悪人「俺が悪に走った理由は……」ヒーロー「あ、悲しい過去とかワンパターンだからいらない」悪人「え」
ヒーロー「ここまでだな、悪党。警察に突き出してやる」
悪人「く、くそっ……まさかドブの中で張り込んでるとは思わなかった……!」
ヒーロー「どんなにみっともなかろうと、世のため人のためになるならその手段を選ぶ」
ヒーロー「これが俺の“ヒーロー道”だからな」
悪人「へっ、立派なもんだ」
悪人「それに比べて俺は……ガキの頃から母親に虐待されて……」
ヒーロー「あ、ちょっと待って」
悪人「?」
ヒーロー「悲しい過去とかワンパターンだから話さなくていい」
悪人「え」
ヒーロー「えー……」
ヒーロー「悲しい過去って、聞いてて辛気臭くなるからできれば聞きたくないんだよなぁ」
悪人「そんなぁ……」
ヒーロー「それにどうせ、子供の頃から虐待されて、親の愛を知らず育って」
ヒーロー「色々あって人間嫌いになって、悪の道に走っちゃう……とかそういう話だろ」
悪人「いや、まあ、そうなんだけど」
ヒ―ロー「じゃあいいよ。話さなくて」
悪人「話させてくれよぉ!」
ヒーロー「うーん……だったらこうしよう」
悪人「楽しい過去……!?」
ヒーロー「一つぐらいあるだろ?」
悪人「楽しい過去……うーん……」
ヒーロー「何かないのか? ないなら捕まえちゃうけど」
悪人「ちょっと待てよ! ……あ、一つだけある!」
ヒーロー「よし、話してみろ」
ヒーロー「ちょっと待て、いきなり悲しいじゃないか」
悪人「いや、これから楽しくなるんだって」
ヒーロー「ホントかぁ~?」
悪人「ホントホント、だからとりあえず黙って聞いてろ」
ヒーロー「分かったよ」
悪人「わざと窓ガラスを割って俺のせいってことにしてきたり、弁当をゴミ箱に捨てられたり……」
悪人「徹底的にイジメ抜かれた。地獄だったよ」
ヒーロー「先生に相談しなかったのか?」
悪人「もちろんしたさ。だが、まともに取り合ってくれなかった」
悪人「卒業まで我慢しろ、相手しなければ鎮静化する、なんていわれてな」
ヒーロー「それはひどいな……」
ヒ―ロー「おお」
悪人「しかし、まともにやり合ったら敵わない」
悪人「ちょうどその頃、俺がハマってた漫画の主人公が、頭がよくて策で敵を倒す感じのキャラでな」
悪人「俺も真似して、策を練ることにした」
ヒーロー「分かった、その策が見事にハマって……」
悪人「待て。終わりまで聞け」
悪人「思いつく策なんてたかが知れてるし、あまり大がかりな作戦を実行する金も力もない」
悪人「しょうもない策を思いついては却下を繰り返し、時間だけが過ぎていった」
悪人「そんな時だ」
ヒーロー「お?」
悪人「テレビで、戦争や戦闘について特集してたんだ」
ヒーロー「なるほど、その番組をヒントにものすごい策を閃いて……」
悪人「だから、割り込むなって!」
悪人「奇襲だとか狙撃だとか、真似できそうもないものばかりだったんだが……」
悪人「一つだけ、俺が真似できそうなのがあった」
ヒーロー「なんだよ?」
悪人「汚物を塗りたくった武器で敵を攻撃するってやつだ」
ヒーロー「!」
悪人「策の方向性はこれで決まった」
悪人「俺は犬のフンを集め始めた」
ヒーロー「あ、分かった!」
ヒーロー「犬のフンでいじめっ子に復讐してめでたしめでたしで終わるんだろ!」
悪人「だからいちいち予想すんな! 最後まで聞けぇ!」
ヒーロー「分かった分かった……もう予想しないから許して」
悪人「探してみると、これが意外と落ちてないんだよ」
ヒーロー「イジメはあるけど、マナーはいい地域だったんだな」
悪人「そうなんだよ。マジでなかなか落ちてないの。一日中探して見つからない時もあった」
悪人「犬の散歩してる人をつけ回して、すげえ怒られたり」
悪人「ちゃんと袋を用意してる人に“そのフンもらえませんか?”って頼むこともあった」
ヒーロー「完全に変質者じゃないか」
悪人「小さいサイズとはいえ、ゴミ袋がフンで一杯になったからな」
