GeorgiosArt/iStock
イタリアのルネッサンス期を代表する芸術家、レオナルド・ダ・ヴィンチ。今年で没後500年となる。
「モナリザ」や「最後の晩餐」などの芸術作品はもちろん、解剖学や幾何学、天文学、地質学など多岐にわたる分野で顕著な業績や記録を残したことから、「万能の天才」と呼ばれ、死没から500年経ってもいまだ多くの人々が彼を研究し続けている。
様々な分野への好奇心が旺盛だったとされるレオナルドは、かねてからの研究で発達障害の一種である、ADHD(注意欠陥・多動性障害)ではないかという推測がなされていた。
今回、イギリスの研究者らが発表した研究結果はそれを裏付けるもので、レオナルドはADHD(注意欠陥・多動性障害)だったがゆえに、手掛けた作品のほとんどが最後まで完成されることがなかった可能性があるという。
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レオナルド・ダ・ヴィンチにおけるADHDの兆候
ADHDとは多動性や衝動性、また不注意を症状の特徴とする神経発達症もしくは行動障害の一種である。
自閉症やADHDなど神経発達状態の治療を専門としているキングス・カレッジ・ロンドンのマルコ・カターニ教授は、自身の患者を観察しつづけた結果、レオナルドもADHDだった可能性が高いという結論に至ったようだ。
死後500年も経っている人物の診断を下すことは不可能ですが、私は彼が作品の完成に苦労していたのは、ADHDを抱えていたからだと説明するには最も説得力があり、科学的にももっともらしい仮説だと確信しています(マルコ・カターニ教授)
過去の記録によると、レオナルドは企画を計画するのに過度の時間を費やしましたが、忍耐力には欠けていたことが示されています。
レオナルドの気質と、奇妙で気まぐれな彼の才能の側面は、ADHDによるものだと推測されます。
・枠にとらわれない思考と創造力。ADHD(注意欠陥・多動症)の利点と向いている職業に関する研究(米研究) : カラパイア
研究によると、レオナルドは目の前のタスクに集中する困難を幼年期から抱えていたそうだ。
例えば、「モナリザ」は1503年から晩年1519年にかけて手掛けられた作品だが、それだけの年月をかけても、決して完成されることはなかった。
レオナルドに詳しい伝記作家やレオナルドと同世代だった人々、更にはルネサンス期のローマ教皇レオ10世の話では、当時のレオナルドは明らかに大部分の人とは異なる常軌を逸した態度が目立ったことも記録として残されている。
また頻繁に移り気で、目の前のタスクに集中できず次のタスクへと簡単に気が逸れるという行為を繰り返し、ほとんど眠らず、短い昼寝のサイクルを繰り返すことで十分な休息を取り、夜通し仕事をしていたと考えられている。
その他にも失読症、右脳で言語を支配し左利きという点でも、レオナルドに全て当てはまるという。
特に、一般人口のわずか5%未満に見られる脳内の言語の逆右半球優位性は、レオナルドが65歳の時に深刻な左半球脳卒中を起こした際に、言語能力に全く影響を及ぼさなかったことから、そのように示唆されている。
未完の作品『荒野の聖ヒエロニムス』/public domain
未完の作品が多いのはADHDと関連性が?
過去に、レオナルド・ダ・ヴィンチを研究した他の科学者は、「レオナルド・ダ・ヴィンチの物語はパラドックスの1つである」と述べている。
解剖学や自然哲学、そして驚異的な芸術記録を残した一方で、彼は多くの作品を完成させることに失敗したからだ。
今回研究に携わったカターニ教授は、次のように語っている。
ADHDはポジティブな効果をもたらすことが可能です。例えば、心をさまよわせることで創造性と独創性に燃料を供給することができます。
ですが、創造的なプロセスの初期段階ではこれが有益となっても、タスクを完了させるまでに何度も気が散ってしまうと、結局その特性が作業を妨げることになるのです。
レオナルド・ダ・ヴィンチの心の中の最も独特で破壊的な側面は、おそらく彼の貪欲な好奇心であり、それが創造性を推進し、一方で集中力を欠く行為に繋がったのでしょう。
このことは、作品を完成させられないという彼の慢性的な先延ばし癖を説明しています。それと同様に、ADHDが彼の並外れた創造性の要因となり、芸術と科学に多くの業績を残す結果となったことも示しています。
子宮内の胎児が描かれた手稿(1510年頃)ロイヤル・コレクション(ウィンザー城)
ADHDであるということ
ADHDは比較的最近になって定義された診断であるため、突き止めるのは容易なことではない。また、子供より大人にADHDを見つけることは更に困難と言われている。
