Image by Wendy Love/iStock
カラスが賢いということはもはや周知の事実だ。何しろ彼らは道具を使う数少ない動物なのだ。なんなら記憶から道具を再現し、最適化することだってできる(関連記事)
だがそれだけではない。新たなる研究によると、彼らは道具を使いこなすだけでなく、道具を使うこと自体を楽しんでいるというから驚きだ。
カラスだから十分あり得る話だが、『Current Biology』(8月19日付)に掲載されたハーバード大学の研究によると、道具を使うとカラスはよりポジティブな行動をとるのだそうだ。
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Clever Crows
今回の実験が示すのは、人間がクロスワードパズルを楽しむように、カラスは道具の使用を楽しんでいるということだ。
「彼らの小さな頭の中ではいろいろなことが起きているのではないでしょうか。得意なことや練習したことをやれば満足するんです」とハーバード大学の研究著者、ダコタ・マッコイ氏はコメントする。
カラスはなぜ道具を作り、それを使うと気分が良くなるのか?
チンパンジーなど、道具を使う動物は人間以外にもいることはいる。だが、カレドニアガラスはいくつもの複雑な道具を作り、しかも改良まで行うという点で際立った存在だ。
だが、なぜカラスはそれを作ったり、使ったりすると気分が良くなるのか? マッコイ氏は自分たちが複雑な行為を行ったときの気持ち、それがヒントだと話す。
「非常に知能の高い動物であっても、私たちはそれを機械のように見てしまいます。私たちに感情があるように、動物だって感情的な反応を見せるし、気分だってあることは明らかです。」
カラスにも達成感がある
そうした感情のひとつが達成感というものだ。
「道具を使う力が進化した理由として考えられるひとつの答えは、カラスがものをつまみ上げ、それを蓄えることです。実験をするとわかりますが、カラスは実験器具を掴むのが大好きで、それを手の届かない高いところに隠そうとします。」
ひとたびカラスが道具を使うようになると、それで彼らはそれで良い気分になった。だから、さらに使い続け、改良し、また新しい道具を作るという行動が促された。まさしく、好きこそ物の上手なれ、だ。
「おそらくカラスは複雑な行動でエサを取れたからという理由だけでなく、そのプロセス自体が楽しかったために、その行動が強化されたのでしょう。人間をはじめとする霊長類と同じですね。」
真ん中の箱にご褒美は入っているか?
道具を使ったときのカラスの気分を理解するために、マッコイ氏はある実験を考案した。
それはコップに半分ほど水を入れ、それを見た人が半分”しかない"と思うか、半分”もある"と思うかで楽観性の度合いを調べる心理テストに少し似ている。
まずカラスを訓練して、小さな箱がテーブルの左端に置かれた場合は、大きなご褒美(肉3つ)が入っている、右側に置かれた場合は、小さなご褒美(カスのような肉)が入っているということを教えた。
カラスがこの法則を理解したら、今度は箱をテーブルの真ん中に置いてみる。真ん中はどのようなご褒美が入っているかわかりにくい曖昧な位置だ。
このとき、もしカラスがさっと近寄って中を調べた場合、カラスは中に大きなご褒美が入っているだろうと楽観的になっていると推測できる。
反対になかなか近寄らない場合、おそらくは大したものが入っていないだろうと悲観的であると推測できる。
道具を使うことでカラスは楽観的になる
この一種の心理テストを、数日間いくつかの状況を経験した後でカラスに受けてもらう。
いくつかの状況とはたとえば、簡単に取れるエサをもらえたり、エサを道具を使って箱から取り出さねばならなかったり、部屋の四隅を飛び回るとエサにありつけたりといったものだ。
その結果、道具を使ったカラスは、テーブルの真ん中に置かれた箱にずっと素早く近寄ることが判明した。
一方、ただ大変なだけで道具を使用することがない状況にいたカラスは、楽な状況を経験したカラスに比べると、それほど熱心に真ん中の箱には近寄らなかった。
「カラスは楽な状況を喜んでいました。それは意外ではありません。意外だったのは、道具を使うのはただ歯ごたえがあるから好きだというわけではないことでした。難しさを調整してみましたが、それで彼らの関心が強くなることはありませんでした。道具を使うというその特定の行為に、彼らが楽しいと思えるものがあるのです。」
動物だって楽しみたい
もちろんカラスの気持ちを正確に言い当てることは不可能だ。だが、動物の気持ちをどうにか推測しようと試みた研究は、マッコイ氏のものが初めてどころか、いくつもある。
しかし彼女によると、これまでの研究はどれも飼育されている動物を対象としたもので、状況の変化が彼らの気分をどう変えるかといったものばかりであるそうだ。
「オリを大きくすれば動物の気分が良くなるといったことは大勢が示してきましたが、今回は複雑で楽しい作業でも気分が良くなることを実証しています。」
これは飼育されている動物をもっと幸せにする方法を示しているだろうと、マッコイ氏は考えている。
ただ食べ物やおもちゃを与えられるよりも、多少やりごたえのある作業をこなして欲しいものを獲得したほうが、動物はずっと満足できるのかもしれないのだ。
そうした気持ちは自分を振り返ってみればよくわかるだろう。苦労して欲しいものを手に入れたときの嬉しさといったら! 動物だってそんなワクワクを求めているのかもしれない。
References:Like humans, crows are more optimistic after making tools to solve a problem – Harvard Gazette/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
人間目線
未だにこんな人いるんだな
カラスも猫も犬もその他の動物も感情は何も変わらん
動物に達成感や楽しみがあるのは当たり前だ
2. 匿名処理班
感情を量る実験方法の是非はよくわからんけど、冒頭の、枝を切って丁寧に葉を落として使う姿にびっくり。類人猿にしかできないって小学校で習った記憶あるのに。
優秀なカラスを集めてつがいにして、増殖させたらどうなるんだろう…
3. 匿名処理班
報酬系が相当発達してるんだろうな
4. 匿名処理班
サムネのあんよがかわいい
5. カラスは師匠
以前見た動画ではカラス師匠が屋根の雪の上を
缶のフタのようなもので滑り降りていた。
とても楽しそうに何度も挑戦していたが、
前提に「このフタを使って滑ってみたら楽しいでは?」
という推測があったのかもしれない。
そして実験して推測通りで大満足と。
もしかしたら、人間よりも論理的思考に長けてるのかも。
6. 匿名処理班
カラスが遊び好きなのはよく知られている。
『なあ知ってるか? ここから餌を盗みだすと白い格好の人間が飛び出して来て、踊ったり跳ねたりして喜ぶんだ。面白いからお前もやってみ。』
これが実験の真相。
7. 匿名処理班
カラスとタコはどちらが賢いんだろう?
