Image by ANDREYGUDKOV/iStock
2019年7月、日本は31年ぶりに商業捕鯨を再開した。これに対し、西欧諸国から多くの批判が寄せられている。
しかし、アメリカ・コーネル大学の海洋生物学者チャールズ・H・グリーン教授は、捕鯨を個人的に好ましいこととは思わないとしながらも、それを批判するアメリカ人やカナダ人は、自分たちのより有害な行為に目を向けるべきだという論説を『Scientific American』に寄稿している。
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日本の商業捕鯨がクジラの生息数に影響を与える可能性は低い
日本政府は国際捕鯨委員会(IWC)から脱退し商業捕鯨を再開、ノルウェーとアイスランドに加わることになった。
だが、悪い話ばかりではなく、日本政府は南極条約(南極周辺海域における生物資源の商業利用を規制)に従うことに同意し、南極海での”調査"捕鯨は中止する旨を発表している。
また商業捕鯨についても、生息数が十分な種のみを捕鯨し、それも自国の領海と排他的経済水域に限ると述べている。
国際的な非難はあるものの、適切に管理された日本の商業捕鯨が、危機に瀕したクジラの生息数に大きな影響を与える可能性は低いとグリーン教授は語る。
対照的に、北アメリカはどうだろうか? 東海岸ではアメリカもカナダも数十年間捕鯨を行なっていないが、両国の漁業は絶滅が危惧される種のひとつであるタイセイヨウセミクジラにとって潜在的な脅威となっている。
タイセイヨウセミクジラ wikimedia commons
絶滅が危惧されるタイセイヨウセミクジラ
タイセイヨウセミクジラのメスと子供は、毎年決まった季節になると繁殖地である南大西洋湾から餌が豊富なニューイングランド沖やカナダ沿岸へと長い距離を移動する。
このとき主な死因は、漁業用の網が絡まることと漁船との衝突で、回遊コースの一番北の海でもっとも多く発生している。
こうした事故にもかかわらず、タイセイヨウセミクジラは、2010年までの30年で徐々に生息数を回復させてきた。
それなのにそれ以降は、熱波でアメリカのメイン湾の海水が温められ餌が減少してしまったことが原因で、彼らは昔からの夏の餌場を放棄。さらに北にあるカナダのセントローレンス湾を目指すようになった。
アメリカのエビ・カニ漁の網がクジラを窮地に。温暖化も後押し
ここ数年のメイン湾では、漁業用網の絡まりや船との衝突を防止するための対策が取られてきた。
絡まる危険性が一番高いのは、海底から海面のブイにまで縦に展開されるカニやエビ漁のものだ。推定によれば、最大8割のタイセイヨウセミクジラがこの網にかかっており、体を傷つけている可能性がある。
メイン湾のエビ・カニ漁関係者は渋々ながら、切断可能で、しかもロープを使わない危険の少ない漁具への段階的移行を検討している。
しかし温暖化による栄養面でのストレスは、網に絡まったときの予後をいっそう悪いものにしており、米政府による一刻も早い規制が望まれる。
タイセイヨウセミクジラの生息数が回復するか、それとも絶滅するかは、時間との勝負である。
Image by David Mark from Pixabay
カナダの慢心
カナダの海では、ここ3年の間に状況が劇的に悪化した。カナダの水産業者もカナダ政府も、餌を求めて北上してくるタイセイヨウセミクジラに対して、何らの準備もしていなかったのだ。
保護対策がなかったために、2017年夏の2ヶ月だけで個体数の3パーセント近くが殺されてしまった。
だが、このときの教訓は活かされ、2018年の夏には、たとえばカニ漁の時期をずらしたり、漁船の速度を落とすといった対策を実施。同年にクジラが事故死することはなかった。
しかし、この成功による慢心と水産業界からの圧力のために、2019年になるとカナダ政府はずっと無関心になってしまった。
7月末までには、少なくともタイセイヨウセミクジラ8頭がカナダの海で死んでおり、このままのペースが続けば、今年の死亡数は2017年を超える可能性もある。
危機に瀕しているのはクジラだけではない
こうした話はクジラに限ったものではない。太平洋北西部では、ほぼ10年にも及ぶ海洋熱波によってキングサーモンが減少し、そのために絶滅が危惧されるセイリッシュ海のシャチが繁殖しにくくなっている。
これを受けて、5月にワシントン州知事が未曾有の保護政策に署名をしたが、その1ヶ月後には石油ガス産業からの猛烈なロビー活動を受けたカナダ政府が、トランス・マウンテン・パイプラインの延長に許可を出した。
このためにセイリッシュ海を航行するタンカーの数は7倍にも増える見込みで、シャチの重要な繁殖地における船との衝突事故のリスクは増大するだろうし、原油もれや騒音といった環境汚染も懸念される。
Image by skeeze from Pixabay
アメリカとカナダがするべきこと
ここで言いたいのは、アメリカとカナダには絶滅危惧種であるクジラの保全を促すための手段があるということだ。
たとえば、漁船や漁業によってクジラが死ななければ、タイセイヨウセミクジラの生息数は、四半世紀のうちに2倍にも回復する可能性がある。
だから両国の政府が環境規制を緩和せよという業界からの圧力に抵抗するようになるまでは、アメリカ人もカナダ人も日本へ向けている怒りをもっともクジラを危険にさらしている政府に向けるべきなのだと、グリーン教授は結んでいる。
References:Japanese Whaling Is Not the Greatest Threat to Whale Conservation - Scientific American Blog Network/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
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4. 匿名処理班
時に正論は無力だ。
しかし声を上げなければ僅かな理解すらも得られないことだろう。
5.
