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もし1940年代に建てられた潜水艦の収容施設の廃墟があったら?まずは壊す?それとも巨大プールに建て替える?
だが芸術の国フランスは、その巨大な建造物を世界最大のアート空間にしてしまった。
フランスのボルドーで来年オープンするバッサン・デ・リュミエールは、第二次世界大戦中の建造物を改装してできた世にも珍しいアート施設だ。
かつて15隻もの大型潜水艦を収めた巨大な屋根付きドック。その構造を利用したデジタルアートセンターの斬新な展示スタイルが話題になっている。
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1941年に建造された潜水艦の収容施設
この基地が建てられたのは1941年、第二次世界大戦中のことだ。
当時ナチス・ドイツに占領されたフランスは、自国にドイツやドイツの同盟国の艦隊を収容する防空施設(ドイツではUボート・ブンカーとも呼ばれた屋根付きドック)の設置を余儀なくされ、ボルドーにこの建造物を建てることになった。
ボルドーに建設された潜水艦収容施設
6,500人もの労働者によって建設された施設は、15隻もの大型潜水艦を収容する同盟国の基地になった。
そして現代。パリを拠点に歴史的建造物やデジタルアートの展示を行うカルチャースペース社が、廃墟化した施設をデジタルアート空間にする計画を立てた。
元ドックならすぐに巨大プールになる気もするが、潜水艦用に作られた施設は深さ16mもの水位を保つ構造になっているため、単純にリフォームしても集客が見込めないと判断されたようだ。
12億円で世界最大のアートセンターに変貌
とはいえ、そのアイデアを実現にかかった費用は莫大だった。
同社はこの基地の復元と改造になんと1,000万ユーロ(約12億円)もの巨額を投じ、およそ1年かけて戦争の遺物でもあった建造物を14,500平方メートルの投影面積を誇る巨大な設備に変貌させた。
完成した世界最大のアートセンターは、バッサン・デ・リュミエール(Bassins de Lumieres)と名付けられた。Bassinsとはフランス語で流域またはドックの意味合いもある。
水面を活用した展示で作品を堪能
カルチャースペース社はこの空間が伝統芸術と現代美術の両方を愛する人々が楽しめる場になると確信しており、以下のようにコメントしている。
この潜水艦基地のモニュメント的な構造にデジタルエキシビションはうってつけでした。4つの巨大なドックの水面が天然のスクリーンになって、展示の没入体験に新たな次元を加えるんです
ここを訪れた人々は壁沿いの狭い通路を通りながら、大きな壁や柱だけでなく水面にも映し出される見事な作品を堪能できるのだ。
2020年4月クリムトの展示でオープン
こうして誕生したバッサン・デ・リュミエールは来年4月17日にオープンする。
なお、記念すべき初の展示では、世紀末ウィーンを代表する帝政オーストリアの画家、グスタフ・クリムトの作品がプロジェクションマッピングで壁面に映し出される。
すでに年間を通じてさまざまな展示が予定されており、この後は、主要なアーティストの特集や美術史に特化した長期的な展示のほか、より現代的な作品の短期展示も開催する予定だそうだ。
今後は世にも珍しい世界最大のアートセンターに映し出される名作が、たくさんの人の目を奪うことになりそうだ。
References:instagram / facebookなど /written by D/ edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
昔の友達が「金は色じゃない」と何でだか憤慨してた記憶。
屏風にクリムト、金も立派な色だと思うけどなぁ
2. 匿名処理班
壁画でなくてスクリーン?どうなってるかよく分からないけど、迫力あって素敵な空間。さすが芸術の国。使用用途も大人の対応ですな。
3. 匿名処理班
バハムート戦記しか思い浮かばねえ・・・
4. 匿名処理班
戦時中は血を奪い合う世界、今は文化で心を奪う世界
いい利用方法だと思うぜ
5. 匿名処理班
1945年〜2019年まではどうなさってたのか?ただぶん投げてあったのか?気になりますな。
6. 匿名処理班
「ちょっとうちの店の商品の宣伝ポスター
描いて欲しいんだけど」
って頼んでこんなレベルの絵が届いたんだから
以来した店主たちは腰抜かしただろうな。
7. 匿名処理班
うわ素敵
水面に絵が写ってるのもいいねえ
行ってみたいなあ
8. 匿名処理班
ザラキ使いそう
9.
10. 匿名処理班
苦肉の策だよね
多分、フランスだからと絶賛しちゃう人もいるだろうけど、評価はこれからだからね
落書きでもフランスで展示すれば後は、意識高い系の人が勝手に好意的解釈をしてくれるという期待感もあるから、今後に期待かな
11. 匿名処理班
古いモノを大切にしながら新しいモノも取り入れる
さすが芸術の国
12. 匿名処理班
フランスのルーブルは撮影OK(人の邪魔しない、もの・場所による)だけど、ウィーンの分離派会館って撮影禁止なのよね。なのにベートーヴェン・フリーズがおフランスで上映される皮肉