8. 匿名処理班
♪カラスの勝手でしょ〜(古っ)
9. 匿名処理班
※1
人間目線でしか見られないことを理解してるから、実験等で何とか証明しようとしてるんじゃないか。
あって当たり前、で終わらせてたら空想と変わらないよ。
10. 匿名処理班
カラスと一緒に遊べるようなギミックがあったら楽しそうだな。
対戦よりは協力プレイみたいなやつ。
人間とカラスのペアでくろうを共にするんだ。
11. 匿名処理班
カラスとお友達になりたい
12.
13. 匿名処理班
昔保護してたカラスもわざわざお皿の上に用意した丸々太ったミールワームより、
人間が料理の準備で皮むき中のジャガイモを奪って高い巣箱に隠したりしたよ
これは食べたいからとかじゃなくて、人間が持ってるものを奪って隠せば人間が取り戻そうと必死になって巣箱にジャンプしたり手を伸ばそうとするから見てて楽しいんだと思う
カラスと暮らすと、カラスに観察されてるな〜って思うことがたくさんあったよ
14. 匿名処理班
カラスを見てるとドジっ子ヤンキーみたいで面白い
・道路をウキウキ歩いてる。途中の植え込みとか門の中とか覗きながらホントにウキウキ歩いてる
・屋根の上で雀達に文句言ってるんだが雀にガン無視される
・アイスの袋を拾った。周りにいたカラスや雀に「俺んだ!やらねーぞ俺んだ!」と威嚇。周りの鳥「ハイハイお前んでいいから」という呆れ顔
・ターミナル駅(線路が6本ある)の架線上からおもちゃを落としてしまった。「おもちゃが!でも電車来るかも、でもでもおもちゃがでもでも電車が」と迷う迷う(電車全く来てません)
ほんまカラスって面白いわ。。。
15. 匿名処理班
市街地のバス通りで、カラスが路上を一羽、てちてちてちてち歩いてた
危ないよーひかれるよーと危ぶみつつ見てたら
車が来ると間一髪ヒラリ飛び立ち、また戻ってきてはノンビリてちてちてちてち歩き、また車が来たらヒラリ、また戻って…
えんえん繰り返してた
曲がり道だったから車のスピードはそんなに出せない、かつ見通しが悪いから、いつ次の車が来るか解りにくい道
あのカラス、スリル楽しみつつ遊んでたのかな
16. 匿名処理班
好きこそ物の上手なれ
17. 匿名処理班
OKハイジ、動物がどう思ってるか語って!
オカルト側からのアプローチにはハイジさんを推したい
18. 匿名処理班
???「だが……信用できないのはカラスだ。あいつはただ道具の力を楽しんでいる。 道具を使いこなすすことで……自分の力を試しているんだ。 」
19. 匿名処理班
カラス「あっさり餌にありつけるより
多少でもクロウした方が遣り甲斐あります」
(゚∈゚ )y
20. 匿名処理班
※1
当たり前だと一人で勝手に納得しているだけで、何も証明できていないじゃないか
21. 匿名処理班
※1
毎度そんな否定的な反応しか出てこないなら研究系の記事読むなよ。当たり前ばかり連発するのは自分の視野の狭さを宣伝しているようなもの。恥ずかしいと思わないか?
動物の感情が等しく変わらないというのは何を根拠に?
大雑把に草食・肉食動物や、社会性がある・単独行動を好むというくくりでも違ってきそうだが。
22. 匿名処理班
買い物から戻ったら
私のママチャリに置いてあった子供のヘルメットを
持っていこうとしてた(重かったみたいで悪戦苦闘中)
「ちょっとやめてよ〜」って言ったらヘルメットを離したけど、今度は前かごに止まって動かない
ママチャリを動かしたら去るかな?と思って
普通に鍵をいれて少し動かしてみても動かずにこっち見てるだけ。
それどころかポ−ズをきめて「カァ」とか言って
「さぁ行くぜ!」と言わんばかり。
「もう行くからあっち行ってよ〜」とか
「私に懐かないで〜」って困り果てて話してたら
近くで知らん爺さんは笑ってるし…
押し問答の末、結局諦めたのか上の木に移動して
こっちを最後まで見てたけどなんだったんだろ。
ヘルメットかぶって一緒にチャリで散歩したかったの?
23. 匿名処理班
※21
最近多いけど真っ先に記事を全否定して、自分の言うことだけ肯定してる人は何がしたいのか分からん
せっかく記事にしてくれてる管理人にすら悪いわ