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20〜30億年前の金星は、もしかしたら温暖な気候で水も存在する惑星だったのかもしれない。
40年前に実施されたNASAパイオニア・ヴィーナス計画によって、かつてそこに水が豊富に含まれる浅い海があった可能性がほのめかされた。
しかしはたして大昔の金星の気候は、水が存在できるような安定したものだったのだろうか?
スイス・ジュネーブで開催されたEPSC-DPSジョイント・ミーティング2019で、ゴダード宇宙科学研究所の研究者が発表した研究は「地球の双子」とも呼ばれる金星の気候の歴史を紐解いている。
金星と同じような軌道にある太陽系外惑星の居住可能性について、重要な示唆に富んだ内容となっているようだ。
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5つのシナリオで大昔の金星の気候をシミュレーション
大昔の金星の気候は、水が存在できるような安定したものだったのか?
これを確かめるために、マイケル・ウェイ博士らは水で覆われている範囲をさまざまに想定した5つのシミュレーションを行ってみた。
それら5つのシナリオによって金星は30億年間ほど、50〜20度の安定した気温を維持できていたことが判明。
それどころか今から7億〜7億5000万年前に大量の二酸化炭素が放出されたりしなければ、現在でもそうした温暖な気候が保たれていたかもしれないのだそうだ。
シミュレーションで採用された5つのシナリオのうち3つは、現在の金星の地形を前提に、平均310mの深い海、平均10mの浅い海、少量の水が土壌に閉じ込められているという状況を想定した。
また比較のために、地球の地形に310mの海が存在する状況と、158mの海によって完全に覆われている状況も採用された。
そのうえで、一生を通して暑くなる太陽の太陽放射や変化する大気の成分を考慮に入れるために、三次元大循環モデルで42億年前・7億1500万年前・現在の各時点の環境条件をシミュレートした。
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太陽系に地球そっくりな惑星がもう一つ存在した可能性
多くの研究者が金星の位置は太陽が持つハビタブルゾーン(生命居住可能領域)の内側の境界を超えており、液体の水を保持するには太陽に近すぎると考えているが、今回の研究によれば必ずしもそうではないようだ。
ウェイ博士は、
現在の金星は地球の2倍もの太陽放射を浴びている。それでもどのシナリオでも、液体の水が存在できるような表面温度を維持できることがわかった
と語る。
42億年前の金星が誕生して間もなくの頃、急速な冷却期が終わるとその大気は主に二酸化炭素によって構成されるようになった。
もしその後の30億年を地球のように進化したのであれば、二酸化炭素はケイ酸塩岩によって吸収されて地表に閉じ込められただろう。
そして7億1500万年前になる頃には、大気は大部分が窒素でそこに少量の二酸化炭素とメタンが含まれるといった地球に似たものになっていた可能性が高い。
なんとこの大気は現代にいたるまで安定して存在することもありえたらしい。つまり太陽系に地球のような惑星がふたつ存在する未来もあったのかもしれないのだ。
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火山活動で大量のマグマが煮え立ち灼熱の世界へと変貌か
ところが現実には大量のガスが噴出して金星は変貌してしまった。ガスが噴出した理由は謎に包まれているが、おそらくは火山活動と関係するのではと推測されている。
ひとつの可能性としては大量のマグマがぶくぶくと煮え立ち、そこから大気へと二酸化炭素が放出されたという状況が考えられる。
だが、そうしたマグマは地表に到達する前に固まってしまった。これが栓となり、放出されたガスは再吸収されなくなった。
こうして取り残された二酸化炭素が温室効果を発揮し、結果として現在の金星は平均気温462度という灼熱の世界へと変貌した。
また、金星が生命が住める惑星だったのかどうかをはっきりと知るためにまだ解明されていない疑問もふたつある。
ひとつは初期の金星が冷却された速さと、そもそも地表に水が液化したのかどうかということ。
もうひとつは金星全体で起きた地表の変化は一度きりだったのか、それとも長い時間をかけて繰り返し生じたのかということだ。
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「ヴィーナスゾーン」に位置する太陽系外惑星にも居住できる?
これについてウェイ博士は、
膨大なガスが大気に放出された金星では “何か” が起きて岩に再吸収されなくなった。地球でも大規模なガス放出の事例が知られている。
たとえば、大量絶滅と関係があるとされている5億年前に起きたシベリア・トラップの形成だ。だが、金星ほどの規模ではなかったようだ。金星は完全に変化させられてしまった。
金星の歴史と進化を詳しく解明するには、もっとミッションを重ねねばならないだろう。
私たちのモデルでは、金星はかつて居住可能だったのに劇的に変化して、今のような姿に変わってしまったという線が現実的であることを示している
とコメントしている。
この研究結果は「ヴィーナスゾーン(Venus Zone)」と呼ばれる位置に存在する太陽系外惑星であっても、液体の水と温暖な気候が期待できるということにもつながるだろう。
地球外生命の探索範囲は、今後ますます広がっていくのかもしれない。
References:Phys.orgなど / written by hiroching / edited by usagi
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コメント
1. 匿名処理班
ほんのちょっとした違いでも、長い年月を経れば全然違った星になりうるのね。
2. 匿名処理班
地球だってまだまだ分からないことだらけ
すべての火山が大噴火を続けてわずか数万年で今の金星みたいになってしまうこともあり得る
3. 匿名処理班
大気が今と違った構成だとしても気圧と気温がとても生物が適応できる状態じゃないのでは・・・
4. 匿名処理班
数サイクル前は火星が地球だったんだよ
5. 匿名処理班
未来の地球かそうか
6. 匿名処理班
原始地球の高温高圧下で生成されたような、アミノ酸があったかもっていう意味かな
7. 匿名処理班
火星だっけ?川の跡みたいなのが見たかったの
8. 匿名処理班
安彦良和のヴィナス戦記は良かったなあ。
金星にアステロイドベルトから引っ張ってきた巨大な氷塊を落っことしてテラフォーミングするという。