女「あはぁん、もっとジャブを打ってぇ~」男「この女、完全にジャブ中だ……」
- 2019年11月30日 20:40
- SS、神話・民話・不思議な話
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男(女の人が二人の男に殴られてる!)
男「やめろーっ!」
不良「もう勘弁してくれ……」
DQN「拳がいてえよ……」
女「ダメよ……もっとジャブを打ってぇ~!」
二人「ひいいいいっ!」タタタタタッ
女「あーあ、逃げちゃった……」
男(なんだこの女……あんだけ殴られたのに平然としてる……)
女「まだよ……まだ足りないわぁ~……」
女「あはぁん、あなたでいいからもっとジャブを打ってぇ~」
男「うわ……この女、完全にシャ……いやジャブ中だ……」
男「俺もう帰るんで……」
女「打ってくれなきゃ、帰さないんだからぁ~」ガシッ
男「ちょっ!」
女「ジャブ打ってぇ~……」
男「打ちませんよ! 傷害罪で捕まりたくないし、それに女性を殴るなんて……」
男「なっ!」
女「女を殴ることもできないなんて……これだから今時の男ってのは……」
女「しょせん草食系……優しいだけの男に魅力なんかないわ」
男「……!」
男(ここまで言われて黙ってられるか!)
男「いいだろう、打ってやるよジャブを!」
女「あはぁ、嬉しい~!」
女「分かったわぁん」
男(えぇとジャブなんか打ったことないけど……こうか?)
男「えいっ!」シュッ
ベチッ!
男(もろに顔面に入った!)
女「……」
女「なにこれ」
男「え」
男「な、なんだとォ!?」
男「だったらこれでどうだァ!」
バキッ! ガッ! ゴッ!
男「ハァ、ハァ、ハァ……」
女「ふぅ~……ぬるいぬるい。あんた、ジャブもまともに打てないの?」
女「すっかり興醒めしちゃったわ……もう帰っていいわよ」スタスタ
男「……」
男(なんだろう……この異常なまでの屈辱感……)
男「すいません……」
トレーナー「おや、なんだい? 見学かい?」
男「いえ……入門させて下さい」
トレーナー「そりゃかまわないけど……いったいなぜ?」
男「すごいジャブを打てるようになりたいんです! ジャブの打ち方……教えて下さい!」
トレーナー「こうやって脇締めて、まっすぐに拳を突き出し――」シュッ
トレーナー「すぐ引っ込める」サッ
トレーナー「力むと威力もスピードも死んじゃうから、当たる瞬間だけ力を込めるのがポイントだ」
男「はいっ!」
男「シッ、シッ、シッ」シュッシュッシュッ
トレーナー「うん、なかなか筋がいいじゃないか」
男(よぉし、あの女を満足させるジャブを打てるようになるぞ!)
バシッ バシッ バシッ
練習生A「すげーなあいつ、ずっとサンドバッグにジャブ打ってるぜ」
練習生B「よく飽きないし、疲れないよなぁ」
練習生C「汗が水たまりみたいになってるよ……」
男「シッ、シッ、シッ」
バシッ バシッ バシッ
男「ありがとうございます」
トレーナー「そろそろジャブ以外のパンチも教えようか?」
男「いえ、ジャブだけで結構です」
トレーナー「あ、そう。ならいいんだけど」
トレーナー(変わった奴だ……普通はもっと色んなテクニック教えてくれってなるのに)
男「シッ、シッ、シッ」
バシッ バシッ バシッ
練習生B「俺が来た時にはすでにあそこでジャブ打ってたぜ」
練習生C「どんだけジャブ好きなんだよ……」
男「……」バシッ バシッ バシッ
男(ジャブって楽しいィ~~~~~~~~~~!!!)
女「あら、あなたは……」
男「以前あなたにジャブを酷評された者です」
男「今こそあの時のリベンジをしたい。あなたをジャブでイカせたい」
女「へえ、ってことは少しはいいジャブを打てるようになったのかしら?」
男「はい」サッ
女「じゃあ打ってもらおうかしら」
男「いきます!」
バチッ! バシッ! ベシッ!
女「あはぁん、いいわぁ~! だいぶよくなったじゃない!」
男「ホントですか!」
女「だけどまだまだね。私をイカせるには程遠いわ」
男「えっ!」
女「あなたのジャブはまだ……到底プロボクサーには及ばないわ!」
男「プロボクサー……!」
男「だったらなってみせますよ……プロボクサーに!」
男「トレーナー」
トレーナー「おや、どうした?」
男「俺、プロボクサーになりたいんです!」
トレーナー「しかし、ジャブしか習ってないのに……」
男「ジャブだけでなりたいんです!」
トレーナー(なんという鋭くまっすぐな瞳……まるでジャブのような……)
トレーナー「分かった、人生なんだって挑戦だ。やってみるがいい」
男「ありがとうございます!」
男「……」
相手(なんだこいつ……弱そうだな。あっという間にKOして、プロになってやるぜ……)
男(ジャブ!)シュッ
バチッ!
