「少子化」という現象に悩んでいるのは、日本ばかりではない。いや、人類に限ったことでもない。数多くの生命が「種の減少」という危機を迎えている。
北アメリカの固有種である「ラスティパッチド・バンブルビー」というマルハナバチの一種もそうだ。既に危機的状態にあり、IUCNのレッドリストで「絶滅寸前種」に指定された。
ハチは地球の生態系を維持していく上で貴重な役割を果たしている。世界各国でハチを保護する取り組みがおこなわれているが(関連記事)、今回、アメリカ・ミネソタ州では、「自宅の庭にハチが生息しやすい環境を整える」ための補助金が下りるようになるという。
スポンサードリンク
絶滅寸前のラスティパッチド・バンブルビー
「ラスティパッチド・バンブルビー」は、日本語に直訳すると「サビ色まだらマルハナバチ」となり、名前の通り、オスの背中にはサビ色の模様がある。学名は、"Bombus affinis" だ。
このハチは、他のミツバチなどと同様に花の蜜や花粉を採集してまわり、その際に花粉を運んで受粉を媒介する益虫である。
だが、ラスティパッチド・バンブルビーの生息数は極端に減少している。レッドリストの「絶滅寸前種」の基準は「3世代以内に個体数が80%減少した(または今後減少する可能性が高い)」だ。
このハチもしかり。この20年間で、生息数のうち87%が姿を消したのである。
image credit: Public Domain/Wikimedia Commons
絶滅の危機に至った原因は?
ラスティパッチド・バンブルビーの減少には、主な要因が3つある。生息地の減少、気候変動、そして農薬だ。
生息地の減少とは、草原地帯が破壊されたことだ。そのため、ハチは生存と次世代の養育に必要なだけの蜜や花粉を採集することができなくなった。
気候の変動は、ハチが食料を採集し、あるいは冬眠し、あるいは巣作りをする期間に制限をかけ、生存のための行動を取れなくしてしまう。
また、化学肥料や農薬は、蜜から直接的に、花粉から間接的に吸収され、生息数に打撃を与える。
ミネソタ州と近隣のいくつかの州では、これらの要因のうち、まずは「生息地の減少」に対して手を打つことにした。
地球規模の気候変動に対して一つの州が打てる対策は限りがあるし、農薬の使用を禁止すれば食糧の生産高との兼ね合いがある。初手としては妥当なところだろう。
imege credit: USFWS Midwest Region from United States
/Wikimedia Commons [CC BY 2.0]
/Wikimedia Commons [CC BY 2.0]
ハチの好む庭に補助金を
ミネソタ州議会は、バンブルビーの保護に対して約9,700万円の予算を割り当てた。この法案は州知事の署名を待っているところだが、可決される見込みが高い。
予算の使い道は、庭の模様替えをした個人に対する補助金だ。現在一般的な芝生を張った庭から、ハチの好むタイプの庭へ模様替えをすると、その費用の75%が交付される。
また、バンブルビーの生息にとって特に重要と認定された地域では、費用の90%までが補助されるのだ。
では、バンブルビーが好むのはどのような庭だろうか。
合衆国魚類野生生物局によると、特に好まれるのは、ノバラ、ゼラニウム、トウワタ、アザミ、プラム、チェリー、そしてヤナギなどだ。これらを庭なりパティオなりに、可能な限り植えるといい、とある。
また、植えるのは在来種の植物とし、外来種は可能な限り排除せよ、ともある。
さらに、ラスティパッチド・バンブルビーは地下に巣をつくる。このため、特に農場主に対しては、農地の一部を耕さずにおくよう呼びかけられている。
References: The Hill / Inhabitat など / written by K.Y.K. / edited by parumo
あわせて読みたい
昆虫にも感情がある?マルハナバチが喜びの感情を持っているという研究結果が報告される(英研究)
世界最小のマクドナルドがスウェーデンにオープン!顧客はなんとミツバチたち!(※ミツバチ出演中)
殺虫剤で依存症?ミツバチが殺虫剤を好んで食べるようになることが判明(英研究)
ミツバチは人類にとってとても大切な役目を果たしていた。ミツバチが絶滅したら起こりうる10のこと
昆虫とあなどることなかれ!道具をも使いこなす高度な知能と柔軟性、認知能力を持つマルハナバチ(英研究)
ハチの体内にあるハチミツから、抗生物質の効かない耐性菌に有効な乳酸菌が発見される(スウェーデン研究)
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
「昆虫・爬虫類・寄生虫」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 933 points | 今日もいないの?いつも愛してくれた教授の死を知らない犬、教員室の前で彼が来るのを待ち続ける(フィリピン) | |
2位 580 points | ニュータイプの空き巣が登場!何も取らずに部屋を根こそぎ綺麗にして帰っていく事案(アメリカ) | |
3位 471 points | 7秒以内に見つけられるのはわずか1パーセント!?大量のOの中からCを探すクイズ | |
4位 453 points | むしゃくしゃしてたらこれを殴って!通行人のストレス解消の為にニューヨークの街中に設置された公共用サンドバッグ | |
5位 436 points | モナリザが、ダリが、アインシュタインが!1枚の絵から様々な表情と動きをつけるAI技術が誕生 |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
我が家の庭にはスズメバチが来て困る
ブルーベリーが良くないのか
2. 匿名処理班
緑地や花の咲く植物の減少が、ボディーブローのように効いてきたんだろうな。
3. 匿名処理班
ガーデナーの俺得案件!!!