ヒーロー「臭かっただろ」
悪人「ああ、臭かった」
悪人「とてもじゃないけど家には持ち帰れないから、近くの林に持ち込むことになった」
悪人「そしたら、今度はハエみたいな虫がたかってきて……思い出すだけで……」
ヒーロー「悲しい過去でも楽しい過去でもなく、汚い過去になってきたな」
ヒ―ロー「うん」
悪人「けど……」
ヒーロー「けど?」
悪人「いじめてくる奴らとはいえ、こんなもんで斬り付けるのはさすがに可哀想だと思ったんだ」
ヒーロー「おお」
悪人「そしてなにより、俺自身が臭いに耐えきれなかった。鼻にティッシュ詰めても臭くてさ」
ヒーロー「そっちが本音だろ」
ヒーロー「なんで林に放置しなかったんだ?」
悪人「後で見つかって、騒ぎになるのが怖かったからだ」
悪人「騒ぎになったら、あちこちでフンを拾ってた俺が犯人だってバレるのは間違いないからな」
悪人「だから、ちゃんとした場所に捨てたかった」
ヒーロー「飼い主に“フンをください”なんて頼んでるしな」
悪人「すると……」
悪人「路地裏で不良数人に絡まれてる子供を見つけたんだ」
ヒーロー「ほう」
悪人「多分カツアゲかなんかされてたんだろうな」
悪人「最初は見て見ぬふりしようと思った」
悪人「だってイジメに勝てない俺が、カツアゲするような不良になんか絶対勝てるわけないからな」
悪人「なんていうか、心が爆発したんだ」
悪人「そして――」
『や、やめろおおおおおおおおおっ!!!』
悪人「俺は不良どもに挑んだ」
悪人「ドン引きして逃げる奴もいたが、中には逆上して殴りかかってくる奴もいた」
悪人「だが、俺は殴られても、フンまみれになって戦って……」
悪人「ついに不良どもは全員逃げていった」
ヒーロー「……」
『みっともないだろ……こんな弱くて、臭くて、ボロボロで……』
『いいえ! ぼく、あなたみたいな人になりたいです!』
悪人「……って言ってくれたんだ」
悪人「あれが俺の人生で唯一といっていい楽しい思い出だろうな」
悪人「ただし、結局イジメには勝てず、人生ひん曲がってこうなっちまったがよ」
ヒ―ロー「……」
悪人「? ……どうした?」
ヒーロー「……」
悪人「おい、何とかいえよ」
ヒーロー「やっと……」
悪人「え?」
ヒーロー「やっと会えた……」
ヒーロー「はい、その子供は……俺です。間違いありません」
悪人「なんだと……!」
ヒーロー「俺はあの時助けてくれたあなたみたいになりたくて、ヒーローになろうと決めたんです」
ヒーロー「どんなにみっともなくとも、人々を助けられるヒーローになろうって……」
悪人「……そうだったのか」
悪人「憧れの男が、こんな悪人になっちまって」
ヒーロー「……」
ヒーロー「すいません、悲しい過去をまた一つ増やしてしまって」
悪人「いや、そんなことはないさ」
悪人「昔助けたガキが立派になって、ワルに落ちぶれた俺を捕まえてくれる……こんな嬉しいことはない」
悪人「おかげで……楽しい過去が二つに増えたよ」
おわり
元スレ
悪人「俺が悪に走った理由は……」ヒーロー「あ、悲しい過去とかワンパターンだからいらない」悪人「え」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1577275204/
悪人「俺が悪に走った理由は……」ヒーロー「あ、悲しい過去とかワンパターンだからいらない」悪人「え」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1577275204/
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コメント一覧 (2)
-
- 2019年12月25日 23:57
- しっかりとしたオチがあって面白かった!
-
- 2019年12月26日 00:02
- なるほど
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