相手「ぶっ!?」
相手(ちょっ……全然見えなかった……)
男(ジャブ! ジャブ! ジャブ!)シュッシュッシュッ
バチッ! ベチッ! メキッ!
相手「ぐへえ……」ドサッ…
男「もっと打ちたかったのに……」
トレーナー(ジャブだけで合格しやがった……)
男「シッ、シッ、シッ」
バシッ バシッ バシッ
練習生A「プロテスト、ジャブだけで相手倒したんだってよ」
練習生B「どんな威力だよ……」
練習生C「近頃は朝から晩までずっとジャブ打ってるからな、あいつ……」
敵選手(しまった! ガード下げちゃった! ストレートが来る!)
男(ジャブ!)シュッ
敵選手(くっ、今ので顎ががら空きになっちまった……アッパーが来る!)
男(ジャブ!)シュッ
敵選手(この距離……フックが飛んでくる!)
男(ジャブ!)シュッ
バキィッ!
敵選手「なんなの……こいつ……」ドサッ…
カンカンカーン!
男(そろそろあの人をイカせてみせる……!)
男「お久しぶりです」
女「あら、いらっしゃい」
男「プロになった俺のジャブを味わってもらおうと思いまして」
女「ふふっ、期待してるわ」
男「必ず満足させてみせますよ」
スパパァンッ!
女「ああぁ~~~~~、いいわぁ、いいわぁ~~~~~ん」
女「ずいぶんよくなったじゃない……」
男(やった! これで俺の目標は達成――)
女「だけど、まだ足りないわ……」
男「えっ」
女「以前もらったジャブの方がずっと素晴らしかった……」
男「なんですって!?」
女「たしか彼は今、日本王者になってるはず……」
男「だったら……そいつを倒してみせます!」
実況『お待たせいたしました!』
実況『日本王者タイトルマッチを開始いたします!』
実況『ここまでほとんどジャブだけで勝ち上がってきた挑戦者、どこまで食い下がれるか!?』
王者「……」
男「やはり、今までの相手とはオーラが違いますね」
トレーナー「正直いって、君がここまで来れるなんて夢にも思ってなかったけど……」
トレーナー「全てをぶつけてやれ!」
男「はいっ!」
王者「私は君を色物とは思わない……全力で相手をしよう」
ズドドドッ! ドガッ! ドゴッ!
男「……!」ヨロッ
実況『チャンピオンの猛攻に、挑戦者防戦一方だ!』
男(ジャブ!)シュッ
男(ジャブ! ジャブ! ジャブ!)シュシュシュッ
王者「むんっ!」ズドッ
男「ぐうっ……!」
トレーナー(やはり、ジャブだけで勝てる相手じゃない!)
男「ハァ、ハァ、ハァ……」
トレーナー「まぶたを切ってるな……大丈夫か?」
男「まだ……いけます……!」
トレーナー「いいか、やはり王者はジャブだけで勝てる相手じゃない」
トレーナー「不得意とはいえ、君は他のパンチも練習している!」
トレーナー「牽制しつつ、本命のパンチを当て、一発逆転を狙うしかない!」
男「……分かりました! 牽制しつつ、本命を当てるんですね!」
男「いくぞっ!」
男(ストレート!)ブウンッ
男(フック!)ブウンッ
男(アッパー!)ブウンッ
王者(む、戦法を変えてきたか! しかし、ジャブ以外は下手くそだ……)
男(ストレートやフックで相手を牽制して……本命のジャブを当てるッ!)
ズバァッ!
王者「ぐぶっ……!?」
トレーナー「逆、逆! 普通と逆ゥゥゥゥゥ!!!」
王者(いったいどれくらい練習すれば、こんなジャブを打てるようになるのだ!?)
男「うおおおおおおおっ!!!」
実況『挑戦者、大きく右拳を振り被ったァ!』
王者(勝負を焦ったか! カウンターの餌食に――)
男(あ、やっぱり左ジャブで)シュッ
ズバシュッ!
王者「しまっ……」
王者「見事……だ……」ドザァッ
カンカンカンカンカンカァーンッ!
