930 名前:癒されたい名無しさん[] 投稿日:2007/03/25(日) 02:50:57 ID:KlGmiDm1
母というものを知らずに育っていた。

でも、祖父母も父も俺を愛情を持って育ててくれていたし、祖母は事あるたびに母の悪口を言っていたから、会いたいと思ったこともなく、むしろ憎んでいたかもしれない。

中学2年の夏休みの頃だったか、予定より早く部活を終え、帰宅すると、家の前に見知らぬ女性がいた。

にっこり笑いかけ○○君でしょ?って声をかけて来た。
頷くと、祖母を訪ねて来たが留守のようなので困っていたとのこと。待っていうちにお腹がすいて来たので、おごるから一緒に近くで食事をしないかと言われた。
自分も空腹だったので、不審に思いながらも付き合うことにした。

ファミレスで彼女は食事をしながら俺にわからないように何度も涙をぬぐっていた。
俺もいくらなんでも彼女が何者なのかを察していたが、知らないふりを通していた。

「おばさんのお父さんがね、昔、事業に失敗して大きな借金を作っちゃったの、おばさん、保証人になっていたから借金取りが私のところにも来ちゃって大変だったのよ。その時○○君のご家族にもご迷惑かけちゃって・・・」
と離婚の原因になったようなことも話していた。

その女性はそれ以降も何度か俺の前に現れては食事に誘ったりお小遣いをくれたが、どこかのオバサンという認識でしか考えないようにしていた。
 でも、そのうち、彼女がやってくるのを心待ちにしていることに気が付いた。
(決してお小遣いをくれたり食事を食べさせてくれるから、というのじゃなく)

祖父母や父は絶対そんなことがあったことを知らないと思っていた。

高校受験が間近に迫っていた頃、祖母がポツリと独り言のように言った。
「そろそろ、母ちゃんって呼んでやりんさいな。あんたももうわかっとるんやろ?」

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