子猿が赤ん坊の顔に噛みついている！

明治39年（1906年）6月7日の朝日新聞に「造化の悪戯」という見出しで、世にも奇妙な赤ん坊のイラストが掲載されている。（「造化」とは神のつくった天地や自然のことを指す）。

記事によると、奈良県吉野郡○○○○（プライバシーに配慮してこのように表記してある）のある資産家に四男となる赤ん坊が生まれた。

赤ん坊は健康に無事に生まれたが、生まれつき目の下に小さな肉の塊が付いていた。医者や家族は「しばらくしたら肉は取れるだろう」と放っておいたが、肉の塊は日を重ねるごとに大きくなっていった。

不審に思った、母親が観察したところ、この肉には何やら人間の顔のようなものが付いており、それはまるで「子猿が赤ん坊の顔に噛みついている」ように見えたという。

「これは…神の悪戯か！！」

我が子の顔に張り付いた不気味な肉塊を悪魔の仕業と思った母親は大阪のとある病院へ赤ん坊へ連れていき、助けを求めた。

赤ん坊を見た医者は、異形極める赤ん坊の姿に思わず絶句した。
しかし、よくよく観察してみると、顔の付いた肉塊は呼吸こそしていないものの人間と同じように脈を打っており、肉塊が本来、ひとりの人間として生まれる存在であったことをこの時、察した。

命を持ってるとは言っても、このまま放っておけば赤ん坊の命も危ないことから、医師は赤ん坊と肉塊を切除。数時間後、肉塊は脈を打たなくなり、そのまま死亡したという。

肉塊の正体

この肉塊の正体だが、以前本コラムでも紹介した「奇形腫（畸形嚢腫）」の一例であると思われ、本来は双子として生まれてくるはずの血を分けた兄弟だった可能性が高い。しかし生まれてくる過程で片方の子供は兄弟の体にくっついて生まれてしまったものと思われる。

この稀代な嚢腫は顔のほか小さい手足に耳や陰茎が付いており、このまま成長していたら、赤ん坊の養分までも吸い取り、共倒れになってしまった可能性が高く、早目の施術により一命をとりとめる形となった。

なお、この切除された兄弟はホルマリン漬けにされ、今後の研究のために役立てられたという。

参照：朝日新聞
文：穂積昭雪（昭和ロマンライター / 山口敏太郎タートルカンパニー / Atlas編集部）



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