科学者、未来研究者、政府など、これまでさまざまな識者たちが2020年までに実現するだろうことを予測してきた。さて、その予測はどのくらい的中したのだろうか?
新しい2020年が始まろうとしている今、ここで答え合わせをしてみよう。
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1. 平均寿命が100歳になる
1999年、AIの権威であり技術的特異点の概念で有名なレイ・カーツワイルは、『スピリチュアル・マシーン』の中で2019年までに人は100年以上生きるようになっていると予測した。
「急性症状や慢性疾患など、健康状態をチェックしてくれるヘルスモニターが、時計・アクセサリー・衣服などに内蔵されて普及するだろう。こうしたモニターがさまざまな健康上のアドバイスをするようになる。」
結果:はずれ
確かにそのような健康デバイスは登場したかもしれないが、それほど劇的な寿命の改善は見られない。国連によれば、世界の平均寿命は72.6歳だ。
2. コンピューターが消えてしまう
カーツワイルはさらに卓上のコンピューターが消えてしまうとも予測している。
「壁やテーブル、椅子や机、アクセサリーや体内に埋め込まれて、ほとんど目につかなくなるだろう。ディスプレイはメガネやコンタクトレンズに内蔵され、人間の網膜に直接映像を投影するようになる。」
結果:一部あたり
今やコンピューターはあちこちに内蔵され、スマートホームやスマートテーブル、スマートチェアにスマートデスクなど、電脳製品のオンパレードだ。網膜に直接投影するディスプレイはまだないが、グーグルグラスがそれに近いだろうか。
3. 本がなくなる
こちらもカーツワイルの予測だ。「紙の本や書類は滅多に使われなくなるだろう。大切な20世紀の紙の文書のほとんどはスキャンされ、ワイヤレスネットワークで閲覧されるようになる。」
結果:ほぼはずれ
確かに本の売上は落ちているが、たとえばアメリカでは2018年の時点でまだ6750万冊が売れており、売上高は2兆8000億円相当に達している。
4. 監視社会の到来
カーツワイルは、「実質的に人々の行動の一切がデータベースに保存」されるようになり、プライバシーが大きな政治社会問題になるだろうと予測した。
結果:あたり
今日ではテレビからスマホ、ネットブラウザーまでさまざまなものが人々の行動をトラッキングしている。また街中には監視カメラが仕掛けられ、国によっては顔認証技術によってあっという間に個人が特定されてしまう。
アメリカのある調査によれば、成人のほとんどが個人情報を集められることなく日常生活を送ることは不可能と考えているそうだ。
5. 世界人口が80億人を突破
1994年、国際食糧政策研究所は、世界人口が2020年までに25億人増え、80億人を突破するだろうと予測した。特に増加が著しいとされたのはインド、パキスタン、バングラデシュ、アフリカで、これらの地域で15億人増えると推定された。
結果:惜しい
国連のレポートによれば、現時点で世界人口は77億人だ。なお、このレポートでは、今後30年で人口が20億人増加し、2027年にはインドが中国を抜き、世界最大の人口大国になると予測されている。
6. 世界最大の経済大国は中国となる
未来学者のピーター・シュワルツとピーター・ライデンは、1997年の『The Long Boom』という記事で、中国が世界最大の経済大国になると予測した。
「2020年までに、中国経済は世界最大に成長する。アメリカ経済は技術的にはより洗練されており、アメリカ人はより裕福だろうが、中国は基本的にアメリカと肩を並べている。」
結果:はずれだがその日も近い
2019年の時点で、中国の名目GDPは、アメリカに次いで世界2位だ。最近のレポートによると、中国とインドが2030年までにアメリカを抜き去るだろうという。
7. 自動運転車の実現
「1990年代後半から自動運転車の実験がなされており、21世紀の最初の10年中には主要な道路で実用化されるだろう」とカーツワイルは予測していた。
結果:はずれだが惜しい
テスラやグーグル傘下のウェイモ、ライドシェア大手ウーバーをはじめとするいくつかの企業が、一部地域で自動運転車の実験を行っている。
4月、テスラのイーロン・マスクCEOが2019年末までに本格的な自動運転車が完成し、2020年中には街中を走行できるようになると発表した。しかし自動運転車の普及はまだまだで、今後数十年かかると予測する専門家もいる。
8. 定年が70歳になる
イギリスのコメンテーター、ハミッシュ・マクレーは、1994年の著書『The World in 2020』の中で、定年は67〜70歳になるだろうと述べた。