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7. 匿名処理班
捕鯨という行為に反対したいんだろうからほかの原因でクジラの生息が脅かされても関心ないんだろう
8. 匿名処理班
この意見も政府や企業そして民間人は聞きたくないし見たくないだろうから、無視するだろうね。他人叩くとキモチイイはどこの国でも一緒なんだなぁ
9. 匿名処理班
教授の言い分はごもっともでも、アメリカカナダ両国民の、海洋資源保護の矛先は変わらない…なぜなら、日本以外の海洋国家は、カネにならないし、叩いたら逆に批判されるから。
10. 匿名処理班
牛や豚は良いのか?ってお決まりの反論の前に、
>適切に管理された日本の商業捕鯨が、危機に瀕したクジラの生息数に大きな影響を与える可能性は低いとグリーン教授は語る
のにもかかわらず、個人的に好ましくないって、もう宗教だよねえ。絶滅を引き起こすどころか、他の魚を食い尽くす危険すら減らしている調査捕鯨を叩きまくり、数字ではなく好みで批判するなんてね。
11. 匿名処理班
アメリカ人もカナダ人も捕鯨に興味ない
扇動してるのはいつもの特定市民団体だろ
12. 匿名処理班
わお・・・北アメリカは、今や聳え立つ身勝手と自己満足の万神殿だねぇ
様々な《御団体神》様方の詔や御神託が尊すぎて、皆従わざるを得ないが
その尊い方々が、悉く自分に都合の悪い事には目隠しをしてお話され
しかも、悉く自己利益優先・相互矛盾しているからねぇ・・・
信者・衆生は大変だわ、此れは
愚神殿又は万魔殿なのかもしれないな、少なくとも民主主義と自由を守る神殿ではもう無い。
13. 匿名処理班
捕鯨の話はホント胸糞。
反捕鯨を掲げてる連中って感情論や差別意識ばかりで
環境改善の活動をしてる連中は殆どいないからな。
どこぞの牧羊犬みたいな名称の団体は保護と言う名目で他人の邪魔をする事ばかりだしな。
14. 匿名処理班
なんか鯨が変死したりして
沖に上がるのは
軍のソナーが原因だとか
聞いた事あるだとしたら
日本なんて比じゃないぐらいの
被害でてるはず
15.
16. 匿名処理班
騒ぎ立てておいて自分らは自国海域の保護活動やっとらんのかい。そもそもIWCて捕鯨をする国々が鯨という資源を守ろうと作った団体なのに、反捕鯨国が加盟してきて騒ぎ立てるのってどうなんだ。
まあ、個人的には日本はもう鯨食わなくてもやっていける国になってるから獲らなくていいんじゃね、と思ってる(子供の頃は給食に鯨の竜田揚げが出て、ビーフステーキは誕生日の時ぐらいにしか食えない大ご馳走だった世代)。
17.
18.
19. 匿名処理班
大丈夫だよ日本も言うほど食わないから
商業捕鯨解禁しても全然盛り上がってない
20.
21.
22.
23.
24.
25. 匿名処理班
>>7
動物愛護って豚と牛はOKなのに鯨がダメとか元々が論理破綻してるよね。
破綻してるから>>7の言ってるみたいになるだろうね。
26. 匿名処理班
結局のところ鯨への特別視は止めない、と
27. 匿名処理班
鯨を全部とるのも鯨のエサ全部とるのも絶滅するのには変わりない
間接的であることは罪の意識を薄れさせるのはどの事柄にも当てはまりますねえ
28.
29.
30. 匿名処理班
この教授の身の安全が心配なんだが
31.
32. 匿名処理班
※16
諦めたらそこで試合終了ですよ!
いつなにがあるかわからんから
捕る技術保存のためにもやっておいても構わないんじゃね?
流石に乱獲はダメだけども
33.
34.
35.
36. 匿名処理班
こういう論文を公表しちゃう科学者と雑誌の存在するところがやっぱりアメリカは凄い。なんだかんだ言って彼らの多くは科学的で、どんなに不都合な事にも冷静な目を向ける。自然災害の多い日本が彼らと仲良くしたがるのも頷ける気がするよ。
37. 匿名処理班
>>25
グリーンピースは一応牛豚に関しても
ちゃんと文句は言ってるよ
やってることに関しては全く同意できないけど
38. 匿名処理班
>>16
お前は食わないだろうが
郷土料理として食ってる俺みたいなのもいるんだよ
39.
40.
41.
42.