国の補助金不交付は不当な公権力の行使
(略)
戦後、民主主義という国家体制を選択し、「表現の自由」を保障する憲法が社会的に尊重されてきた日本は、それらの国々と比べると、自由にも見える。
しかし、「あいちトリエンナーレ2019」で起こったことは、国際社会に対しても、日本の民主主義の崩壊を示す警告的な出来事となった。私は、会期中に2度、足を運んだ。作品展示だけでなく、映画やパフォーミングアーツ、音楽などさまざまなジャンルのプログラムが設けられている。また、沖縄の米軍基地建設をはじめ、植民地や東アジアの歴史認識に関する史実、各国に広がる難民の現状など、現在の世界が抱えるあらゆる問題を扱った作品が並ぶ。
芸術家の視点で多様な主題を表現へと変換し、国という枠組みを超えた創造的な観点を提供することが国際芸術祭の役割だと私は理解しているが、その意義を十分に果たしている。一時閉鎖に追い込まれた「表現の不自由展・その後」も、既に多くの説明がなされているように、その趣旨は、偏った政治的プロパガンダでもなければ、侮辱行為でもない。同芸術祭は、少なくとも国際社会に向け、多様な価値観を求める思考を提供するアートの現場であることに間違いない。
その上でなされた、文化庁による補助金不交付の決定は、明確に不当な公権力の行使である。
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https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/488427