「ヨーロッパでの主な原動力は国が負担する費用だ。定年が上がらなければ、年金の負担が重くなりすぎて、現役世代は自分たちの分を賄えるほどの税金を支払えなくなる、というのが政府の実感だ。」
結果:はずれだが、そんな雰囲気はある
退職研究センターによると、アメリカの平均退職年齢は、2016年の段階で男性65歳、女性63歳だ。ここ数十年、男性の場合はこの年齢で安定しているが、女性については上昇傾向にある。
またヨーロッパの一部の国は67歳に定められており、この年齢から年金を受給できるようになる。今後数年で、年齢の引き上げが予定されている国もあるようだ。日本でも定年引き上げの議論がなされている。
9. 中国が民主化へ歩みだす
シュワルツとライデンは、21世紀の最初の10年において、中国は国内問題に対して厳格な措置を取ることもあるだろうが、「全体的としては、より民主的な政治への途上にあると認識されているだろう」と予測した。
結果:はずれ
中国政府は、香港の抗議者に対して人権侵害を犯していると批判されている。また100万人近いウイグル人が不当に拘束され、収容所に入れられているという指摘もある。
10. パーソナル・デバイスの普及
ビル・ゲイツは1999年の著書『思考スピードの経営』の中で、「スマートにあらゆるデバイスと接続・同期」するパーソナル・デバイスが登場すると予測した。
「デバイスがメールや通知を確認し、必要な情報だけを表示する。お店に行って、ご希望のレシピを伝えれば、そのための食材リストが表示される。また所有するあらゆるデバイスに買い物情報やスケジュールが伝えられ、あなたの行動に合わせて自動的に調整される。」
結果:あたりに近い
アレクサ! カートに牛乳を追加して。というわけで、ゲイツの予測はかなり近いところまで的中している。
シリ、アレクサ、グーグル・アシスタントといったAIアシスタントや、モノのインターネットに搭載されたスマート技術は、ほかのデバイスとさっとデータを交換して、命令に応じてくれる。
11. 数ヶ月給油が要らない車が誕生する
シュワルツとライデンは2010年に「製油所のようなプラントで水素が処理され、これを燃料とする車は給油せずとも数千キロを走行できるようになる」と予測した。さらに2020年までに、新車はほとんどが水素を利用したハイブリッドカーになるとも述べている。
結果:道半ば
水素自動車はトヨタとホンダが主導しているが、最前線での戦いはもっぱら電気自動車を巡るものだ。2018年、アメリカで販売された水素自動車は2300台で、電気自動車の1パーセントにも満たない。
なお、ヨーロッパでは昨年、世界初の水素燃料電池を搭載する列車が登場し、来年にはロンドンで2階建水素バスが運行する見込みが高い。
12. 心臓病とうつ病が二大疾病に
1996年、ハーバード大学と世界保健機関は、健康寿命の喪失という観点から見た場合、2020年までに虚血性心疾患と単極性大うつが世界の二大疾病になるだろうと予測した。なお、その当時の二大疾病は、下気道感染症(肺炎など)と下痢性疾患だ。
結果:はずれ
2017年の最新データによれば、世界の五大疾病は、新生児の障害、虚血性心疾患、脳卒中、下気道感染症、慢性閉塞性肺疾患だ。
13. 気温の上昇
IPCCによる1995年のレポートでは、世界の平均温度は2100年までに3.6度上昇する可能性があると予測されている。また同時期に海面が51センチ上昇するとも述べている。
結果:あたりに向かって進行中
予測の年にはまだ80年あるが、事態は的中へ向かって着々と進んでいるように思える。アメリカ海洋大気庁によれば、世界の平均気温は90年代以降で1度以上、海面は1992年以降で7.6センチ上昇した。
14. 人類が火星に到達する
全米研究評議会の宇宙研究委員会は1996年のレポートで、NASAは「今後25年内に月と火星への有人探査ミッション」を実行すると述べ、2018年までに人類は火星の土を踏むだろうと予測した。
またシュワルツとライデンも似たような予測を行っており、「2020年に人類は火星に到達する」と述べている。
結果:はずれ
これまで8機の無人探査機が火星に送り込まれた。ただし、生身の人間はまだだ。
15. 反重力ベルトが戦争を変える
戦場の兵士たちはもはや地上に足をついておらず、浮遊しながら戦闘を繰り広げている――こう1968年に予測したのは数学者D・G・ブレナンだ。
彼によれば、反重力ベルトが陸戦戦術に革命を起こすはずだった。さらに2018年までには反重力カーやジェットパックまで登場するのではと推測していた。
結果:はずれ
16. 原子力が天然ガスにとって代わる
1968年、スタンフォード大学のチャールズ・スカーロット教授は、2018年までにアメリカの電気の大半は、天然ガスに代わって原子力によって供給されるだろうと予測した。
