Image by Tommy_Rau from Pixabay
地獄の蓋が開きかけている、とでも言うのだろうか? お皿の上でじりじりっと這いずり回るゾンビチキンについてはお伝えしたばかりだが、またもやゾンビ案件だ。
今回のゾンビはニュージーランドの森の中で発見された。オークランド工科大学の研究者がウェスト・オークランドをハイキングしている最中にたまたま巨木として知られるカウリの切り株を見つけた。
幹は地面からほんの少し突き出ている程度で、葉っぱもまったくないために、普通ならとっくに死んで枯れてしまっているはずだ。それなのにまだ生きている。どういうわけなのか?
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木の仲間同士が根のネットワークを形成していた
よく「氷山の一角」というように、世の中では目にすべての部分が見えることのほうが珍しいのだろう。調査の結果明らかになったのは、地中に網の目のように張り巡らされた根っこに秘密があるということだった。
このゾンビツリーの秘密を解き明かすために、セバスチャン・レウジンガー准教授は切り株と付近に生えている木々の水の流れを調べてみることにした。明らかになったのは次のようなことだ。
周囲の木々が葉から水分を蒸散させる昼の間、切り株は栄養をほとんど得ていない。ところが、夜になって木々の活動が抑制されると、水が切り株に循環し始める。
どうやら、カウリの木は仲間同士の根っこを自然に融合させており、その結果として、すでに葉を失った切り株にまで水や栄養が流れ込んでいるらしいのだ。
カウリの木の切り株(左)と同種の生きた木(右)Credit: Sebastian Leuzinger
超個体としてのカウリの森
「私たちが考える木というものからかけ離れています。もしかしたら、ここにある木は単体ではなく、森としての超個体なのかもしれません」とレウジンガー准教授は話す。
だが、なぜ木々は互いに水を交換するようになったのだろうか?
地中に張り巡らされた広大な根っこのネットワークをシェアするメリットはあるだろう。それによって、より多くの水と栄養を手に入れられるだろうし、急峻な斜面に生えている木ならば安定性も増すはずだ。
「切り株にとってのメリットは明白です。緑色組織がないので、根が接ぎ木されていなければ死んでしまいます。でも、どうして葉っぱのある木がおじいちゃんみたいな木の面倒をみているんでしょうね? メリットはあまりないように思えますが。」
生きている切り株 Credit: Sebastian Leuzinger
共有ネットワークで生かされる切り株
もしかしたら切り株は幸運にもこの共有ネットワークの恩恵を授かっているのかもしれない。
なにしろニュージーランドカウリは高さ50メートル、太さ15メートルにも成長する巨木なのだ。1本くらい枯れそうになっている切り株があったところで、意にも介さないのかもしれない。
一方、根っこの共有ネットワークにはデメリットもある。疫病が広まりやすいのだ。特にカウリの場合、フィトフソラ属菌によってカウリ立枯病が流行し、最近、絶滅危惧種に指定されていることが気がかりだ。
死んでいるはずの切り株に新鮮な樹脂 Credit: Sebastian Leuzinger
木々や森の捉え方が大きく変わるかも
なお、今回の調査は生きている切り株を1本のみ調べたに過ぎず、一般的な結論を出すことはできない。
しかし地元の林業関係者は、ときおり今回と似たような事例を目撃しており、カウリが根をつなぎ合わせて共有している可能性については80年も前から疑われていたそうだ。
「温暖化で、干ばつが増えることを考えれば、このあたりの調査をもっと進めるべきだというお告げでしょうね。この発見で、木々の生存方法や森の生態系についての捉え方が変わるかもしれません」とレウジンガー准教授は話している。
薄気味悪いゾンビ案件かと思いきや、倒れそうな仲間を周囲が支えているという意外にもいい話だった。壮大な生命の神秘だ。
この研究は『iScience』(7月25日付)に掲載された。
References:Tree stumps that should be dead can be kept alive by nearby trees | New Scientist/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
水分補給
土砂崩れ防止
免疫情報の交換
その他
いくらでも理由は
あると思う
2. 匿名処理班
ゾン ビィーー ユゥーーーーーーー♪
3. 匿名処理班
傾斜のある土地に水源が乏しく、時折降る雨くらいしかなかった時代に、繁殖力の高い他の植物から同種を守るため水源近くから遠くまで同種を繁栄させるためのシステムだったとか。
森として出来上がった現在はその名残。
4. 匿名処理班
>倒れそうな仲間を周囲が支えているという意外にもいい話だった。
甘い
自然は過酷
淘汰は正義
倒れそうな仲間を周囲が支える代わりに何かを得ているはず
それがまだわかっていないだけ
5. 匿名処理班
なんか、「アイアムアヒーロー」のZQNをほうふつとさせる話だな。
あのマンガのZQNたちは、他の作品のゾンビと違って一定の目的に基づいて動くことが示唆されたり、結末部分では複数のZQNが融合した巨大ZQNの集合体が、出てきたうえにヒロイン各の女の子が、「女王」として取り込まれていったけど。
その後ある種のネットワークが構築されていることが、描かれていたし。
まあ、作品そのものは、いろいろと謎が解明されることもなく、主人公が一人で生きていく。ていう感じで終わったのだけど。
主人公自身は、感染者だったのかどうなのかが不明なままだったとかね。
6. 匿名処理班
切り株を「死んだ木」とは思わないよ。
7. 匿名処理班
栄養タンクじゃろなぁ
8. 匿名処理班
養蚕のために桑の木を育てていた地域の人ならわかることだけど、地上部分を幹ごと切り落としても、地面の下にやや太めの根が残っている場合に、数年後に近くの別の場所からまた生えてきたりするよ
9. 匿名処理班
この切り株の根っこは、ネットワークとしての機能が今も現役だということだろう?
