
20年近くかけ、400万本の苗木を植える
「赤ちゃんを育てるように、木々を育ててきた」と話すセバスチャンさん。約20年という長きにわたる森林復活への道のりは、決して容易ではなかった。
最初の植え付け後、5分の3の種子が地面の中でアリに食べられ死んでしまった。セバスチャンさんたちは、試行錯誤を重ねながらアリによる被害を防いで種を守り、本来の土地に属していない森林の種子や苗木は植えずに、土地固有の原生林のみの苗木を植え続けた。
そして、驚くべき成果が現れたのである。
森に命が吹き込まれ、野生動物たちが戻ってきた
1502エーカー(607万平方メートル)もの土地を、自然豊かな森に蘇らせることに成功したのである。
沈黙の荒れ地だった土地は緑で覆われ、再び野生生物が戻ってきた。172種類の鳥や33種類の哺乳類、293種類の植物、そして15種類の両生類や爬虫類などが生息し、森からは鳥のさえずりや虫の鳴き声が聞こえるようになった。
CO2を酸素に変換することができるのは、木だ。植林は、地域の環境や気候に影響を与え、より多くの降雨と涼しい気候をもたらした。それにより、枯渇していた8つの天然温泉をも復活させることができた。
毎分20リットルの水を湧かせるこの天然温泉は、干ばつが発生しやすい地域に必要な水分補給を提供することができる。
また、水が急速に海に流れてしまう不毛な土壌とは対照的に、森林は、その上に降る雨の最大60%を保持することができる。これにより、セバスチャンさんが子供の頃遊んでいた小川さえも復活した。
セバスチャンさんは、自然の再生に携わったことで自身も「生き返った気持ちなった」と喜びを露わにした。
強い信念とたゆまぬ尽力が自然を呼び戻す
『Instituto Terra』は、ブラジルの中でも決して大きな団体ではない。しかし、自然の復活という命のリサイクルを成功させたこのプロジェクトは、積極的なエコ活動の具体例としてだけでなく、正しい方法によりいかに環境が早く回復できるかということを示したことで、多くの人をインスパイアした。
決して容易くはなく、長い道のりを要することは確かだ。だが、セバスチャンさんとレリアさんの信念に沿うように、20年の月日をかけて母なる自然は活力を証明し、実質的に死んだ亜熱帯の熱帯雨林を生き返らせることができたこのプロジェクトは、世界最大の環境保護への取り組みの1つとなった。
Instituto Terra - Jan 2019
これを知った人々からは、多くの称賛の声が寄せられた。
・素晴らしい努力だ。
・自分もブラジル人だが、このことをとても誇りに思う。
・地球温暖化に抗うには、植林は最も効果的な方法のひとつだ。彼らはそれをやってのけた。まさにヒーローだ。
・この世界には、セバスチャンさんたちのような人がもっと必要ね。
・心が温かくなった。
現在90%の緑あふれる森に復活しているというこの地域は、最近になって私有自然遺産保護地区に指定された。
誰もがセバスチャンさんたちのようになれるのだ。彼らの功績は人類の歴史の1つとして、ドキュメンタリー映像に記録された。
The Salt of the Earth - Official Trailer
References:Instituto Terra / scienceinsanity/ written by Scarlet / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
ビフォーアフターの写真が自分の想像をはるかに超えててびびった。
2. 通りすがり
私ならデタラメにタケノコとか植えてしまうから環境の壊しかねないのだが
手を抜かない人間が努力すれば復元可能な環境なのだろう
しかしブラジルの生き物怖い((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
3. 匿名処理班
おや、こんなところにもエルゼアール・ブフィエがいる。
4. 匿名処理班
まるでブラジル版の杉山龍丸だわw
彼も龍丸と同じく、やはりユーカリの苗を植樹したんだろうな。
5. 匿名処理班
カナダのように伐採後の植林を法律で義務付けない限り、個人の努力はほとんど無力
火事を小便で消すようなもの
6. 匿名処理班
昔さ、「木を植えた男」って言うアニメ映画があったね、あの作品を思い出したよ。
7. 匿名処理班
いいなー。
山桜やナラの仲間を植えたい。
実のなる樹、葉の落ちる樹が、今の山には必要。
8.
9. 匿名処理班
人が植えたら人工じゃないの?
(ゲスな質問)
10. 匿名処理班
一方で鳥取県はほっといたら勝手に緑化しちゃう砂丘の草を抜くのを頑張ってる
11. 匿名処理班
こうしてる間にも毎秒40個の
サッカースタジアムが完成してるんだよね…。
12. 匿名処理班
アレ?これ前も投稿しませんでしたっけ?
読んだ記憶あるような…
※コメントには載せなくてけっこうです。
13. 匿名処理班
木を植えた男を知ってる人がいて嬉しい
14.
15.
16. 匿名処理班
偉い!偉いね!
みんなも熱帯雨林産の作物などの利用は控えるのはいいことだ…!
>>9
「土地固有の原生林のみの苗木のみ」を植えてるからね。人工林であるけれど、ちゃんと生きた森林で、動植物が戻れる。
単一植生のプランテーションな森林はダメだね・・・・死んでる。
17. 匿名処理班
クロノトリガーでさえロボットだったのにこの人は生身でやったんか
凄すぎでしょ
18. 匿名処理班
『木を植えた男』だな
19. 匿名処理班
木が素直に生えてくれたって事は土壌もよかったんだね
20. 匿名処理班
クロノトリガー思い出した
あっちは400年だけど
21. 匿名処理班
リアル木を植えた男だ
22. 匿名処理班
※10
小学校の先生にそれは砂防林のせいだと聞いたなあ
23. 匿名処理班
人類を絶滅させれば簡単に緑あふれる地球に戻れるのに
24. 匿名処理班
おーサルガドの自伝に書いてたやつだ
こんなに大きくなってて嬉しい
25. 匿名処理班
※9
だったらなんなんだ?
この夫婦と夫婦がした事の素晴らしさは変わらない
26. 匿名処理班
たしかインドだったかでも自分の財産注ぎ込んで木を植え続けた日本人が居た
27. 匿名処理班
※12 それはもしかしてインド人のカップルの話かな?
失われた自然と野生動物を取り戻すために人生をささげたカップル。26年後、その願いがかなって豊かな森へ(インド)
karapaia.com/archives/52240364.html
世界には自然を取り戻すために頑張ってる人がいるんだね。
28. 匿名処理班
グーグルマップで世界の砂漠地帯の海岸線を見てると無性にマングローブを植えたくなる
マンザナール・プロジェクトみたいに
29. 匿名処理班
凄い。素直に尊敬するわ。
30. 匿名処理班
>>10
ええ…
31. 匿名処理班
これもすごいけど、ブラジルは日系移民による開墾も凄まじいものがあるよな
32. 匿名処理班
鳥取の緑化は防風林、防砂林というより河川改修で砂が流入しなくなったから
そもそも全国的に砂浜が消えるのは土砂の流入が制限されてるから
流入より緑化が優ってしまう
33. 匿名処理班
きちんと報酬を得られているといいな…
本来は国の事業としてやってもいいことなのに私財をなげうってまで20年続けて結果を出したのは素晴らしいね
34. 匿名処理班
すげえ
ただただすごい