「水力、太陽放射、風力、潮力、地熱による電気はすべて合わせても大した量ではないだろう。原子力発電が低コストで大量の電気を供給しているはずだ。」
結果:はずれ
米国エネルギー情報局によれば、2018年の時点でアメリカの一次エネルギーは、石油、天然ガス、石炭で79パーセントが占められている。残りは、再生可能エネルギー12パーセントと原子力9パーセントだ。
17. ナショナリズムの衰退
1968年、社会学者イティエル・デ・ソラ・プールは、通信や翻訳が発達し、人間の性質について理解が進むことで、民族や国を超えて人々はつながりやすくなると予測した。
「2018年までに、ナショナリズムは世界の衰退勢力になるはずだ。」
結果:はずれ
移民、グローバリズム、政治エスタブリッシュメントといった事柄への反動を背景に勢力を伸ばすポピュリスト的ナショナリズムは、イギリスのEU離脱、ドナルド・トランプの大統領当選、フランス・イタリア・ハンガリー・ポーランドなどでの右派政党躍進といった諸々の事象の原動力となっている。
「どこに目をやっても、今日の世界にはナショナリズムの影響が見られる」とはハーバード大学の国際政治学者スティーブン・ウォルトの言だ。
References:usatoday/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
俺は2020年までには結婚していると予測したが、外れた。
2030年まで伸ばしても当たる気配がない。
2. 匿名処理班
アシモフとハインラインでやってみてくれ。
かなり予想が当たっているから。
でもディックでは調べないで。
その…彼はあれだから…
3. 匿名処理班
やっぱり中国とインドの成長はすごいんだなぁ
4. 匿名処理班
はじめから予想した時点で固定化しないと
チョイスによって当たりばっかりとか外ればっかりになってインチキじゃん
5. 匿名処理班
ほとんど予想っていより期待だかななぁ
6. 匿名処理班
意外とハズレが多いな
7. 匿名処理班
反重力なんて、あと100年たっても実現しないだろうね。
8. 匿名処理班
ドラえもんの藤子F先生の晩年の
悩み事は「最近は秘密道具の技術が
実現されてアイデアに困るなあ」
という異次元レベルのものだった。
9. 匿名処理班
ジェットパックの登場は的中したけどまだ戦場では使われてないな。
10. 匿名処理班
子供の頃思い浮かべたほどは未来になってないよね
11. 匿名処理班
社会が良くなると思ってたり、全体的にまだ少し先の話だったり、
どうしても人は未来を予想する時に希望的観測が入ってしまうのかもね
12. 匿名処理班
「9. 中国が民主化へ歩みだす」はハズレだけど、もしかすると「民主共和制が最高の政体」と言う考え方自体が変わりつつあるのかもしれないね、確かに19世紀後半から20世紀を経て、21世紀前半までの期間では一番優れた(適したと言い換えてもいい)政体だったけど、物理の法則と違って、これから先もそれが永遠に固定と言う保証はないよね。
13. 匿名処理班
15だけ はずれ だけでチョット可哀想w
何か予想してたよりずっと凄い!って事ないのかな〜?良い事で。
14. 匿名処理班
※12
最後のナショナリズムの台頭とかがまさに民主主義がうまく機能しなくなる要因の一つと言われてるね。それに一役買ったとされるインターネットの普及も昔にはなかったものだし複雑になってきてる。次の「一番マシ」な制度はなにになるだろうか
15. 匿名処理班
ゲームの中ではジェットパック実現してるが
乗り心地は最悪で値段も高額ゆえ売れてないし
リアルで実現しても乗る人いないと思う
16. 匿名処理班
最後のは、外れと言えるんだろうか?
そりゃ、反発的な右派回帰傾向はあるけど、
1968年時点を念頭に置くと
「急速にグローバル化が進行した」が故の軋轢って感じがするけど。
ナショナリズムの衰退はともかく、
「通信や翻訳が発達し、人間の性質について理解が進むことで、民族や国を超えて人々はつながりやすくなる」の部分はかなり当たっている気がするが。
少なくともネット普及以前は、一部の限られたメディア報道を通して以外、海外の一般人の生の声を聞く機会なんて庶民にはなかなか無かった。
17. 匿名処理班
確かガンダムの設定では2045~50年ごろに人口が90億人でスペースコロニーを作って、宇宙世紀に変わってくんじゃなかったけ?
西暦で言えば2130年ごろにはガンダムが出来ている計算になるわな。(笑)
もっとも宇宙世紀に変わるには設定にはないが、その前に世界大戦が起こるだろうし、そうなると人口も先に減って、スペースコロニーは先送りでズレるだろうけどな。