いたるところに監視カメラがある時代だ。AI(人工知能)の画像認識技術は普遍的なものとなり、カメラに映る人物を特定するのも容易となった。
今や私たちは、お店や職場にいる間にもAIによって顔や体を見つめられているかもしれないのだ。
国によっては、こうした技術を警察や監視体制の中に積極的に採用しようとするところもある。まさにビッグブラザーが見ているような社会だ。
なんだか息苦しくなってくる話だが、ベルギーのルーヴェン・カトリック大学の研究者によれば、ちょっとしたカラーの印刷物でかんたんにAI監視システムの目を騙せるという。
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カラープリントを持つとAIに人物認証されない
実験に用いられたのは、オープンソースの物体認識システムとしてよく使われる「YOLO v2」である。
動画では、まず、左側の男性はYOLOによって「人(person)」と認識されているが、右側の男性はまったく無視されてしまっている。
両者の違いは、右側の男性がお腹のところに40×40センチのカラーの印刷物を持っていることだ。そして、右の男性がためしにその印刷物をくるりと回して真っ白な裏側にしてみると、ただちに人と認識された。
ちなみに鳥の絵柄入りのTシャツを着た場合には、人ではなく鳥と認識されたりするそうだ。
Generating adversarial patches against YOLOv2
AIの盲点、ブラックボックス
研究者によれば、なぜこんなことでAIが人を認識できなくなるのかはっきりとはわからないそうだ。
ほとんどのAIの認識能力は、ニューラルネットワークに物体のサンプルを与え、それがきちんと対象を判断できるようになるまでパラメーターを調整することで完成される。
ところが、このパラメーターは数百万という膨大なものである。
そのため、AIの訓練を行なっている人にとってすらも、その中身はブラックボックス化しており、具体的にどのように物体を認識しているのかわからないのだ。
さあ、いたちごっこの始まりだ
これによるセキュリティの穴は結構深刻だ。
今回、カラーの印刷物でAIをごまかせるという欠陥が明らかになった。だから、その印刷物を持っていても人であるとAIに教えることはできるだろう。
なのでこの動画が出回るころには既に対処されているはずだ。
しかし、ほかにも欠陥があるだろうことはまず間違いない。そしてAIがブラックボックスと化してしまっている以上、それらすべての欠陥を修正することは至難の技である。
AIを騙す方法はほかにもあるはずだ。
それが発見されれば修正される。だがまた別の欠陥が――。
さあ、いたちごっこのはじまりだ。
References:KU Leuven researchers make themselves invisible to AI cameras – KU Leuven News/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
これに関しては、AIの認識を、瞬間ではなく時間軸を持って緩やかにすることで、
静止画と動画を切り分けられるからどうにかなるだろうけど。
人間は、なぜ「紙を持った人間」を、静止画からきちんと認識できるんだろう。
2. 匿名処理班
我ら大勢なる故に(´・ω・`)
3. 匿名処理班
上半身と下半身が写真によって分断されてしまっているから、人として認識されないのかな。個々のパーツがつながっていないように見える工夫をすれば、AIを騙せるのかな。
4. 匿名処理班
こういうの見るとAIが人間を支配する――なんてこと起こらないのでは?と思っちゃうのは早計すぎる?
5. 匿名処理班
妙な印刷物でカモフラージュするスパイや殺し屋の映画が出てくるのかな
6. 匿名処理班
少し動かしただけで認識が復活するなら
画面を横切る時にどこかで補足されるだろ
7. 通りすがり
>>3
AIに最適化された迷彩を作る事は可能
しかし運営さんと貴方の言う通り迷彩を見破る様にする事も後手から可能
運営さんの考えるのいたちごっこになるにはちょっと難しい
繰り返してるうちに最終的には人間の出来る事は学習させられ予測がたってしまう
人間である事を排除してデザインが特殊な機械を潜り込ませるとかの話しになってしまう
8. 匿名処理班
※4
今後一世紀くらいは無理だと思う、やってみて失敗しちゃったって例が続くと思うよ。
全ての物質(生物)の構造、機能、動き、日照や気候、環境による変化、予想される重なりからターゲットを選り分ける、これらが数百万程度の観察で完遂出来るとは思えない。
9. 匿名処理班
そもそも人間がどうやって人や物を認識してるのかというのかというのを未だに理解できていないって事だよな
10. 匿名処理班
Catch me. If you can.
11. 匿名処理班
逆にAIにしか認識できない何かを感知することもあると
12. 匿名処理班
モデルなんかは町中で全身写った広告とかあるけれど、ああいうのを人間だと誤認したりはしないのだろうか?
13. 匿名処理班
AIはノイマン型プログラムではないから
修正が簡単にはできないんですね
ブラックボックス化はこわいですね。
14.
15. 匿名処理班
※1
もしかするとこの撮影した場所にいたのは一人で
もう一人は精巧な合成かもしれない
16. 匿名処理班
んじゃプリントTシャツ売れば大儲け出来るってこと!?
17. 匿名処理班
人間には認識できるけどAIには認識できない、まさにこの状況を描いたアニメがありましてね。
『電脳コイル』というのですが。
2007年の作品でございます。
18. 匿名処理班
優秀な御子息を持つかもしれない貴方に朗報!
このお札でAI搭載ターミネーターから守ります!!
「シュワルツェネッガー要らず」今なら更に1枚付けてこのお値段!
19. 匿名処理班
子供が鳥の写真を見て「あ!鳥さんだ!うふふ」って言ってるみたいだね。
人によっては「鳥の写真」や「写真」と言うのかもしれない。
興味や触れてきた環境の差で認知の優先順位がひっくり返っちゃうの。
AIにとって人間って写真よりも認識しにくいものなのかな?(笑)
20. 匿名処理班
さっそくこの写真でTシャツ作ろう
21. 匿名処理班
こういう柄のTシャツでいんじゃない?
いろいろ試せそうで面白
22. 匿名処理班
でっかいポスターを持ってる奴があやしい!
23. 匿名処理班
こんなのAIの進化の過程でしかないんじゃないの?
基本のアルゴリズム作った人ならすぐに修正可能でしょう
24. 匿名処理班
人物の写真やイラストを除外する機能によって持っている人物も写真の一部として処理されているんだと思う
25. みあきち
※5
ゴルゴの「BEHOLDER」で金で雇った少年に、街中に自分の顔写真を貼らせて
顔認証システムを攪乱してた
現実のシステムでもそうなるかはとにかく、仕組み的にはあり得そうだ。
26. 匿名処理班
萌えキャラがプリントされたTシャツを着ればいいのか
27. 匿名処理班
※23
今のAIのトレンドはアルゴリズムじゃなくて、力業で「それっぽい」パラメータを
捜すことだから、簡単には修正できない
28. 匿名処理班
中華人民共和国では、実際に活用されてるもんな
29.
30. 匿名処理班
大阪のおばちゃんはネコ科動物として判定されるんだろうか?
31. じょん・すみす
AI:「人間さん、これなんだろ?
人間:「あぁ、これは問題無い
なんて事になるんですかね?
32. 匿名処理班
人が写った写真に「人間には判別できるけどAIには判別できない加工」を施して再度学習させれば認識できるようになるんじゃないかな。
こればかりはひたすらAIが認識できなくなるパターンの作成と人力でのラベル付で対応するしかなさそう。
33. 匿名処理班
※4
支配まではしなくてもじきに思考の大部分を占める
ぐぐったら最初に出てくるものは誰が探してる?
34. 匿名処理班
AIの分際で学習能力ゼロ?
看板下ろせ