天敵の目を欺くため、あるいは獲物を呼び寄せるため、ある特定のモノに似せた外見を持つ昆虫は数多く存在する。獲得して擬態するまったくの別物になりすます植物や昆虫はよく見かける。
そのカモフラージュの巧みさに、我々人間は驚かされるものばかりなのだが、東南アジア原産のモンウスギヌカギバ(Macrocilix maia)の模倣っぷりがかなりすごいと海外で話題となっていた。
この蛾のハネ(翅)には、ある場面全体が映し出されている。これは、ある意味劇場型。まったく新しいレベルの模倣といえよう。
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2匹の虫が茶色いフンを食べる場面を表現
その模様は、2匹の虫(おそらくはハエ)が茶色いものに群がって食事を楽しんでいるようなシーンとなっている。その茶色いものは、できたてほやほやの鳥のフン(糞)を模している。実にドラマティックだ。
image by:u/Victor-Reeds
天敵が避ける昆虫&糞をコラボで演出、刺激臭も
いったいなぜハエのお食事シーンを模しちゃったのだろう?
カギバガ科、モンウスギヌカギバの天敵の多くは、鳥の糞に群がる昆虫を避ける傾向がある。糞は潜在的に病気と結びつくからだ。
つまり、この模様は昆虫の防衛メカニズムとして機能していることになる。さらには、見た目のカモフラージュでは防衛に不十分と思っているかのように、この蛾は実際の鳥の糞によく似た刺激臭を放つと言われている。
ハネの中のリアリティ
ハネに描かれているハエはリアルで、体の輪郭、特に頭は割と正確だし、茶色の糞がびちゃっとはねている感じも、本物っぽい。コラ職人が作り上げたものかと思うほどだ。
ハエの体に光まで反射している。いったいどうやって、この蛾はこんな特殊な模様を発達させたのだろう? 彼ら自身がこれが天敵を寄せつけないと知っていたとはとても思えない。
image by:Dr. Alexey Yakovlev/flickr
適者生存で獲得した模様
だが、こういうことはたびたび起こるようだ。モンウスギヌカギバの進化は、ほとんどランダムに起こった。
大古の昔、わずかな遺伝子の変異のせいで、1匹の蛾のハエに、現代の私たちが種全体に関連づけている明確なシーンに幾分似た模様ができた。その遺伝子が受け継がれていき、自然淘汰が起こった。
"糞を食べるハエ"に似た模様の変異をもつ蛾は、繁殖する確率が高くなったが、ほかの模様をもつ蛾は生き残ることができなかった。
これは、適者生存で、その模様は世代を超えて進化していき、もっとも天敵を騙すことができる模様がほかのものよりも長く残った。
一番最初のオリジナルの模様は、おそらく現在のものほどリアルではなかっただろう。だが、年月とともにどんどん進化したのだ。そしてそれは現在も進化中で、将来的にさらにリアルな究極の模様になっている可能性もある。
モンウスギヌカギバ(Macrocilix maia)の成長記録
Image by LiCheng Shih/flickr/iStock
カモフラージュをする生き物はほかにも、枯れ葉そっくりの蛾や、怖ろしいヘビの頭によく似たイモムシなどもいる。
だが、このモンウスギヌカギバのように、自分で考えているわけではないのに、悪臭まで発して、複雑な模様による防御機能を補っている生き物はかなりハイレベルと言っていいだろう。
References:reddit / Macrocilix maia/ written by konohazuku / edited by parumo
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コメント
1.
2. 匿名処理班
本物かと思ってキレかけた
3. 匿名処理班
どうやったら、迷彩服を着るかの如く自らの体をカモフラージュする柄へと作り変えるのかと、常々不思議に思う。
効果的なカモフラージュ効果を持つ個体の生存率が高いから、長い時間をかけて遺伝子の選別が行われた結果だろうか。
4. 匿名処理班
生き残った遺伝子の集約としての必然なんだろうが…何か見た目だけで余計に駆逐されそうな気が…
5. 匿名処理班
ひでぶみたいな名前の蛾
6. 匿名処理班
昆虫界のパリコレ
7. 匿名処理班
誰の意志でこんなことが可能なの!?
蛾の意志?神様の意志?
8. 匿名処理班
ここまでハイレベルな適者生存には
畏れすら感じる。
鳥肌が立ってしまった。
9. 匿名処理班
神様が悪ふざけで創ったとしか思えんな
10. 匿名処理班
お見事!
汚物を連想させて嫌われることが生存に有利なんて人間社会ではなかなかお目にかかれないから面白い
11. 匿名処理班
ほんと意味わからんわ昆虫の擬態は
何者かにデザインされたとしか思えない