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現在は3人の子供を持つ母親である、女性にとって、これまでの人生は「ちょっと厄介なもの」だったという。
彼女は3人の子育てに忙殺されていたのだが、6歳の息子がADHDと診断されてしまった。だが、これがきっかけとなり、自分自身のことが理解できたという。
自分もADHDであるということに。
なんとなく生きづらさを感じながら大人になってしまった世代は、自身がADHDであることに気が付かないでこれまで暮らしてきた場合がある。
ここではオーストラリア在住の彼女の話を参考にしながら、大人のADHDについて考えていこう。
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息子がADHDであることをきっかけに情報を集めだした女性
息子がADHDと診断されたので、関連の書籍を片っ端から読み漁りました。それでADHDは遺伝的なものだということを知ったのですが、12歳の娘も学校で苦労しているようでした。女の子に表れがちな症状について調べ始めて、女の子には不注意優勢型が多いことがわかりました。
そこで娘にも診察を受けさせところ、息子と同様、ADHDと診断されたという。そこで彼女は気が付いた。娘の行動は自分そっくりであることを。
これにより女性は自分もADHDであることに気が付いたのだ。
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遺伝的要素の高いADHD
日本では「注意欠陥・多動性障害」と呼ばれる「ADHD」は、多動性(過活動)や衝動性、また不注意を症状の特徴とする神経発達症もしくは行動障害である。80%の遺伝性があり、脳の実行機能に影響を与える。
実行機能とは、作業の優先付け、集中力、感情のコントロール、作業記憶へのアクセス、自己調整といったことと関係する機能だ。
男女による症状の違い
男の子の場合、思春期に入れば大抵はADHDと診断される。男の子の場合、多動衝動性優勢型が多く目立つからだ。
一方、女の子には不注意優勢型が多く、しばしばそれを隠す方法を身につけることもあって、周囲に気づかれにくい。すると自分がADHDであることを知らずに、そのまま大人になってしまうことがある。
大人のADHDの支援はあまり行われていないという現状
大人のADHDの支援を行う「ADDults」のジョイ・トールさんは、彼女のようなケースはよくある話だと話す。だが、子供がADHDである場合、それなりに支援を受けられる一方、大人の場合は放っておかれがちなのだそうだ。
大人だって最大限の支援が必要ですが、そうした助けはほとんどありません。ADHDの人への支援体制は大人になった瞬間なくなってしまいます。自分で面倒を見ろというわけです。(ジョイ・トールさん)
たとえば子供だったら親が彼らの実行機能を肩代わりしてくれるであろう。だが成人してしまえば、そうもいかない。
件の母親は自分の経験をこう語る。
大学に入った時点で補助輪が外れてしまい、どこかにすっ飛んでいかないか見てくれる人は自分以外にいなくなってしまいました。
このくらいになれば、自分の人生は自分でどうにかするものだって思うんでしょうね。みんなそうしているんだからって。
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ADHDに対する偏見
精神科医のヒュー・モーガン医師によれば、現在成人の2、3パーセントがADHDと診断されているが、きちんと診断されているのはオーストラリアでは患者全体の10パーセント程度でしかないそうだ。
彼はその原因について、治療している病院が少ないことと、偏見の目があることだと考えている。
幼児や思春期の子供ならADHDと診断されてもまだ受け入れやすいでしょう。でも大人になってもそれが続くということについて、社会はあまり理解していませんし、私の同僚でさえそうなのです。
一つには、今の医学生(オーストラリアのケース)は大人のADHDを診断して治療するよう教えられていないことがあるでしょう。大人になると、その治療を行なっている精神科がなかなかないんです。
その結果、大人のADHDを治療する医師は不足しており、インターネットですらも情報が不足しているという状況になってしまっている。
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行動療法が必要
オーストラリアでの場合だが、治療を受ければ、それなりに効果を期待できるという。
モーガン医師によると、大人のSDHDに対する効果的な治療は、薬が有効であれば薬が中心となるが、行動療法も必要になるという。
ADHDの人は成人でも、もっと配慮されるべきです。治療を受けなければ、社会生活を送る上でのそのデメリットは非常に大きいものです。まずはADHDに対する偏見を失くし、治療を受けやすい環境を整えることが大切です。
前出の3人の母親は、ADHDの治療を受けるようになって、人生がずっと楽になったと話しているという。
初日から楽になったんですよ。片付けるべきことがはっきりわかるようになって、ちゃんとやれましたよ。昔なんて、たった2分で終わる作業をするために、5分かけてやることリストを書いていたんですからね。
日本の場合、大人のADHDをきちんと診断し、適切な治療を施してくれる病院はそう多くはない。長期治療が必要となる場合もあるので、周囲の理解やサポートも必要となってくる。
その程度や度合いによって治療方法も異なってくるだろうが、自分はもしかしたら?と思ったらしかるべき機関で診察を受けると良いかもしれない。
ネット上ではこちらのサイトが参考になる。
・大人のためのADHD(注意欠如・多動症)サイト
・治療をうける|どんな解決策が?|大人のためのADHDサイト
ちなみに小4で担任からADHD認定をされた私、パルモは相変わらず起きている間の5分の1くらい何かを探してて、5分の3くらい上の空だが、残り5分の1でなんとか今日まで生きてこられたよ。で、さっきまで何探してたんだっけ?あ、そうだ。宅配ボックスのカードだった!