トレーナー「勝っちゃったよ……」
女「結果は……知ってるわ。すごい試合だったわね」
男「ありがとうございます」
女「で、今日も私を楽しませに来たの?」
男「いえ、今日は宣言に来ただけです」
男「俺は……世界チャンピオンに挑戦します!」
女「!」
女「……」
男「その時は……結婚してくれますか?」
女「……」
女「いいわよ」
男「ありがとうございます!」
男「では、練習があるので」タッタッタ…
女(ふふっ、パンチもまともに打てなかった坊やが、すっかり男の顔になっちゃって……)
男(ジャブ! ジャブ! ジャブ!)
ズドンッ! ズドドッ! ドゴンッ!
練習生A「音……やべえな。ジャブの音じゃないって」
練習生B「継続は力なりって本当なんだなぁ」
練習生C「あれなら世界王者も夢じゃないよな……」
ボンッ!
男「しまった……サンドバッグが破裂してしまった」
三人「ウソォォォォォ!?」
実況『さあいよいよ、男選手が世界チャンピオンに挑みます!』
実況『チャンピオンはすでに10度も防衛を果たしている絶対王者!』
実況『しかし、男選手にもチャンスはあるはず! 日本中が固唾を飲んで見守っています!』
チャンプ「私は今までJAPANのボクサーを何人も倒してきたガ……」
チャンプ「君はその中でも特にいいフェイスをしていル……」
チャンプ「いい試合をしよウ」
男「胸をお借りします……そして倒します!」
チャンプ「HAHAHA……いい殺気ダ」
チャンプ「……」ギュンッ
男(うわっ、速――)
ズドドドドドドッ!
男(なんだこりゃ! 一発一発がKO級の威力! こっちの攻撃チャンスがない!)ミシミシッ…
トレーナー「くっ……!」
トレーナー(男君のジャブは確かにA級だ……しかし、チャンプは全てがA級なんだ……ッ!)
男「ぐはあっ……!」ドサッ
実況『あーっとダウン!』
レフェリー「ワン! ツー! スリー……」
男「うぐぅ!」ムクッ
実況『なんとか立ち上がりましたァ!』
ワァァァァ…
カァーンッ!
実況『ここでゴング! 男選手、このラウンドもいいところがありませんでした!』
男「は、はい……」ハァ…ハァ…
男「やはりジャブだけで勝てる相手じゃありませんね……」
男「日本タイトル戦のように、他のパンチも駆使しないと……」
トレーナー「いや、ジャブだけでいこう」
男「……え」
トレーナー「君がどれだけジャブを打ってきたか、私は知っている」
トレーナー「ジャブを信じるんだ!」
男「トレーナー……!」
男(もう余計なことは考えない……)
男(トレーナーの言う通り……ジャブに全て託す……)
男(ジャブだけで……押し切ってやる!)
ズパァンッ! スパァンッ! ドパァンッ!
チャンプ「……ッ!」
男(うおおおおおおっ! ジャブ! ジャブ! ジャブ! ジャブ! ジャブ! ジャブ!)
男(ジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブ……)
男(ジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブジャブ……)
ドドドドドドドドドドドドッ!!!
男(クリンチ? パーリング? スウェー? カウンター?)
男(んなもん知るかァ!)
男「俺にはジャブしかないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」シュッ
ズドォンッ!
チャンプ「ぐオッ……!」
トレーナー「いけええええええっ!!!」
男(ジャブッ!!!)
男(俺の前で……大の字になってた……)
カンカンカンカンカァーンッ!
トレーナー「よくやった……よくやったぞ!」
男「ありがと、う……ございま、す……」
トレーナー「……! タンカをっ! タンカを早く! チャンピオンより重傷だ!」
…………
……
記者「このたびは世界タイトル獲得と、ご退院おめでとうございます!」
男「ありがとうございます」
記者「チャンピオンになられた今の気持ちをお願いします」
男「嬉しいです。トレーナーには本当に感謝しています」
男「それと、チャンピオンは強かった……勝てたのが今でも信じられないくらいです」
記者「今後の抱負はどのように考えておられますか?」
男「チャンピオンにはなりましたが、私はまだまだボクサーとして未熟です」
男「もっと練習を重ね、より成熟したボクサーになりたいと考えています」
男「本当です」
オオッ…
記者「伴侶となられる方とは、どういう生活をしていきたいですか?」
男「そうですね……」
男「毎晩激しい夫婦生活を送りたいと思っています!」
オオオッ…
パシャシャッ パシャッ パシャシャッ パシャシャッ パシャッ
男「じゃ、打つぞ」
女「ええ」
男「シッ、シシッ、シッ!」
スパパパァァァンッ!
女「あ゛あ゛あ゛ぁ~~~~~ん! これよ! これが私が長年待ち焦がれた世界一のジャブよぉ~ん!」
男「ジャブ打つの楽しいィィィ~~~~~~~~~~~!!!」
女「もっとジャブを打ってぇぇぇぇ~~~~~~~~~!!!」
―完―
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