ADHDにも様々なタイプがある。環境や遺伝など、他にも様々な要因が絡み合っていて、それが長所になっているのか、短所になっているのかは個人差が大きい。
結局のところ、5世紀以上も前に生存していたレオナルド・ダ・ヴィンチとADHDの関連性などというものは、タイムマシーンでもない限り正確に知ることなどできないのだろう。
例え彼がADHDであったとしても、それは彼のほんの1面を表すだけにすぎない。その人並外れた才能は、他の要因と複雑に絡み合うことで発現した奇跡なのかもしれない。ただしADHDであったとしたら、その苦労もあったであろうことは推測できる。
・レオナルド・ダ・ヴィンチの「やることリスト」が壮大すぎて、あらやだ不思議!自分のやるべきことが簡単に思えてきた。 : カラパイア
研究者たちは今もなお、彼の才能を理解するため日々研究に勤しんでいる。
なおこの研究は、神経学情報サイト『Brain』に発表された。
References:These Scientists Think Leonardo Da Vinci May Have Had ADHD
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コメント
1. みあきち
「と学会」の「トンデモ本の世界」シリーズので、「歴史上の人物を片っ端から『喧嘩脳』と断定しまくる著者」がいたのを、「死後500年も経っている人物の診断を下す」(のは不可能)という記述で思い出した。
作品に未完成のが多いというので「探ふけ」で予測変換に上った、灼眼のシャナの登場人物の一人、”探耽求究(ダンタリオン、通称・教授)”も連想するな。
2. 匿名処理班
LDは確かだね。
3. 匿名処理班
俺も未完の小説や漫画がたくさんある
仲間だな😄
4. 匿名処理班
発達”障害”っていう考え方を見直す時期に来てると思うな。
非定型的な発達と捉えて、ADHDやASDの人が活躍できる国になる事を望む。
日本が職人・技術大国だった時代には少なからずこういった変わり者と呼ばれる人たちの貢献があった筈で、発達障害が活き活きと暮らせる世の中を作ることは日本という国の再興にも繋がるかもしれない。
5.
6. 匿名処理班
まあ大天才は必ずなにかしら問題あるわな
7. 匿名処理班
緻密なスケッチとか見てるとADHDの注意散漫な
感じとはどうも違うし、どっちかっていうと
アスペルガー的な自閉症の拘りを感じるんだよなぁ。
8. 匿名処理班
※4
だよね
職人ってコミュ力に振らずに集中力とかに全振りした人なんじゃないか
現代の価値(正常?)基準が如何に狭いかって事かもな
9. 匿名処理班
>>7
いや、ADHDなら緻密なスケッチにはADHDの過集中状態が当てはまるのでは
10. 匿名処理班
※6
馬鹿と天才は紙一重すな
11. 匿名処理班
ADHDって20人に1人、つまり1クラスに1〜2人は居るそんなに珍しくない発達障害。
彼がそうではなかったとは言い切れないよ。
12. 匿名処理班
天才だと特筆した分野で頭角を現しやすいんだろうな、それしかする事ないんだし。興味を持つととんでもない解決方法や解答を編み出す。ただ、情報量が増えた現代だと役に立たなそうw
13. 匿名処理班
アインシュタインもサヴァンじゃなかったっけ
紙一重って事だな
14. 匿名処理班
と言うことは夢枕獏先生と冬目景先生もまさか…
15. 匿名処理班
ライバルのミケランジェロ先生は逆にくっそ仕事速いタイプだけど発達障害かもと言われてるで、症状は千差万別だからな
16. 匿名処理班
>>9
俺もADHDで職場にも何人かいるけど、過集中はするけど
字や絵は圧倒的に汚いか大雑把な感じ。
モナリザの画風だとアスペルガーの要素の方が強いかな?って思った。
でもアスペルガーの人はADHDも兼ねてる事が多いからダヴィンチも発達障害であった可能性はあるとも思う。
17. 匿名処理班
忍耐力に欠けていながら500年先にも通用する技術を磨き上げたと言う訳か
推測も結構だが、技術というものがどういうものかという事を学者様方は少し知って頂きたいものだ
18. 匿名処理班
信長が躁病だとか昔あったりしたけど…
こういうことは確かめようのない過去より
現在未来を考えたほうがよさそう
19.
20. 匿名処理班
もっと根本的な精神疾患持ちだと思うんだけどなぁ
21. 匿名処理班
>>16
ADHDのイラストレーターだけどプロにめちゃくちゃ多いよ。その人たちは絵や字をかくことが興味の対象じゃないんじゃ?
不器用だけど好きなことだけは過剰に集中するのが特性だから。
22. 匿名処理班
行動障害であろうとなかろうと、
職人気質とアイデアマンの両立は難しそうだな
仮にそれが成立しても、また違う問題が出てきてで苦しみそうだ…