References:When Charlene's son was diagnosed with ADHD, she began to understand herself/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
ワイも若干ADHDや
仕事が続かん
2. 匿名処理班
ADHDの診断下りて調べたけどADHDて純粋な疾患?とは別にADHD様症状みたいなのがあるのかなと考えたりした
3. 匿名処理班
宅配ボックスのカードあるといいですねw
4. 匿名処理班
せっかく認知が進んでいるんだから、大人も積極的に検査を受けてほしいな
片付けられない症候群の何割かはADHDだろうから
治療が一般化すれば当人も周囲も楽になれると思うんだ
5. 匿名処理班
今の時代いろんな病名ありすぎて何が普通で誰が正常なのかわからない
6. 匿名処理班
おかあさんもいっしょ
7. 匿名処理班
ADHDに限らず軽度の発達障害を持っている大人の中には、本人だけが気付かないまま周囲が振り回されて疲労困憊しているケースがある。生きづらさを感じないのはある程度のお金と親子関係などの権力を駆使して無意識的に全て自分の思い通りに出来てきたから。
記事の母親が素晴らしいのは本質に気付いて自分も受けてみようと判断・行動したこと。カウンセリングを受ける=重度の精神疾患扱い、という思い込みの中で生きている人には仄めかせるだけでパニックに陥る。本気で受け皿が欲しいこの頃。
8. 匿名処理班
なんでも病気扱いにしてなんだかなぁ
本当に病気なのかと
9. 匿名処理班
底辺世帯の発達障害は学校出る段階で詰むので
もっと正常値に近くなれるようカリキュラムを組んでほしい
定型発達の人の言葉の裏に秘められた意味が全くわからない
わがままになるかもしれないが大人になってからもカリキュラムを組めるような仕組みも欲しい
毎日がつらい
10.
11. 匿名処理班
それこそ大人のADHDみたいなタイトルの本にあったけど
海外の学会などで大人のADHDの話をすると首をかしげられるんだって
ADHDは子どものうちに治療して大人になる頃には目立たなくなってるから
大人を問題にしているのは日本ぐらいなんだそう
記事にあるオーストラリアではどんな感じかはわからないけど
12. 匿名処理班
遺伝するって結構前に何かで読んだから知ってた
13. 匿名処理班
うっかり者、あわてんぼ、ほら吹き、かんしゃく持ち…
昔の人が他人の個性として呼んでいた「愛称」を
「病名」にして病人扱いしてしまっている現代人。
昔の人の方が愛称や愛嬌として個性や違いを受け入れる
大きな心を持っていたのかもね。
14. 匿名処理班
※13
本人に困り感があるから診断名がついたんだよ
努力してもそんな愛称で呼ばれ続ける辛さっていうのは、時代のせいにしている人にはわからないんだろうな
15. 匿名処理班
※8
※13
脳に問題があるから投薬で改善する場合がある
個性で済む範囲なら症名要らない
済まないからついてるんだよ
16. 匿名処理班
※13
薬で治るものってそもそも個性と呼んでいいものなのかなあ
17. 匿名処理班
かなりの頻度でよく物を忘れるまたは落として無くす、慌てん坊、癇癪持ち、多動性注意欠陥
躁鬱のような極端なテンションの上がり下がり
それを個性だと思い込んでいた時代が僕にもありましたorz
でも、今の会社に来てそれは「普通」じゃないって指摘まで受けてやっと気が付いたよ,,,正直泣きそうになったね