AからBに、BからCにつながるネットワークで、Bは経路として存在していることが、それ自体が役割たりえる。
切り株もそういうコネクターとしての仕事をしてるんじゃないかな。
10. 匿名処理班
>>4
私の感覚では「淘汰は摂理」だけどな
得ている何かがわかってないだけってのは
すごく共感する。
11. 匿名処理班
一部植物がランナーで栄養繁殖して同じ個体の集団ができるのは知ってたけど、後から別個体同士が集団になるなんて聞いた事なかった
人間もなんらかのネットワークでこんな風に繋がる日がくるのかとか考えちゃう
12. 匿名処理班
切り株が生き続ける事は、既に『樹木たちの知られざる生活──森林管理官が聴いた森の声』(早川書房)ペーター ヴォールレーベン(著)に書かれてますね。
13. 匿名処理班
老木でも同族だから、他の植物に覆いかぶされて勢力図更新されたり、枯れてしまうより中継地点だろうがなんだろうがマシ
って理由だったりしてね
14. 匿名処理班
というか、根元から切っても樹は枯れない
翌年に普通に枝が生えてくる
15. 匿名処理班
植物も介護するんだ。
16. 匿名処理班
※10
何も得ていない可能性もある。
結構自然淘汰の原理はユルユルだから「生き残れないほどではない」欠陥はそのまま残ることが多い。
足の小指とかwあっても歩行に寄与しないし箪笥のカドにぶつけるだけでむしろ無い方が
マシなのに、カドにぶつけたくらいじゃ死なないからいまだに残り続けてるw
17. 匿名処理班
興味深い事例ですね、
ただ伸びた根の先から芽吹いて新たな幹になる事はあるので、
後から別々の株の根が結合したのか元から巨大な1個体だったのか、
DNAの分析もしてみるべきかと思います。
18. 匿名処理班
※11
むしろ、植物だから珍しく見えるだけで、
動物のうち群れで行動する種なら
相互扶助で繋がっているのは当たり前な気もする。
19. 匿名処理班
そこに敵となる別種や雑草とかが生えないようにする為にスペース空けないように生かしてるんじゃないの?
20. 匿名処理班
萌芽更新を促して、群落としてのまとまりを維持するためには、リスクと損失を受け入れてでもメリットがある、ということかな?
21. 匿名処理班
※8
切り株は別に死んだ木の残骸って訳でもないしな
結構生き残るよな
22. 匿名処理班
>>4
安全に生まれる確率が低くても力の差によりどんな雄でも確実に子孫をばらまける事になるから
雌の子供への性暴行性を人間含めた動物の雄ホルモンが担ってしまうように
淘汰という物に道徳や正義はないぞ
23. 匿名処理班
※16
小指はふつうに重要な役割を果たしてるぞ。
スポーツや踊りや肉体労働をしている人なら、
足の踏ん張りを効かせたり
急な方向転換をスムーズに行うのに
いかに小指がキーになるかを実感しているはず。
手の小指も、巨人の星を知っている世代なら
女番長お京が、ナイフ傷の後遺症で曲がらなくなった小指では
うまく力が入らずライターの着火にもたつくシーンを覚えているだろう。