ようするに在来の植物を植えて楽しめば、在来の生き物も喜ぶって話だよね。
一面の芝生を刈り込んで維持するのもいいけど…色んな葉っぱや花が育ってるのを見るのは楽しいよ。小さなお客さんもいっぱい来るしね。
薬は勘弁な!
4. 通りすがり
画像見ると毛深くて獣では無くても毛物ではある
ハチと分類される生き物には巨大な巣を作って女王を中心にして暮らす奴らから寄生して繁殖する種類まで含まれててはっきりわからんのだが
まさか補助金目当てに庭をいじくりまくって毎日砂糖水を乗せた人の家に直に住み込んでトラブル起こして駆除されたりしないよね?
5. 匿名処理班
マルハナバチさんはかわいいからいいけど、他のやつらも来ちゃうと困るな・・・
6. 匿名処理班
ハチでも出演注意しないとダメなのか
7.
8. 匿名処理班
ハチミツとクローバーの通りに
やっぱりシロツメクサだろ
9. 匿名処理班
そんな夏のある日、思わぬ出来事が起こりました。
世界最大のスズメバチ、オオスズメバチがやってきたんです!
10. 匿名処理班
ハチ「う~ん、これは8点」
11.
12. 匿名処理班
仕事と持病で庭仕事が出来なくなって、荒れ放題。
春にはスミレ・カタクリ・チゴユリ、この時期は野生の蘭まで勝手に咲く庭になって、いろんな蜂や蝶が来るようになった。
受粉してくれるお蔭で、秋には植えた覚えのないサルナシとアケビが実る。
手入れをしていた頃の花は消えてしまったが、まぁこれも良いかなと思っている。
13. 匿名処理班
ゼラニウムはいいが野バラとアザミのパティオ仕立ては無理くね?
14. 匿名処理班
「蜜蜂の絶滅」とかいう本で10年くらい前に紹介されてたのですが、モンサントのネオニコチノイドの入った農薬で、蜂の方向感覚が壊れてしまい、巣に帰れなくなった結果、死んでしまったそうです。
原因を追求したところ、ネオニコチノイドが浮かんできたわけで、最初から分かってたわけではないのですが、お陰で蜜蜂業者はアーモンドや果物の受粉の為にあっちこっちと巣を移動させて大忙しなのだそうな。
TPPで押し付けられようとしてたアメリカ産の農業はこんなものだった、って話。
遺伝子組み換え作物はこの農薬を使わないと虫にやられるし、一年草になってしまい農家が種を採れなくなり、毎年購入しなくてはならなくなるんです。しかも授粉率が高く、隣の畑の花粉が飛んできたら自分の畑の固有の種が、種ナシになるというすごさ。
ロシアは、だから一切の遺伝子組換作物を拒否し、古来の種にこだわっています。
15. 匿名処理班
日本も都市部でミツバチ育ててもええと思う
地元住民にミツバチのために植物を植えてくださいってお願いしたら金使ってくれると思う
16. 匿名処理班
そうそうモンサントのアレが頭をよぎる
17. 通りすがり
>>9
ネズミ専用の粘着シートで捕まえるとあちこちからそのシートにめがけて突っ込んでくるらしいな